異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
『こらこら待つのです! 廊下をそんなに転がってはいけないのーー!!!』
イワマジロが学校の廊下を転がっている。
「あぁー…………気のせいか? ほわぁー…」
そんなわけはない。
廊下を丸まり転がるアルマジロを追うピンク髪、やはりそんなもの、あるまじき光景だ。
きっと彼のアクビが〝ほわぁー…〟というように────……寝ぼけている。
ゴロゴロと通り過ぎていく果てにピンのないピンクのボーリングの音をききながら、
浦木幸、二度寝起きの2度目の朝はゆるりゆかいに始まった。
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なぜか飼うと言っていないペットの世話をしなければならなくなったこともあり。
南館の物置部屋からとりあえずドツジを連れてか元気に連れ出されてか……西館の風紀委員部の部室にやってきた。
まだピネスは半分寝ぼけているのか、〝羊とヤギのちがい〟がぼやっと気になりだし、ふらり…立ち寄ったしだいだ。
「────登別さんなら知ってたり? っていうのもこいつが羊かヤギかちょっとした小競り合いが勃発してて、だな。俺もあぁー、なんか知りたくてさ」
「おもしろそうね。…そうね────」
⬜︎ヤギとヒツジの見分け方
左ヤギ 右ヒツジ
角 うしろに少しカーブ 螺旋状
尻尾 短く上に真っ直ぐ 垂れ・長く成長(断尾する)
毛質 真っ直ぐ ごわごわもこもこ多い
顎髭 ある ない
肉髯 ある ない
なつき度 好奇心旺盛 おとなしい
鳴き声 高い やや低い
乳 あっさり 濃厚
⬜︎
登別海がそのへんのノートに書いた…
ひらいた左ページにみえるのがヤギの特徴、右ページがヒツジの特徴。
ピネスと登別はもんだいの実物を見て触りながら、一つ一つ確認していった。
子どものドツジであるからか、角や髭などはまだなかったが、一つ一つじっくりとクリアしていく内にある程度ヤギかヒツジかどちら側かのあたりはついた。
「え、ホームセンターってヤギ…売ってるの?」
「たまに売っているわ。ミニヤギだけど、ペットしてもなつくから飼いやすいとおもうわ」
「まじか…みっ、ミニヤギ?」
ピネスの感心と当たり前のように信頼する彼女の出典はわりと身近にあり豊富である。登別海のホームセンターで仕入れたという知識雑学の数々は、ヤギ羊にもおよぶらしい。
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ヤギ羊トークでなんと45分。1コマ分の学校の授業ほどに、広くすこしたのしく語られた。
そして再び廊下へと繰り出したピネスは、ばったりと見慣れた格好の女子に遭遇した。
「これはお嬢様の朝のカロリーなのであげられ……って、ひ、ひつじ!?? ぬへぇっ!?? ずみません羊はわたしダメで!? だからこれはお嬢様のアサのッッ!!!」
「あぁーこいつどうやらヤギっぽいらしい。登別さんがいうには好奇心旺盛なのがヤギで、あぁーっと、たしかひかえめなのが羊らしい」
「そ、そんな問題では…ヤギも羊もすこしダメなんですよぉー!!?」
「え? なんでだ? はは」
⬜︎羊と山羊とヤギと執事
羊は英語でシープ
ひつじ、シつじってことだと思うわ
そして羊とヤギはおなじ牛のなかまよ。
ほら一対の角が生えて反芻するから。
つまり、羊とヤギはきわめて近しい種ということね。
そういうことを執事さんはいいたいのだと思うわ。
⬜︎
すぐそこの廊下途中の騒ぎに歩きちかよった登別は鉛筆でノートに字を書き、状況を推測しピネスへと説明をした。
「なるほど、ってタガヤさんがダジャレ……? ────あ、ひょっとしてゲン担ぎか!」
「そうね? これも験担ぎと言えるとおもうわ。おそらく執事が羊それに近しいヤギを触ったりたべ──」
「私はそんなことは言っ…だいたい合ってますが……できればこの子をなんとか…していただけると……」
「思い出したわ、ヤギは羊より高い場所が好きよ。すぐ何かの上に登りたがるわ」
「じゃー、やっぱヤギか?」
「私の上じゃなくても……」
その元気さと初対面での謎の人懐っこさに気圧され倒れたタガヤの身の上で跳ねたり足踏み、高い声をあげて鳴くドツジへの理解ディテールがまた深まった。
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▽スペシャル仮眠室▽にて
道端のついでということで行く先行く先で仲間を増やしたピネスは、タガヤに案内され仕えるお嬢様のいる部屋まで遊びに来ていた。
長めの水色髪には相変わらず白いコカトリスのティアラを装備したままではあるものの、体調に問題はない。
シタンお嬢様の少し寝癖のついた髪を執事のタガヤが手慣れたように霧吹きと櫛で手入れお直ししていく。
そして絶賛毛の手入れをされているシタンもまた、櫛を手持ち、ドツジの白い毛をブラッシングしてあげている。
さらにドツジはシタンの朝食の余りをもらいながら、お嬢様以上のサービスを受けているという…よくわからない2人と1匹の列車が完成していた。
すこし遅めの穏やかな朝に、和やかな雰囲気。
1匹動物がいるとまた、人間たちの関係性や雰囲気は少々微笑ましく変わるものであった。
大人しく羊が足をたたみ休め、お嬢様の手から直接心地いいブラッシングを甘んじて受けていたそのとき────
ぽろっと、何かがお嬢様のベッドの上へと転がった。
──四角い何かだ。
静まり返る一同、ドツジの角ばっていた体の一部が不意に外れた……そんなありえないことが今まさに起こった。
「羊がバラバラに!? お嬢様! 見てはいけません!?」
「あぁー…戻してなおるか…?」
「トカゲの尻尾切りのようなものかしら? とくにピンチではないと思うけど」
「羊のっ……ニクっっ!!!♡♡」
「めぇ〜〜♪」
反応鳴き声はバラバラに、ベッド上にぽろりした四角いブロックのミステリーを水色髪のお嬢様は涎をふやし手にとって────未だ見ぬ美しく四角い可能性にその目を輝かせた。
ピネスの、ブク高の、なんとなく迎え進んだゆかいな朝は刻々と、妖しげなコクを増し……さらなる仲間を引き連れ美味しい予感のしたたる昼の部へとつづいてゆく。