※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記   作:山下敬雄

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68.5

ある日のブク高の昼間、美しき女神石像のシンボルのたたずみ見守る正門前の憩いの広場で。

女子生徒たちが熱心に華を咲かせるトークの内容といえば──もっぱらviewtubeの再生回数の話。

今や大手動画サイトviewtubeの再生回数の多寡は素人でも素人やプロから一目置かれる立派なステータスのひとつなのだ。

 

個人情報のつまったスマホを各々取り出しながらわいわいと騒ぎ、各自登録した己のチャンネルで過去1番view数の稼げた動画を見せ合っていた。

 

 

サンチュちゃんねる

★学校の廊下でみんなでハイキック選手権やってみた!!!

20万view

 

 

「ハイキックやっただけで!? おっ、よく足上がってんね! なんかやってた? ──えテコンドー? あー、いいね! どおりで迫るキレがあると思った、よっ!」

 

 

Zukinちゃんねる

★巨大焼きおにぎり焼いてみた。

17万view

★巨大焼きおにぎり裏返してみた。

27万view

 

 

「まぁグルメ系は見ちゃうよねー。まぁグルメは、ねっ! 別腹なとこあるから、あー焼きおにぎりマジうまいよねぇー(裏返した方が高い!? お焦げか、お焦げなのかいっ!?)」

 

 

ぱーぷるバトラーちゃんねる

★バトラーバトラーの新ガチャお祈り配信も

3.2万view

 

 

「おーすごいねっ!? ゲーム配信あーあーはいはい…いいよねー! バトラーバトラーかー。ふむふむ、目の付け所が…今時って感じでいいね!」

 

サンチュに緒方に木浪にタガヤ、+用務員。

このところある程度仲良くなった女子生徒たちと、何かと表立ってよく絡むようになった用務員兼戦闘アドバイザーの池原は自身も兼viewtuberとしても活動しているので、自然な流れでviewtubeの話になっていた。

 

水色作業着の彼女は両腕を前に組みながら、リアクション豊富に頷いている。予想外の高度なレベルのview数の争いにも大人の余裕からか相手を褒め称えることを忘れない。

 

「あっ、ビーナスせんぱーい!! ちょっと今みんなでviewtubeのview数バトルやってるんですけど!!! せんぱいってとーぜんなんかやってそーですよねっ!!!」

 

女子たちの集い井戸端会議する緑の広場へと、ポッと現れた目立つ金髪ロングウェーブさんにサンチュは元気に手を振った。

 

見るからに歳よりも女子力大人力と自信溢れるオーラをしぜんに振りまきながら集団へと近づいた3-C上級生Venus先輩は、前髪を無駄にかきあげながらいつもの自然体で後輩へと答えた。

 

「viewtubeそんなものやってないわ。インヅダなら1番見られたのはこれね。あなたたち再生回数なんていくらでもいいじゃない? ただの日常の延長ですもの、偉くもなんともないのよ。人は気になった見たいものを見るのだから、勝手におし。あえてアドバイスするなら──自然体が1番いいじゃないのかしら?」

 

 

Venuskamiso5

★着こなして救済するわこの春のゴージャスダサファッションそのⅢ

307万view

 

 

「うわーさんびゃくまーん!! あはははこれおもしろーい!!! ビーナス先輩がこんなの着てるーあははは!!!」

「イケてる人があえてダサファッション、動画としてもギャップあってしかもぎゅっとかわるがわる凝縮されてて面白いじゃん、どーみても自然体ではない計算してるのはアレだけどやる人がやると鼻につかないかんじぃ」

「ほんとだ、すごい! 編集も音楽もプロみたい! これリピートもするとおもう!」

「なるほど、これは楽しいですね! 視聴者のものも採用するのは盛り上がりますよ! それに女子も男子も楽しんで見ますねこれは!」

「大袈裟だわね。フフフフ、日常の延長よ」

「日常延長しすぎでしょ」

「あははは木浪先輩」

「これって服はどうやって集めたのですか?」

「その日のデートで失恋したり、街中で指差されて笑われたり、じぶんの子どもにダサいって言われたり着なくなったいわくつきのモノをシリーズのファンからファンの友人までダンボールで送ってもらったわ。少しでもワタシが着こなしていわくつきを救済できれば、すこしは面白いことでしょ?」

