※この作品はR-18です。

固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~   作:レイジー

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 チャージ期間ナウ
 書こうと思ってもすぐにやる気が抜けるからチャージ期間だと思ふ


第二八話 特訓

「だぁ……」

 

 テーブルに突っ伏す。

 何もやる気が起きない。

 

「……んぐぅ」

 

 街へ帰った俺たちは、情報精査のためにしばらくの待機が命じられた。

 探索自体は可能だが、他の街への移動は一時的に禁止。

 やれることはあるのだが、やる気が起きない。

 あんなことがあったのだからしばらく探索はいらない。恐怖とかではなく、単純に疲れたのだ。

 

「はぁ……」

 

 勉強をしてみたがやる気のせいか習得が遅く、疲れも早い。

 だから今勉強をするのは諦めた。

 

「おはようございます、ヒイラギさん」

「ん、おはよ」

 

 何をするでもなく、ただただ無気力にいるとベルタから声がかかる。

 彼女も一件での疲労から大規模な探索へ行くつもりはないがお金を得るために探索に行くとは言っていた。

 けれど今日の彼女はラフな格好だ。

 完全なオフ姿ではないが、少なくとも防具は身に着けておらず、内に着る戦闘着(バトルウェア)は纏っている。

 

「ヒイラギさん、昨日の件は……」

「ああ、訓練な。いいよ、どうせヒマだし軽く付き合うくらいはする」

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

 調査から帰った時、ベルタから鍛えてくれと頼まれていた。

 その時は考えると保留にしていたが、やる気の欠けた今なら新たな風を入れてやる気を取り戻すのにも、教えることで自分のためにもなるだろうと承諾することに。

 

「とりあえずベルタに足りないのは色々あるけど俺がパッと教えられそうなのは体術・剣術・探知・魔適応・判断能力だろうからそこを鍛える。それ以上は自力でやりな」

「はいっ。頑張りますっ」

「今からとして、その格好でやる? それとももう少し守る?」

「……このままでお願いします」

「じゃ、行くか」

 

 実際こいつの習得力ってどれくらいなんだろうな。

 ま、暇つぶしに教えるだけだし覚えられようが覚えられまいがどうでもいいか。

 

「具体的に教える方法とかは知らないから組み手で大体覚えてもらう」

「はい」

「基本は俺の動きを見て覚えろ。体格も骨格も好みも違うから全部真似するんじゃなくて動きを分解して自分に組み込め」

「はい」

「俺が提供するのは全身鎧。あとはお前が好きな部位つけろ、必要に応じて自分用に改造もしろ。――やるぞ」

「よろしくお願いします!」

 

 構える。

 拳を緩く握るベルタに対し、俺は軽く指は曲げつつも手は開いた状態で手のひらをベルタに向ける。

 じりじりと距離を詰めるベルタは約3メートルの位置で攻撃を仕掛けてきた。

 ほんの僅かに前側の足を滑らせ、沈むようにしつつ残した後ろ側の足で前へ加速、維持できる低位置に達した瞬間一気に足先に力を込めて爆発するように加速。

 距離をゼロにして拳を放った。

 

「はい、ダメー。予備動作を消すための動きってのはわかるけど、わかっちゃダメだからな? 沈むな、落ちろ」

「ッ、はい!」

「あと少なくともそのレベルで使うなら正面向いた状態では使うなよ~。よっぽどのザコならともかく、ある程度の実力があれば正面向いてりゃ実力で勝ってても防がれるから」

「すみません!」

「使うとしたら動作の中に組み込むイメージな。それまでとの緩急で目の前にいながら姿消せ」

「わかりました!」

 

 攻撃における予備動作は先読みされる要素の1つだ。

 先読みをされれば速度で上回ろうとも行動を先回りされる。

 であればどうすればいいか。予備動作をなくせばいい。

 だが言うは易く行うは難し。

 未熟なベルタはその域には達していなかった。

 

「姿勢制御が雑。攻撃を弾かれた時の退き方、距離に応じた詰め方がバラバラすぎ。実戦でできるとは言わないが軽く流してる訓練の時くらい動作を定型化しろ」

「ッ――」

「まずは一定の枠組みを作ってその中で動け。それ以上を目指すのは基礎を組んでからだ」

「はいッ」

 

