※この作品はR-18です。

固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~   作:レイジー

32 / 35
 R18タグ詐欺になっていたここしばらく
 ようやくR18シーン書けた
 あ、ちょっと描写的に読み手を選ぶ可能性があるからそこだけ注意です


第三一話 勢いに身を任せましょう

「っとと、すみません、大丈夫すか?」

「わわわ、なんとかセーフ」

 

 立ち上がったタイミングで運悪く近くを通ろうとしていた誰かと接触し、背に何かがかかるのを感じながら振り返った。

 

「セーフじゃないじゃないすか。せっかくのお酒がかなり零れちゃって」

「いーよいーよ」

「店員さーん! これと同じの2つ!」

 

 そこにいたには病的なほど細い女。

 錆色の三つ編みにソバカス。くたびれた服から覗く浮き出た骨格。

 触れれば不意の力加減で折ってしまいそうな虚弱性は見るだけで不安になる。

 

「え〜、いやぁ、ゴメンねぇ。お酒ぶっかけちゃった挙句におかわりまで貰っちゃってさ〜」

 

 引きこもりを思わせるほど不健康に白い顔を酒熱で紅く染めながら残った酒を一気に飲み干す女。

 

「俺の不注意だから謝らないでくれよ。にしてもそんなに飲んで大丈夫か? 強めの酒だろ?」

 

 服と身に染みる酒の匂いから度数はかなり高い。

 それを一気に。

 自殺にならないラインで早死を極めようとしているようにしか思えない身体つきと生き方に思わず素で心配になる。

 

「ダイジョブダイジョブ〜。お酒で死んだことないからさ〜」

「評価基準ンン……」

 

 本来であれば最終ラインである死が途中経過でしかないという恐怖に思わず苦笑する。

 とはいえ実際、自分もいずれは敵の強さに自分の命を含めるであろうことを考えると強くは言えない。

 

「オイシーから死んで本望〜! おにーさんはお酒嫌い?」

「嫌いではないが飲むようになったのって最近だから慣れはしねーなぁ。それでも飲むけど! ダハハ!」

「お〜、イイね〜、酒飲みの才能ある〜」

 

 通常の飲み物の種類に比べ、酒は種類が圧倒的に多い。というより普通の飲み物の種類が圧倒的に少ない。

 アルコールの解毒が容易かったり、アルコール耐性の強さもあるし、時代感ゆえの子どもでも酒が問題なかったり成人年齢が低めかつ地域差があるのもあって酒がかなり一般的なのだ。

 

「あ〜っ、昼から飲む酒はオイシーな〜」

「今夜だぞどうなってんだ」

 

 見ているだけでもかなりのハイペース。

 途中で休憩が入るとしても、無茶がすぎる量と時間だ。

 

「ありゃ〜? 1日経っちゃったか〜」

「……ん? 数時間ではなく1日と数時間?」

「自由に時間が使えるのは幸せですな〜」

「こっ、怖い!」

 

 支払いをギルドカードでやっていることから先輩なのだろうが、敬意など微塵も湧かないどころか恐怖が圧倒的。

 モンスターと命のやり取りをする以上の恐怖に脂汗が滲む。

 

「怖くないよ〜? ほら〜、お酒飲んでみ〜? すぐ良くなるよ〜?」

「色々スゲぇな」

 

 胃が排水口と直接繋がっているのではないかと思うほどの飲酒量。

 魔術を使っていないのだからそれは素の酒耐性だろう、という事実が背筋に不可思議な感覚を浴びせた。

 

「そんなに酒が好きならオススメの酒でも教えてくれよ」

「おっ? 興味ある? いーよ〜、いっぱい飲も〜!」

 

 系統はどうであれ、自分にはない経験を持った人間。

 自分も関係なくはないし、興味もある部分だから楽に知れるなら、と不用意に訊ねたのが失敗だったろう。

 仮にも丸一日以上を酒に費やすガチ勢。

 ガチ勢への軽率な興味の示しはどのジャンルであっても基本は自殺行為。

 

「飲むぞ〜」

「お〜」

 

 幸いだったのは酒のダメージが緩やかで自覚症状が薄かったことだろうか。

 いや、それは不幸にも、かもしれないが。

 

―――――――――――

 

