※この作品はR-18です。

固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~   作:レイジー

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第一六話 女は強し

「またあそぼーねー」

「誰がッ!? 二度とごめんだよッ!」

 

 翌日、早朝。

 クラウディアの身支度の音で目覚めて。

 服を着ようとしたが、洗っている途中だったり絞らずに机に投げた結果広がらずに塊になっていて。

 取り切れていないゲロと生乾きの匂いで最悪だった。

 仕方なく、ズボンは我慢して一時的に履いて服は焼却処分の上裸帰宅を決め込んだ。

 

「え~っ」

「え~、じゃありません! 断固ヤダ! じゃあな!」

 

 まだ日の昇らない頃、俺たちは別れた。

 というか、逃げた。

 

 あんなんトラウマなるわ!

 も~ヤダ、絶対ヤダ。

 そりゃ気持ち良かったけど? 色々新鮮だったけど?

 ……ヤダ!!

 

「にしても、女の子トコに転がり込んでばっかとはいえちゃんと自分の宿確保しといてよかった~」

 

 鍵空いてるなら普通に時間関係なく入ったんだけど、魔導錠があるから入れんのよなぁ。

 部屋借りてる名義に俺は入ってないからもう一本とかもムリだし。

 ん~、宿の近くで女探して連れ込むか?

 

「たでーまー。あ~、ようやくズボン脱げる。朝シャンするべ、シャンプーではないけど」

 

 比較的乾燥してる空気で日本よりは不快感少ないとはいえ、それでもやっぱ汗掻いて身体綺麗にしないのはないわ~。

 この国が風呂とか一般的でよかったよかった。

 魔術・魔道具のお陰でキレイな水がいっぱい使えるってサイコー。

 

「ふぅ……さっぱりした~」

 

 ……もう臭い残ってないよな?

 嗅覚麻痺してる? してないよね?

 ……もう一回洗うか。

 

 不安になり、一度お湯を全部捨ててから再び全身を石鹸で洗う。

 思えば昨日訓練をしたあと、そのまま飲みに行って、宿で軽くは洗ったがそれも途中で中断され。

 まともに身体を洗えていなかった。

 だからか洗った快感はとてつもなかった。

 

「もう一日休みたい……。――いやいや、ダメだダメだ。怠けたらダメ人間になる」

 

 洗脳して女遊びしまくってる時点でダメ人間だろ、って?

 ハハハ、旧時代の俺め、意識が古いぞぉ?

 そんな常識、この国にはない!

 まあ、流石に孕ませた挙句逃げるのはアウトだけど。

 

「あ~……【洗脳】でアラームするかぁ。あと2時間くらい……ぐぅ……」

 

 自らの意識の休止。

 周囲の音で目覚めることもなく、完全な安眠だ。

 実に快適である。

 

――――――――――

 

「くぁ……」

「寝不足ぅ? だからって加減はしないから」

「ヒイラギ~? 体調管理もちゃんとしないとダメだよ~?」

「あい……」

 

 何も言い返せねーや。

 

「……なあ。俺より遥か上位にいる2人から見て俺ってどれくらいの実力?」

「ん~、ちぐはぐ?」

「そうだなぁ。努力は見えるが平凡。目が良いだけ、って感じだなぁ」

 

 わかってはいたけど……俺ってダメというか平凡というか……。

 そうだよなぁ、勉強ばかりで筋トレとか隠れてできる範囲でしかしてこなかったから肉体は全然だし。

 運動神経も平凡だから練習がすぐ実を結ぶとかそういう主人公覚醒! みたいなのもないし。

 

「と、いうと? メイソンから」

「多分ヴィータの後半と重なると思うんだけど~。動き自体のセンスは悪くないのよね~。私たちが見せてるってのもあるんだけど、それを踏まえてちゃんとその場に応じて適切に戦えてるからさ。でも~、やっぱり見様見真似だから動きの理がわかってないかな~、って」

「……なるほど」

 

 言われて気づいたが、確かにそうだ。

 俺は見たまま、つまりシチュエーションに応じて再現をしているだけにすぎない。

 訓練をして生身での再現を試みたが、それだけでは不完全だった。

 自分での思考が足りない。

 攻撃を逸らし上げる、叩き落す。

 その区別は? そう問われたら答えられない。

 自分の体勢、相手の体勢、相手の長所(ぶき)、自分の手札。

 それらを考慮して『次の一手』を見据えるべきにもかかわらずそれができていない。

 ジグソーパズルでいえば俺は絵柄が見えているだけ、その組み合わせるピースの形状を把握できていないから同じ『空の絵柄』を提示された時に繋げるべきピースを選べなくなる。

