※この作品はR-18です。

固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~   作:レイジー

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 ホント、自動保存ってありがてーよ
 被害が軽微で済んだ!


第二六話 理不尽な生

「準備はいいか?」

「はい」

 

 翌日。

 

「じゃ、出るぞ」

 

 森に光が入るころ、俺たちは洞窟を出た。

 結局は正攻法で探るしかないため地上から森の抜ける方法を模索する。

 

「さっきも言ったように基本の行動方針は非戦闘。モンスターを見つけたら止まる、隠れる、逃げる。いいな?」

「はい」

 

 多少なら単独でも討伐は可能。

 けれど数と継戦時間が問題になる。

 戦えば音が生まれ、それによって引き寄せられるモンスターもいる。

 それは負の連鎖を引き起こし、どうしようもなくなる。

 

「待ち……迂回」

 

 モンスターの気配。

 目を向けると姿は見えないが、音は聞こえた。

 不自然なほど近く感じ、それが環境ゆえの異常感覚なのかはわからない。

 

「ヒイラギさん」

「どうした、敵か?」

「いえ、そうではなく。少し気になったのですが、あの木、少しおかしくないですか?」

「木? ……どういうことだ?」

「違和感は2つです。1つは根元の土の形状、もう1つはその部分の質感。……トリフィッデントでは?」

 

 言われて気づく。

 たしかに、そこに注意して見れば根元の土が少し不自然に窪んでいて、不自然に硬そうに見えた。

 まるで、一度掘り起こした地面を再度固めたように。

 

「お手柄だ。危険の回避と――昨日さんざん迷った理由がわかった」

「迷った理由、ですか?」

「動いてんだよ、この森。正しくは森のあちこちにいるトリフィッデントで道を操作してる」

「――」

「道のない森の中で、俺たちが手がかりにするのは木とか地形。ならそれが変化したら俺たちは迷うに決まってる」

「トリフィッデントが動くことで景色が変わる、動くことによって地面も変化。そういうことですか」

「だからって、抜け出せるとは限らないけどな」

 

 俺たちがトリフィッデントの危機を回避する術は現状根元を見ることだけ。

 つまり、地中にある根を感知することはできない。

 となると、森から抜け出そうとする俺たちを見逃すワケもなく、昨日と同じように襲い掛かってくるのは必然であり。

 勝つ術を見つけなければどうしようもないのだ。

 

「であれば他の方たちはまだ森の中、ですよね?」

「ああ。確実に殺そうと森の中で迷わせて体力を使わせて奥で殺そうとするヤツだ、逃がす気はないだろう。それに迷う原因に気づかなければそもそもムリで。合流が先だな」

「手がかりはあるんですか?」

「ない」

 

 そもそも森という規模感で騙そうとしてくるモンスターを相手に、昨日今日でそれを相手にしてすぐ対抗策が思いつくほど簡単ではない。

 

「場所が意思を持った森である以上は偶然の再開は望めない。近場で戦闘が起こらないように誘導されるだろうし、起きても異常感覚で認識できない可能性が高い。手がかりを残そうにも森の中だと消される可能性もある。さてどうするか」

 

 ここからは完全に実力がものをいうだろう。

 偶然は全て封じられると考えるべきだ。

 やるべきは必然を生む作戦立案。

 

「手がかりを森の中に残すと消されるのなら森以外はどうでしょうか? 地龍の通り道(アヴァムギーヴ)とか……」

「考えたけど多分ムリ。そこから見つけてもらうとすれば視覚か聴覚。まあ花火を打ち上げてって感じだろうけど、この環境でそんな火力出せないし光は木に邪魔されて見えない」

「そう……ですか……」

 

 森が暗ければ可能性はあったが、この環境によって光が歪み、光は横から射す。

 正確には満遍なく、弱い光が飽和していて、影が多方向に伸びるのだ。

 つまり光は正しく通らない。

 山頂から見下ろした光景がブレていたように、視界は誤る。

 

「川とかに手がかりを残すとかは……」

「どこだよ……」

「そう、ですよね……――あっ、湖はどうでしょう?」

「――名案だ。手がかりのない今、俺たちが分断される前から共有していた情報。湖を目指していたという事実。外に逃げられない以上は共通認識を頼るのが正解。――流石だな、ベルタ」

「え、えへへっ」

 

 指針が決まった俺たちは湖を目指して進むことにした。

 

