※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記   作:山下敬雄

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「────────なのです」

 

「なにっ? ふむ……見覚え…間違いはないか?」

 

「そうにちがいないの。校長先生…」

 

光角灯はすこし不安気な顔をしている。

彼女の中の善悪の判断と、ブク高にとっての善悪、維持し正すべき失うことのできない風紀……そのバランスを取ることは風紀委員部部長の彼女にはできない。

判断し仮眠室のベッドの上へとはこび寝かせたもののバランスを取る、今後取れる保証がないのだ。

 

それでも彼女が砕けた黒い廊下から白いベッドのここまで、気付いてしまったことを包み隠さず話したのは────

 

「トモリー、何もいらぬ心配はいらない。あいわかった──全てわたしに任せておけ。このスペシャルなブク高のトップ、校長先生に!」

 

眼帯はときに隠しときに脱ぎ捨てるもの。

秘められし灰色の瞳は秘めているだけでは、役に立たない。

 

魔力の流れを診断。

2冊目のタコイカサブ学習帳を併用、ひらき、情報を書き込んでいく。

 

不黒文はしかと診る、────見る。

 

ブレザーを被せられた裸体、その淡髪と瞑る端正な顔立ちの生徒を、解放せし特別な瞳で────────。

 

 

 

 

 

 

▼▼

▽▽

 

 

 

 

 

校長室に訪れたピネスは校長へと、ちゃいろのブックを提出した。

 

「うむ、ご苦労だった」

 

ふたつ目のブックを手に入れた。

つまりみどりのダンジョンにつづいて二つ目、ちゃいろのダンジョンをクリアした証である。

 

ひび割れた石表紙の本を手に取り鑑賞しながら、不黒文はまた無言のにやにやタイムを始めている。

 

「で、あのぉ…これからやっぱあのさいしょのダンジョンに」

 

「うむ。────そろそろつづきと行きたいが、まぁ焦るな。今はまだ、そうだな…………目覚めのときでは、ないっ。ふっ」

 

「め、めざめ? まだってぇことは…」

 

 

 

今度の舞台は薄暗い体育倉庫。

男子生徒が跳び箱を何段かずつどかした、その中に渦巻くのは────すっごく茶色。

 

「DPを支払い新たなダンジョンを解放! 名付けて、とびばこのダンジョンだ!」

 

「だからなんで増やすんだぁ!? なんでとびばこぉ!?のなかにダンジョンがっ!!」

 

「もちろんキミたちの成長速度が段飛ばしでぇえええ────はやいからだ! こげちゃいろのここが最適なダンジョンかどうかまた調査する必要があるな、ふっふー」

 

三段ほどあった跳び箱の腰かけに唖然としながら座っていた男子生徒の頭を、飛び越えた。

体育マットにごろんと前転着地した不黒文校長はテンションが高い、振り返りつつ親指をたて男子へとふぅーちゃんスマイルを魅せる始末。

 

「うわっと?? 成長って……してますか? 俺も?」

 

「うむ、ピネスくんはダンジョンにハマったか?」

 

かいていない汗をさわやかな仕草でぬぐいながら、プラチナ髪をなびかせた校長はそんなことをピネスへと問うた。

 

「え? いきなり?? ハマってはないっすけど、ぅーーなんつぅか……あ。数学よりはハマってるかも…です」

 

「ははは、それはいい好きこそものの上手なれというからな。おそらくキミにとってはダンジョンは数学よりも…いやダメだァ!! ダンジョンの前に抜き打ち数学小テストだ! 2-D浦木幸、たわけぇ!!!」

 

「ぬきう? ええ!? なんでだぁ!?」

 

突飛もない問から、みちびかれた突飛もない答え。

抜き打ち数学小テスト、それは男子生徒にとって抜き打ちも数学も小テストもぜんぶ悪夢のようなことばのピース。

校長のやわらかい笑顔はそこにない、威勢のいい声が体育倉庫に反響している。

びしっと指差されたとけそうな絶望顔の浦木幸は、これを彼女のいつもの冗談ではない避けられないイベントと知らされてしまうのであった。

 

