異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
黒く彩られた赤空は────
紅黒く汚され、────もくもくと煙る線を描きながらやがて舞い落ちた。
「んなろぅ……いてぇ…な!」
高笑いを浮かべていた悪魔は笑うのをやめた。
打ち上げた黒花火から舞い落ちた、焼き汚されどまだ元気な物体を少し興味をもち凝視した。
(コイツが俺に見せたのは火と雷の2種。咄嗟に自分の技を出して、属性の似た剣で俺の黒不知火のダメージを単純に緩和したか? ……イヤ、──)
「バカそうな面でよくやるな。どういう手癖だ?」
「いきなりバカはねぇだろ……で、あんたなんなんだよ。ほんとにサンチュの兄ちゃんなのか!? サンチュをどうしたんだよ!? 明らかにゼンブやる事がおかしいだろ? こんな朝っぱらに!」
兄と話してから何故かグラウンドにべたっとチカラなく倒れるサンチュに、空まで打ち上げ爆破する過剰な演出と攻撃。
それにサンチュに兄はいないと、ピネスはサンチュとの雑談の記憶から黒い花火を味わいながら思い出した。
どれをとっても突如しれっと現れたこの黒尽くめの兄に、派手にやられたピネスはすっかり目が覚め改めて疑念をより抱くしかなかった。
「お前ごときに答える必要はねぇ。しかしそうだな、俺に一発でもまともにお前の技を当てれたら──教えてやろうか?」
まだ遊ぶつもりなのか、サンチュの兄と名乗る者はピネスを軽く笑いながらどういうつもりか挑発をする。
校長からくだされる無茶なイベントはこれまで数あれど、ここまで訳の分からないイベントと繋がらない笑い顔は初めてだと、ピネスは得体の知れないモノを見てしまったようなしぶい顔をした。
「なんだ……」
(まじでコイツなんなんだ……サンチュの用意したサプライズのラジオ体操って感じじゃ……ねぇな? まだやる…さっきのでもうシールド値がやべぇかんじだが……技……今の魔力じゃバーンファイアを至近のクリティカルでぶち込むぐらいしか、それかもう一回さっき浴びたあの黒いのを逆にブッ刺して使って────)
「お前、馬鹿だろ」
思考しながら、対峙し見ていた敵は遠くのポジションにいつの間にかいない。
急速接近、爆発的加速からピネスに近づいた笑う黒景色はそのまま──後ろ蹴り。
腹を貫くような鋭い蹴りを、咄嗟に間にかませた刃に受けた。
しかし前からの後ろ蹴りの次は、蹴りの衝撃で吹き飛んだピネスの後ろからの──蹴り。
急加速した戦闘スピードに呑まれ、ピネスはまたも空へと蹴飛ばされた。
「馬鹿が頭でやる勝算ってのはナァ! 絵に描いた餅を焼かれながら死んどけっ!!」
打ち上げるサマーソルトキックからの、
足技【
打ち上げ打ち付ける。蹴り飛ばし蹴り飛ばす。
ピネスののろまな思考など描く勝算など、全て吹き飛ばすような勢いでまた地の舞台へと叩き落とし──やがて鮮やかなオレンジ色に激しく爆発した。
「ガハッ!!?」
黒の次はオレンジ、彩る暴力的な魔力が敵を飾る。
起き上がったと思えば、再び地に叩きつけた。
ピネスの眠気は既に吹き飛んでいるが今度はもはや、起き上がれない。
肉体に叩き込まれた容赦と無駄のない連続アタックに、焼かれたピネスは地に伏したまま……。
模擬戦の域を超えているチカラの差を見せつけるようなド派手な攻撃が、早朝のグラウンドの静けさを殺し、砂を焼き焦がした。
満足いくデキであったのか突風のように暴れた兄はニヤリと笑い、どこからか取り出した赤本をゆるりと開き読み出した。
「フッ、まさに絵に描いたような面白いもんがココにもあったな、ちょーどいい。半分じゃねぇ全てを奪ってやる、悪魔的にな」
焦げた地にへばりつくピネスを一瞥し、黒い男の魔力が目に見えて高まっていく。
ページはぺらぺらと狂ったように横に流れ開かれていき、重たい要領を高速ロードをするかのように────────……
紙の擦れる音はやがて地を鳴らす轟音と変わる。
そしてトツジョ学校敷地外に出現したのは、
「なんだ…………ありゃ!?」
へばりつきながらも見上げたのは、校舎の屋上をもゆうに超す…………円柱。
ピネスの見たこともないシンプルながら不思議な形状の建物が、トツゼン其処に聳え立った。
唖然と口を開けたまま、天に連なりそうな特大のイベントを見上げるしかなかった。
「じゃあな間抜け、今日でこのフザけた学校はおしまいだ。最後に学べてよかったな? この俺の強さを。お前の弱さを。今の位置を砂でも噛みながら覚えておけ、これがあたらしく描かれた世界の理だ」
「はははは、せいぜい終わるまで這いつくばって見上げてろ。これからは人間でも神でもねぇ。
眠る姫をかつぎ連れ去る悪魔のように、
高笑いする悪魔的な存在はサンチュをかつぎ、見知った薄い赤本を狂ったようにオートマティックに捲りながら────ともに消えていった……。
「き、きえた……サンチュもアイツも……どこに……!?」
身を焦がす熱いダメージを引きずりながらもよろよろとやっとの思いで立ち上がった……
制服を裂かれみすぼらしく砂にまみれたピネスは、赤空をつらぬく白い塔をただただぼーっと見上げた。そんなグラウンドにとりのこされた彼に、派手な騒ぎにめざめたブク校の仲間たちが急ぎ駆け寄っていく。
連れ去られた後輩に、破壊的な早朝、そして聳え立つ太く巨大な円柱。
通いなれた校舎通いなれたダンジョンよりも衝撃的でミステリアス。
ブク校を揺るがすはじまりの地鳴りとともに、天に届く大きな悪魔の影が地で見上げるピネスたちを覆った。
訳が分からずとも……ただただ握る砂まみれのその剣は、ピネスにとってはじめての敗北の色にみえた。