異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
ホワイトゴーレムたちはいそいそと駆動音をひびかせて忙しい。
DPをかしこくせがみに来たゴーレムたちに人間たち3人は黒い指輪をかざし、必要経費を充填。
充填されたDPを資材へと変換し生成したセメントのようなモノを胸部から吐き出しながら、ホワイトゴーレムたちはトレーニングルームのクレーターとひび割れをまた白く補修していった。
闘いの熱量も冷めてきた。
その黒く美しいおおきな存在感は今はないが。
ピネスは今一度、緋色と緑の刃をX字に交差させながら眺めてみた。
やはり手触りや重量に何も問題はなく、戦闘で粉々になったはずのものがすっかり元通りのカタチへと戻っていた。
「ほんとーに剣、なおしてもらった…」
「よかったねぇー。ま、見上げたかしこい選択だ感心感心、粉々の剣じゃ今日の反省点もろくに振り返り振れないから、ねっ? あたしもきっとそーした、よ」
「いやなんかたぶん俺はそういう意味じゃなくて(ちょっと言ってみただけなんだけどな…)……ってじゃなくてソレぇ、なに? ビー玉? さっきから気になってたんすけど?」
白壁にもたれ座りながら、ちいさなビー玉のような透明を片手にのせた池原は片目に眺めている。
「あー。筒になってるここに入れんのよ。あたしがこのこで戦うのに改造してもらってんのを、さらにグレードアップしてもらったってこと。今までダンジョンじゃーこのビー玉が壊れたりしてたんだけど、さっきの健闘賞でいいの貰っちゃったーってね」
池原は銀の刺股棒の石突にあたる部分をかぽっと空気音を鳴らしながら開き、棒の中に仕込まれていた色とりどりのビー玉を三粒取り出して、既に特別透明な一粒の置かれてある手の平の上に足し並べた。
「へぇー…ってだからこれなんすか?」
かるく説明するように言うが、ピネスには分からず。
からかうつもりはないのか池原は素直にビー玉と刺股に関する説明をそのまま淡々とつづけた。
「あたしももったいぶるのももったいないぐらい疲れてるから簡単に言うよ。これを作ってくれたヒラメキちゃんが言うにはおたくのいらないレア武器を分解して溶かしてこうしてビー玉状にしてんの。そーそーそそ、その復活した命知らずくんの赤緑の剣にもあるランダムで固定された効果ってあるじゃん、攻撃力あげるーとか魔力あげるーとかの恩恵、そーそー正直いらないへんなのも運悪いとあるじゃん。だから言ってしまえば拾ってきたレア武器のいいとこだけ運良くまぁーるく取り出して、色々ここに詰め入れてあたしに相応しい武器を自作してるってわけよぉー」
ビー玉をのせていた片手をぎゅっととじて、────パッと開いた指と指の間にはぎっしり4つ。
それぞれ色と雰囲気のちがうカラフルビー玉が指の間に詰め込まれ、池原は自慢げにニヤリと笑みをつくった。
「ぅーーー……なるほど…? まじか、そんなことできんの??」
「できんよ。ま、うまい話には裏があって。この3つは上出来な方、失敗の山の中のひとつまみの成功例、らしいよっ」
「あぁー、なんかしらないけどドロップ武器みたいにハズレがあるっとことか? ────アレ、でも? 銀色の…ソレってぇ…………刺股ダブル改だよな? そのままレア武器テープで巻いて使えたけど??(ある意味アレって自作だよな?)」
「なんだぁ? 刺股陀仏スカイ?? ……あ、あたしの銀狼に変な牙つけてたのは君かぁーっ!! 本当の命知らずのようだねぇーーー」
「え? いやいやじゃなくてちが…俺だぁ! あぁー……最初10Fあたりのゴブリンとかミノタウロス倒すときにかなり魔法ガトリング砲として重宝しててぇ……──そのあと校長にぶん取られました!!! んで代わりがコイツで…」
「はははは!! あははは!!! あっ、あたしの銀狼が借りパクの借りパクされてたってわけだ。ふふふはは──ま、名前は油性で書かれてないみたいだし結果オーライ、それも結果的には巡り巡ってヒントになった感じだねぇー。まーまーでもあたしは用務員、暴漢退治の雑務で雇われた用務員が刃物はちょっとプロとして不味いでしょ。よっ!」
向けられたお茶目な銀の刺股棒の先端でほっぺをぷすり、ピネスはからかうようにやわく突きおされていく。
「いてっ…俺おもいっきしいてっ…つかってるの刃物だけど…って暴漢退治はいてっ用務員のいててっ…雑務なのか…? 痛てっ!!!」
男子生徒と用務員のちょっとばかり馬鹿なやり取りも、現場の補修作業にあたるホワイトゴーレムたちへの指示監督よりも。
ピンク髪の彼女は両手に受け皿のように持つ、逆さの探偵帽のナカをじっとのぞいている。
『古いランタンですか。……ランタンの灯はいつも迷える子たちに正しい道をおしえその限りの行く末までを安全に照らしだします────しかし、ときに迷いはさかせて燃やす。わたしはカムリ村の……ふふ、────不良なのかもしれません』
そんなわからない言葉をのこして、見慣れない黒髪の女生徒は去っていった。
