固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~ 作:レイジー
次に目覚めたとき、そこは街だった。
建物の中、聞こえる声からギルドということはわかるが、記憶は皆無。
「……ねむ」
続く眠気に二度寝を決め込み、しばらくして再び目を覚ます。
「頭痛い……」
完全に脱水症状だった。
魔術で水を作ろうにも痛みと寝起きの頭で集中できなかった。
仕方なく部屋を出て、階段を降りるそこには見知った顔がチラホラといた。
「おはよ〜、辛そうだね〜。二日酔い?」
「近いかもしれん……」
「はい、お水だよ〜」
「……あいしてる」
受け取った水を瞬く間に飲み干したヒイラギはそのままテーブルに突っ伏す。
「何日経った?」
「まだ1日も経ってないよ〜」
脱水症状から数日と考えたヒイラギだったが、それは眠る前にほとんど水分補給をできていなかったためである。
「水ぅ……」
「ゆっくりね〜」
「はぁい……」
のそりと身体を持ち上げたヒイラギは言われたとおりに少量ずつ口に含み、染み込ませるように飲んだ。
「サラダいる〜?」
「食べる……」
ごく自然に口元に差し出され、当然のように受け入れる。
「…………結局、どうなったの?」
「例の子から色々聞き出して、おおよそ問題解決して帰ってきた感じ〜」
「ちゃんと終わったんだな……。あとはあいつをどうするかと黒幕がどこか、か」
サラダを食べつつ会話をすることによって脳が活性化されたのか徐々に意識を取り戻すヒイラギ。
「……むぅ。めんどくさい」
「よっ、なにダレてんだ?」
「……誰?」
「ハハハッ、別に会ったことあるわけじゃねえよ。お前に助けられた有象無象、ってな」
その男をきっかけに、同じような開拓兵がヒイラギのもとへとやってきて、次々挨拶をしていく。
「いきなりぶっ倒れたからこうして無事目覚めて一安心だな」
「はは、心配かけたのか? スマンね」
「謝んな謝んな。それだけ頑張ったってことだろうが。頑張った奴が謝んじゃねえって」
「そうか。じゃあ、謝らんわ」
あくび混じりにそんな態度で笑う。
「……めんど」
口をついて出たその言葉。
いちいち礼を述べられること、今後のギルドとのやりとり、そのほか今後生まれるであろう面倒、これまでに抱えてきた面倒。
それらが包含された憂鬱の一言は誰の気に止められるでもなく霧散した。
「ヒイラギくん、話はあるので来ていただけますか?」
「あ〜ハイハイ」
声をかけられ、死んだ目で立ち上がる。
連れられるままについていき、案内された先に入ると見知った顔があった。
「こうしてみるとデケェな……」
手下である彼女を改めて見るとその大きさに気づく。
大きい、といっても2メートル超えではなくおおよそ180センチ強。
だが自身を10は上回るのだ、大きいには違いなかった。
「さて、早速だが本題に入ろう。キミは彼女を自身のモノとした、相違ないかい?」
「合ってます」
「では我々は彼女をキミの『奴隷』として扱う。つまり彼女が問題を起こした際の責任はキミがとるんだ。それが受け入れられないのなら彼女の処遇はこちらで決める」
「あ〜、ハイハイ。りょうか〜い、道具として所有権認めっから管理しろってね。それくらいはわかってまっせ。ちゃんと責任はとりますよ」
寝起きに行われる硬いやりとり嫌気がさしたヒイラギは意図的に軽薄な振る舞いをする。
「……ところでモンスターをなぜ自分のモノにしようと?」
「特に理由は。あえて言うなら顔が良かったから? あとモンスターの中身が気になった?」
「──そうか、わかった。彼女を連れて行くといい」
「あ〜い」
繋がれていた枷が外され、ヒイラギは彼女の手を掴んで退室する。
(彼女、ねえ。人として扱ってるってことなのか、なんなのか。ま、興味ないし関わることもないでしょ)
「手、離して」
「ん〜? 嫌なら振り払えばいいのに〜」
「わかってんだろ。振り払えねえんだよ」
振り払えないのはそれをすれば反抗という扱いになるからだろう。
