異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
剣1本、2本で勇猛に頂上を目指すやっとこさヤル気をみせたナイトがいれば、既に彼の手にいくぶんか救われた作品ちがいの武装した仲間のプリンセスもいる。
木浪智火瑠は、校長の自慢げな笑みとともに見上げるほどに聳え立つダンジョンへと、裏技と称した堂々の割り込み入場をしたものの……。
結果、飛ばしたスタート地点の見知らぬそこに立っていたときには……いきなり皆が消えぽつんと1人になっていた。
いつもの『は?』の言葉とそこそこの舌打ちを添えながらも、解決策が見当たらない。
とも分かれば彼女はそれ以上の不満は立ち止まりながらはたれず、タラタラとたらしながらもなんとか先へと進んでいた。
それはやはり囚われの
そしてのらりくらり迎えた10-H階層。
すいすいと進めたが、ソロでの戦闘回数は指折り片手で数えれるほどであった。このルートの敵対するモンスターの攻勢は特段激しいものではなかったのだ、それはそれで何か嫌な風が吹いている気がするもののオレンジ髪はただただある道を順調に走り抜け。
薄暗い舞台袖の通路を抜けた先に待っていたのは────
スポットライトは木目の舞台を照らし出す。
どこか懐かしい深い赤のカーテンは開かれずに、まだ閉じたまま。
きっと準備中であったのか、棒状のチョコ菓子をいくつかむさぼっていた、だがしかしメイクはバッチリの演者は座っていたパイプ椅子から不意にやってきた侵入者を横目に睨んだ。
謎のオフモードにお邪魔したものの、侵入者の女子高生はダンジョンに人がいるとは思わず。
事前の情報で聞かされていたのは連れ去られたサンチュとサンチュの兄がいるということ、サンチュがメイクを盛ってグレる小ピエロになるとは考えられないので、木浪はこう簡潔に反応した。
「は? だれ?」
「──!? そっちこそだれ!」
開けた場所に出たと思えば不意に現れた……モンスターではなさそうな黒ゴシック衣装の演者に、木浪はおどろくも。
「……まぁいいや、はぁつかれたんだけど」
顔カタチ衣装や小道具を全体的に凝視したのちに、興味が失せたのか、ゆっくりと舞台袖にもどり発見したパイプ椅子を持ってきて腰を下ろした。
さらに杖の先っぽのカーブで凝っていた肩首をもみほぐしていく。
リラックス、
リラックス、
見知らぬひろい部屋でリラックス、
────肌に突き刺さる視線のイロが変わった。
「まぁいいやじゃ、────【ないのよ】!!!」
拡声器から魔力を増幅し飛んできた声が、さっきまで尻とスカートを乗せていたパイプ椅子にぶつかり、ひしゃげさせる。
恨みのこもった視線に対して木浪は素早く反応し、あいさつ代わりの変わった攻撃を避けることに成功した。
「ムカつく仕草にムカつく髪色してるわね。アンタ殺す!」
「は? 誰に向かっていってるわけ?(声が、リアルに表示され飛んできた?)」
「アンタよ! 【ハイナミTV】!!! その腐ったオレンジ髪わたしが見逃すわけないでしょ!!」
募る存ぜぬ恨みは、殺すまで、穏やかではない。
天使色の拡声器からまた増幅した声が飛んできた。
やってきた【ハイナミ】を既に杖に練り上げていた魔力で木目の【ストーンウォール】を築き防ぎ、回転し向かってきた【T】と【V】を今度は杖をもちいた異能で釣り────物質に釣り合いをもたせた。
回転を止めふらふら揺れながら真っ直ぐに向かってきた【T】【V】の間を抜けていった。
「ネタばらしはやいんだけど萎える北風!!! そういうのは最後までとっとく!!! 早漏すぎるじゃん!!!」
「ガツると思ったときに
鈍い音を立てかち合った白い拡声器と杖、至近向き合った顔と顔はフツウの少女がしていいものではない。
お互いの武器と武器の衝撃で離れ合ったとき、拡声器にストックしていた魔力をつかい舞台上に作り上げた【嵐】の文字は、その場で静止し一画、一画崩れ去りながら文字の原形のないチリ嵐と化した。
ただの声ではないまさかの嵐のマジックに、吹き飛ばされた木浪の身はやってきたチリ礫を石の三角柱を作り上げ凌いだ。
荒々しい音色をかき鳴らし激しく削り穿たれるも、修練を重ねた【ストーンウォール×3】が、パワーを増幅するトライアングルの中にひそんだ木浪の身を横殴りの嵐から守った。
「……〝凡才〟って言っていいのは天才と幼馴染だけなんだけど、あんた覚悟────いーい?」
口から垂らす赤い涎を拭い、オレンジ髪を後ろにお団子ならぬ、おれんじを一個つくるようにヘアゴムで結んだ。
おへそは相手にまっすぐ、切っ先の曲がった杖を向けたハイナミTV。
その石柱からでてきた乱れたオレンジの表情にたじろぎ……また怒りの面に切り替えたHIGH小悪魔GEMを──眼光するどく挑発した。
viewtuber VS viewtuber。
一方的に向けられたHIGH小悪魔GEMの恨みと執着が生んだあまりにも早いネタばらしがなりふり構わぬ展開を加速させる。
一段と高い木目の場から見下ろせばわざわざ並べられたパイプ椅子の空席が目立つ。
撮影は既にいたるところに計算し設けられた隠しカメラを通しはじまっている……。
そして睨みをきかせる自称天才ブラックと他称凡才オレンジ。
人生最大にガツるであろうリアルとダンジョンの入り混じる特別な舞台、その赤幕が、今盛大にふく風に破かれ開かれた。