「すごーーーい!!!」

「完全にやってるじゃん、狙ってるじゃん、でもそれエコじゃん」

「そうよエコよ、エコ&エゴ。ワタシが着こなせば地球も人の心も救われるのよフフフフ」

 

ガヤガヤと騒がしくなった──突然のview数トリプルミリオン達成者の到来で形成された輪の外に…………大の字で天を見上げ寝転がるその魂までノックアウトされた水色作業着に、女子生徒たちは途中なにやらおぞましい負のオーラを感じ取り気付いてしまった。

 

 

 

▼

▽

 

 

 

女子生徒たちはぐったりと溶けたようにダウンする水色作業着を一旦捨て置き、例の問題のちゃんねるを手持ちのスマホで検索した。

 

「鬼叉ちゃんねる…あった!!!」

 

「あー、グルメにゲームに猫にキャンプにコスメにラーメンにダイエットに手品ネタバラシに怪談に都市伝説語りにレトロゲームの裏技に早食いチャレンジにわけわかんないのに色々手をつけてどれも伸び悩んでる感じの人じゃん。へいきんview数はー」

 

「しーーっ!!! 何ヘンなこと言ってるんですかー木浪先輩!!!」

 

「だって事実じゃん? 本命の武術っぽいのがそのせいか伸びなくなってるし。あ、きっと2本目3本目から伸びてないから他に目移りしたんじゃない? もうなんかそういうの逆によく見るわたしだからわかるし。これけっこーな北風ってやつぅ、あ北風ってのはびゅーびゅーview数伸ばすためにとにかく必死にあちこちのジャンルをフカしてアピールしてるviewtuberのこ──」

 

「てててて的確っぽい分析を!! じゃなくて先輩くわしくてうるさいですよ!! 北風なんてはじめてしりましたよ!!」

 

「はいはーい。もうだまるしぃー」

 

いきなり爆弾を淡々とジト目でスマホ画面をながめながら投下していく木浪をサンチュ後輩は必死の大声で諭した。

 

「デッ! でも! バトラーバトラーのキャラクターの戦闘モーションの監修をしているなんてすごいですよ!! あ、ソレをプロフィールだけではなく全面に動画として再現し上げれば今よりもっと!」

 

「あー…あたしゃそういうのしないの。色んな巡り合わせの末でいただいたありがたい仕事として区別してるタイプだからキャラより前には出ないのよ。今の執事の小鬼ちゃんみたいに ん? って気付いてもらうぐらいが面白いの、よっ」

 

ソーシャルゲームのバトラーバトラーの熱心なプレイヤーであり鬼叉ちゃんねるのすごい実績を知ったタガヤは興奮気味に彼女のことをフォローするが、だるけた感じの声でそれに答えるviewtuber池原は自らの意外なこだわりをさらに語り明かした。

 

「なるほどそのような矜持が……かっこ」

「もしかしてそのこだわりが、アレじゃない?」

「なにがですか木浪先輩…!?」

「なにがもなにもガツると思ったことは積極的にやる方がえらいしね結局この界隈。そういう人が失敗してもさいごには勝ってる印象。北風でもなりふり構わず帽子ぐらいは飛ばす気概がないとview数ってけっきょくみんなの目につかなくて伸びないから、追い風あるなら吹いてるうちに利用しないと────腐る」

 

────腐る、オレンジ髪のギャルのジト目の眼光はするどくサンチュ後輩のおどろく顔面を睨んだ。謎の説得力を感じてしまったサンチュはダメージを負いすぎた鬼叉ちゃんねるのために言い返す言葉を失くしてしまい────

 

