※この作品はR-18です。

固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~   作:レイジー

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第一九話 地下と地上

「味がしねぇ……」

 

 死なない程度に首を潰したムカデの近くで沸騰したお湯を使ってその中身を茹でる。

 モンスターは死ぬまで基本は消えない。

 また、消えたとしても返り血は消えない。

 返り血を振るい落とせば消える。

 その違いを利用し、死ぬ前に脚をもぎ、茹でて、食べる。

 流石に全てを消化することは難しいだろうが、それでも消える前に消化してしまえば腹は満たせることに気づいた。

 

「何も食わずに、育たねえでいきなり現れる存在だもんなぁ。そりゃ中身はないか。魔力が籠ってりゃ別なんだろうが」

 

 素材がドロップするかどうかの違い。

 その部位が強固だったかどうか、つまり魔力が集中していたかどうか。

 だが、ムカデは大抵が装甲に魔力が集中するため期待はできない。

 まれに「お?」となる程度の薄味が出るだけ。

 

「調味料用意すりゃ良かったな。マヨなら基本なんでも食えるだろ。もしくはカレー粉。……カレー食いてぇ! 給食のカレー思い出したら腹減ってきた……。自分が作った雑カレーじゃなくて、ちゃんとしてカレーが食いてぇ……ターメリック、クミン、コリアンダー、シナモン、カルダモン、サフラン……」

 

 地上へ帰ったら食道楽に没頭するのもいいかもしれないと、気が済むまでの暴食を決意しながら茹でた身全てを一気に食し、内臓を強化しながら、脚を全てもぎ、腹を削り肉体をを最小限にしていたムカデの首を踏み折る。

 するとダメージが許容値を上回り、霧散した。

 

「おぉ? 装甲がいっぱいですなぁ。フヒヒ」

 

 残ったのはほぼ全てといっても過言ではないほど完全に残った装甲の数々。

 中身を抜かれて放置されていた脚は全て消えたが装甲は残り、ついでに胃の中身も残っている。

 

「牙も落としてんじゃーん? なんだよ、出血大サービス?」

 

 驚くことに、希少な毒牙が残っていた。

 毒腺から出た毒に濡れた牙ではない、牙を構成する物質そのものが毒の性質を有する、ムカデの牙の中で特殊な牙。それがムカデの毒牙。

 詳しく調べれば、それは『鉱食の毒牙』と呼ばれる類のモノだった。

 ムカデ系モンスターは完全同種であれば協力するが、別種ではケンカをすることがある。

 その生存競争に負け、下層の強者たちの供物のごとく追いやられつつも運よく生き延びたムカデ、そして運悪く弱い開拓兵にも大量の魔力にもありつけなかったムカデが自らを満たすための手段として行うのがその名にもなっている『鉱食』という行為。

 岩石に宿る魔力を吸収するべく地を喰らう。

 そして願いに応えるかのように効率的な鉱食を行うために鉱物を腐食させる。その力が鉱食の毒牙だ。

 無論、そういう話があるというだけで審議は定かではない。

 

「ま、なんでもいいや。金になるし」

 

 耐魔布で鉱食の毒牙を包み、背嚢にしまう。

 

「……ん~、やっぱりちょっと気になるなぁ」

 

 幸運。

 バカを言うなと理性が答える。

 調子に乗るな、とも。

 ラノベの幸運チート系主人公ではないのだ、ドロップ大量、などありえない。

 そもそもがこの世界はゲームではなく現実。

 ステイタスやらなんやらはあるが、現実。

 であれば現象は全て物理だ。

 

「やったことだけ挙げようか。戦った、動きが鈍ったから脚全部を引き抜いた、グネグネ動くから腹を削いだ、筋肉を削った、神経だけを断った。死ななかった。魔石は砕かなかったから、魔力供給はされたままだったから。そのまま放置して飯を食べた。そして殺した。時間にして30分ちょい。さあ、理由はなんだ?」

 

 そもそも遺体断片(ドロップ)の仕組みはわかっていない。

 にもかかわらずその先の大量ドロップを調べようというのはバカな話だろう。

 けれど気になった。

 金になると思った。実際解明できれば金になる。

 であれば、多少のバカは覚悟で試す価値はあると思った。

 戦いたい欲はあるが、好奇心には抗えない。

 

「肉体を減らしたからその分の魔力が装甲に集中した? けど部位を切り分けるのはこれまでに何度もやってる。けどドロップ率は上がってない。切ったうえで時間経過した? 可能性はある。神経を断ったから? 操作に割く脳のリソースが身体強化に振られた? 肉体の状態が動けないよう固定されていたから? なら寝てるモンスターを殺せばドロップ率は高いのか? ……試すしかないか」

