※この作品はR-18です。

固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~   作:レイジー

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第二七話 業火に散る無数の生

 合流を目指す3人。

 目標は湖。

 少ない共通認識の中で、当初目指していた場所がそこだからだ。

 遠方からでも視認できるほど巨大なため、そこにたどり着けば多少の位置ズレは許容できる。

 

「……血のニオイ?」

「本当か?」

「はい。近いと思います」

 

 漂う強い死臭。

 量は少ないが確かな血の匂いが鼻を突く。

 

「2人やないならええんやけどなぁ」

 

 不吉なことを発するオタギに2人は苦笑しながら進み、ヴラスタの制止で息を殺す。

 その頃には2人にも死臭は感じ取れていた。

 まさか、そう思って周囲を見渡すが見える範囲に人間の死体はない。

 ただ、不自然なほどにモンスターの素材が多かった。

 散乱する魔石、散らばる角や毛皮や血肉。

 パッと見だけでもその数は40を優に超える。

 

「これは……」

「一体どういう……」

 

 誰が見ても異常な光景。

 そして2人とは別にヴラスタはもう1つ違和感を読み取っていた。

 目の前の異常はある地点を中心に広がっている。それはトリフィッデント。

 モンスターを中心にして屍が広がっている。つまりは倒したのはトリフィッデントだ。

 が、おかしい。擬態するにもかかわらず残骸の処理をしていない。

 これでは疑ってくださいと言っているようなもの。

 それが一体だけではなく、距離を開けて何体も行っている。

 総数は数百を超え、範囲によっては一〇〇〇を超えるだろう。

 

「慎重に進みましょう……」

 

 理由は定かではない。

 けれど近くに何かがあるのは確実。

 極力異常から距離を取るようにしながら進む。

 そんな中、鼻を焼けた肉の匂いが通った。

 

「もしかして……」

「おいおい……」

 

 まさかという考えを抱きつつも否定できない現実を感じ。

 進むとそこには探していた2人がいた。

 

「よっす。今肉焼いてっから待ってくれ」

 

 なんてことないように肉を焼き続けるヒイラギ。

 そこには大量のエアレーの死体と、生きたまま動かないエアレーが数体。

 咄嗟に身構える3人だったが、片手を向けて制止し、そのままエアレーの頭を撫でる姿を見せると3人は警戒を残しつつも脱力した。

 

「どういうことなんだ?」

「ま、この際言うけど俺の固有能力は【洗脳】っていってな。簡単に言えばこいつらは俺の支配下にある」

「私の【威光】と似ていますね」

「こっちのが数段エグいと思いますけどね。威圧で能力低下させるどころか操作すらできるんですから。実に俺(あくにん)向きの能力だと思いません?」

「はい? 使い方次第では?」

 

 そんな返答に一瞬僅かながら表情の変化を見せたヒイラギだが、すぐに取り繕ったような笑みを見せる。

 

「にしても、よく生きてここまで辿りつけたなお前ら」

「ああ、それは主にベルタのお陰だな。具体的には――」

 

――――――――――

 

「で、このあとどうする?」

「どう? 脱出だろう?」

「元々の目的は?」

「……この状況ではどうしようもないだろう。これはもう遠征と変わらん」

「そっかぁ……一応手がかり見つけはしてるから次の手がかりって感じか」

 

 まあ、明らかに戦力不足だもんな。

 それに原因だとして今の調査隊全体の編成って多分戦力じゃなくて調査での割り振りだろうし。

 

「…………?」

「あの、今なんと?」

「手がかりのこと? いや、向こうにそれっぽい変なのがいるんですよ。元凶なのかどうかはともかく露骨に他のとは違うやつ。方針が調査続行なら普通に話す予定でしたけど帰るなら調査書に書けばいいかな、って。記憶が明確なうちに言っておいた方がいいですか?」

 

 俺の場合は能力で強制的に記憶を呼び起こせるけど一般的に考えたらそれがいいか。

 時間経過で記憶が薄れるし、場合によっては無意識に記憶の捏造するかもだし。

 

「確認にだけ行かせて貰ってもいいでしょうか?」

「それくらいなら俺たちでも充分だろう。戦闘は許可できないがな」

 

 戦力を見極め、判断を下すピム。

 恐らくその判断の中には俺の【洗脳】も含まれているのだろう。

 それ自体は構わないし、実際使えるモノ全てを使うのは当然。

 ただ、形容し難い不安があった。

 

「調査のためって言ってあまり近寄りすぎないでくださいね?」

「もちろんです。引退した身とはいえ引き際は弁えています」

 

 返答に安堵し、俺たちは腹ごしらえののちに事前にモンスターを【洗脳】することで発見していた以上地点へと向かった。

 そこにはトリフィッデントらしき樹木系モンスターがいて、それは巨大だった。

 イメージでいえば低木林の中に高木が交じるような状態。

 太く、高い木に似たモンスターが周囲を枯らすようにそびえ立っていた。

 

「明らかに……異常ですね」

 

