異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
▽SP校長室▽にて
ありのまま見たもの気付いたこと体験したものをピネスは包み隠さず報告した。
ある種の殴られても仕方がないという覚悟をもって、告げたが────
「すまない、これは私のミスだ。実は知らぬ間にタコイカを奪われた。それに────」
「あたしのミスだねぇー。暴漢を制圧するのが用務員の勤めだからねぇ、蔓延していた呑気が祟ったかな」
大人の女性たちは次々とそう言い、責任は誰のものなのか分からなくなっていた。
ピネスは思った反応とちがい覚悟していた心のギャップから面を喰らうも、誰が何割を分割し負うか分からない責任のありかよりも疑問の方を先ずは解消したかった。
「アレは……なんなんすか? 外に立ってるあの円柱は……?」
「アレは円形校舎だ」
「えんけーこーしゃ?」
「昔なつかしの学校の校舎のことね。形状が円柱だから狭いところに建てるのに効率のいい校舎よ、今の時代は残っている方が珍しいけど。しゃれていると思うわ」
ピネスのオウム返しの言葉を登別はかるく説明した。
「ぅーー、なるほど。それが……一体?」
「簡潔に言うと完成間近の計画を逆手に取られたということだ。つまりアレはブク高の私有する味方陣地のダンジョンだ」
「しゆうするダンジョン?? 味方陣地?」
「ごほんっ────実はピネスくんとダンジョンを攻略し始めた初期の初期の方からコツコツとその日を夢見て推し進めていたのだが……まさかこういう不名誉なカタチで皆に発表することになるとはな。というのも順調に仲間のモンスターが増えてきたからな、いずれを見越してひろい牧場が必要だと思っていた。そして精を出し片っ端からモンスターたちの移住登録作業をしていたところ、あと寸手のところで私のスペシャルな目の入らぬところで計画をかっさらわれたみたいだな……ともかくアレは私の建てようと学習帳に描いていた外付けのダンジョンの完成品ほぼそのものだ!!」
オウム返しの質問は茶化さずに校長に説明されていく。
そして話し合ううちに校長室に集まったブレインたちは、あの塀の向こうに聳え立つ円形校舎が私有するダンジョンであり仲間モンスターを収容するための入れ物であるとおおまかに理解した。
生徒たちの暮らす既存の学校の校舎をちまちま改築していくより、外付けし明確にダンジョン性を高めたダンジョンをつくる方がいずれ役に立つという不黒文の緻密に練り上げていた判断でもあった。
そして解消されたみなの疑問は次の疑問へと────
「ふむ────……いないというよりはいなくなったが、正しい」
「いなくなった? それが帰ってきた?」
「そうだ。信じ難いが妹を迎えにといったところだろ。だが、サンチュのあ」
「どうすりゃ、ソイツのとこにいけますか校長先生」
「ん?」
「あぁー…まだ俺全然、全力じゃないんすよ。朝飯食べた分、魔力が全快した分、それにサンチュの分、ぅー…よくわかんねぇけどもっかい、まだこうして運よく生きてる分、サンチュの兄ちゃんだっていうアイツと戦って俺確かめてきます」
「へー、なかなか」
「ほぉ……」
ピネスからそんな前のめりな言葉と決意が出てくるとは思わず、用務員と校長は感嘆したような相槌を打った。
「なーにアレはダンジョンだ。私のダンジョン、ならば檻に入れたも同然! フッフ、裏技をちょちょいと入力すれば上までひとっとびだろう! このスペシャルな校長先生に任せるがいい。それともちろん──1人ではいかせない!」
校長はいつも通りの笑みを浮かべる、
ブク校のブレインたちの決意はひとつの熱意の元に固まった。
▼
▽
「ということで最後の作戦会議だ」
空腹と装備をととのえ、秘蔵のピンクの茸ポーションで失われた魔力を万全に満たす。
午前9:45、ということで皆が朝礼台にお立ちになられる校長先生の声のもと集められたのは広いグラウンド。
「うちの最高戦力の寝ぼけたピネスくんをボッコボコにしたサンチュのお兄ちゃんは決して侮れない。よってこれからブク校の全戦力で突っ込む!!! といいたいところだが」
「あのぉ! おれボッコボコってわけでは!!」
「黒花火がきれ~~~~に爆発した後見てたけどボッコボコだったよ。あと最高戦力はまだあたしだね校長様、ははっ」
「ってなんで見てて来ないんだ! その最高戦力が!」
「そりゃ昨日張り切りすぎてちょっと腰の辺りが、ねっ? いやー、そのぶん観察してたけど相手は侮れないよっ、ありゃプロかじってんね、あの蹴りのキレは上澄みの上澄みよあたしの目から見てもね。(あたしも朝弱いのよ)」
「まじか……(俺もだけど…)」
「ごほんっ! まぁまぁ、過ぎたことは仕方がない。事態は過去がおこした今と未来だ、いいか?」
「そーそー、はーぬけは戦ったけどダサくて弱くてまんまとサンチュ後輩ちゃんを連れ去られただけだし、ダサいだけ」
「そうだなって…なんも言い返せねぇが……」
「そんなことより急ぐべきなのです!! お兄さんとはいえ不法侵入の不良なのですよっ! 誘拐されたサンチュさんの身がもしかすると危ないのです!!」