 体幹自体はそこそこ鍛えられている。

 強めに弾いてムリな体勢に追い込んでも倒れずに立て直せる。

 問題は動きが統一されていないこと。

 たとえば、70センチ先で最も威力を発揮するパンチがあるとしても距離が60センチだと十全には発揮されない。

 間合いと動き方を自覚しないまま攻撃をしても一手の意味が軽くなるのだ。

 

「踏み込みが甘い、全力で打ちたいなら軸を意識しろ。小柄なんだから力の効率運用は他の人よりも強く意識するべきだ」

「っ、はい! すみません!」

「次の一手への繫ぎは意識できてる。この組手が終わったら型稽古でもするか」

「はい! ありがとうございます!」

 

 戦況判断力はともかく、こういう組手での判断力は悪くなさそうだ。

 思考深度はそこまで深くはないけれど素人みたいな浅瀬ってワケでもない。

 ……今は潜り方を探ってるって感じか。

 顔の位置が水面ギリギリで呼吸できたり、戦闘に集中すると呼吸できないってのでその恐怖でイマイチやりきれてない感じがする。

 戦いでいえば思考から普段の雑念を一段階振り払う感覚が慣れてないから違和感、ってとこか。

 

「褒めたからって油断すんな! 戦いなんだから全体に意識向けろッ、これ見よがしの手に引っ掛かってんじゃねえ!」

「ゥッ!? ――すみません!」

 

 少し大げさに引いた右腕。

 それに意識を割かれたベルタは俺の脚に気づかずに足払いを受け、地に背を預けることに。

 

「オラっ、休むな休むな。休憩っていうまで休憩ナシだ。今からは組手後の動作修正の時間だ」

「す、すみませんっ」

 

 徐々に上げたスピードに食らいつくように無理をしていたベルタは大きく体力を消耗していて、倒れたまま起き上がらずに荒い呼吸を繰り返していた。

 だが強くなりたいと教えを願って来たのだから安い弱音は俺が許さない。

 容赦なく脇腹を――レバーの位置を蹴りつける。

 

「まず真っすぐ立つ。んでそのままこの位置目掛けて打つ全力ストレートの体勢に――ハイそこ。肩ごと肘をもう少し――ストップ、次に脇をもう少し閉めて――オケ。あとは腰を落とし過ぎだからもう少し上げて――うん、で爪先の向きを両方とも少し内側に――よし。そのまま一歩でこの位置を踏んで俺の手にストレートを打ち込んで」

「――いきます!」

 

 荒い息のまま構えるベルタに姿勢を変えさせ、そのまま一撃を受ける。

 力としては全力には程遠い。

 瞬間的に発揮できる体力を消耗して全力の7割すら出せていないはずだ。

 けれどその一撃は俺の手をパンッと弾いた。

 

「――」

「それでいい」

 

 ニヤリと笑ってみせる俺。

 ベルタはそんな俺には目を向けず、信じられないとばかりに握ったままの拳をジッと見つめていた。

 

「正しい動きってのは、ちゃんとやれば体感でわかるだろ?」

「はい。……初めての感覚、でした」

「これが実戦でできるワケじゃねえけど、これを知ってるのと知らねえのとじゃ訓練の仕上がりが違うからな。別れた後も正しい動きは見極めろよ」

「――はい……」

 

――――――――――

 

「食えるか?」

「ぅっ……頑張ります……」

 

 テーブルに広げた大量の料理。

 そこに俺は追加注文で隙間をなくし、ベルタの吐き気を加速させる。

 

「食えなくても食え。無理矢理詰め込め。身体強化で内臓を強化して全力で食え」

「……」

 

 身体の強制的な増強。

 魔術による治癒、再生は肉体を鍛えるには効果を弱める。

 だから俺は考えた。

 間接的に肉体を治せば効率的に鍛えられる、と。

 そうして試した結果が、身体強化で内臓機能を――消化機能などを強化し、細胞の再生速度も高めれば肉体が強固に鍛えられると判明した。

 

