※この作品はR-18です。

固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~   作:レイジー

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第二五話 時と場合を弁えろ

「はぁッ……はぁッ……ッッ――」

 

 気づいた時には死が目前に迫っていた。

 劇的な戦況の変化はない。

 森の中に突入して約2時間。

 いつの間にか。

 そう、いつの間にか戦況が悪化していたのである。

 

「ヒイラギ! 薄いトコ開けて逃げ――」

 

 オタギが叫んだその瞬間、脈絡もなく木が倒れた。

 俺たちを分断する倒木。

 1つのパーティは俺とベルタ、ピムとオタギとヴラスタの2つに再編成され。

 合流できない。

 なぜなら。

 

「――トリフィッデントッッ!!」

 

 イメージしやすいのはトレントだろう。

 トリフィッデントというモンスターは植物系のモンスターで、その最たる特徴は感知不能。

 擬態状態で見破れる者はいないとすら言われる最強の擬態能力。

 それが牙を剝いた。

 ギリギリまで手を出さず、逃げようとした瞬間に行く手を阻む。

 

「ぁぁ……」

 

 ムリだと悟った。

 倒れたトリフィッデントから伸びた枝葉が蠢き、増殖し、槍のごとく襲いかかってくる。

 それは無差別に。一切の手加減なく。

 自身を中心に広がる攻撃範囲は合流するどころか俺たちの距離を増やした。

 

「ひっ」

 

 小さく恐怖を漏らすベルタ。

 

「ちッ!」

 

 見捨てるワケにもいかず、咄嗟に襟を掴んで一気に引き寄せて抱きかかえながら逃げに徹する。

 無差別攻撃に動揺する他のモンスターの上を跳んで逃げ、周囲に気配がなくなるまで走った。

 

――――――――――

 

「ゴホッ! ごほッ! ……す、すみません、何もできなくて…………」

「いや、気にしなくても…………あの状況を考えたら下手な慰めは逆効果、か。見捨てなかったのは万が一の時に治させれると思ったから、つまりは自己利益のための行動だ。利用価値だ。これから役に立ってもらう」

 

 ネガティブな相手には――自分を無価値と思った状態で何かを施されたと感じている人間にはこれが多分良い。

 少なくとも言葉にした範囲の価値があると認識させられるし、ネガティブも一時的に打ち切れる。

 

「と、ところでここは?」

「地下に通じる洞窟。先は地龍の通り道(アヴァムギーヴ)の断崖だから無限にモンスターが来ることはない。探知が合ってれば奥にはそもそもいない。まあ入り口から来られたら逃げ道ないけど」

 

 この洞窟の入り口を見つけた時。

 持てる力全て、探知の最大出力でこの洞窟内を調べた。

 地形は単純でいくつか分岐はあるけれども一番奥は崖の壁面に空いた穴に繋がっている。

 モンスターもよほどの擬態をしていなければ中にはいない。

 息を潜めればしばらくは生きられるはずだ。

 

「最悪は地龍の通り道(アヴァムギーヴ)から抜けれるかもしれないけどおススメはしない。幅が狭いせいで運河(ルイズギーヴ)の流れが激しいから下には行けないし、壁面伝いはそもそも足場が皆無なうえに空から襲われたら余裕で死ねる」

「やっぱり……地上からしか……」

「そこが問題なんだよなぁ。あの森を抜ける方法が……」

 

 濃い魔によって俺たちは2時間迷い続けた。

 元々は山から見えた湖を目印にしようと向かっていたにもかかわらず、決して遠くはなかったはずの湖にたどり着けすらしなかった。

 延々と同じ道を歩き続け、引き返すこともできず、そして自然に牙を剝かれ。

 そもそも湖などなかったのかもしれない。視界の異常で遠く離れた湖が見えていたのかもしれない。

 が、関係はなく、結局は、打つ手なし。

 

「とりあえずしばらく休むか……」

 

 戦いで頭を使ったせいで頭が回らない……。

 全身に力も入らないし。

 俺、このまま終わるかもな。

 

「え、えっと、私は周囲を見て――」

「死にたいなら素直にそう言え。読解が面倒だ」

「すみません……」

 

 ああ……やっちまった、メンドクセー。

 せっかくさっきメンタルケア的なコトしたのにネガティブ入れちまった。

 ……ホント、頭回らん。

 

「というか、時間的にあと少しで陽が暮れ始めるのか……。今から動いても森の途中で夜になる。今日はここで寝るか」

「こっ、ここで、ですか?」

「森で寝るか?」

「い、いえ……」

「はンッ、流石に剝きだしじゃ寝ねぇよ。――あ゙~、キツ……」

 

 ふらりと立ち上がる。

 壁面に手をつけ、魔術で空間を生む。

 岩石が移動して小さいながらも部屋となった。

 

「ッ……」

「だっ、大丈夫ですか!?」

「魔力不足だ……気にするな」

 