風紀を違反したボロついた黒の制服とスカートは白い部屋にしろく消えていき、残された気まぐれなプレゼントの一端にそんなシーンをもやもやと光角灯は何度も繰り返しおもいだしていく。
「……納得いかないのです…? くぬぬ……」
イニシエランタンの灯は豪豪と激しくさかりナニかに反応している。
ベージュの探偵帽の裏にうかぶ、黒い布切れのミステリーはそこに────────
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▽撮影室③▽にて
ここはブク高の校舎に新しく増設された部屋、その名も撮影室③。
物資運搬と冷凍に協力してくれた冷蔵庫はドアから去っていき、
中央の円卓を3人、椅子で囲みながらものすごい冷気を覗き込む顔肌に浴びてゆく────
「さぁ食べろーー! お姉さんのおごり、よーー!」
「これ、食べる……のか?」
「おいそこの男のこ失礼じゃね? あたしの女子力舐めんな、よっ?」
鬼叉ちゃんねる@ブク高ちゃんねるとコラボ中、題名『★巨大パフェカントリーキャッスルパームⅡをつくって食べてみた!』カメラは回っている。
水色作業着の上から桜色の甘いエプロン姿などふざけているようにしか見えない見慣れないもの。
13とピンクで書かれた黒帽子には角が2本生えており、13悪魔ドルチェというちょっと高めのアイスチェーン店で池原がアルバイトしていたときにそのまま貰った称号がわりのブツであると、さほどいらない説明もされた。
しかしぐちゃぐちゃである。
悪魔的な見た目の巨大アイスパフェがそこにあった。
カントリーパームを31個使ったというそのクッキーアイス。
ココア色とバニラ色とチョコ色が透明な巨大ボウルに考えなく投げ入れられたかのように規則なく混在している。
そして底まで甘く満たされたボウルの表面……毒々しい色合いのカラフルな角が沢山ある。巨大半球の荒廃した大地に突き刺さり聳え立っており、鋭くて禍々しい……とても一筋縄で食べれるアイスには見えなかった。
女子力というよりは攻撃力。
おとなりの製作者の顔に似ているのかもしれない。
攻撃力の高そうなアイスパフェに食べ方さえわからず、少年の心の声は直に漏れ出た。
「なんとかなんなんぱーむつー……冷たっ!?」
後ろから不意の冷やしスプーン攻撃。
間抜け顔をしていたピネスのつかれた両目を忍び後ろから、2本のおおきなスプーンで冷やされた。
そしてぼーっとするピネスとトモル2人に手渡された、スプーン。もはやこれを食べるらしいと手持つ冷たい予感と自信ありげなお姉さんのドヤ顔に促されていく。
「よーし小鬼ちゃんたち祝勝会だーーー!!!」
「あぁー、なんか勝ったのかなぁ…」
「このパフェ、どこからも風紀違反なのです…」
「まぁ風紀は良さそうにはみえねぇな。なんかダンジョンみてぇなパフェ…そしてでけぇ…なんかとんがってるし」
1人意気揚々と掲げるスプーンに若者たちの反応は薄い。
1人だけカメラ意識とテンションの高いviewtuberとは違い、風紀の悪そうなパフェに生えた角をスプーンで小突き調べたりといまだにピネスとトモルは警戒を深める。
「どちかというと建築法違反、よっー。つべこべ言わずー、よっ!よっ!」
突如飴でコーティングされた角を手慣れたように次々と砕き、角の内部空洞に溜まっていた酸味のきいたフレーバーソースが外へと流れていく。
そして不意打ちで池原のスプーンに運ばれ未知のパフェを警戒する雛たちの口へと冷えたアイスは詰められた。
「「ちべたっ!? おっ、────おいしい!?」」
それはよくあるお菓子カントリーパームを用いたアイスパフェ。しかしただのアイスパフェではない、刺さっていた角は飽きさせないためのギミック、折ればだくだくと流れ出す各種フレーバーソース。
チョコレートやオレンジ、ブラッドオレンジ、ラズベリーにかぼちゃ、etc。
カロリーのやばそうな悪魔的な見た目とは裏腹に、味のバランスは考えられており楽しく飽きのこない一品の完成度を成していた。
「はははははあたしゃ戦闘とデカパフェのプロ、よっ! よっ!」
評価はまさかの『おいしい!?』
やらせではない初々しい反応に、viewtuberのテンションは上り続け、また雛たちに餌を与えていく。
疲れた体にそのボリュームと飽きのこない甘さが良かったのか、その後巨大パフェは透明ボウルを銀色のスプーンたちに仲良く掘削探索され底まで到達、────完食された。
パフェ制作シーンはおまけのダイジェストで、そして完食の始終までちゃんと食べた証拠のようにノーカットで上げられた動画、
『★巨大パフェカントリーキャッスルパームⅡをつくって食べてみた!』は、
ほどほどインパクトのある悪魔的ダンジョンパフェとして3日で12万viewを記録した。
鬼叉ちゃんねるの池原がうかがい後でされたイチビュアー木浪智火瑠の動画分析によると……新メンバーの小鬼の2人の食べっぷりと食べ疲れた様子もなく徐々にはしゃいでいく3人の雰囲気もそこそこの好評と高評価の要因だったようだ。