異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
木浪の提案していた作戦であり切り札、ブク高で1番美人と名高いビーナス先輩を途中投入することが功を奏しviewer数は飛躍的に伸びた。
生配信にも関わらず生視聴者数が始めた当初の10倍の800viewerまで到達した。しかしまだまだ上には上がある、この『現役女子高生たちにちょっくら武術を教えてみたー!』配信の勢いに可能性を感じた一部のviewtuberはこれでは満足しなかった。
「すっごーーい!!! これガツってますね!!!」
「は? 気が早いし。ちょっとはガツってはいるけどここからが大変だから。このもうひと伸びいけそうでいけない感じぃ…(かと言って成功してる武術以外に切り替えるのはまだ早いし)」
「厳しくないですか木浪先輩!??」
「は? フツウだし。──なにかガツーンとガツる……」
一度カメラ外へとフレームアウトし、皆が鬼叉ちゃんねるに各々武術の基礎を学ぶなか、小休憩をしていた木浪とサンチュ。
勝手に戻ったり勝手に休憩したり、こうしたゆるさと真剣さを合わせた配信は初期より生徒個別に搭載する特別な小型カメラを増やし、臨場感のある友達目線の複数視点を切り替えながら見どころやハプニングをズームしなおもつづいている。
またひとつ面白そうなハプニングが起こりサンチュが勝手に運動場を走り戻る中。
ひろい運動グラウンドのはじっこに立ちどことなしに状況を眺める木浪は、何かもっとガツーンとガツるためのアイディアをあやふやに練り上げながら────はっ…と、見つけた。
木陰のベンチに座るその明らかにちがうオーラ。ブク高の黒の制服を纏いながらも、肌は白く輝き、その緑の黒髪はただの黒髪ではない。
遠方からもわかる肌艶、髪艶。
パーフェクトを超えた神にも等しい前髪パッツンな容姿が木陰にとまっている。
華のある女子生徒を大発見────ものすごいスピードで一本木の元へと駆けつけた木浪はたたずみ座るそのお方の手を引いた。
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『そのまま見てるだけでいいから』
そんな強引で大胆な誘いも、
木浪は知らない様子であったviewtubeのことをざっくり説明しながら、戸惑う黒髪ロングでパッツンさんを頷かせ、撮影の許可を得た。
「じゃーギャラリーも増えたことだし、今日のまとめとしてそろそろ演舞でもやろうか執事の小鬼ちゃん、いけそう?」
「ハイっ! 拳剣流でも師範とときどきやらせてもらっていたので、たぶん! 未熟ながら……いけます!」
「未熟じゃないさ、そのケンケンなんとかの技ってのはちゃんと血が通ってるから、ねっ!」
タガヤと池原、2人でやる演舞。脚技をつかった打ち合わせ通りの鏡合わせの動き、興がのりやがてささやかなアドリブをまじえて────。
練度の高い若者とベテラン、2人の見せる脚技の演舞はカメラ前で披露する見せ物としても十分な質と武を演じている。
つづいて弓の実演。クレー射撃で用いるようなディスクは横から投げ入れられた。
エンターテイメント性を持たせるため、弓矢を放ち幾つ撃ち落とせるかを女子生徒たちに競わせた。
「おー、キレイじゃん。なんかやってた?」
「やらずとも美しい所作は一度見ればだいたいわかるわ。その深みも努力も、一度に凝視────感心するより見なきゃいけないの、なぜなら美しいから」
美しい所作から矢は放たれた。
「ひゅー。あたしの美学がわかるとは、ブク高のマドンナ、いやビーナス、やるねー」
左右からちょうど重なった2枚のディスクを同時に射抜き、クリティカルヒットした心地よい音が割れて宙空に響く。
黄金の髪をかきあげながら、弓を次の者へと預けた。その自信に満ちたビーナスの背は拍手を送るギャラリーの方へとむかい元気にねだるハイタッチを次々に重ねていった。
「なっすぅーいえーい、」
「フフフ、いえーい」
ノリのいい木浪と意外とノレるビーナスはハイタッチを重ねた。
「あなたは? いえーい」
ビーナスはオレンジ髪の隣にいた黒髪の生徒へとハイタッチを待つ構えで、微笑んだ。
「い、いえーい?」
促されるがままに、美人と美人が手と手を合わせる、そんなふざけてくだけた中々お目にかかれない貴重な瞬間を木浪視点の小型カメラは生配信でバッチリお送りしている。
「ワタシはビーナス、ピーナッツいかが?」
「私は…」
「パッツン(ながれる弾幕コメントから採用)」
「ぬえ!? ぱっ!? ぱっ!? ぱっ…そ、そー私はパッツン!! そちらをいっ、いただきましょう」
黒髪パッツン髪の美人生徒は、木浪が勝手に決めた愛称〝パッツン〟を驚きつつも受け入れた。
ビーナスの手渡したピーナッツのお菓子を大きなひと袋ごと受け取る、そんななんら他愛のないやり取りでながれる配信のコメント欄は笑い加速していく。
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茶室は学校のグラウンドへと出張──
一本木の木陰の下で茶会は開かれた。
いい風景のなか、外でも茶を飲めるようにとこれまで稼いだDPを支払いくろまねき商店の開発部に頼みサーガが手に入れた二面だけ壁をした外の風景にとけあう簡易茶室をお披露目。
畳の上、木陰に憩い茶人の淹れる特別な茶をいただく。
