異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
魔力を込めた剣と剣はぶつかり合い、火花とともに起きた緋色の小爆発に女の刃は弾かれた。
みせられた彼の剛剣にその手に剣を失った、先ほどの火の威力の余韻を味わう手ににぎり。
構えたまま肩で息をする少年のことを、飛んでいった借り物の剣にめもくれず上品な微笑みと余裕をもって女は見つめた。
「剣を合わせる度に魔力のつかいかたが良くなっていきます──あなたたちは似たもの師弟のようですね。ならば、いいでしょう。次はこれでいきます」
『
宙に浮かぶ黒く長いひれのような羽衣は、ひらひらと天より舞い降り、そのひれは浮かびながら彼女をとても高貴に飾っていく。
それはとてつもない魔力を帯びた、一枚の細い布。
ブク高の黒カラーの制服にそんなオプションものはない。
「風紀違反なのです!」
「たしかにアレは剣なんか比じゃない、よっ!」
よりいっそう黒く美しく佇む姿は、剣を捨てたからといって──
「第1形態突破、さすが一番弟子! あたしよりはおそいけどぉー! ははは」
「俺、いつ弟子にぃ!? ってゼンゼンそんなの突破した気なんてしねぇぞ!(クリティカルがまともにでる気がしねぇ…それでアレ…なんだ?)」
「いきますっ!!」
「いくのかよっ!? そっちから!!」
剣を捨てたからといってやがて構えた拳、そして羽衣をその美しきシルエットに載し引き連れて向かう拳その殺気は尋常ではない。
むしろ──
気圧されたピネスがいた地に、魔力は赤く咲く────
ひらひらとブク高女子の制服の元へと舞い戻った黒いひれ。そしてその彼にアピールするように突き出した神拳はチリ一つ汚れなく、煙一つながさない。
女神がわらっている。
爆風と塵を前から浴びたピネスは湯気立つ白いクレーターそして、その煙が晴れて微笑むナニかをその目にたしかに目撃した。
「これってさっきの謎クレーター!? まっ…まじかよ!?」
「いい目をしています、まだまだ動けそうですね」
「それって勘違いっただ危ないから避けただけ──のっっ!!?」
更なるクレーターは出来立てほやほや──さっきまでピネスが喋り息をしていたポイントに赤く抉られ咲き誇る。
向かってくる拳、圧倒的な熱量と殺気に対し、
たまらず向けた翠の剣は中距離から雷撃のマジックを放った。
「皆、そのように恐れていることを思い出させてくれます。しかし願なき信念なき攻撃には何も意味がない──もったいないことをするのですね」
「この差、やってられるヤツなのか…」
突然の失礼な雷にその身は見舞われた、それでも女神は笑っている。そのパッツンと揃えた前髪を崩さずに、焦り苦笑うピネスの顔を味わうように見つめながら。
戦いの激しさが穏やかな波になり訪れた長い長い静寂に、ピネスに募っていくのは焦燥と汗粒。
動かない方がよほどコワイものもこの世にはあるのだ。
考え事をしている……その目の前の黒い女子高生なるものを倒すための妄想だ。
ひりつく空気と見つめてくる烏の眼に、そんな妄想もない頭の算段も醒めていく……。
意味のない雷を放っても、次こそナニか怒りを買うことだろう。
避けてばかりではいずれその拳は遊ぶことをやめて、このカラダへとめり込むだろう。
彼女と絶賛戦いつづけているピネスには分かることであった。
止まらない汗に、それでも呼吸をしている。そうして人生一におもえるほど重い重い息をつづけていると────嗅ぎ取ってしまった。
「ん? さっきからここって……そういやニオイか? ……なんかこれってぇ…アレと似てないか? ……────っし、イチかバチか! なんとなくっ!」
「! ──やる気になりましたか!」
「おれは! ──これでヤル!!!」
翠を仕舞い、また緋色を抜き取り刃を前へと向ける。
活力を得て変わった目の色に、試合巧者の女子高生服が気付かないことはない。問うと返ってきたのは威勢の良い声と刃。
駆け出し向かって来たその黒と緋色の威風。剣を握る汗ばむ拳と、握り構えた渇いた拳。
ピネスが嗅ぎ取ったのは火のニオイ。
クレーターを埋めて隠しても隠しきれない部屋中にただようそのニオイは────追いかけていたどこか同じ────
やがて迫る剣と待つ拳はぶつかり合う。
触れ合った途端に熱量は増し、
赤く赤く魔力爆発そして────
まだまだ赤く膨らみ続ける、異常なほどに広がった円形爆炎のドームに呑み込まれた2人の姿に────
「おっ? おーー? これは、ひょっとして、よっ?
