異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
▽不黒高等学校、東の図書館▽にて
登別海は不思議なひとだ。
学校の成績はいつの頃からかいつもALL4をとるようになり、普通の生徒より全てをそつなくこなすことが得意であり、取り立てて賢すぎるというわけではない。途中で勉学に飽きてしまうのか、いつもALL4。
高校生にしてはどこか物事を一歩後ろから達観しているがそれでいて賢ぶらず面白いことが好きだという。
ただ彼女のいうその面白さはすこし特殊である。
追加ルールといい、既存の遊びに手を加えてまた新しい遊びを生み出すなど変わったことをする。特にカードゲーム、ボードゲーム、じゃんけん、竹馬、お手玉、昔の遊びなどもよくする。
近所のホームセンターで仕入れたという雑学の数々は嘘か真かよく分からないが、するすると彼女の口から発せられてゆき、落ち着いた理知的な雰囲気もあいまってもっともらしくも聞こえる。
ダンジョンにおける戦闘の面でも冷静沈着、強敵であった黒騎士相手にも皆の異能の使いどころを思案しながら勝利へとただしく導いた。ピネスにとっては同じ高校の女子ながら校長並、用務員以上の大人びた信頼感がある。また校長にとっても彼女をブク高の秘密兵器と称するほどにその普段は秘められし能力を買っている。
そして風紀委員部でもある登別海は光角灯と主に部室で共に行動、さらに校内の巡回、一部生徒の風紀を正す……などの仕事を日頃からこころよく手伝っている。
ピネスはさがしていた恐竜図鑑を本棚からなんとなくてにとり、そのできた隙間から向こう側にうつるミントグリーン髪の姿を眺めていた。
こっそりと覗き見るようなその本棚の穴から──ぎろり。
不意に覗いて見つめ合った藤色の瞳にピネスは後ろに跳ね飛んだ。
何かただならぬ衝突音が響き、登別海は覗いていた向こう側へと駆けつけた。
「図書館は静かにつかわないと光角部長がとんでくるわ、浦木くん」
「いててて……あぁーすまねぇ…ってさすがのコズミもシュブンキン案件以外ではとんではこねぇだろうけど…静かにつかおうとは…おもう、いてて……」
尻餅をつき転んだピネスへと、本棚から本の雨が降り注ぎ落ち葉のように堆積した。
静かとはほど遠い光景に、全国の図書館の普遍的なルール、当たり前のことをこのタイミングで言われても──ピネスはただ頭や体が痛い。
冗談か、からかったつもりなのか、もう見慣れた普通のクールな表情をした登別のことは分からないが、ピネスは今後学校の図書館は静かにつかおうと災難が降り注いだカラダにかるくちかった。
「ん、浦木くん──それは?」
「え? いてっ────…あぁー、コイツか。あぁーっと…アレ、アレだ、ちんしゅつきばつっていうのかな? とにかくアレだ!(えーっと、なんだっけ…?)」
頭にぐらついていた本が落ちてきた。
しかしそれは本ではなかった。
ピネスはそれを目にしたときには、それが何か思い出したように分かった。
だが、それが何であるかは喉元までは分かってはいるものの……上手く言い表せず。
とりあえずピネスは白いそれを登別へと手渡した。
「うん、神出鬼没だと思うわ、──いいの? ありがと。これは、────……黒い……ジグソーピース?」
ピネスから受け取った一冊の本ほどの大きさの白、興味心から色々と触り探っていくもののしかしどうやっても開かない。
何の変哲もなさそうなボタンも切れ目もないそれに、思い立った登別が魔力を流してみると────
不思議と開かれた中には、絵柄もなにもない黒いジグソーピースが無造作に詰め込まれていた。
▼▼
▽▽
「不思議ね、魔力をうまく使わないと解けないジグソーパズル、つくられた絵を完成させるというより自分で次々と練り出してつなげてゆく。白い箱を開けたときに最初にひとつだけあった色付いたピースの情報から未知のつづきを推測してつくるというふしぎな感覚だったわ」
「あぁー、ぅー……そうだなやっぱ不思議だ。しかしなんか今回はいつもよりうまくいった感じがするな? これって、女子の顔? 茶髪の…なんだろうな? まさか戦闘用務員のあの方ではねぇよなこれ…?」
「そうね、用務員さんかどうかはわからないけど。格好や髪型は現代…ブク高の生徒なのかも」
「ブク高の生徒? あぁー、そうか…もな。でもなんだろうな、なんかちょっと怖い物を見たって感じの顔だぜ?」
黒いジグソーピースに魔力を込め色付けながら作られた絵は、茶髪の女子生徒の顔であった。
しかし完成したそのジグソーパズルの絵の女性は少し不安げな表情をしているようにピネスには思えた。
登別もピネスの言ったことに同調しその絵の女性があまりいい表情には思えなかった。
「そう、私も明るいものではないとおもうわ。──浦木くんはこの女性の絵を他にもつくったことはある?」
「え? ジグソーでか? いや…ないと思うけど? 俺のときはたしかそうだな……なんかえーっと…そうだ! 荒野っぽいとこで竜巻にのまれた知らない鎧兜の男たちのいかにも痛そうな光景だったり、あぁー、あとなんだなんか馬みたいな生き物と男がいてその男が赤い熱いのをハンマーで叩いてぇ」
「鍛冶師ね、きっと竜巻の災厄にみまわれた鎧兜の兵士たち、そして鍛冶師が……あ、こわれた馬の蹄鉄をつくっているんじゃないかしら? なにかしら? なにか一連のたたかいの歴史なのかもしれないわ、そっちの方がファンタジー要素が豊かで紐解いていくぶんには面白そうね」
「まったく俺の願ったものでもなんでもないから面白いかどうかはわかんねぇけど……これってもしかしてぇアレか? できるのがひとによって違うのか?」
「そうね、きっと最初に白い箱を開けたときの性別やあそぶ人数、魔力の具合なんかで出来上がる絵が違うのかも、まだ私は一度目だから推測するのは早いけどそんな気がするわ」
「なんか単純だけどそーだとかなりすごいなこのジグソー……でもまぁ、絵はなんにしろ、学校でえっと…シンシュツキボツ! に、見つけたらラッキーって感じのヤツなんだよな」
「そうね、神出鬼没。繋いで遊んでいただけでも内在魔力が底から鍛えられていくのがすこし分かるわ。──うん。面白かったわ。またこれ、誘ってくれる?」
「あぁー、いいぜ? って消えてる!? ……まぁまた、み、見つかったら、あぁー、PINEする!!」
「ええ、たのしみにしてるわ浦木くん」
ピネスが登別と話し込んでいるとジグソーパズルはいつの間にか忽然と姿を消していた。
浦木幸は登別海とまたいっしょにミステリアスなジグソーパズルで遊ぶことを約束したのであった。
ジグソーパズルを完成させた浦木幸と登別海の内在魔力量が、すこし上がった。