「ほらほら~、食って食って~」

「うぷっ……油が……」

「ありゃ、油っこいの苦手? んじゃそういう系は俺が食うとして」

「っぁ……ヒイラギさんは……どうして、そんなに食べることができるんですか?」

「慣れ? あとは単にコツ? 体内で魔力の壁を作って胃の活動以外でも食ったモンを混ぜる。ンで腸の方に送って一気に吸収? ちなみにロクに鍛えてない、ダメージ皆無の状況でやると無意味に太るから注意な」

 

 胃の中でかき回され、お粥状になる食べたモノ。

 それには普通なら時間を要するが、上手く魔力を運用すれば時短ができるし、それができれば次のステップに進める。

 

「体内……えっと、ええぇ……」

「あ~、手ぇ貸してみ?」

「はい」

「魔力の感覚に意識を集中して。じゃ、やるぞ」

 

 ッッ――?!

 ヤベェ、頭が割れるッ。

 なんだよこれ、文字通り認知の次元が違う!?

 ダメだ、要らん情報は捨てろ、余計なモンは捉えるなッ!!

 

 ベルタの体内に魔力を通す。

 以前のような【洗脳】による干渉ではない。

 彼女の回路に直接介入する、神経を辿るような行為。

 彼女の回路は俺が普段魔力を使う時に捉えている高次元とはまた異なる方向かつ階層も異なる次元。

 積分され、膨大に増加した情報の濁流が脳を侵す。

 それこそが部分的とはいえ魔術種(エルフ)を上回る魔術力を持つ『晶角種』の力。

 介入可能な次元数が普人種とは、俺とは違う。

 俺ではどうにか押しつぶされないようにと色々切り捨てて大河を小川に変えることでしか適応できない。

 

「――ぁっ……。ざっと……こんな感じってモンよ……」

「ありがとうございます。おかげでなんとなくわかりましたっ」

「そりゃ……よかった」

 

 接続を切ってなお、高次元が脳裏をチラついた。

 鼻をすすると血の匂いと味がする。

 魔術を使えば暴発する感覚があったから傷ついたどこかしらを治しはせず、鼻を指で押さえることに。

 

「?」

「鼻血出ただけ、気にすんな」

「あ、なら――」

 

 そういってベルタは俺に手をかざし、魔術で治してくれた。

 

「ありがとうな」

「いえ……」

「……治すの上手いよな」

「これしか、特技がないので……」

「? そうでもないだろ。筋肉のつき方がキレイだから動くには良いし、姿勢も整ってるし、未熟ってだけで考える意欲も頭もある。それに振るい落とすつもりで今日一日やってたけどちゃんと食らいついてきたし、俺ぁそういうやる気のある奴は好きだぜ?」

「――ありがとうございます」

 

 これは嘘じゃない。

 比較対象にすらすべきじゃないが、俺の中で一番根強い価値観は前世の人間。

 今なら同郷組の奴ら。

 ロクに何をするかを話し合わずにギャーギャーと騒ぐだけの能無しども。

 それに比べたら遥かに良い。

 ちゃんとやる気があって、素直で、弱くはあるが将来性は感じる。

 

「特技って自分で認められるのはまだそれだけかもしれないけどよ、俺からすりゃあ今言ったの以外にも色々あるんだ。腐るんじゃねえぞ?」

「はいっ」

「ん。じゃ、続き食べようか」

「……はいぃ……」

 

 褒めてばかりだと己惚れるかもだからちゃんと持ち上げたら突き落とさないとな。




 ヒイラギが好ましく思う人間の特徴
 ・素直 ・元気 ・物静か ・理性 ・イジメ甲斐がある などなど
 とはいえ基本はオールオッケー
 嫌いなタイプじゃなければ多分受け入れられる

 嫌いな人間の特徴
 ・バカ ・無意味にうるさい ・自分の答えに応じて現実を捻じ曲げる人間 など
 最後に関してはどれだけ間違っていると指摘され、説明を受けても主義や感情で現実を都合よく捻じ曲げる人間がいたから(親) 
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