 

 

 

▼

▽

 

 

 

バトル会場は厳正な審査の結果2-Dクラスルーム、彼と彼女の数学バトルはとつぜんに────

 

 

□抜き打ち数学小テスト(100点満点)

 

2-D浦木幸 32点

 

校長不黒文 28点

□

 

 

「……っしゃーー! 勝った! 勝ったぞぉー!!」

 

重い重かった椅子を尻でかるがると飛ばし、爆発するように喜び立ち上がっていたのは2-D浦木幸。

彼に通いなれた座りなれたホームの利点があったからかどうかはわからない、しかし強敵校長先生を相手に4点差をつけこの数学バトルを制した。

 

2人のマークシートを回収したオレンジ髪の試験官はクレーム対応のために一応もう一度2人の答案をジト目でしっかりと確認するも────両手をさっぱりとひらいて軽く溜息をついた。

 

「なにこれ馬鹿みたいな勝ち方、あとほんとにブク校の校長なの? そっくりだったり?(どっちも勘でやってない? マークシート)」

 

「うるさいっ学校の校長先生に数学などいるかぁ!!」

 

「「えぇ??」」

 

思わず声をそろえて校長先生のまさかの発言に、ピネスと木浪はおどろき困惑した。

しかし本気で負けたことが悔しそうに机にプラチナ髪ががっくりとうなだれている。逆に校長の本気度がうかがえた此度の勝負であった。

 

「えぇ…っと、ま、これで約束通り数学のテストは一生免除ですよね! せんせい!!」

 

「は? はーぬけずるっ」

 

「ずるくないさ、これは真剣勝負だからな!」

 

「なんであんたが校長みたいなしゃべりかたになってんの」

 

数学のテスト一生免除、まさかの悪魔のような契約、約束を校長としていたことを堂々ハキハキと明かしたピネス。

何故かクールぶった校長のしゃべり方を真似るまで、大金星にテンションを高め普段はやらない行動をとりだした。

 

「ぐぬぅー……ピっ、ピネスくんそれとこれとはまた別のうんたらかんたらのにとうへんさんかっけいのはじっこのかくどがかくかくしかじかでぇーだなぁはははは」

 

「え、嘘ついたんすか」

 

わからぬ呪文を唱え出し笑いおどけだした校長に対して、男子生徒の顔はなんともすんとも笑っていない。

それは校長先生に向けてはいけない種類の目だと、教壇からジト目でウォッチングしていた木浪は勝利の味をしめたピネスの豹変ぶりに苦笑い……。

 

「ぎ、ぎくっ! ごほん!! ──うっ、嘘ではないぞだがアレだ一度冷静に考えてみろピネスくぅん。イチ生徒であり現役のキミと校長というすんごい偉い立場のわたしが数学の小テストの点数で勝負などうんたらかんたらのぴたごらすそれでもちきゅうはえんしゅうりついくぞっ3.1415926535────その目をやめたまえピネスくん、それは校長せんせーを今にも石にかえうるゴルゴンの目だ…はぁ…しかたがないキミのがんばりとわたしを見つめるそこまでのッ熱意を加味して特例で…」

 

「ダメなのーーーーー! エッチアイそんなズルは私が許さないのです!!」

「そうだぞ何を絶不調のふぅーちゃん相手の4点差ぐらいで調子に乗っているゥゥゥこの不良男子が!!! よしこの校長先生に免除などをもちかける悪知恵をはたらく生徒にはこれから毎日数学の小テストと数犬(すうドッグ)の刑決定だ!!! そのわたしをからかうほどに暇をもてあました知恵を存分に活かしたまえーはっはっはっふっふーーーー!!!」

 