 俺に必要なことの1つは、少ないピースから戦況を描く『白地戦況(ミルクパズル)』の訓練というワケだ。

 

「ヴィータは?」

「考えるセンスがねぇ! 以上!」

「あの、もう少し詳しくお願いできませんかねえ?」

「ヒイラギさ。お前、愚直に努力すれば報われるとかバカなコト考えてねぇよな?」

「え?」

「そりゃバカな凡人のすることだぞぉ? モンスターと戦うのが一番早く強くなれる方法な奴がいる、色んな奴と訓練することが一番な奴がいる、筋トレが一番な奴がいる。それぞれ強くなり方にも向き不向きがあるのによぉ。それ考えねぇで本気で強くなれると思ってんのかぁ?」

「――」

「ま、あとはメイソンと同じだねぇ」

 

 衝撃だった。

 自分の考えの浅さに嫌気がさした。

 その考え自体は、ヴィータの指摘は当然のモノ。

 というよりは俺自身知っていたこと。

 なぜなら、俺は勉強をしていたから。嫌というほど勉強をし、課せられ、続けてきた。

 成績を落とせば因果応報のごとく叱責が向けられ、それが嫌で、けれど縛られたままの人生も嫌で、だから効率的にいられるように勉強を工夫した。

 暗記を試し、朗読を試し、筆記を試し。

 そうして自分に合った勉強法を模索した。

 

 ……はッ!

 過去がイヤになって全部切り離したってか?

 甘ったれてんなぁ、俺……。

 ンなことしても消えねぇのに。

 これから生きていくなら全部含めて消化するべきなのに、吐き出そうってか?

 ……バカだなぁ。

 

「ん。わかった。ありがとな」

「?」

「?」

「勝手な感謝だ。気にすんな」

 

 ……おい。

 

「なんだその顔は」

「口先だけでありがたいとか思ってなさそうなヒイラギが!?」

「内心で自分以外の全てをバカにしてそうなヒイラギが!?」

「殴って良いかぁッ!? もしくは全力で調教して良いかぁッ!?」

「それは魅りょ――じゃなかった。遠慮する~」

「……面白そうだなぁ」

 

 あの、脅し的な言葉にノリ気にならないで?

 

「あのなぁ……俺だって感謝くらいするわい。他の人から受けた恩をちゃんと意識に入れないでどうすんだよ……受けた恩もそこから得られる経験も全部ふいになるじゃねえか」

「そういう部分はちゃんとわかってるんだねぇ?」

「ホント、意外だね~」

「気絶するまで犯して良いか~?!」

「……」

「……」

「ったく」

 

 いやぁ、にしてもこの辺のモンスター程度なら会話しながらでも普通に相手できるようになったな。

 まあ、俺の討伐タイムが圧倒的に遅いから待ってもらうはめにはなるんだけど。

 

「……ヒイラギ、今日いつもよりおかしくない?」

「思った。言動に歯止めが効いてないというか。ゲスなセリフがいつもより強くなってるというか」

「…………興奮する」

「え、メイソンってそういう……まあいいかぁ」

 

 ――ふぅ、ようやく討伐完了っ。

 これまで基本戦法にしてた一気に近づいて速攻、ってのは消耗が激しかったからこうやって確実に相手できる待ちの構えはワリと楽で良いな。

 あとはこれを練度高めていけばヨシッ。

 

「ん? 何話してんのさ」

「気にしないで~」

「なんでもない」

「ほ~ん。ま、女同士の会話に口は挟まんわ」

 

――――――――――

 

「ぴぃぇッ!?」

「どっ、どうしたの? ヒイラギ」

「ビックリしたぁ、いきなり何?」

「やっほー、調子はどうかな? ヒイラギくん」

 

 心が、コワレソウダヨ。

 

 思ったよりも早く探索が終わり、昼過ぎごろに地上へと戻り、ギルドへと帰ってきた俺たち。

 そんな俺たち――俺の前には見知った、身体のホクロの位置レベルで見知った巨体が立ち塞がっていた。

 