「ぅぁ〜……飲みすぎた……」

 

 脳を灼く熱。

 自覚できるほどの酩酊。

 魔術で治そうとし、手がそれに待ったをかける。

 

「せっかくお酒飲んだんだし、治しちゃもったいないよ〜」

「そぉかもなぁ」

「今日一日だけでもいいからお酒に身を委ねてみよ〜」

「お〜!」

 

 熱は引かず。

 量を増す。

 吐いた息に理性が混じり、取り込む空気で熱が加速する。

 

「にしてもはえーなぁ。開拓兵だろ? 平気なのかよ」

「ヘーキヘーキ! 昔タンマリ稼いだから〜」

「ワハハ! なら大丈夫だな!」

 

 浮いた思考は制御なしに感情を発露させた。

 

「キミは大丈夫ぅ? アタシに付き合ってムリしてない?」

「問題ナぁシ! 酒で死ぬていどの金はあ〜る!」

「頼んでるお酒高いよぉ?」

「……あっはっはっはっは! 確認し忘れたぁ!」

「アッハッハ!」

 

 その言葉通り、頼んでいたお酒と引き換えに支払いをしようとした時、残高が足りずに処理エラーが出た。

 

「ははは、困った困った! まいっちんぐ」

「仕方ないなぁ、ここはアタシが払ってあげよ〜ぅ」

「ははぁ! 感謝いたしますぅ!」

 

 軽い調子で頭を深く下げるヒイラギと、その頭を撫でる手。

 そしてすぐ切り替わり、酒に手をつける。

 アル中が勧めるお酒なだけあって、相応の値段だけあって質の高い酒。

 それを飲み、支払いができないということで酒飲みは幕をおろした。

 

「あ〜っ、フラフラするぅ〜」

「酒飲み上級能力ぅ【酔いどれ歩法】ぅっ!」

「あはははは〜っ」

「ギャハハハハッ!」

 

 千鳥足でフラつく姿に対して下らない冗談を放つヒイラギ。

 そんな冗談ですら二人には爆笑ネタであり、夜闇の喧騒に二人の笑いが混じる。

 

「おっとっと」

「やめられない止まらない?」

「うひぃ、もう歩けましぇぇん!」

「仕方ないなぁ。テッテレー! 介助士ヒイラギくん〜!」

「ヌハ〜ッ! 酒と男の極上の匂いだぁ〜」

 

 フラついたままその場にへたり込み。

 それを抱きかかえるヒイラギ。

 抱きかかえ方と相まって姫を相手にするかのごとく丁重に触れ。

 自分が弱っていて拒絶されないだろうことをいいことに胸へ顔を押しつけて力強く深呼吸をし、匂いを堪能する。

 

「久々の上物だぁ〜ッ」

「予期せぬモテ到来!」

「イイよぉッ、イイ具合に濃い匂い! ハスハス」

「息がくすぐったいだろ〜、ヤメレ〜」

「ハスハスハスハス」

「こっちも嗅ぐぞこの〜」

「ぃや〜、臭いの嗅がれちゃ〜う」

「ハスハス……ハスハスハスハス」

 

 場所をはばからず匂いを嗅ぎ合う二人。

 幸いなのは夜で誰も見ていないこと、仮に誰かがいても夜ということで大して気にしないことだろう。

 

「……」

「……」

 

 嗅ぎ合う二人はやがてより濃い匂いを求め合い、胸から脇へ、頭から首筋へと移動し。

 超過し、目と目が合う。

 

「んぁ……」

「ぁ……」

 

 互いの頬を掠める吐息。

 熱を帯び、そして酒気帯びた空気。

 直前まで大量の酒を飲んでいたからか、そこに興奮重なったからか、酒に口をつけるかのように銀糸が架かった。

 

「えっち」

「ダメ、か?」

「ンっ……これでイイ?」

 

 下唇が僅かに舐められる。

 それを答えとして、二人は宿へと向かい、枕を重ねた。

 

「待って、脱がないで」

「わかった」

 

 服を脱ごうとし、待ったが入った。

 そして服を着たままのヒイラギに抱きつき、匂いを堪能し、服の中へ潜り込む。

 

「えへへ、汗でベタベタする〜」

「しゃーない」

「ん〜、興奮する〜!」

 