 擬態する気がなく、周囲を枯らせば警戒して生物は寄りつかない。

 そして周囲には謎の霧が立ち込めていて、それは洞(うろ)から生み流されている。

 

「ヴラスタさん、何かわかります?」

「……いえ、少なくとも私の知る中にあのようなモンスターや状態は……」

 

 長居はするまいと少しの観察ののち、離れて訊ねる。

 けれどギルドで働いていても知らないことであり、未知の事象――つまり対処が困難ということを示した。

 

「――あれ、2人は?」

 

 後ろから順に距離をとってきたから後衛のベルタや調査員のヴラスタさん、そしてそれを守る役目の俺はそこにいた。

 けれど中衛のオタギ、前衛のピムがいない。

 周囲を探すが、いない。

 

「え? ……そういえば」

「――さっきの場所に戻りましょう」

 

 ヴラスタさんの判断に従い、巨大トリフィッデントの前まで戻る。

 するとそこには虚ろな表情で、ゾンビのようにゆらゆらと中心へと向かう2人の姿があった。

 

「おいッ!? 何してんだ!!」

 

 明らかな異変。

 咄嗟に叫ぶが、返事はなく静寂のみが答えを返す。

 

「『止まれ』ッ!」

 

 【洗脳】によって2人の歩が止まった。

 そして同時に新たな異変に気づく。

 

「――干渉してる?」

「はい? どういうことですか?」

「……【洗脳】は矛盾した命令を出すと反発し、発動の際に込めた魔力量に応じてその優劣が決まります。その時に感じる能力の反発を……感じました……」

「――すみませんがベルタさん、少々実験に付き合っていただけませんか? 大事なことなのです」

「? わかり、ました?」

「?」

 

 どんな答えに、思考に行き着いたのか。ヴラスタさんはそういってベルタへ協力を仰いだ。

 

「ヒイラギさん。ベルタさんになんでも良いので行動を促す【洗脳】をしてください」

「はい? じゃあ『グー・チョキ・パーを繰り返して』」

「……『止まれ』」

 

 指示に従いジャンケンの予備動作をひたすら繰り返すベルタ。

 そんな彼女にヴラスタさんは【威光】でその行動を止める。

 反発を感じた。

 

「なるほど。恐らくは精神感応――行動に影響を及ぼす何かがあの2人にはかかっているのでしょう」

「俺の【洗脳】に近い何か、ですね。――『元に戻れ』」

「ヒイラギさんはそうやって指示を出すことで取り消すのですね」

 

 正直、俺の能力を明かすことにはまだ恐怖が残っている。

 全員が全員俺を受け入れてくれるわけではない。受け入れなかった人間は遠ざかるだろうし、一部は排除しようとするかもしれない。

 だから。まだ全て真実にすることはできない。

 

「ええ、言葉に魔力を乗せる。それが能力の核です」

 

 これも、嘘だ。

 能力の熟練によってシンプルな内容なら俺の認識だけでも発動ができる。

 言葉はいらない。

 

「そ――」

 

 ふらりと、視界の端を銀光がよぎった。

 

「ベルタ?」

 

 油断をしていた。

 距離依存の精神感応だと思っていた。

 けれどそうではなく、ベルタはトリフィッデントの支配下に。

 恐らく原因は霧だろう。

 それが立ち込めない、木々の生えた場所なら問題ないと距離をとっていたが、成分は不可視、霧ではなかった。

 ただの副産物だったのだろう。

 

「『止まれ』ッ!」

 

 瞬間的な硬直。

 けれど止まらない。

 弾かれ、効果が破壊された感覚。

 気づけば2人も再び動き出していた。

 

「――重ねてください! 『止まれ』」

「――『止まれ』ッ!」

 

 ヴラスタさんの指示に合わせ、能力を重複させた。

 矛盾のない、同じ指示。

 一手目にて萎縮し、二手目にて完全に止まる。

 

「恐らくは私たちには耐性があるのでしょう。可能性としては固有能力の性質ゆえ」

「なるほど。3人はそうではないから防ぐことができなかった、と」

「ただでさえ特殊な環境。そこに合わせて効果の特殊性。一般的な方なら耐性は皆無と考えた方がいいでしょう」

「……とりあえず3人を回収しましょうか」

「ええ」

 

 持っていたロープを使い、3人を絡めて引き寄せる。

 今の位置よりもさらに距離をとり、時間経過で意識を取り戻すのを待った。

 

「――」

「――」

「――」

「よう、寝坊助ども」

「……すまない」

「さて、どうします? もう少し調査したいっていうなら、まあ、1つ案はありますけど」

 

 数分。

 それが狂った感覚だから正しいかはさておき、体感で数分。

 3人が目覚めた。

 

「案、というのは?」

「俺にロープを括りつけ、俺が単身で霧の中に突っ込みます。様子がおかしいと感じたらその時点で一気に引っ張ってください」

「……であれば調査員の私が――」

「多分能力の特性的に一番耐性が高いのって俺なんですよ」

「……ですね」

 