 魔力の激減、高濃度の魔に囲まれた環境。

 吐き気が、頭痛が、目眩が。

 様々な状態異常が全身を襲う。

 

「食糧も2人換算ならしばらくは余裕があるくらいには残ってる。今日はこれを食って、寝るぞ」

「はい……」

 

 硬いパサパサのパンに塩気の強い肉、乾燥した果実と酒で全身を満たし。

 陽もなく、火もなく、閉じた空間で生身の熱を生む。

 

「寒いだろうし、知らない汗まみれの男と同じ空間で寝るのはイヤだろうが、我慢しろ」

 

 気を使っている余裕は、今の俺には、ない。

 

「私たち……どうなるんでしょうか……」

「さぁな。このままここで死ぬかもな。抜け出せる気もしねぇ」

「……万が一の時は、見捨ててください」

「あァ?」

「見捨ててヒイラギさんが助かるなら、見捨ててください。私のせいで死んでほしくないから……ただでさえ価値のない私がそんなこと……そもそもヒイラギさんがいなかったら私はあの時死んでいたと思うので……」

 

 開拓兵の命は安い。

 命懸けでも日銭程度だったり、軽く遊んで暮らせる程度が一般的。

 ただ、そんな命が安い中でも、ベルタは自分の命を必要以上に安く見ていた。

 

「アホくさ。ンなコトに思考回すくらいなら揃って生き残ること考えるわ」

「そんな……」

「この際ハッキリ言うけどよ。不幸自慢なら他所でやれ、な? 本気で自分を無価値だと思って他人の顔色気にしてる奴はそもそもンなこたァ言わねえんだよ。俺からすりゃ今のお前は『可哀想な私を慰めて』『弱い私を助けて』『情けない私を許して』って言ってるようにしか思えねえ」

「――」

「本気で死にたいと思ってる奴が口に出さずにそのまま死ぬように、負の面を他者に見せる奴は救いを求めてる。……遠回しにあーだこーだ言う奴、俺、大っ嫌いなんだよね~」

 

 言いたいことがあるなら言えばいい、やりたいことがあるならすればいい。

 社会に属している以上はルールで出来ない部分はあるだろうが、そうじゃないなら素直でいればいい。

 なんだかんだと理由づけて保険をかけて、自己防衛した状態で他人に動いてもらう浅ましさ。

 クソ反吐だ。

 

「美味しいモノが食べたいです……浮遊大陸に行きたいです、世界を一周したいです。……まだっ、死にたくないっ……」

「目的、一緒じゃねえか。ならそう言えよ」

「――っぁ、一緒に生きて良いですか?」

「……好きにしろ」

 

 俺は俺でやる。

 開拓兵としてちゃんと働くなら俺がそれを拒絶する道理はない。

 今は一緒のパーティ。

 この状況で拒絶すればそれは俺の方が悪だ。

 

「ありがとうございます」

「……」

「……」

「……なぜ寄る」

「身体を拭かせてもらおうかと……」

「なぜ?」

「汗を搔いて臭いなら綺麗にした方が見つからないかと」

「それはそうだが……。俺は魔力残ってないし、残してる水は飲み水だ」

「水を出すくらいなら私もできるので」

「……はぁ、なら頼む」

 

 身体を拭く。

 たしかに大事なことだが最悪は木の葉をすり潰して汁をぬりたくるなり、モンスターの生き血を浴びるなりで人間臭さは消せる。

 ベルタはともかく俺はそれで構わないから気にしていなかったのだが、それと不快感とはまた別の話。

 綺麗にできるならしたい。

 

「傷だらけ……今治し――」

「いらん。この環境だ、魔力の回復速度もわからん。水を少し出す程度ならともかく、治癒も回復も魔力はバカにならん」

「はい……」

「……けどまあ、気持ちはありがたく貰っておくよ。ありがとうな」

「はいっ」

 

 チョロ……。

 

「あ、あの、痛くはないですか?」

「まあ、多少刺激がある程度だな。気にするほどではない」

「そうですか?」

「この程度はもう痛みとすら認識してない」

 

 日常的に苦痛を伴う開拓兵という存在。

 訓練でも、戦闘でもケガをし、その結果感覚は麻痺していた。

 

「他は気持ち悪いところありますか?」

「……多分ない。てか嗅覚麻痺して臭いかわからん」

「ん~と、大丈夫だと思います」

「わざわざ嗅いでご苦労だが、こんな閉じた空間にいたんだからそっちも嗅覚は麻痺してると思うぞ」

 

 出入口は塞ぎ、通風孔のみ。

 臭いは籠り、嗅覚麻痺は必然である。

 

「――私自身は臭いと感じるので多分大丈夫ですっ」

「お、おう?」

 

 それは……果たして大丈夫なのか? 女的に。

 ……って、この国だとあまり気にしないのか?