――――――――――

 

「辿りついた……」

 

 対処がわかれば目的の方向に進むのは簡単だった。

 元々、山からの俯瞰で湖の場所はわかっていて。

 そして洞窟が地龍の通り道(アヴァムギーヴ)と通じていたことでそこを起点に簡易的な地図は組み立てられた。

 トリフィッデントの行動は弱ったところで殺しにかかるというモノと、森から逃げようとすれば阻むというモノ。つまり奥へと――自ら死に寄る愚か者(おれ)たちに対して手は出さない。

 弱らせようと道を違わせようとはするものの、根元を見て無視すれば関係はなかった。

 

「……誰も、いませんね」

「まあ、多少のズレだろう」

 

 必ずしもオタギたちが先に着くということはない。

 むしろ、分断された時に俺たちが森の奥の方へと逃げたことを考えれば俺たちが先に着くのは必然といえた。

 

「で、でもどこで待てば……夜になったら野宿、ですか?」

 

 森と、湖。

 昨日のような洞窟はない。

 人間は俺と、ベルタ。

 俺はともかく、彼女は戦えない。

 1体2体ならまだ良いが、それ以上は必然的に群れであり、彼女の実力から考えると厳しい。

 夜営をし、交代で寝る。というのができないのである。

 

「まあ、どうにかするよ」

「どうにかって……」

 

 戸惑うベルタを無視して夜営の準備をする。

 モンスターは全てではないが、動物と同じように火を嫌う傾向があり、モンスター以外でも火を――煙によって虫が避けられるため火は必須だ。

 

「ベルタは自分の身を護ることだけ考えておけばいいよ。攻撃はよほどのとき――俺が指示したとき以外はせずにひたすら自衛。万が一の場合もすぐ逃げるように」

「……はい」

 

 まあ、そう言われて素直に受け入れるのはムリよなぁ、性格的に。

 でも俺の実力的に『守るから最後まで耐えろ』なんてこと、言えないし。

 どうしたもんか。

 

「最悪、死にそうになったら切り札使うか……」

 

――――――――――

 

 視点は変じてオタギたち。

 ヒイラギたちと分断された少しあとの話。

 

「これはアカンなぁ」

「くそッ……」

「……これからどう動きますか?」

 

 なんとか根の雨槍から逃れ、追手となるモンスターたちからも逃げきった3人。

 けれどやはり森の外には出られず、森の中でひたすらに遭難するだけ。

 

「逃げる以外ないだろう。こんな場所では俺たちの体力が持たん」

「そうやねぇ……。あの2人も見捨てるしか…………」

 

 情ではなく、合理で動かなければならない。

 目的は調査であり、2人の救出ではない。情報の持ち帰りが第一だ。

 情をかけて全てが上手くいく保証があればまだしも、自分たちの命すら曖昧なこの状況でそれは意味をなさない。

 合理と目的の合算。人や友人、仲間としての情。

 それらは秤にかけることすら行われない。

 

「もし生きてても探されへんなぁ」

 

 一番付き合いがあるオタギが、むしろ一番付き合いがあるからこそ先陣を切ってヒイラギを見捨てる。

 

「しかし、どうなさいますか? 森を抜けられず同じ場所を周り続けるだけですが」

「まず気ぃつけることはトリフィッデントやない? どう考えてもアレのせいや思うけど」

「だろうな。だが気を付けるとしても擬態を見破れるか?」

「そこ、やねぇ……」

 

 どんな非合理だろうと、どんな合理だろうと。それを実現に至らせる具体性を持たなければただの戯言。

 逃げるとして、どうやって?

 助けるとしても、再開する方法は?

 トリフィッデントに気をつけるとして、何に気をつければいいのか?