 汗が絡み合い、粘着質な動きになる。

 

「くすぐったい」

「ビックリした? 乳首責め〜」

 

 不意に一方が舐められ、もう一方が指先で弄ばれる。

 自分がすることはあってもされることはなかったため違和感が強く、羞恥心が弱火でふつふつと沸き立っていた。

 

「反応が悪いね〜。気持ちよくなかった?」

「……」

「およ? ⸺うへへっ」

 

 言葉を返さないヒイラギが気になり、服の中から顔色を伺い。

 紅く染まって顔を背ける姿に彼女は心底嬉しそうにはにかむ。

 

「もう、いいだろ」

「ん〜、仕方ない! 初めてじゃあまり感じないだろうしこれで許してあげよ〜」

 

 口が離され、ぬらぬらとした乳首に吐息が当たることで生まれる冷気を感じつつそれに安堵をしていると不意に指先で優しく弾かれたもう一方の刺激によってビクと身体が跳ねる。

 

「んへへっ」

「……なんだよ」

「別にぃ?」

 

 意地の悪い表情を浮かべながら服の中から出て、ゆっくりと顔が近づけられ。

 応じて引き寄せられ、ほんの僅かな時間だけ舌先が交わる。

 

「キミのチュー、えっちだね」

「そっちこそ。キスの表情がそそる」

「こんなに硬い、ってそれはさっきからずっと、だもんね〜」

「相手が魅力的だからかな」

「アタシってば罪な女〜」

 

 にへらと笑うと抱擁が外れ、二人の間に距離が作られ全身が再び見えるようになる。

 汗で張りつく服。

 片や厚くなりつつある胸板が、片や控えめな乳房が浮き出て、お互いの熱を特定箇所に集中させた。

 

「えいッ」

 

 興奮が臨界を迎え、ムードもへったくれもなく唐突に服を脱ぎ捨てた姿に呆気にとられるヒイラギ。

 やはりというべきか細身の外見通り服の内側も同様、それどころか想像以上に痩せぎすで肋骨が浮き出て見え、胸が控えめなこともあって胸骨の形も少しわかる。

 

「キミも早く〜」

「はいはい」

 

 促されるまま服を脱ぎ、お互いに全裸になる。

 

「興味津々だね〜」

「興奮する」

 

 髪よりも深い錆色の陰毛は並びは整いつつも濃い。

 ゆっくりと手を伸ばし、触れればモサと少し硬い感触が伝わり、茂みの中の秘所に指先が至った。

 

「濡れてる」

「うひ〜、恥ずかし〜。って、キミもちょっと垂れてる〜」

「じゃ、お互い様だな」

 

 目先に上げた濡れた指先。

 頬を赤らめ笑う彼女に見せつけるように指先を舐め、汁を味わう。

 

「も〜。……ちんちん触っていい?」

「いいぞ」

「ありがと」

 

 ゆっくりと手が伸ばされ、指先が触れたかと思えば一変して握りこむ手の感触に快楽と恐怖が同時に襲いかかる。

 

「握りつぶさんでよ?」

「ダイジョーブだよ〜、たぶん」

 

 確かめるように様々な刺激を与える手の感触。

 頑張ってくれているのならそれに集中しようと胸に伸ばしかけていた手を宙に留め、ベッドに向かわせ、手淫の邪魔にならないようにと体勢を整えた。

 

「色々反応見れて楽しいね〜」

「気持ち良く、しようとしてくれてるんだ。カッコつけて我慢するより素直に反応見せるほうがいいだろ?」

「ありがと〜、そういうのすっごくイイよ〜」

 

 手の圧力、上下のストロークやその速度、回転を加えるかどうか、手のひら全体か指で輪を作るかなどの触れる面積、片手か両手かなどの違いで反応を確かめられ、顔が染まる。

 

「ちなみに俺は匂いで興奮する性質持ちです」

「アタシのは〜?」

「ちんちんおっきっき」

「わ〜い」

 

 誘うように脇が開かれ、蒸された空気が放たれる。

 ヒイラギは誘蛾灯に惹かれた虫のごとく脇へ鼻を近づけ、深く吸った。

 

「わぁ、ホントだ。すっごい、硬い……」

「理性が溶ける」

「ね、舐めていい?」

「? いいぞ」

 