 

 考えてもデータが少なければ判断はできない。

 であれば必要なのはただひたすら、試行回数。

 そうして俺は1度耳元を空気の塊で覆い音を遮断し。

 さらに手元の空気も操作しつつ勢いよく手のひらを打ち合わせた。

 聞こえないが、全身を叩く轟音。

 周囲に拡散。

 音の遮断を解除し、周囲に意識を張り巡らせる。

 

「うぉぉ……結構来たなぁ。ま、イケるだろ」

 

 経験を積まない、という条件で戦えば。

 蹂躙すれば余裕で対処できる。

 やり方は至極単純。

 さっきやった音響を、風球に密閉した状態で相手にぶつける。

 魔術で支配された空気と、通常の空気は隔絶され、断熱効果のように音の逃げを許さない。

 内部では圧縮された轟音が気体操作によってほとんどの減衰なく鳴り響き続け、それを浴びれば硬質な装甲を伝って内部を揺らす。

 微弱な操作によって内部振動は振動数を変え、魔石の波長と――固有振動数と共鳴したとき、魔石を振り砕くのだ。

 その共鳴をあえて抑えれば動きの妨害だけに留まる。

 

「はぁい! 脚もぐぜぇ? 超もぐぜぇッ!」

 

 背に乗り、上から一本一本踏み折る。

 ミミズのような胴一本になったムカデのうち半数の腹を削り、半数は残した。

 腹を削られ動けなくなったムカデの共振を解き、そうではないムカデは共振を続ける。

 そして時間経過を待ち、一定時間ごとに殺す。

 

「ふむ? 共振組は大体普段通りのドロップ率だな。途中で解いた組はドロップ率がちょっと高い。やっぱり時間経過? だとして何の影響を受け続けた結果なんだ? というより逆に共振組はなんの影響を受けなかったんだ?」

 

 仮説を立てる。

 手元でドロップ品をいじりながら壁伝いに動く。

 

「消えるって観点でいえば魔術だよな。魔術はサロメいわく魔力・想子・存在力の3要素で成り立つ。モンスターの肉体は? 魔石を砕けば消えるから魔力は共通。として想子と存在力。ないな。想子としたら誰が作ってるんだよ、世界中だぞ、龍壁山脈の先にすらいるんだから個人ができるワケがない。……仮に同じとして、現状で想像可能かつ手出しができるのは結局魔力だけ。……はぁ」

 

 なぜ消えるのか。

 なぜ残るのか。

 魔力が尽きるから。

 魔力が残っているから。

 その違いは?

 わからない。

 疑問は生じれど解消はされない。

 

「返り血が残るのはなんでだ? ……大気と人体、違うとすれば魔力――体表魔力? 魔力を吸うことで持続している? 消化吸収されると消えないのは? ……性質が変化するから? 脆弱な存在力が、頑強な存在力の物質と化学変化を起こすことで存在力の補間をされている? とすれば人間が外部から存在力を補間すれば全身が素材として残る? いや、物質の構造も性質も把握できていないうえにモンスターの全身を把握してそれを一気に演算するのはムリだ。――本人に補間させる? いや、そもそもできないから存在力が脆弱なのか? だとしてなんで存在力が脆弱なんだ? 高い存在力を構築できる魔力がない? いや、それを可能とする演算力がない? もしくは戦闘にそのリソースを割いている? とすれば……」

 

 加速する思考の中で1つの考えが思い浮かんだ。

 そしてそれを試すべく、穴蔵に荷物を置いて最低限の所持品だけで近場のモンスターを借りに行った。

 見つけたのはムカデ。

 

「じゃ、家畜のごとく殺されるために生きてろ」

 

 共振。

 装甲に魔力を割り振った、脆弱な魔力耐性。

 ムカデの身体が地に伏す。

 

「は~い。ベリベリ~っと」

 

 背板を、一部を残して腹板を剥がす。

 そうして目ぼしい装甲を頭部付近と節足のみに絞り。

 そしてある程度の時間をおいてから共振を解除した。

 

「ははははは! オーニさんこっちら~、手~のなるほ~うへ~」

 

 俺とムカデの鬼ごっこ。

 追いつけそうで追いつけない、速度も相手に合わせて。

 そうしてギリギリの感覚で追われ続けた。

 

「そろそろか~なッ! っとぉ」

 

 剝き出しの肉に、拳を打ち込む。

 魔石の感触。

 握り、引き抜く。

 そして残る、節足。

 