「わたしもそーおもうけど、けど兄が妹を殺すわけないじゃん? テンションさがるし」
「そうね、ここで慌てては手のひらの上ね。希望的推測だけど最悪を想定するのは少しはやいわ」
「這いつくばって見上げてろってまで言われたんだ。わざわざ妹迎えにきて見下げたことはしねぇって俺も思う? 連れ去るってことは……少なくともそれぐらいに大事だってことだよ…な?」
「はーぬけ頭いいじゃん、そーそー、それだから悪人にも家族はいるでしょ。ヤルならはーぬけから片付けてるし」
「片付けって……たしかにそうだな…?」
「くぬぬぅー……それでも不良なのですよ! サンチュさんのことが第一ですっ!」
「妹をかわいがりたいのか。それか誘っているのか、な?」
「フッ、そうだな。そこで全力でサンチュ救出に向かいたい!! とはさっき言ったが。────こちらにも等しく守るべきものは他にもあるということもあってな」
「くぬぬぅー…学校の風紀なのです…」
「そうださすが風紀委員部部長。察するようにここからは安全と冒険のバランスを踏まえてそのギリギリを見極め戦力をしぶしぶ分けねばなるまい」
「いつもの学校の風紀を守る側とこの先の円形校舎のダンジョンの風紀を正す側の二手ね? よくある手として派手に動きまわったほうが釣りだす囮役の可能性もあるわ、それで妹さんを連れ去ったとも考えられるわね」
「ふむふむ、そうだ! ふふふ30分前の私もその可能性は考えた。これまでと同じように、いやすっかり侵入されてしまった今は様々な悪意が向けられる可能性が考えられるこれまで以上にやはり学校側にも戦える者を残さねばなるまい。そしてそれは風紀委員部、主にキミたちに指揮を任せたい」
「くぬぬぅー、もちろんそれも風紀委員部の大事な仕事なのです!!!」
「ふっふ話が早くて助かる。そこでこうなる未来を事前に読んだ私の考えるさいきょーさいこーの予知布陣がこれだ────!!!」
不黒文校長は、バンッと白扉を叩いた。
バトラーバトラーのキャラクター、シャイニーを模したマグネットとともにイチマイの紙が冷蔵庫へと貼り付けられた。
□
【サンチュ奪還・円形校舎ダンジョン攻略パーティー】
【学校風紀防衛パーティー】
モミジ
□
各々は群れたひよこのようにカラダの隙間から顔を出し合い、紙にかかれていた自分の名前を確認した。
「せんせー、なんで冷蔵庫に……」
「ちょうどいいからな。スペシャルな主婦の知恵だ。教育者とあるものグラウンドに黒板を持ってくるわけにはいかん」
「冷蔵庫もってくんのもどうなの、まむっすーの冷蔵庫、便利で勝手に動くけど」
「まっ、戦力のバランスはいいかな。はは、いつもより火力強めだけど」
「それではさっき言ったように風紀委員部2人は協力手分けしそちらで不在のわたし校長の代わりを勤めたまえ、ふっふ」
「紫檀お嬢様の事は一時お任せしました。サンチュさんには仲良くしてくれた恩があります、この足が動く限り精一杯努めさせてもらいます!(そろそろお嬢様は起床した頃合いですかね?)」
「もちろん生徒たちのことは等しく任せるのです!!! 不審者は見かけしだい、シュブンキンといっしょに正しますっ!!!」
「校内のパトロールと訳あって動けない生徒の補助、それに高所からの監視役、いろいろと異能のない生徒もまじえて協力をうながし割り当てる必要があるわね。そっちはわたしが早急に考えておくわ部長」
「もちろん了解したのです!!! 登別さん!」
「ここでヤらなきゃ、プロじゃないからねー。弟子がボコボコに失点した分は取り返すか。とすると君の出番、ないかもよぉー、ははっ」
「弟子とかアシスタントとかクリティカルなんとかとか…俺ってかわるのな……あぁっ!別に出番はなくたっていいけど、とにかくサンチュがあぁーっとなんだ……」
「サンチュちゃんお腹空かせてると思う、浦木くん。これ!!」
「そそ、それ緒方さんっ! そうだなきっとサンチュは朝飯も食ってねぇー!さんきゅっ! ────とにかくんなわけで……ブク高、いくぞーーー!!!」
「ピネスくんそれは私のとっていた至上のセリフだが!??」
「若いねぇっ」
「声でかっ…ま、いこっ!」
「ハイ、ブク高いきます!!!」
「うーーー、ならばァ! スペシャルブク高パーティー出撃だ!!!」
「だからもういってんじゃん、ならばもなにも」
「美しいもの、汚されるまえに取りにいきますわ」
「うおおおいくぞーーー!!!」
「ふっふぅーーー! さぁ乗り込むぞ取り返すぞ私の愛する生徒とダンジョンを!!! 全てな!!!」
託し託され、互いの熱を灯し合う。
防衛パーティーの生徒たちはのこされたグラウンドから彼彼女らの勇ましい背を見送っていく。
目覚めたシタンお嬢様は窓から手を振り、執事が振り返し深々とお辞儀をする。
おにぎりに特別な薬草茶に役立つ武器に厳選きのこ、茶人とコックとシスターは便利な異能冷蔵庫に万全をつめこんで。
屋上からハープの音はながれる、冒険心をかきたてる勇ましいカリブの海の音だ。
皆をおくる校舎のげんきな垂れ幕だけがない────
サンチュ奪還パーティーの6人と1台は塀の向こうの円形校舎を目指して、今、覚悟をあらたに見上げる先へと歩み始めた。