固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~ 作:レイジー
京都弁なんてほとんど聞いたことないやい!
関西弁にはそこそこ慣れてるけどどうやったって似非関西弁になっちゃうよぉ……
「ん…………ん? ……よかった、服は着てる」
目覚めてすぐ目に飛び込んできたのは眠るオタギの顔。
咄嗟に俺の姿とオタギの姿を確かめるが、ちゃんと服を着ていて安堵の声が漏れた。
ヤベェ……記憶ねぇ。
てかなんで一緒のベッド? なんで抱き着き合ってるの?!
すっごい良い匂いする……。
「……起きるまで待つか」
昨日何あったっけ?
店出たあとにオタギと出会ったのは憶えてる。
で飲みながら話そうってなって、飲んで……話して。
……そうだ、べろんべろんに酔ったんだ。
――ウギャァアアアアァァァッ!?
完全に俺理性なくしてますやん!
酔った挙句ムチャクチャ絡んでるじゃん、オタギにベタベタしてるじゃん!!
あぁぁあああぁ……消して、記憶消して……。
子どもみたいに甘えてた記憶バッチリですよッ?!
「……百面相?」
「え~、昨晩は大変お見苦しい姿をお見せいたしました……どうか何とぞお忘れいただきたく……」
「あははっ、イヤやわぁ。あないなおもろいモン致死量までイジるに決まっとるやろ~」
「ンぎッ!」
チキショウ……【洗脳】したろか……。
でもあんまこれ頼りで生きたくないんだよなぁッ?!
「ま、ウチはヒイラギがどないな人間やろうと気にせえへんよ。アンタらしさ、ってことやな」
「……俺が、どんな人間でも構わないのか?」
「害なるなら別やけど」
「あ、うん。そだねー」
ん~、ちょっと考えてみようか。
嫌われるってのは何か、害があるから、あるいは害をもたらすかもしれないから。
害は……まあ法律に抵触したり、イヤな感じ出さなきゃ基本はオーケーか?
今も表面上は友好的にイケてるだろうし。
なんかこっちの目論見でやらかすことがあっても外に漏らさなきゃ良いだけで。
「今日はどうするん?」
「……山? 行く? うん、まだ全然実力ないし」
そもそも俺はなんで【洗脳】をすることを嫌だと思っていた?
他者の人生を捻じ曲げるから?
そんなモン社会で生きてりゃ大なり小なりそうなるし、俺も影響を受ける。
ならどうして?
……罪悪感だと思っていたモノは罪悪感じゃなかった?
捻じ曲げることによるつまらなさだとしたら?
全てが思い通りになるという退屈。苦のない作業のような生き方。
俺の人生は良くも悪くも苦痛に満ちていた。苦こそが人生だった。
苦という刺激がない俺は俺じゃないとすら思えるくらいに。
それに、意思を奪った人形で遊んで楽しめるほど幼稚でも狂ってもいない。
「頑張れ~。最近ちぃときな臭いさかい気ぃつけて」
「? おう」
――――――――――
「……なんつーか、地上ってルートヴィヒの領域内だと案外弱いんだなぁ。ま、それはそうか。人間が安全を勝ち取るためにモンスターに抗った国内と、まだ封じてる段階の地下だの龍壁山脈外とだと手の入れようが段違いだし」
ゲームのように初心者用の街があって、そこを離れるにつれて敵の強さが上がるというのは基本的にない。
開拓兵人口の多さなどでモンスター数が抑えられていないということはあっても国内の地上で湧くモンスターは基本どの相手も同じ程度の強さ。
地下、海中、龍壁山脈外などを理由に強いモンスターが出ることはあるが、それは『基本』でも『普通』でもないのだ。
人里を離れれば強さに変化は出るが、モンドドラゴンから近いこの山ではその変化幅も小さい。
「かといってこの先は段違いなんだろうし。……まずは地下制覇かねぇ」
開拓兵に都合のいい世界ではない。
それぞれの実力帯に見合ったモンスターと戦える場所、というのは手軽ではない。
「……あ~、こうして狩ってると虚しくなってくるな。金稼ぐために安全なことしてる、みたいで。いや、実際には次を見据えて足場の悪い場所で戦う訓練してるんだけど」
日銭のために開拓兵をやっている人間をバカにするつもりはない。
彼らだって社会の維持に一役を買っているのだから。
ただ、俺はその生き方は性に合わない。
やりたいのは死の近い、心臓が締めつけられるような高揚感にあふれた生き方。
彼らを努力していないとはいわない。
けれど、俺は俺なりの努力の中ですごしたい。
「おっ?」
そいつは普通に見えた。
いや、実際殺せば死んで、危機はない。
ただ、少し面白いことに避けようとした。
モンスターの基本的な行動理念のようなモノは『人間への殺意』だ。
そこが変わることはないとされている。
友好は不可能、と。
発生的ではなく、生殖的に生まれた幼いモンスターを用いた実験があった。
どうにか利用できないかと、家畜などのような従魔として扱えないか、と。
だが実験はことごとく失敗だったらしい。
自力で動けない初期は凶暴さを見せず、動けるようになった途端に牙を剝いたらしい。
つまり、人間への敵意はモンスターが元来持つモノ。殺すために欺く狡猾さも持つ。
そして人間を殺せると思考すればモンスターは我が身を顧みずに襲いかかる。
知能の低いモンスターであれば突撃すれば勝機があると判断して無謀であっても襲いかかり、転倒などのごく僅かな可能性に命を使うのだ。
そんなモンスターが、避けるという行為。
ないワケではないが、知能が合わなかった。
稀にみる特殊個体。
レアという言葉は心を躍らせるモノだ。
「……」
が、それが1日のうちに複数だと疑問も生じる。
そもそも、そういった個体は1日中戦いに没頭しても見るか見ないか。
確率が上振れして2回程度。
それが、夕日を見るよりも前に5。
異常だった。
さて? これはどういうこった?