「ヤー、キョウハツカレタナー。モウ、カエッテ、ネヨウ! ソウシヨウ! ウン!!」

「待て待て待て」

「待とうか?」

「まあまあ」

 

 神様仏様。

 この世界なら龍神様、お星さま、お助け下さい。

 クズ行為は……改めませんがちょこちょこ人助けはしますので、開拓兵としての活動を通じて皆を守りますので、矮小なわたくしをお守りくださいませ……。

 

「さ、三人ともどうしたの、かな~?」

「話、しよっか?」

「ご飯まだだよねぇ?」

「どうしたの?」

「せめて……人目の少ないトコにしませんか……周囲の視線が……勘弁して」

 

 1人、背が高く特に目立ちやすく。

 そして3人の女に詰められる男が1人。

 人目が集まるのは当然だった。

 

「おい……マジか」

「ヤンチャすぎないか??」

「節操ねえな……」

「しかも1人は『ウミヘビ』のヴィータじゃねえか!?」

「あ~、前世話になったっていう?」

「そう、色々と世話にな」

 

 よう! 穴兄弟!

 でも顔はゼッテー見ないからな!

 なにせ見たら顔がよぎりかねない! 萎えるわッ。

 

「……仕方ないか~」

「しゃーねぇ」

「よくわかんないけど、わかった!」

「……ところで、なぜ俺にそこまで固執を? 気のせいじゃないよね? ね?!」

 

 俺は生憎と、図書室においてあったラノベの主人公みたいに鈍感ではない。

 流石に多少なりと好意を持たれた結果が、今ということはわかる。

 が、何故俺に好意を?

 という根本的な部分はわからない。

 

「ホントにわからないの?」

「うん」

「他の人と比べて気づくことない?」

「う~ん? 異世界人だしあまり比べても参考にならないかな、って。育った文化の違い程度にしか」

「可愛いから!」

「うん! 黙ろうか!」

 

 わからないって聞いてるんだから素直に教えてくれよな~。

 

「ヒイラギはさ。私たち女が男に求めるモノってわかるかな?」

「あ~……稼ぎだっけ? あと強さ」

「そう。基本はそこ。身重になった女は1人じゃ生きていけないから異性として相手するなら確実にそこは必要なの」

「現代(いま)だと国も街もしっかりしてるから基本は金だなぁ。万一のために力も評価項目だけど」

「あ、ビールくださ~い!」

「自由かよ……」

 

 この国の全体的な女性の男性に求める要素。

 聞いたことはあったが、いざこうして堂々と言われると調子が狂う。

 前だとやれ金だ、やれ顔だと一般化されているくせにそこを明確に口にすることは憚られる風習。

 けれど一切躊躇なく打算的な部分を言われるのは不思議な気分だった。

 

「でも、それだと俺は完全に範囲外じゃない? 稼ぎはまあまあ出てきたけど家族養えるほどかって言われたらそうでもないし、強さもザコ側の人間だし」

「今は、ね。アンタの評価項目はそこじゃない」

「それに稼ぎだの強さだのって言っても、俺多分フラフラ歩き回る人間だぞ?」

「ヒイラギの場合はさぁ、そうはいっても変なところで律儀だから金自体は入れるじゃん? さっきも言ったけど社会が無事な状況なら個人の強さはそこまで重要じゃなくなってきてるのさ」

「孕めって言うなら今からでも孕もうか?」

「やめて」

 

 誰か!?

 この酔っぱらいつつある自由人を回収して!

 

「で、アンタの良いところに戻るけど。ヒイラギ、アンタさ、開拓兵としてどこまで行きたいと思ってる?」

「どこまで、って……まあ、いずれは龍壁山脈越えて、行けるならどこまででも?」

「そこなの。普通、今どきはそんなこと考えないのがほとんどなの。そこそこ強くなって、そこそこ稼いで、安定した生活~ってね。大体の開拓兵が今以上を望んでない、龍壁山脈の先なんて見据えてない」

「えぇ……」

「言っとくけど、遠征開拓兵って潜在的な部分を考慮したら今の10倍はいるって言われてるからね?」

「今だとぉ……30くらいだったっけか」

「マジで? そんな少ないの? はえぇ……」

「あ~、多分私なれるな~」

「はいはい」

 

 そっかぁ?