痛いゴルゴンアイに耐えながらもぼそぼそ唱えていたのは呪文でも円周率でもない、机の下でブラインド入力するふぅーちゃんスマホからのおともだち召喚。

急に2-Dの教室に現れた風紀委員部部長の威を借りて、校長の威厳はサプライズどさくさに乗じて復活した。

即座にやられて縮こまっていたフラストレーションを爆発させ、言葉のノリで刑を下すまで────さっきまであったしおらしさの数値をゼロにした不黒文の突然の反撃がとまらない。

 

「ぬぇ!? なんでコズミが!? えは!? 数学が毎日ぃ!? すーどっぐの刑!?? なんだそれぇ!?? そんなりふじ……勝ったのはお」

 

「覚悟するのです!!!」

「覚悟したまえ!!!」

「覚悟なんじゃん」

 

「うそだろーーーーーー!!!」

 

幻の勝利に調子に乗った末、劣勢になったことに気付かない彼には味方はいない。

覚悟をともにするピンク、プラチナ、オレンジの女子たちは彼にとって重すぎる毎日数学の刑を下した。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

▽▽▽

 

 

 

 

 

硬い枕の上で目覚めると、

 

羊がいた。

 

子羊だ。

 

子羊が小テストを美味しそうに食べている。

 

鳴き声は〝めぇー〟

 

やはり羊だ。

 

 

「なんだ夢だったか」

 

「数学の小テストが毎日なんてダンジョンよりありえないもんな。ははは」

 

「おっ、おー、うまいか! あぁー、じゃんじゃん食えーー!」

 

むしゃむしゃシュレッダーいらず。シュレッダーより羊は罪悪感がない。

テスト用紙が食べられていくのはなんだかうれしいものだと、ピネスは夢心地に浮かれニヤけていた。

 

 

『って何やってんの、ばかぬけ』

 

「いてっ!?」

 

「さすがにそれはひどいんだけど」

 

「え」

 

突然頭をはたかれ、突然ひどいと言われてもピネスには分からない。

硬い枕に突っ伏してさっきまでにやけていたピネスが気配に振り返るとオレンジ髪、木浪がこわい顔をしていた。

 

「あのピンクの帽子の子、あんたのひどすぎる数学の点数を改善すんのに付きあってあげてたんじゃない? それをこんな風にするのマジありえないから」

 

「あ、────…そうだな……」

 

ピネスは突っ伏して寝ていた硬いそこが学習机であることを思い出した。

そしてぐさりと突き刺さった木浪のお叱りの言葉で、コズミにこのところ苦手な数学を時間のあるかぎり教えてもらっていたことも同時に────

 

「って何これかわいい」

 

「おぅっ…てお前も食わせてんじゃねぇか! 木浪!」

 

実は木浪はピネスとともに毎日数学の刑に処されていた。

ピネスほど点数は悲惨ではないが、それでも成績は下から数えた方がはやくよろしくはないという校長の聖なる独断で彼女にも無事執行されていた。

 

そんな木浪がかわいらしい子羊にぺらぺらの似たような〝餌〟をあげていた。

 

「は? だって解いたらただの紙じゃん、そして羊は紙をたべる、これ完全犯罪」

 

「おい……さっきの俺に言ってたことは(完全犯罪ってもうそれ…)」

 

「じゃ食わせたら?」

 

「さっきの話で食わせれるか! ってそれよりなんで羊がいんだ?」

 

「さぁ、寝ぼけて羊数えすぎたんじゃないはーぬけ」

 

「あぁーたまにかぞえ…っておまえも寝てた? その髪」

 

「は寝てないし、ほわぁーー…」

 

「……でもなんかこの羊」

「うん、」

 

 

「「しかくくねっ?」」

 

 

見合って頷いたぼさぼさ髪は声を揃えた。

小テストをむしゃむしゃと美味しそうに食べる…そんな白くて羊っぽい生き物は便利でかわいらしいが、なんだか全体的にところどころしかくい。

仮眠室⑤あらため自習室に紛れ込んだ四角い子羊の正体とは────?

 

 

「あ、完全犯罪」

 

「おいっ」

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