「ん。やっぱり魔力を収束させれる部位を減らしたうえで収束させるように行動を誘導すればイケるな」

 

 判明した方法。

 使える部位を減らせば必然的にリソースはそこへと向く。

 右腕を消せば左腕を使うしかないように。

 実に簡単で面倒な話だった。

 

「てこたぁ……必然的に魔力多くて演算力も高い、強いモンスターはいっぱい残すってことか? まあ構成要素の複雑さもあるから単純な話でもないけど」

 

 都合のいい話ではある。

 実にご都合主義だ。

 ドロップ確率は低いといいながら、主人公がストーリー上で戦えば高確率で強敵の希少素材がドロップするようなモノ。

 が、利用できるならするだけである。

 

「よし、検証終わりっ。今日のねぐらに帰るべ」

 

 俺は研究者ではない。

 その理論を突き止める気は毛頭ない。

 それが利用できればそれでいい。

 この理屈を利用し続け、それが間違いだったとなるならその時はその時だ。

 違う原因を探って正解を導くか、大人しく諦めるか。

 間違いとわかるまでドロップ率が高ければ関係ない。

 

「ん~、1日で素材がやたらと貯まったなぁ。カバン大量に持って来てて良かったぁ」

 

 持ってきた荷物はほとんどがカバンinカバンだ。

 魔道具など多少の荷物はあるが、ごく少量。

 ほぼ、素材持ち帰り用の大型カバン。

 

「まだ夜じゃないだろうけど寝よ」

 

――――――――――

 

 そうして俺は数日間、ひたすら探索を続けた。

 カバン2つがいっぱいになるまで狩り続け、それが終われば訓練目的でひたすらモンスターとじゃれる。

 飽きればより深くへと進み、素材を集めてから訓練をする。

 カバンの手持ちが尽きたところで探索を切り上げることにして、俺は【洗脳】したムカデにそれまでのねぐらに寄らせつつ全ての荷物を回収し、人のいないところでムカデを解放して荷物移動サービスを利用してカバンを地下から地上へと送った。

 

「よーっす。おひさー」

「なんだ、生きてたのか。てかこの街にいたのか」

「いるよ~、なにさ、ひどいな~」

「……スゲー荷物だな。あとくせぇ」

「あはは、ずっと地下だったからな」

「道理で。1人か?」

「おう、1人でやりたくてな。楽しかったわぁ」

 

 久々にあった開拓兵仲間たち。

 変わらぬ顔ぶれでたった数日だというのに懐かしさを感じた。

 

「そうだ。他の連中は? メイソン、ヴィータ、クラウディアの3人」

「あ~、見てねえな」

「ほぉ? ……よし、じゃ、俺他の街行くわ!」

「……は?」

「いやぁ、やっぱ色んなトコ見たいからな! ここも全部は見てないからまたそのうち来るよ! じゃ、風呂行ってくる~。これまでありがとな、楽しかったぜ~!」

 

 持ってきた素材全てを受付に渡し、金は全て口座へと頼む。

 一般開拓兵から解放されるギルド口座機能。

 開拓兵証があればギルド加盟店なら物質的な金銭を必要としない。電子マネーのようなモノだ。

 

「そうだ。どうせだし酒場であったあのねーちゃんのいるっていう風呂に行くか」

 

 アーノルドと飲んだ酒場でともに飲んだエマという女性を思い出し、そこへと向かった。

 

「あっ! 確か――ヒイラギ?」

「そう、合ってる。酒場ぶり、エマ」

「髪切ったんだ。でもちょっと雑じゃない? もしかして自分で切った? それで整えてほしいとか?」

「後半はあってるけど前半は違うかな~。異世界人の素材が欲しいってんで研究者に提供したんだよ」

「へ~。じゃ、私をご指名ってことで良い?」

「おう。これ湯札な」

「ありがと」

 

 湯女のサービスを受けるにあたって必要なモノ。

 それが湯札である。

 受付で購入し、それを湯女に渡す。

 チケットであり、湯女はその数によって給料をもらう出来高制。

 

「お湯かけるから、目をつぶってね」

「はいは~い」

 

 数日ぶりのお湯が身体に色々な意味で染み渡る。

 だが、一杯のお湯では皮脂汚れまみれの汚い頭が弾いてしまい、何度もかけることになった。

 

「悪いね。こういうのってやる前に事前にある程度は綺麗にしてきた方が良かったりする?」

「ん~? もっと汚れのヒドイ人が来ることもあるし、平気かな~」

「そっか。――あ~、気持ちいわ」

「ホント? よかった」

 