 理性と知性をもってして、方向性は現実となる。

 

「ところでだが、お前たちは方角を把握しているか?」

「してへんなぁ」

「申し訳ありません。逃げる時に感覚が狂ってしまって方角把握ができていません」

「……全員ダメか」

 

 ただでさえ方向の狂う環境下。

 それを防ぐためにずっとしていた魔力操作はトリフィッデントの一件によって回せるリソース的な問題で不完全となってしまい、既に狂っていた。

 一度狂った感覚をこの環境下で正すことは難しく、手がかりがなければ期待はできない。

 

 

「来た時の道を探して辿るか?」

「いえ、それは恐らくムダかと。我々が長時間迷った理由、トリフィッデントの仕業と考えれば納得もできます」

「なるほどなぁ。そういうことかぁ」

「だとしてどうする? このままでは森の養分だろう」

「手段は2つやなぁ。1つは妨害なくす、1つは感覚戻して光景無視して進む」

「……どれも難しいですね。妨害をなくすとして感知されないか原因を排除するか。周囲の微細な魔の変動を感知し、適応するモンスターを相手にそれは難しいですし、排除もどこにいるのかがわからない以上は難しいでしょう」

「感覚を戻すのも手がかりがないだろう」

 

 狂った感覚は、その環境から抜け出す。あるいは現実の地形と方角を正しく認識することで戻せる。

 けれど森一面のこの場所ではその手がかりもない。目印になる大きなモノはなく、光が満ちる森では陽の光から方角を知ることもできない。

 計器は環境ゆえに使えず。

 ここは広大な閉鎖環境。

 

「空に助けを求めるか?」

「どうでしょうね。近くならばともかく、距離が開くと感覚異常で認知できませんからむしろモンスターを引き寄せて逆効果なのでは?」

「調査範囲の広さ考えるとムリや思うわ。不確定要素抜いて自力がええ思うよ」

「地理は森と地龍の通り道(アヴァムギーヴ)と湖。後ろ2つは場所がわからん。……そもそもどっちか片方でもわかればそこから感覚修正はできるか」

 

 必然で動く。偶然には賭けない。

 かといって方針も未だに暗闇の中。

 

「……お二人はトリフィッデントを複数相手にすると仮定し、勝てますか?」

「ムズいなぁ」

「万全な状況と仮定しても手が足りない。あの二人がいれば、あるいは」

「そうですか……」

「どないしたん?」

「視覚情報から、恐らくそうではないか、という見分け方を見つけました。それが正しければ恐らくは入り口に近づくほど数が増えます」

「本当か?」

「ええ。木に擬態していますが劣化による樹皮の剥がれがトリフィッデントには見受けられません」

 

 トリフィッデントは樹木系の、モンスターだ。

 そして周囲の木は、魔的要素は持ちつつも基本は植物。

 つまり、周囲の木は――樹皮は死んだ細胞。

 それに対してトリフィッデントの最外部、樹皮の部分は質感こそ普通の樹皮だが本質がモンスター。

 直後ならばともかくとして、死んだ部分や切り離された部位はドロップを除いて消滅するというその特性上は樹皮に見える部分は『死んでいない』。

 死んでいるよう(じゅひ)に見える生きている(モンスター)部分。

 その違いは劣化などによって観察すれば見分けられた。

 

「……ウチにはわからんわぁ」

「俺もだ。流石は調査員だな」

「ありがとうございます。……そういうことなので、迂回自体は可能ですが外に出るのは殺そうという特性や単純な密度の問題で不可能です。ただし内部には調査に入ることができます」

「わざわざ中入るん?」

「私たち3人だけでは出られないのです。であれば合理に従って賭けに出るのもアリかと」

「2人探しに行くゆうこと?」

「ええ」

 

 勝敗が筋肉だけでは決まらないように、戦いも個人の武力だけでは決まらない。

 それを可能とするのはアデルのようなごく一部の武人だけ。

 強くはあるが突出はしていない3人では枝葉という膨大な手数を持つモンスターを相手に勝てはしない。

 逆に、多少弱くてパーティの平均戦闘力を下げようとも、一定の武力を持ちつつ人員として存在することで勝てる戦いもある。

 今回はそれがヒイラギとベルタであった。

 

――――――――――

 

 時は戻り、湖の2人。

 湿った土のうえで荷物に座らせ、コートを羽織らせて立ち込める冷気から身を護らせるヒイラギ。

 

「息を潜めて待機してろ。ただし何かあったら知らせろ」

 

 渡したのは双子魔石。

 正しくは――護掌腕環の片割れ。

 万が一の際は、魔石を砕くようにと。

 そうすれば近場であればすぐにわかる。

 声が聞こえなくとも駆けつけられる。

 距離が開けば環境的にムリだが、距離を開けるつもりはない。

 

「どこか行くのですか?」

「…………オシッコだ」

「あっ、はい」

 

 キメ顔でそう言って、離れる。

 

「『支配下以外のモンスターが近づけば排除しろ』」

 

