異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
折れた柱はもう何本目だろうか。
整えられていた闘いの舞台は壊れゆき、灰色に煙りながら不完全さを徐々に増していく。
「何を狙っているのかは知らないが、そのままつづけるのはおすすめはしない。命の使い方はこだわり足を取られるより常に見返りの大きい方がいい」
「はは、そうだね」
その身がかるく柱に打ちつけられたのはデジャブ。
紫のインクを被ったからといって単純な力の差はそれほど埋まらない。
むしろ反撃を受ければ自分にもデメリットもあるこの特殊魔力を纏ったスタイル。
マジックブレイクを引き起こすことに特化したこのスタイルは、諸刃の剣。
大剣をあやつるナイトに接近戦ではかなわず、池原の魔力総量が逆に減らされてしまった結果は明らかだ。
スーツナイトもわざわざ忠告する程に、これ以上しても蒔いた種子で花は咲くことはなく意味がない……稚拙な攻めに見えたということだ。
「じゃあこんなのは、どうかな────【愛-ism】」
そんなスーツナイトのご要望に応えてか、まだまだ終わりじゃない……帽子を上に飛ばしてまた深くかぶった。
すると池原は紫をあきらめたのか、今度はファンシーな桜色に染まっていった。
変わり種にも思える奇抜なカラーは、女神戦でしれっとピネスに協力し見せたときのような遠隔操作に長けたスタイル、すなわち────
「あたしが好きなキャラはあたしと限らないの、よっ!」
刺又はそのU字の先からいきなり桜色の弾を発射した。
しかし不意打ち気味に打ち出された二連弾は、一つは地にボールのように叩きつけられ、一つは大剣にタイミングよく両断された。
そして桜の花はパッとサプライズのくす玉が割られたように散りゆき、
鮮やかな目くらましに乗じて、裏に回った本体本命が仕掛けた。
しかし、変幻自在の武器をこれでもまだ足りず攻略できない。
【メタルツール】は魔力をつかわれ状況に応じたカタチを即座に成した。
それは柄を中央にした双頭剣、【リブラソード】である。
天秤のようにバランスの取れたソードに間に合わない死角はない。
またも池原のアタックは通じず、かるい体がいとも容易く吹き飛ばされる収穫ゼロ。
「そういった魔法の類も想定してこの武器にした。武器にくらべて派手なものはそれだけ消耗する、へばった魔術師ほどてご──」
ご高説を垂れようとした鎧兜を下から打ったのは、────地に眠っていたサプライズのくす玉。
「パラレル異能解放────【鬼愛-ism】」
「悪いけどあたしゃ魔王をたおすような天才魔術師じゃないのよ、女神に負けて年下に負けてあげく雇われ主にも負けちゃってあたしの強みは何なのかじっくり考えたから、ぜひともマァマァ味わって、ねっ!!」
この機を待っていたとばかり、池原は新しい情報を次々に投入。
桜色を維持しつつ、紫にマーブル状に染まり、ブク校の魔術師たちと訓練した巧みな魔力コントロールで、規則のないマーブル状はハッキリと半々のツートンカラーに整理された。
「意志を持つ攻撃……精霊術か!」
「ざーんねんっ、そんなに澄み切った女の子じゃ────ありません! しみったれた武闘家は、ねっ!」
つまり今の池原は【鬼-ism】と【愛-ism】どちらの尖った性能も並列して引き出す、いわばパラレル接続。今までのただのルールわけた異能をひとつずつ発揮する一本線のシリアル接続とはちがい、パラレル接続は二本。
これをちなんで《パラレル異能》と名付け、登別海の【チョキ×パー】のように複数のルールを同時に扱い掛け合わせる高等技術を池原叉鬼も学び成し遂げたのであった。
精霊術と見紛うほどに意志を持つように柱を跳ねる桜餅弾と、隙を見た刺又の接近戦のコンビネーションに打って変わって手を焼くのは、これまで完全に近い処理をしてきたスーツナイト。
そして逆に敵である池原叉鬼の完全はコレだと……弾と刺又の2人がかりにうたれながらナイトは
しかしこのような2種のチカラを使っているであろう高度な芸当、魔力がもたないいずれ消える切り札であるとも同時に悟る。
ダメージをもらいながらもナイトが選んだ選択肢は────
「受けきる、────来いっどこからでも」
勢いを増した彼女の全力……完全を完全に受けきることであった。
そして【メタルツール】も、今度は天秤剣をくずし防御に優れた大きな銀色のラウンドシールドに変形した。
当然これだけではないともナイトは見越した、これだけでは命を刈り取るには不十分、チェックメイトのイチゲキがどこかで来る……そう確信と期待をする。
跳弾していた桜色の魔法はやはり内蔵する魔力が失せ消え、どちらともの計算通りにツートンカラーの戦士が正面から突っ込んでくる。
これが最後の攻防ならば、最後に相応しい勇ましき小細工なしの正面突破。
触れ合う瞬間にどんな衝撃がきてどんな反応が起こるのか、常人より優れたその肉体で堂々たるナイトは盾を構える。
だが鉄兜から彼女を覗くナイトはぶつかった瞬間まで気付かない、これはチェックメイトではない。
布石の何手目かにすぎないことに。
《マジックブレイク》
一定以上の打撃を与え発動する【鬼-ism】の特性であり内在魔力が爆ぜる現象。
積もり積もっていたカウントダウンは今ここでゼロを迎えた──それは屈強なナイトの肉体の方ではなく、〝武器〟の方である。
狙っていたのは武器。
池原は女神同様にいくら打っても底の見えない不死身のナイトの方ではなく、ナイトの扱う武器の方が弱いことに気付いた。
さらにその武器は魔力伝導のいい変幻自在の武器メタルツール、ならば先に崩れるのはその特殊武器である。
「──!?」
「【怒-ism】アッタマってきたぜぇ、はは、いく、ゾっ!!!」
マジックブレイクしたメタルツールの銀は、魔力コントロールが著しくみだれ盾の形を保てず液体のように周囲に飛び散り爆ぜた。
そして盾を突破した用務員の次の一手は────真っ赤に染まる怒りのスタイル。
小細工不要の一番強い感情を露わにし、パワースタイルで突き抜ける。
武器を失ったナイトにパワーを上げた用務員が負けるはずがない。
テンション高ぶる足技と刺又術の連打が上空へと騎士を打ち上げていく。
「【
そして魔力で編んだ紐に繋げて打ち付けるは投げ技の【楽隕】。
地へと騎士は落ち、怒りのテンションそのままに池原は刺又を投げ捨て、さらに念を入れて地へとしっかり敵を拘束する。刺又本来の得意とする使い方が轟音の後に突き刺さった。
そして拘束したからには、──攻撃しなければならない。
「異能全開! 【
「よォォおおおおおおおおおおおお!!!」
腹、ヘソから捻りだすように生み出したのは特大の弾。
最後のカラーチェンジはエメラルドグリーンにキラキララッキーなお洒落を。
宙からボレーでとらえて蹴りだすのは、己と相手の感情にびしばし伝う確信のクリティカルボール。
「これがあたしの────────【エメラルド:エクスプロージョン】……なんて、ねっ」
【鬼-ism】
【愛-ism】
【鬼愛-ism】
【怒-ism】
そして
【幸-ism】
特大のクリティカルを
陽気と陰気はしっかりこねられ混ざり合い利用し合う、そして期待感はトメラレズ膨張する。
巨大魔力ドームを形成し爆発する翠の閃光は全力でひねりだした勝利のかがやき、