 優しい指使いで頭皮が揉まれ、あっという間に汚れが落ちるのがわかった。

 石鹸もモコモコと泡立ち、毛穴の汚れを浮かせる。

 

「どれくらい地下にいたの?」

「ん~、多分3日か4日?」

「それでこんなに身体傷つくものなの?」

「まあ、ひたすら戦っては横穴で寝て、起きたら戦って、寝てを繰り返してたからねぇ。温存のために魔術使用は控えてたし、荷物削減のためにポーションは持ち込みほぼナシだったし」

「無茶して身体壊さないようにね? お客さんっ」

「ははは、金づるか。でも残念、明日辺りから違う街に行くんだな~」

「そうなんだ。ならまた今度立ち寄ったら来てね」

「エマの働いてる日と都合が合えばね」

 

 絶妙な加減で進む洗髪、そして垢すり。

 どんどんと汚れが消えうせ、全身を少しずつ清潔感と満足感が包む。

 

「わぁ、そんなところまで?」

「ヘンな声出さないの。……硬くしないでよ」

「ずっとシてなかったのと、命懸けで戦ってたから……」

「ま、慣れてるしすぐ鎮めるから……」

「わっ――うっ……」

「よっぽど溜まってたんだね……。多いし、濃いし、ちょっと早かった」

「さーせん……。思ったより上手かったからすぐに……」

 

 しょんぼりと項垂れるヒイラギの背に軽いキスがされた。

 

「別に気にしなくて大丈夫だから。それより、落ち着いたでしょ? 続けるから」

「あ、うん」

 

 慣れた反応で垢すりが再開され。

 そして全身が清潔になったところで髪にヘアオイルを塗られ、タオルを巻かれ、次へ案内される。

 

「マッサージって受けるの初めてなんだよね」

「そうなの? ならはりきっちゃおうかな」

「お、お手柔らかに……」

 

 行われるマッサージ。

 それは圧したり、揉んだりと様々。

 整体も一環なのか、背骨の位置を確認したり腕を引っ張り、圧され、回されるなど様々な体験をした。

 

「いってぇ……」

「随分とヒドイ姿勢だったのね。歪みが酷くて久々にやり応えがあったな~」

「そんなに?」

「うん。よっぽど酷い就寝環境だったんじゃない? これは探索よりもずっと前から、どれだけ酷い状況だったのやら……」

「あ、あはは……」

「背骨が歪んでたし、首もちょっと歪んでた。姿勢が悪いせいで左右の筋肉バランスも悪いし。けど、多分それもある程度は改善されるはず」

「ある程度なの?」

「そもそも利き手利き脚があるんだから多少は、ね」

 

 つまりはそれで片づけられないほどひどかった、ということだ。

 

「じゃ、前やるから仰向けになって」

「は~い」

「さっきは背中ばかりだったけど、結構良い身体してるね」

「ホント? ワリとひょろひょろだと思うんだけど」

「育ってきてる感じかな。ちゃんと鍛えてる、って感じ」

「んっ。……それはよかった」

 

 努力がちゃんと報われているという喜びが頬を緩ませる。

 そんな中で空気を読まない存在が1つ。

 

「またぁ?」

「ごめんなさい」

「はぁ……んじゅっ――」

「んぐっ――」

 

 実に作業的。

 それが逆に興奮を誘い。

 場所的に人がいるということもあって我慢が難しかった。

 

「ったく……こういうのは夜だけにしてよ」

「それは……そういう?」

「次ね。次来た時なら相手してあげる。その時なら私好みの身体に仕上がってるだろうし……」

「――わかった」

「ん、続けるから。……姿勢のせいでちょっと内臓にも変な影響が出てるね、お腹とか弱いでしょ?」

「そんなことまでわかるんだ……」

「姿勢が悪いと身体も悪くなる。身体が悪いと食事の効果が下がる。そしたら開拓兵は万全になれないでしょ? ちゃんとしてよね、私たちを守る立場なんだから」

「ごめんなさい。ちゃんとします」

「そしたら疲れた身体を私が癒やしてあげるんだから」

「……ありがとう。イイ女だな」

「フフン。でしょ?」

 

 商売を前提としている状態だからだろうか。

 気楽だった。




 元々は地下話で1話丸々の予定だった。
 けどよく考えたらこのタイミングじゃどう足掻いてもアクシデントは起きない!
 なんなら危険度下がる可能性すらある!
 てことで普通(当社比)に探索して、普通(ヒイラギ比)に終わり
 で、地上
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