 あえてトリフィッデントに近づく。

 弱った姿を見せなければ唐突に襲われることはない。

 全身を魔力で覆い、動物の威嚇のように威圧することで自衛を。

 そして【洗脳】でモンスターを支配下に置く。

 いかに強大なモンスターだろうと、魔術への耐性を持たなければ倒すことができる。

 加えていえば、ヒイラギの【洗脳】はその中でも耐性は特殊性を求められるのだ。

 つまり、安全の確保。

 

「たでーま」

「おかえりなさい。――っくゅ」

「……今のくしゃみか。随分と可愛らしいくしゃみだこと」

 

 陽光による熱の乏しい森の中。

 水辺ということもあって冷気は強く、細身で筋肉の少ないベルタでは発熱不足。

 

「す、すみません」

「寒いの苦手?」

「その……はい。昔から……」

 

 防寒具がわりにマントを渡す。

 が、今度は俺が寒くてくしゃみをしてしまった。

 

「薪は少ないから火力は上げれないし……うーさむさむ」

 

 両手を焚火にかざすが両腕が寒く、温まった手の平で冷えた腕を温める繰り返し。

 

「や、やっぱりお返しします……」

「いいよ。支援がなくなるとこっちが辛くなるし」

「じゃ、じゃあ一緒に……」

「それで良いなら俺はありがたくそうさせてもらうけど……ムリすんな」

「……ムリじゃないです!」

 

 意を決したような声音でベルタが俺身体を引き寄せ、同じ布に包まる。

 マントもコートも彼女に渡し、装備を除けばインナーの長袖一枚だったため冷気が遮断され、人の暖気が満ちたその中は非常に居心地が良かった。

 

「こんなに冷たくなってしまって……すみません」

「それ、鎧だから」

「え? ……あっ、す、すみません!?」

 

 比熱の違いがあるのだからそりゃあ、冷たいわな。

 

「てか、むしろベルタの方が冷たすぎないか?」

「そ、そうですか? ……もう感覚が麻痺しているのでしょうか?」

「……ちょっと触れるぞ?」

「え――んっ」

 

 筋肉量の有無で俺の身体はすぐに温まり、ベルタの体温を抜いていた。

 熱の放出もあるにもかかわらず未だに震える彼女を見かね、彼女の腕に手を当てる。

 

「気持ちいいです」

「冷たすぎて心配になるわ……」

「冷たく、ないですか?」

「冷たいけど横から常に冷気浴びせられるくらいなら一気に温めるのが楽」

「……んッ」

「んぎゃッ!?」

 

 なぜか唐突に両手を当ててくるベルタ。

 あまりの不意打ちと冷たさに声が出る。

 

「ベルタって、意外とやる時はやるよね……」

「え、えへへ」

 

 ただのネガティブな少女という印象は少し変わっていた。

 

「まったく……」

「少し……楽しくて……」

「……」

 

 声音の変化。

 気になって視線だけをベルタに向けると、目がとろんとしていた。

 見るからに眠そうだ。

 俺も眠くなってくる。

 安全場所にはしたとはいえ何があるかわからないから寝られないが、ベルタを寝かせるくらいなら問題ないだろう。

 

「……たまにはいいか」

 

 実年齢はわからないが、見た目が年下だからか。

 自分よりも弱いからか。

 はたまた強い相手だろうと【洗脳】でどうにかなるという安心からか。

 ベルタに対して不快感はなかった。

 そして気づけば無意識のうちに彼女の頭を撫でていた。

 かかる体重。

 彼女の身体がゆっくりと落ち、身体が防寒に収まりきらなくなる。

 

「ふっ……」

 

 眠るベルタの頭を太ももに乗せ、布を彼女の身体に被せる。

 細く柔らかな髪、滑らかな肌。

 ほんの出来心から指先で少しだけ、弄んでいた。

 

 キモイな、俺。




 護掌腕環のヤツはここでの活躍予定はなかった
 けど書いてるうちに使えることに気づいたから一応出すことにした
 意味はない。フレーバー程度だと思う
 後々どうなるかは知らんがな


 ベルタ 年下

 ヒイラギのことを強くて優しい人だと思ってる()
 口下手で表現がアレなだけでイイ人と思ってる()
 まあ、根底がクズでも社会の中で擬態している間は善人には違いはない。本質と評価はイコールじゃないからね、仕方ないね
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