 数が少ないから遠征の回数が少ないって聞いてたんだけど……。

 

「で、それが俺とどう繋がるの?」

「今度はアタシが聞くけど。ヒイラギって、これまでどれくらい絶望して立ち止まったことある?」

「……絶望して、立ち止まる? ……子どもの頃に1回? 実に情けない話だから聞かないでね」

 

 つか、俺の家庭環境なんて話したくない!

 

「そこだよ、そこ。強さの適性だ、才能だなんていうまやかしは後からどうとでもなる。けど『今以上』を望む強欲さは個人差がデカいんだ」

「そう?」

「ま、だから私たちはアンタを選んだってワケ」

「私はかわいかったからです!」

「……挫折しにくい、ってことか? いやぁ、俺ってそこまで心強くないぞ? 平凡平凡」

「ふッ」

「はんッ」

「鼻で!?」

「あはは~」

 

 どれだけいっても俺は凡人側の人間だと俺はずっと思っている。

 革新的な何かをもたらせる気はしないし、かといって誰かを集って切り拓ける英雄的素養もない。

 何がどうなろうとも、俺はあくまでもソロプレイヤー側。

 多少何かのきっかけでパーティを組んでも、それによって重大な何かを起こせはしない。

 

「ま、アンタがどう思おうと関係ないから。私たちはアンタが強くなると思ってるし、ちゃんと育てば中々の優良物件になると思ってる。打算よ、打算」

「でも、好きだろ? そう言われる方が」

「まあな」

「おかわり~!」

「……」

「……」

「……」

 

 ……うん。

 

「で、この女の人は?」

「き、昨日出会いました……酒場で……」

「お互い乱れに乱れて、泣き顔も見ました~!」

「な、泣いとらんわい!」

「泣いた? ヒイラギが? ……ちょっと詳しく」

「教えるんだ。内容次第で手を組もう」

「わ~ッ!? 話! 話戻そう?!」

 

 デマを流すんじゃありません!

 ……デマだよな?

 うん、デマです。

 

「俺を~、って部分はわかったけど。それで良いワケ? 節操ねーぞ?」

「知ってる~」

「なんなら既にルートヴィヒに1人手ぇつけたのいるし、現状でも狙ってるのは他にいるし、絶対増えるぞ?!」

「だろうねぇ」

「多分このまま進めばロクな男にならんぞ!?」

「ちゃんとその分のお金稼げれば良いんじゃなあい? ハーレム形成するなら空いてる人たちで多少の足りない分を補えるだろうし」

「いや、そこは平気。嫁にするならちゃんと稼ぎ考えつつ増やすから。……じゃなくて!? 増やすっていっても捨てる気ないから人数によっては一気にまとめて、とかなりかねないぞ?」

「まあ、そこは、譲歩するわ」

「アタシは平気~」

「え、独占したいんだけど。……まあ、効率的に泣かせられるかも?」

 

 あの、恐ろしいことサラッと言わないで?!

 

「ま、そういうことだから、さ」

「覚悟の準備をしようか」

「遠征開拓兵になれる程度には私も強いし、育つの手伝ってあげるよ~」

「…………あのさぁ? さっきから言ってるその話……マジ?」

「マジマジ~。昔出会い目的で登録したんだ~」

「昨日、力が強いのは種族柄って……」

「うん、そうだよ? 今のヒイラギくらいなら素の身体能力でも抑えられるだろうしね~」

 

 ……あの、サラッと恐ろしい真実告げるのやめてもろて。

 何? じゃあ、何?

 昨日、俺普通に【洗脳】打ち破られて衛兵さんにお世話になりまーす、ってなる可能性あったってこと?

 ――――っべー……。

 

「ちなみに今まで何してたの? 仕事」

「現役時代の稼ぎで適当に暮らしてた? あとはたまに気まぐれで働いたり?」

「あッ、はい」

 

 え~、教訓は『油断するな、女は恐ろしいぞ』ってことで良さそうですね。

 

「まあ、お前らがそれで良いなら俺も良いよ。約一名を除いて断る理由はないし」

「え、どっちどっち? 一緒のパーティだからどっちの子とも仲いいのかと思ってた!」

「お前じゃい!?」




この先、地獄があるぞ
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