 色に満ちた剛直。

 とどまることを知らない透明のアルカリ性の液。

 色移りした彼女は興奮のまま求め、ヒイラギはそれに応じて血管の浮き出た円筒を顔の前へ差し出す。

 

「濃い……」

 

 それまで立ちのぼるだけだった淫臭が直接眼前へと突きつけられ、唾液が堰を失ったように口際から下へと伝ってしたたり落ちる。

 

「ッ……興奮しすぎて吐息だけでイきそうだ……」

「ダメだよ。ダメ、絶対ダメ〜。ガ〜マ〜ン〜して〜」

 

 そんなこと許さないとペチペチ叩く姿に思わず笑いながら絶頂を我慢する。

 とはいえ最近シていなかったことと、何よりも今の興奮で長い堰をできないことをヒイラギは理解していた。

 

「んぐッ!? ……思っはより、大きいね」

 

 一息に咥え込み、涙目になる姿にさらなる興奮が湧き出す。

咥えたまましゃべり、思ったよりもしゃべりづらかったのか1度口から出した彼女は深く息を整え、覚悟を決めたように再び一気に咥え込んだ。

 

「別にいきなりじゃなくても痛ぁッ!?」

 

 好きにさせろとばかりに腰に伸ばされた指先が腰肉を抓んで痛覚を激しく刺激した。

 

「わかったよ……」

 

 ゆるやかに続く痛みにヒイラギは苦笑混じりに彼女の望むようにさせることに。

 野暮、というモノだ。

 

「んッぐ……んんッ……んっ」

 

 根本まで咥え、激しく音を立てる吸引は二人の興奮を増幅させる。

 静寂の中に満ちる色の吐息と淫靡な音。

 閉じた退廃の空間をただそれだけが支配する。

 

「きもひぃ?」

「気持ちいいよ」

 

 大きな動きに揺れる髪。

 細くしなやかだが長時間を酒と過ごした結果少し皮脂で汚れた彼女の髪を指先で触れるヒイラギは、髪が邪魔にならないようにとゆっくり髪を横へ移動させる。

 目にかからないギリギリの前髪、長い横髪。

 揺れて顔を撫でるそれを横で抑えるさまはまるで無理やりしているようだと感じたヒイラギはその興奮を股間に反映させ、その反応から思考を読み取った彼女もまた昂ぶらせていた。

 

「ぅッ、イきそう」

「ぃ〜よぉ、イっちゃえ、くひにらひひゃえ」

 

 激しさを増す。

 快楽のための動きから、搾り取るための動きへ。

 

「イくぞ、イく。⸺ッッ」

「ん゛ッ゛」

 

 膨大な色欲が解き放たれた。

 煮詰まった白濁は、煮詰まってなお口から溢れそうなほど大量。

 いや、数回ノドが動いたのを考えれば本来は溢れていたのだろう。

 

「⸺」

「うわぁ、えっろ……」

 

 口を大きく開けて白を見せつける彼女は、ヒイラギの意識がそこに集中しているのを理解すると口内のすべてを呑み込んだ。

 鳴る大きな喉音。

 開かれ、見せつけられたそこは空。

 僅かに残った粘性が大きく開けられた口に太い銀橋を架けている。

 そして不意に出たゲップ。

 

「あ、あははははぁ……流石に恥ずかしいや」

 

 そこそこ整った顔からは想像できない下品な行為と羞恥の表情は再びの昂ぶりを見せた。

 

「ちょちょっ、口に出したんだしすすがないと⸺」

「いま、シたい」

「んっ。いいよぉ」

 

 我慢などできるはずもなく、今さら気にする必要もなく、欲のままにキスをする。

 唾液が絡み、舌が交わり、肌の境界が失われる。

 

「キミ、意外とモテる?」

「あ〜? ん〜? 経験自体はあるけどモテはしないな。セックスの結果に変なのに執着されるってのはあるけど」

「そぉ? モテると思ったんだけどなぁ」

 

 好かれる、という概念の遠いヒイラギはこれまでを思い返すが、基本が【洗脳】ありきでやっているためモテと違うと首を横に振る。

 

「ま、俺のことはいいじゃん」

「え〜? お互いを知るのも大事だよ〜?」

「じゃ、どういうプレイが好きか、教えてくれよ」

 