可能性1、モンスターが進化している。
進化か成長かはわからんが、ともかくとしてモンスター全体に変化が起きているって可能性。
次に可能性2、普段のとは別種。
見た目が似ているだけで別種、例えば偶然龍壁山脈の向こうからやってきた。その中でも弱い個体。
可能性3、大本の特殊個体からの派生。
本当の特殊個体がいて、そこから生殖的に生まれた結果、知能が引き継がれた可能性。
……ん~、わからん。
「1度帰るか」
1人で考えていても仕方がないと俺は1度街へと戻り、ギルドへ向かった。
「よーっす、ツィリル。今いいか?」
「お? ヒイラギか、どうした?」
声をかけたのは少し前まで山の方での活動をメインにしていたツィリルという開拓兵。
今は地下がメインだが、それでも山での活動はしているらしい。
「今日、山で知能特化の特殊個体が出た。数は5体。ツィリルの経験からしてこれはここでの普通か?」
「……そんなことはないな。そういうのは基本どこも同じだ。……詳しく聞かせろ」
「ああ――」
異常性を理解したツィリルが酒から口を離し、真面目な表情で俺の話を訊ね。
ツィリルの友人含めた数人で認識の共有や状況把握を行った。
「なるほどな。ヒイラギ、ダリボル、ヨナーシュの戦った数を合わせると今日だけで21、か……こりゃあギルドに問い合わせねぇとな」
「ダリボルとヨナーシュだったか? あんたらはこのこと、どう考えてる? 原因とか、出るかもしれない被害とか」
「んぁあ……俺ぁヒイラギ? の言ってた特殊個体からの派生ってのぉ推すな。モンスター全体ってのぉは考えにくいからなぁ」
「オイラも同じだな。オイラたちの倒した奴らは全部同じエアレーだ。ただの偶然かもしんないけどさ、現状の憶測でモノいうならオイラもそこだと思うぜ」
意見は分散せず、一致した。
情報が限られ、選択できる答えが少ない以上は当然ではあるが、それでも現状で間違った判断をしていないという事実は少し安心する。
「聞いてきたぞ。ギルドはまだ情報を把握してないらしい。これから急いで調査隊を編成して調査に向かうらしくてな、人員が足りねえから俺らにも声がかかった」
「……なるほど。俺は行くけどアンタらはどうする?」
「もちろん! 行くさぁっ、俺らの故郷だかんなぁ」
「オイラも! 家族もダチも住んでんだッ、行かない道理がないさ」
「具体的にいつ出発するって?」
「編成自体はもうしてるって話だ。街の危機かもしんねーから面倒な手続きは事後ってな。けど道具やらなんやらの準備で4時間はかかるって」
「……オーケー。ちょっと知り合いに声かけてくるわ」
「オタギか。……たしかに来てくれるなら心強くはあるな。この街の奴じゃないから来てくれるかはわかんねえけど」
「ふっ、脅してでも連れてくるよ」
「ははっ、なんだそりゃ!」
面倒で楽しいことになって来やがった。
正直こういうイレギュラーを望んでる時点で大人失格なんだろうけど。変化の乏しい状態が普通の人生ってわかってるうえでそれをまだ受け入れられない幼稚さがイヤだけど。
今はこれで良い!