 そもそもが開拓兵だし。

 

「あ~……背中拭こうか?」

「えっ、そんなお手を――いえ、せっかくなのでお願いします」

「ああ」

 

 こういう時、開拓兵同士ってのは気が楽だな。

 特に男女とか気にせずにやれるし。

 ……あれ? こういう魔の濃いところに来る経験はないのに旅の経験はあるんだな。

 

 開拓兵は男女関係なく安全のためにともに水浴びをすることが多い。

 例えば男3女1のパーティの場合、2にわかれるためどうしても男女が混ざる。

 そうしないと女が1人になり、そういうことを気にする場合は距離を取る必要が出て。

 そして水浴びの際にモンスターに襲われれば無防備な状態で被害を受ける。

 となれば必然的に安全のために男女混成となるのだ。

 が、その経緯には『旅』が前提となる。

 旅をしなければ男女混成はない。

 つまりベルタは旅の経験者であり、妙な経験の歪さが気になった。

 

 まあ、単純にこれまでの経路の問題か。

 俺みたいに依頼の体(てい)で他の街に行けば臨時パーティで混成になるし。

 実際どれくらいの歴なんだ? 聞く意味ないし聞かんが。

 

「じゃ、布触れるぞ~」

「はっ、はい」

 

 装備を外し、服を脱ぎ、暗闇の中、探知で感じるベルタの姿。

 視覚ではなく、探知で感じるとどうなるか。

 見えないベルタの前半身が、明確にわかってしまう。

 

 ほ~、ムダにプロポーションは良いな。

 デカくもなく小さくもない胸に、引き締まった身体。

 筋肉の構成も形状的にも速筋遅筋のバランスもなかなか……。

 骨格も特に歪みナシ。姿勢もヨシ。

 ……メンタル面とか魔術適性とか除けば、逸材じゃね?

 

「ちょ、ちょっと痛いです……」

「あ、スマン」

 

 傷口――ではないか。

 単純に力加減をミスったな、赤くなってそう、見えないけど。

 

「ど、どうしたんですか? ――ケガしてました?」

「いや、ふと赤くなってないかって思って無意識に触れてただけ。悪い」

 

 見られるのは平気とはいえ、触られるのはまた別の話。

 流石に今回は俺が100悪いと素直に頭を下げた。

 

「て、てっきりそういうことされるのかと……」

「女好きとはいえ時と場合はわきまえるからな? 生きて帰る状況で仲違いはしたくないから、流石に」

「ててて、手とか、く、口とかで我慢してくださいぃっ?! ……あれ?」

「……帰ったらな?」

 

 もしかして耳年増とかそういうタイプ?

 というよりかはムッツリ?

 ……俺、【洗脳】使ってねえよな? 大丈夫よな?

 単純に倫理観の違いの話? そうだろうなぁ、じゃなかったら俺が何人もの女とセックスできるワケ!

 アッハッハ!

 

「かっ!?」

「おい?!」

 

 不意にベルタは奇声を発し、体勢を崩して後ろへと倒れてきた。

 タオルを片手に持っていた俺はそれを上手く手だけで受け止めることができず、胸で受け止めることに。

 

 ――わぁ、いい匂い……。

 えぇ……。

 なんでぇ?

 俺ってニオイフェチだったっけ?

 ……精々が暇つぶしに夏場の自分の靴を嗅いでクセーってゲラゲラ笑ってたくらいで……うん! 一般人の感覚だとアホな行動ってのは間違いないな!

 それはさておきニオイフェチ……ま、困る趣味でもないしいいか!

 

「あ、あのぉ……そんなに嗅がれると困るといいますか」

「あ~、クサいわぁ、すっごいニオイだわぁ」

「さ、流石に気持ち悪いと言いますか……」

「――はい、ごめんなさい」

 

 猫吸いの気持ちがわかった!

 なんとなく、頭のニオイ嗅いじゃってた!

 キモー!

 俺、キモー!!

 

「……じゃあ、背中側はやったし残りは自分で」

「……頭洗って良いですか?」

「ごめんて。クサい言ったのは謝るから、ごめんなさい」

「開拓兵とはいえ……あんなハッキリとクサいってッ……」

「わ~、クサくないよ~?! クセになるニオイだったよ~?!」

「それはそれでイヤです」

「どないせいと」

 

 そこからなだめるのに苦労した。

 頭を洗うの自体は止めないが、流石にクサいと言ってしまった罪悪感がちょっとあった。

 洗ったことでニオイが薄くなったのに一瞬だけ残念と思った自分自身を我ながら変態とは思ったりも。

 気づきたくなかった18年目の真実、というヤツである。




ベルタ《Berta》
詳細はまた別で

【挿絵表示】



 それはさておき、ニオイフェチってエッチだよね
 嗅ぎたくなるクサさとかあるよね
 嗅がれて恥ずかしがってる姿、ダイスコ
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