 欲を発散し、ピークをすぎた二人は倦怠のままベッドに倒れ込み、見つめ合う。

 

「色々好きだよ〜。激しいのも好き、ゆっくりなのも好き、一方的なのも求め合うのも好き、見下されるのも好き、だけど苦しいのはちょっとイヤかな〜?」

「なるほど、軽めか」

「キミは?」

「……よくわかんないけど、多分、くっつくのは好き」

 

 異性の好みであれば『会話が成り立つ』『人間性がマトモ』など挙げられるが、冷静に考えれば好きな性行為やそのシチュエーションは考えたことはなかったと至るヒイラギ。

 

「そっか〜」

「うん。くっついてるのはなんとなく落ち着くから好きなんだとは思う」

 

 ヒイラギがそう答えると彼女はヒイラギの目をジッと見つめ、静かに抱きついた。

 ぬち、と汗ばんだ肌が湿った音を発し、ぬちゃ、と粘る股間が糸をひく。

 部屋に漂う絶頂と発情の淫臭。

 

「ほんとだ」

 

 背に回した手への振動と、耳にかかる風でそれを理解したのだろう、そっと耳元で理解を示す。

 

「じゃ、色々試してみよ〜!」

「お〜!」

 

 そう発し、彼女は上半身は密着させたまま下半身だけ後ろへ引き、ヒイラギの股間へと手を向けた。

 ゆっくりと刺激され、猛り立つそれを彼女はゆっくりと自身の秘所へとあてがい、少しずつ奥へと向かわせる。

 それがトン、と奥へ触れたとき、彼女は動きを止めた。

 

「動かしちゃダメ。合わせてね」

「⸺」

 

 答えるよりも早く口が塞がれる。

 より粘着質に、よりいやらしく、味覚と触覚と聴覚の限りを尽くして扇情を高め。

 雑多な情報を失った感覚は今得ている情報から少しでも多くを、とそこへ神経を集中させる。

 粘る音は詳細に、雑ざる味は鮮明に、触れる舌は強烈に。

 そして動かない下半身に伝わるのは圧迫感と、キスによる身のよじりで生まれたわずかな振動だけ。

 快感は倍増し、僅かな刺激が強烈に転ずる。

 

「ふぅぅ〜」

「んっ」

 

 息継ぎ。

 離れた口が横へとズレ、不意に耳へ吐息が当たる。

 気づかぬうちに理性は溶解し、休憩を挟んだとはいえ絶頂直後の再絶頂。

 締め忘れた蛇口から溢れる水のように、自分が射精をしていると理解するまでの10ほどの時間、そこから白濁が漏れていた。

 

「ん。きもちぃ?」

「はぁっ、はぁっ……きもち、いいとか、わかんない……」

 

 動作皆無。

 にもかかわらず、体力は普通よりも消耗していた。

 射精量は1度目よりも、それどころか普段の行為時よりも圧倒的に多い。

 逆流する精液はぶぴゅ、ごぷっ、と音を発して溢れ、ぼとっ、とベッドへ落ちる。

 

「流石にちょっと恥ずかし〜な〜」

「俺、もっと、恥ずかしい、んだけどっ……」

「わー、顔真っ赤っか」

 

 動かないまま果てるという初めての経験、しかもそれが無自覚の吐精かつ普段よりも多く、その事実は手玉に取られたと羞恥を加速させる。

 

「よしよ〜し」

「くっ……殺せ……」

 

 羞恥の赤を抱擁する彼女。

 極まりない感情の昂ぶりに思わずそう発する。

 

「かわいいね〜」

 

 誘導されるは双丘の頂。

 横向きに体勢が移動され、そのさまは赤子。

 

「し、死にてぇよぉ……」

 

 とは言いつつも、抗えないこの状況を受け入れることにしたヒイラギは差し出されたそれへ吸いついた。

 舌先で先端を、そして輪郭を撫で、全体を軽く吸う。

 吸ったまま再び2つの工程を繰り返し、吸引を解く。

 

「うぇへへ」

 

 見上げるように視線を彼女へ向けると奇妙な表情で口角を緩ませヒイラギを見ていた。

 それを形容するなら、愉悦と喜びの混ざった感情が漏れ出たような。

 例えるなら妄想が実現したときのような、しんな表情。

 