「だよなぁ……。でも実際そういう前例ってあんの? 特殊個体が性質遺伝させた、って」
「そもそも生殖での繁殖かってのが見てわかるモンじゃねえからなあ。わかんねえってのが答えだ」
「オイラも知らないね。けどありえるかありえないかで言えばあり得るんじゃないかい? 生殖可能なのは事実だし、てことは多少なりとも生物的特性があるってことだろう? じゃあオイラは『ある』方を支持するね」
「んんぁ、俺もだな。ないで片づけてぇ思考停止するのは簡単だけど、そうじゃなかったぁときの被害がデカいからぁ考えるべきと思う」
「わかった。ありがとな」
1度別れ、オタギのもとへと向かう。
幸いなことに何ヶ所も回ることはなく、宿屋にいた。
そして状況を手短に伝えた。
「ええよ。手貸すわ」
「本当か? ありがとう」
「面白そうやしね」
ははっ、良いね。
面白そうって理由で死地に突っ込むその精神性。
いつか遠征で一緒に戦ってみたい。
「じゃあギルドで参加表明して時間まで仮眠だな。調査は広域にわたって山脈外にも行く可能性もあるし」
「そうやなぁ。備えへんと」
――――――――――
「オタギさん、ヒイラギさんには他3名とともに第12班として調査に加わっていただきます」
「了解。その他のメンバーは?」
「向こうで待機しています」
「向こうね。詳しいことはそっちで聞けばいいのか?」
「はい」
時間になり、指定の地点へと向かう。
そこには1人のギルド職員と2人の開拓兵がいた。
「ヒイラギだ、よろしく」
「オタギや、よろしゅうな」
「ベルタです。よろしくおねがいしますね」
「ピムだ。よろしく頼む」
作業中のギルド職員は後回しにし、開拓兵へと声をかけた。
1人は女。種族は恐らく『晶角種』で、特性としては魔術出力に長けていて、出力という点では
そしてもう1人は男。種族は『咆哮種』、真っ黒な鼻だに喉元の白い模様と見てわかるほど硬質な鼻筋の皮膚。喉に大量の魔力を貯め込むことができ、叫ぶ際にそれを音とともに放つことで威力を生む。
「あの、始まる前にお伝えしておきたいのですけど。その、見ての通り私の種族は晶角種なんですけど、私はあまり魔術が得意ではないのでそういった方向での期待はあまりしないでください」
「得意じゃない? それは……う~ん、具体的にはどういうのは使える? 出力自体はあるから身体強化とか武装強化はできるのかどうか、使える魔術の種類が少ないってことかどうか」
できないにも種類がある。
苦手なのか、それとも不可能なのか。
「えっと、使える魔術の種類、です。できるのが治癒魔術と回復魔術、あとは簡単な風魔術と……固有能力の【物体障壁】っていう形があるモノを防ぐ壁が使えます」
「ケガが治せるのは強いね。魔力量はどれくらい?」
「えっと、あくまでも体感ですけど……肩から先が欠如した状態から25回ほど、でしょうか」
「ベルタ、といったか? それは普人種換算でか?」
「あっ、はい。あっ、いえっ、熊系の獣人種の方でした」
「そうか。獣人種でそうならば普人種換算ではもう少し……いや、だが目算失敗も良くないか。であればそのまま25か……」
ブツブツと呟くピム。
俺は思わず目を点にし、他2人に視線を向けて思わず首をかしげた。
オタギは肩をすくめて苦笑し。
ベルタは戸惑った様子で視線を行ったり来たりさせていた。
「装備は片手剣と盾です」
「なるほど。……基本は自衛用にして後衛、かな? 判断合ってる?」
「合ってる思うよ。ベルタの戦闘力は別として、援護役なってもらうべきやからね」
「ん。じゃあベルタさんは後衛で決定で。残る俺ら3人はどうするか。といっても戦闘力高い人間を前衛にするべきだから俺は中衛あるいは遊撃……中距離攻撃に徹せられるほどまだ魔力も魔術も鍛えれてないから遊撃かな? ああ、後衛の護衛役って立場もあるのか……」
「であれば俺が前衛を引き受けよう。この巨躯だ、敵の目も惹きやすい。それに歩いた場合の速度は俺が1番遅いだろうからな、どうやっても合わせてもらう必要が出てくる」
「ならウチは中衛しつつ遊撃するわぁ。ヒイラギまだ遊撃できるほど強ないからなぁ」
「はい。すみません……」
「ふっ、まだ若いのだ、見て覚えると良い。せっかくの機会なのだからな」
「うっす!」
前話を読んで、善人ルートに入ると思った人~!
ンなワケ(ヾノ・∀・`)ナイナイ
作者は一瞬気の迷いでそのルートに入ると思った。よく考えたらそんなことなかった
読み直して良かった~。そのせいで数千文字がゼロになったけど(笑)