 俺の【洗脳】とヴラスタさんの【威光】。

 同じ精神感応系だが、様々な点で違いがある。

 今回でいえば恐らく能力耐性が高いのは俺の方。

 その理由としては効果の発動力や詳細性だ。

 【洗脳】は対象に命令を下し、相手の抵抗力と競い勝った場合にのみ成功し、効果を発揮する。

 【威光】は対象に無条件で効果を発揮する。ただし、その効果は相手の抵抗によって減衰する。

 イメージとしては抵抗の乱数で成功すれば効果を100発揮するのが俺、100の効果量から相手の抵抗分だけ数値が引かれるのがヴラスタさん。

 俺たちでは計算式が違う。

 

「申し訳ありません。お願いします」

「任されました」

 

 そして、ヴラスタさんの能力は主に相手の力を削ぐことに特化している。

 俺は操作という広い内容のため弱体化だけではなく、強化もできる。

 身体強化などとも能力が反発しないためより高い効果量を見込めるのだ。

 

「お前らも、俺に何かあったら頼むわ」

「おう。さっき足引っ張った分そこは任せろ」

 

 ピムたちにそう頼み、俺は腰にロープを結んで霧の中に身を投じた。

 位置は俺を先頭にして霧の力に抵抗できるヴラスタさんが前に、残り3人はそこから更に引いた位置でロープを握ってヴラスタさんの指示を待つ。

 

「ピリピリするな……」

 

 能力の反発。

 打ち勝ち、自我を保てているのがわかる。

 

 明らかにヤベー感じがするけど、なんだろうな。

 元凶っていうには状況が合わないし、別件か?

 

 エアレーとトリフィッデント。

 異なるモンスター。

 今回の件には関係がない。

 そう思えるが、この辺りにはエアレーが多いうえに実際エアレーを【洗脳】して得た手がかりがここだった。関係ないとは思えない。

 

「……あっさりと洞の入り口までたどり着いたな。一応ヴラスタさんに確認するか」

 

 抵抗は打ち勝ち続け、俺は少し距離を取ってからジェスチャーでこれからどうするかを尋ねた。

 ヴラスタさんは流石に中に入られると様子が窺えないから、と入り口から中を覗くだけにしてくれと仕えてきた。

 

「オッケー、じゃあ軽くお宅拝見――……」

 

 中には大きな、一体のエアレーがいた。

 大きな、とはいっても元の大きさが小さめなうえに木の内部ということもあって体高は2メートル程度。

 そんなエアレーは木の枝――触手に絡めとられ、根が張るように浸食をされていた。

 

「どうでしたか?」

「……主観ナシ、事実だけの列挙で言えば。内部にエアレーがいて、木の触手に捉えられていた。周囲には羊膜とも果皮ともとれる何かに覆われたエアレーの胎児が大量にあった」

「――寄生、でしょうか」

「俺もそう思いましたけど、実際そうしてなんのメリットが? トリフィッデントがエアレーを増やしてるのだとして、寄生の意味が……」

「アレはモンスターです。通常生物の寄生とは同じと考えない方がいいでしょう。あくまでも行動原理は人間を殺すことです」

「……ですね。すみません」

 

 通常であれば寄生の目的は養分であったり、繁殖であったり。

 けれどモンスターは普通ではない。合理を既知の中で探すだけムダなのだろう。

 

「恐らくは特殊個体として生まれたトリフィッデントが、同じく特殊個体として生まれたエアレーを捉えて特殊個体を増やしたのでしょう」

「……倒しますか?」

「軽く様子を見て、無理そうなら帰りましょう」

 

 どういった攻撃が通じるのかを調べるのも調査の一環。

 俺たちは遠くから洞の中へ向けて火を放ち、様子を窺った。

 結果として、ゲームでいえばボスのような風体の巨大トリフィッデントはあっさりと消滅した。

 業火が内部で暴れることでトリフィッデントもそれを消そうと動いたが、周囲を枯らし殺していたために無に囲まれたまま火は延焼し、それが魔石周辺へとたどり着くことで一気に姿を消した。

 内部にいたエアレーたちも一気に焼き消え、後には魔石と少しの素材だけが残ることに。

 苦難の果てにあったのはなんの感慨もない作業のような終わり。

 燃え尽きたのを確認した俺たちは空き地で霧を吹き晴らし、残った素材を調査のために回収し、そのままベルタとヴラスタさんの観察で面倒を回避しつつどうしようもない部分は俺の【洗脳】で切り抜け、森を出て。

 そしてそのまま山頂まで帰った。

 どうやら一部の他班もまだ帰っていないらしく、俺たちは何があったのかを軽く説明し、そのまま街へと帰ることに。




 盛り上がり? ねえなぁ?
 苦痛に苛まれても何も起きないってのも一興ですな
 そもそも今回の件ってデカい流れの序章にすぎないし
 プロローグよ、言ってしまえば

 ヒイラギ:TRPGの抵抗ロール(ヒイラギの魔力-相手の精神)%みたいなのをやって
      成功したら効果発揮。効果量は色々な要素で変動(割愛)
 ヴラスタ:効果量―精神力。王道を往くアルテリオス計算式
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