「ど〜ぉ?」

「幼児退行してる気分です、ハイ」

「イヤ? やめる?」

「イヤとは言ってないでしょーが! もうちょっとこのまま」

 

 理解できない感覚を求めてヒイラギは続ける。

 それは、普段のヒイラギではまず味わうことのない感覚。

 それは、ずっと知らない⸺物心ついた時から常に欠如していた母性。

 あるいは包容力。

 理知的ではない姿を受け入れてくれるという包容、まるですべてを受け入れるかのような包容。

 

「よしよ〜し」

「ふぅ……」

 

 ヒイラギはそれを理解しておらず、ゆえにその感覚もなぜそうなっているのかもわからない。

 が、その感覚を⸺受け入れられることを受け入れた。

 

「いや〜、甘やかすのも乙なもんだね〜」

「もう、どうにでもなぁれ」

「じゃ、次はキミに動いて貰おうかな〜」

 

 にへら、と屈託のない笑みを浮かべる彼女に不意にドキとしつつも彼女の望むままに細い彼女を持ち上げ、嵌合する。

 

「軽ぃ……メシ食えメシ」

「あはは、食べても吐いちゃうからさぁ〜」

「口移しで食べさせてやろうか?」

「何を食べたらそんなやらしーこと考えつくのさ〜。でも吐いたら申し訳ないしイイよ〜」

「こっちの飲ませたんだ、おなじおなじ」

「じゃ、お願いしちゃおうかな〜」

 

 軽口のように軽く振舞うヒイラギに彼女はそれに合わせるようにして冗談として振舞う。

 

「上からなら多分イケるからな。下はムリだが」

「上? 下? ……あ〜、流石にアタシもさせられないかな〜」

 

 基本的に苦手なプレイはほぼないと自認しているヒイラギだが、汚物であるため明確に無理認定である。

 

「イケてギリおしっこかな」

「アタシも~。気が合うね~」

 

 積極的に、というワケではないがプレイの一環としてなら、程度の認識。

 そこを含めて意見が合う二人は話の流れに従って互いの陰部に口づけをしあう。

 チョロ、という始まりから堰が切れたようにジョボボボッと放たれる。

 長時間酒を飲んでいたからだろう。

 摂取したアルコールは処理しきれず一部がそのまま残り。

 二人は尿酒を残さず呷ることで正しく淫蕩――酒色の限りを尽くし酔いを加速させる。

 

「げふッ」

「げぇぇプふっ」

「ダハハ! 俺よりデケェげっぷだな!」

「あはは~、出ちった」

 

 流石に恥ずかしかったのか羞恥の表情(かお)を見せる。

 それは美人と形容するのが相応しい彼女の可愛らしさを示し、ヒイラギは少し呆気にとられた。

 

「どったの?」

「いや、よくわかんないけど……胸の痛み? 不整脈?」

「なんだねそれは~。ま、いいや。ちゅーしよ、ちゅー。ほら、ちゅ~」

「ん」

「んっ」

 

 尿臭い息。

 けれどそれが確かにお互いに飲み合ったのだ、と興奮を昂らせ。

 どちらも軽くで済ませるはずだったキスがねちっこく絡み合うモノへと舵をきった。

 

「おね~さん、キミのこと好きになっちゃった」

「――俺もだよ」

 

 嘘か真か。

 そう返したヒイラギの心臓が再び痛みを発した。

 ギュウと締め付け、ズキリと痛む。

 けれど無視し、交わる視線を切る。

 口を離した二人はそのまま抱擁を続け、むしろより密着し、髪を交わらせて体温と鼓動を感じ合う。

 1分、2分。――10分、20分。

 感情が相対性理論で時間を捻じ曲げ、長い抱擁を一瞬のモノへと縮めた。

 

「ね。愛してる、って言ってみてよ」

「――愛してるよ」

「んふふ~、アタシも~。だぁいしゅき~、あいちてる~」

 

 すりすりと頬を擦る彼女のもたれかかりに従ってゆっくりとベッドへ背をつける。

 そして二人は緩やかな動きで挿入し、緩やかに快楽を伝え合い、果て。

 離れることなく寝入る。




 まあ、新規キャラとの脈絡ナシ行きずりックスなんだけど
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。