「そーだよそーだよ、武道でもゲームでもなんでも強い行動を恥じなく擦る方が偉いに決まってる! 徹しきれない中途半端なあたしの負け負け完敗だ、よっJK!!!」

 

胡座を組んでいた水色作業着はまた大の字へと戻った。そして寝っ転がる緑の草を意味もなくむしりながらだだをこねる子供のようなモーションを披露した。

 

「フッ」

 

「フッてなんで笑ってるんですか木浪先輩…ガチすぎて鬼叉ちゃんねるのガチなの引き出してますっ!?」

 

「(こういうはんのうがviewtubeやってて1番おもしろいし)ただのイチビュアーの意見」

 

「イチビュアー!?」

 

もはやイチビュアーの木浪を止められるものはいない。

結局この世はもっともらしい反論をするにも〝view数〟がないと言い分も苦しくなるのだ。なにがなんでも平穏を保つにもとにかくview数が──必要なのだ。

 

もはやこれ以上の底も恥も敗北もない……そんな心境にたどりついた大の字の鬼叉ちゃんねるは────ふと、ひとつの妙案が後光を帯びながら降りてきた。

 

それは甘い甘い蜜であり、ボロボロの状況から見えてきた発想の転換。

うちのめされた窮地ほど救いの手が無限に広がる。

自分を完膚なきまでにうちのめしたオレンジでさえ、これまでのview数を競い合った敵やライバルやイチビュアーが味方に様変わりする妙案。

 

「そーだここはひとつコラボ配信といこーよ! 君たち! それがあたしもあなたも罪悪感のない唯一の〝view数♡〟かせぎ方法!!!」

 

ひょいと跳ねて何度も転んでいた水色の大の字は立ち上がった。

ブク高を巻き込む壮大なコラボ配信のはじまりである。

 

 

 

▼▼

▽▽

 

 

 

「タイトルは現役女子高生たちにちょっくら武術を教えてみたー! 様子見でまぁずはこれにするよ」

 

「ブク高の公式ちゃんねるってあったんですね!!!」

「タイトルはソレでわかりやすいしいんじゃなーい。てかこれ私たちってヘンなとこにいるけどアッチでどういう風に認知されてんのかな、てかなんでviewtubeつかえんのだっけ?」

「さぁ??? 神様が運営してたり、じゃないですかせんぱい!!! わたし細かいことは気にしてませんでした!!?」

「まぁわたしもだけどー、逆に気になってきた配信したらそれもわかるかも」

 

「ささ、始める、よっ!!」

 

女子生徒たちと鬼叉ちゃんねるのコラボ配信は不黒高等学校の公式ちゃんねるを利用し配信をするカタチが採用された。

viewtubeで配信するにあたって色々な疑問点が同時に今頃になって湧いてきた生徒たちであるが、配信の指揮を取るベテラン池原の声と指示を聞くやいなや話し声をやめ集中……各々────その制服姿には珍しい武器をその手に取った。

 

 

 

三脚に立てた定点カメラを遠方に回し、帽子のツバに仕込んだ小型カメラで視点を切り替えながら臨場感のある生でお届けしている。

 

池原は杖と剣と斧、奇をてらわず基礎的な武器の扱いを丁寧に各々に指導した。

華のかわいい女子生徒たち、ブク高の黒の制服ブレザーとスカートに武器を持たせて稽古をつける物珍しげでファンタジー味あふれる光景は確実にその成果を数字へと変え伸ばしていく……かに思われたが。

 

 

「ありゃー…あまりふえない? よっ?」

 

「なんでですか木浪先輩!? わたし楽しかったのに!?」

「はぁ? んーー、うちら有名じゃないからね初めはこんなもんで当然。それに内容も魔力練り上げるとかいってもアッチ見えてないんじゃない? そんな感じの反応少ないけどきてたし」

「なるほどなるほどー、そりゃまずった鬼叉ちゃん側のミスねー。確かに魔力はフツー見えてねー可能性あるわオレンジJKちゃん、おコメントにもあったわはははツッコマれてんね『急にふざけだした』って」