パッツンもお気に召した。おいしいお茶と和の雰囲気を嗜み、開放感のある茶の部屋からさわがしい声のきこえる外をそのうつくしき黒い瞳で眺めてみる。
巨大焼きおにぎりを巨大鉄板で焼く。大きなふたつの特別コテで鉄板の上下にまわった緒方と木浪、くろまねき店主ちひろと池原4人でおにぎりを返していく。
裏返って露わになった香ばしい焼き目はやはり──エンタメ。
その瞬間に2800もの同時視聴するビュアーたちのコメントは焼き弾ける。
もはやなりふり構わない。過去流行った緒方の動画をオマージュではなくさらに巨大化、さらなる資金力をもってしてパワーアップさせて焼き上げていく。
『現役女子高生たちにちょっくら武術を教えてみたー!』は、タイトルをそのままに第二部へと突入。武術で汗を垂れ流し、焼きおにぎりで汗を垂れ流す。もはや武術どことツッコまれても、勢いと火力で押し切るだけのパワーがこの…ジャックした〝ブク高ちゃんねる〟にはたしかにあった。
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昼間の井戸端会議からはじまった3時間を超える長尺の生配信は、それでもなお新規でお越しになったviewerは最後まで増え続けた。
無名のブク高ちゃんねるはその配信がガツーンとガツった度合いを表す、本日のTOP100ガッツ配信入りを果たすなど、無名らしからぬ成果をあげた。
あまりにも長尺になったためハプニングや珍場面名場面名言見どころは全て、ぎゅっと凝縮しつつ生配信の終わりに何本かの動画にわけて編集されており。
その編集しわけた中でも、群を抜いてview数をあげた一本のショート動画があった。
「木浪せんぱいこれって結局ぅー…」
「は? 結局誰が出ていてだれがやるか、当たり前じゃん。viewtube」
「あははは…たしかに!!! viewtube!!! すっごーーいこんなにみんなでガツってるのはじめてぇー!!!」
1日も経たず総view数、78万view『現役女子高生がっ、ちょっくら竹馬してみたー!』がイチバン伸びていた。
内容は……ミントグリーンの髪をした生徒がグラウンドの中央にぽつりと突っ立ち、やけに細いそよ風のような声で竹馬の乗り方のコツを教えるというブク高ちゃんねるの過去作のオマージュで始まり。
次々とミントグリーンが竹馬で移動しながら竹馬仲間をスカウトし集め、最後にコツをしりレベルの上がったみんなで竹馬競争をするというものであった。
優勝したのはパッツン、やっと待望のパッツン選手が参加し、その実力のベールを脱いだと思ったらぶっち切りの1位────竹馬が空を飛んでいたと見紛うほどの速さで彼女は満面の笑顔でゴールテープを切った。
「でもそれだけじゃ、つまんないっしょ」
竹馬がガラスの靴に化ける、いや竹馬にシンデレラたちが乗っている。
みんなで撮った一本の動画がガツるという光景を目の当たりにした木浪智火瑠は、フッとひとりでスマホ画面に微笑んだ。
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ここは白く彩られたトレーニングルーム。
何の縁か誘われた、静寂のはじめましてのふたりぽっち。
水色作業着はいつもの準備運動を済ませて、銀色の相棒をその手に取り────振り返った。
「じゃ、ここからは番外編。────かるぅくバトルしようよ、竹馬パッツン様」
「どうしてこの私にソレを向けるのですか?」
一振りの剣を持たされたパッツンはただ構えずに突っ立ち、銀色の武器を自分へと向けたその理由を余裕のある平然な様子でたずねた。
「さっきから魔力疼かせてんの知ってる、よっ。おかげで配信中もずっと冷や汗、──トマラナイことある?? はは」
銀色の刺股に汗染みた帽子をひっかけくるくると回しながら、汗ばんだ肌と茶髪をした池原は笑っている。
「────────本日はとてもたのしいものでした。できればこのまま楽しいまま終わり、この先はきっと────楽しくはないようです」
パッツンは笑わない。池原とは対照的に非常に重々しい貫禄を見せている。この先が危うい橋だと、相手にわざわざ遠回しに示すように。
パッツンは池原という人を見つめて、その目もカラダも動じない。
ただ池原の肌触りに感じる彼女の魔力は────
「カメラを回しとく、楽しめる範囲でたのむ、よっ」
刺股にかけ、回していた帽子を再び被った。ツバをおさえながら、帽子に仕込まれたカメラを指差しアピールする。
池原は試すように提示する。
今の自分の実力と目の前の美しき相手の実力を、天秤にかけて──池原の頭が空っぽではないことを暗に示した。
「なるほど……今の私には理解できます、あなたたちの言うなまはいしん、びゅーちゅーぶ! いいでしょう────────。今度は私が子を楽しませてあげましょうっっ!!」
借りた剣を虚空にびゅびゅんと振り踊らせて、感触はオーケー。
切先を向けた美しき存在は、ニコっと微笑み──かかってくるように挑発した。
「ははは、そのゼンゼン楽しめない前提、ぶち壊すぅー……よッ!!!!」
出し惜しみはしない……水色の作業着はそのカラーを頭頂の帽子から塗り替えるように変えてみせた。
まだ魅せぬ〝異能発動〟、赤の特別な魔力に染まった池原はその身に宿した全身全霊と練り上げた技をもって美しき強者の向ける刃へと────イマ、銀色の顎で噛みついた。