帽子のツバから感じとる、まだ生きていた異能の型のひとつ、鬼の-ism。
ダメージが溜まり崩れたのはどちらなのか、焼け映る赤き光景に池原がわからなかった事は目に見えてすぐに分かった。
熱き太陽ノドームを咲かせる魔法の衝突と霧散から、──陽気をかき集めた更なる熱き連続三日月ノ魔法。
赤い光景に、瞬く間に青い雷撃が鋭く走った。
それが何を意味するのかを、ギャラリーは声をあげて見守る。口角をひきつり笑う池原と、驚き目を開く光角。
炸裂した深きクリティカル、その並々ならぬイチゲキの行方は────
風に揺らめく穴あきのスカートで、ぼーっと目を見開き立ち尽くすのは、健在する黒きボロついた装い。
弾かれ尻餅をついていたのは浦木幸。
大きな魔法を二度臆せず叩き込んだものの、もはや剣の柄も手が痺れて持てない程に。硬いナニかの感触に阻まれ、その身は床へとあられもなく吹き飛ばされていた。
まだ健在である黒き存在に、もはやため息も出せないほどに。
さっきので全てを出し尽くす勢いで魔力を…利用できるであろうもの環境全てを利用し、──まさしくピネスは疲れ果てた。
しかし────
「馬鹿な…何をしてくれたの…」
様子がおかしい。一体何をしたというのであろうか。呟く彼女に、声も出せずピネスは見当がつかない。
この勝負の勝ち負けは立つ背と、情けない尻餅ではっきりとしてきている。それなのに、治らない鳥肌から汗が床へとしたたっていくのは何故なのか。なぞのプレッシャーがピネスの肌を刺激する。
ただ少々項垂れた面で、ゆっくりと近づく女がいる。
一歩、一歩、再度おとずれた静寂を支配するそのどこか暗い足音が尻餅をつく者へと迫る。
そのとき、
床鳴らす火の弾が一歩先の足元へと飛びかった。
「エッチアイ、浦木幸から離れるのですっ!!!」
持ち込んでいたランタンから、火の弾は威嚇するように連射されピネスと女その間のその地を線引くように刻んだ。
「馬鹿っ! それはさすがになにやってんの、よっ! ルール内のプロレスってのがわかんないのっ!」
「本気でしたのですっ!! イヤな不良の気でした!!」
ピンクのアンテナをいきり立たせて、光角灯は冗談ではない真剣顔で驚き少し怒っていた池原へと返した。
「あちゃー…今はちょっと本気っぽいよっ!!」
「と・に・か・くっ、風紀を乱すヒトはだれだろうと許しませんっっ!!!」
呆れを通り越して諭す池原が頭を抱えてしまう程の、追撃の言葉をトモルはしっかりと声にした。
「私がナニを乱している?? カムリ村のこのヌイがっ? 不良??」
「やばいよっ! そりゃ余計地雷だっ! さがってだまってなピンクのお馬鹿ちゃん!! ────あっ…魔力・な・い・ん・だったぁ……」
少しでも黒き怒りの矛先を堰き止めようとトモルの前で壁になり池原は銀の刺股を構えた。
が……今日の魔力はすでにない。
標的を変えたようにゆらゆらと近づく黒きネガティブなイヤな気に、池原は覚悟もできぬまま冗談なピンクと冗談ではない黒に板挟みにされてしまった。
もはや楽しめる範囲を過ぎているのかもしれない。今となっては池原の目にも疑いようがない天に伸びるほどの高まり迫る魔力とプレッシャーに、極限の緊張する魔力ゼロのカラダが息も対抗もできないほどに押しつぶされていく。
サイコロを投じて祈ることもできないような、プロレスを過ぎた最悪のシチュエーションに────
トツゼンに投じられた刃は緋色の爆炎を、黒い烏に横から水でも浴びせるように────。
己の漏らす魔力をも燃やし立つ火柱に黒い烏は飛び退いた。
「このっ!!? こっ…!!」
「ハァハァ…………なんとなくぅ…それはちがくね。あぁー……相手するのは俺じゃね? ハァ……そのぉ、さっきはわるかった…チカラの加減とかまだよくわからなくてさ? あ、DP払いでぇ…弁償するからさその制服と…タオル?(クロマネキでたぶん直るよなっ?)」
気まぐれか、遊びにきた朱文金は彼の元へと現れた。
示現した炎生物のチカラを借り投じられた緋色の剣のイチゲキは、畏れおおくもギャラリーに向いた黒い女子高生の気を彼へとひいた。
安っぽいタオルではない。
見るからにボロボロになった制服。そして浮かぶ黒いひらひらの羽衣は、僅かにほつれた部分がありその美しさは完璧ではない。
天に迸った火柱がイチゲキの魔力を使い果たし失せていく。
熱気の向こう側──
穴ボコに突き刺さる緋色の剣、
燃え盛り浮かぶ赤金魚に、
べたつく黒髪をかき……刃を捨て反省の言を述べる謎の男。
そろっていた前髪は乱れて…質のいい魔力の流れがよく見える、放たれた炎と雷撃に彼女のプライドを編み込んだ絶品の黒糸がほつれたのは間違いではないのだと。
今一度冷静にコントロールし、凝らし見る。
天戴武天ガイア、圧倒的なチカラをもつその神の目には何が映る────────。