「でもでも配信待機でもviewer80人こえてますよ!!! ガツーン!ガツるのはもうひと伸びじゃないですかーこれ??」

「んー、悪くはないとおもうーんだけど。やっぱそもそもブク高のちゃんねるジャックしてやってんのがダメなんじゃない。作戦的にはここでいきなり変わったことやったらいいと思ったけど……なんかこの寂れたちゃんねるの過去の動画のview数ざっとみてみたら、異様に少ないし、元から変わってるみたいだし」

 

 

ブク高ちゃんねる

★はないちもんめのルールを解説 87view

★わたしの眼帯コレクション 187view

★おはじきに追加ルールを加えてみたわ 63view

★お手玉に追加ルールを加えてみたわ 73view

★竹馬、乗り方のコツを説明するわ 1578view

 

 

「な、なんかおじいちゃんみたいなちゃんねるだねっ……!」

「うわーこりゃいいねー。おじいちゃんねるの竹馬だけ妙に伸びてん、ねー」

「ふーん竹馬とかこういうの意外と…すんごいコマつくってぶつけて勝負させて100万viewとかわたし見たことあるし真剣なのが逆にウケたりぃ」

「そうなのそうなのよねー、そういうのガチでやると面白いのよねー、だーから何がヒットしていつ下駄や竹馬がシンデレラに化けるかわかんないのよびゅっ──その顔そのジト目はナニ? 大丈夫、鬼叉ちゃんねるは死んでないよ?」

「ま、下には下がいるし」

「木浪先輩…」

「おっ? あたしゃ戦闘もメンタルの保ち方もプロだ、よっ? この程度弱火弱火ぬるいぬるいぃぃ鬼叉ちゃんねるはここからの粘りが強いなりぃーははは」

 

ブク高ちゃんねるのジャックを継続し、女子高生たちと鬼叉ちゃんねるの生配信はまた少数のファンの期待に答えて再開された。

 

 

▽

▽

 

 

「くしゅっ…」

 

「どしたのです登別さん?」

 

「なんでもないわ部長、すこし冷えたみたい」

 

「風邪ひくとダメなのですよ! お手玉をつくるのをやめてこのブランケットを使うのです!」

 

「ええ、そうね。あっ」

 

「!? こら朱文金いきなり待つのです!!! 何度もいってるのっっ廊下を燃えながら泳いだらいけないの!!!」

 

噂話のくしゃみから、ランタンの灯まで────色々出ては飛び出してブク高の風紀はしだい荒れ模様に変わっていった。

 

赤いお魚と廊下ですれ違い落ちていった探偵帽子をその手に拾う、じっと立つピネスの目に対照的に慌ただしく吹き抜けたピンクの風に、

 

「あぁー、またなんかやってんなー」

 

「こらエッチアイ! こんな昼間から徘徊ほっつきするなら」

 

「んなことよりシュブンキン追いかけなくていいのか?」

 

「ナッ、なっ!? そうでした!!!」

 

「んし、こっちだぜ!」

「わかってるのです!! あ、廊下を走っちゃいけないのっ!!」

「それもまとめてあとでいいだろー! よっと、──ははは!」

 

落とした帽子は持ち主へと、ピンクの髪のアンテナを抑えながら強引に被せかえした。

 

「わぷっ!? こらっエッチアイ! あっ!! 靴をちゃんと履きなさいっっ風紀違反なのですっ!!!」

「え────ってちがうちがちが!?これそういうファッションのヤツだからーー!!!」

「嘘ですっっそんなファッションないのです!!!」

「あるんだってぇーー!!! くわしい執事のお墨付きでぇっ!! おっ、よしチャンスだ俺あっちから挟み込む!」

「わ、わかったのです靴服装のチェックは保留なのです!!! こらっ朱文金! もういいかげん風紀の納めどきなのですっっ!!!」

 

浦木幸と光角灯、ランタンへと戻すべくあそぶ朱文金との真昼間の追いかけっこはつづく。

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