「くはッ、笑えるな」
「私は笑えない」
「……そういえば、お前名前ってあるのか?」
「ジッケンタイミストシュウソクシキフクゴウタイナナゴウオーベントリア」
「? ……実験体魔素収束式生成体複合型7号オーベントリか。んじゃ、ナオで」
「なんでもいい」
ナオという名前を受け入れた彼女にヒイラギは適当な服を渡す。
「とりあえず露出多いしこれ着ろ」
「めんどくさいわねぇ」
「夜まで我慢しろ」
「へぇ? ところで私はこれからどうすればいいのぉ?」
おもしろそうに、からかうような笑みを顔に貼りつけてヒイラギの顔を覗き込むナオ。
浮遊能力を持っている彼女は床から少し浮き、たまに床を蹴りつつスケートのように周囲を回って神経を逆撫でる。
「本心のない表情は──ああ、お前はそれが仕方ないんだったか……。まあいい、今後お前は俺の所有物だ。前も言ったが離れることも誰かを害することも許さん。俺の駒として動き、生きろ」
「イヤ。つまらない」
「拒否ができるとでも? 指示に背けば命令する、食事を拒絶すれば強制する、生きることから逃げれば再度命を与える。逃げ場も何もない。あえていえば従順にしていればある程度の自由は保証する」
「そのために奉仕しろって? 貴方みたいなのをなんていうか、私知ってるわよ? ペドフィリア、でしょ?」
「……生まれてそんな間もないのか?」
「数カ月」
「お、おう」
精神は時間経過と経験で形成される。
それが未熟ということで生後間もないことはわかっていたが、想像よりも遥かに幼い事実に絶句するヒイラギ。
加えていえば、それしか時間を経ていない相手に隊が苦戦したという事実が背筋を凍らせた。
「……封印している記憶を明かせ」
「? 急にどうしたの?」
「いや、消したか封印してる記憶でもあるんじゃないかって思ってな」
「このような能力ゆえ自分自身で、あるいは生み出した者の手によって記憶処理が行われていると考えた。相違ないだろうか?」
「ああ、一応……歪めた記憶や認識を正して明かせ」
「記憶修正、創造主の容姿を復元、性別は両者男。鼻と角の大きな男と老いた中年。意識修正、創造主の一方と類似した雰囲気によって抱いていた名称『ヒイラギ』への悪感情を一部除去。悪感情によって歪められていた容姿認識を修正、言動に対する修正。その他多数の認識を修正──完了」
「あ〜、普通に生きてりゃそりゃ眠るだけでも記憶の改変はされっからなぁ……」
人間誰しも記憶違いは存在する。
欠けた記憶を埋めるために捏造し、捏造した記憶のつじつま合わせのために正しい記憶も改竄する。
当然の行為、自然な行為。
そのすべてを修正したとすれば量は膨大。
生後数カ月といえどもすべてを口にすれば場合によっては経験した時間を上回る時間を要する。
「これまでに質問した中で、付け加えること、修正することはあるか?」
「そうだね。1つ、彼らの目的だが、曖昧な記憶をそのまま言えば『かつて……私たち……今は……アウグストゥス……再び……国を……』とは言っていたな。何せ生まれるよりも前、機器の中に封じられていたときの記憶だ、曖昧なうえにガラスと液体に隔てられて鮮明ではないのだ、すまないな」
「ええい、口調がウザいっ。とりあえずなんとなくは理解したっ。それ以外はないな?!」
「ない」
「よし」
そうして聞き出した情報。
アウグストゥスは『オーガスト』を聞き違えたのだろうと判断したヒイラギは以前の繋がり、盗賊事件に生まれた関係を利用することにした。
売った恩をここで使うのはもったいないとは思ったものの、放置すれば少し面倒臭そうと考えて恩を消費することに。
「行くか、ルートヴィヒ」
次の目的地を定めたヒイラギ。
もちろん直接行く気はなく、あくまでも最終地点をルートヴィヒと定めたうえでの途中2つの街を楽しむ計画だ。
「別に抵抗したっていいんだぜ?」
「私、魔術が主体。封じられてる今、力で敵わないのわかってる」
「つまんねー」
能力で束縛し、魔道具で大気の魔力をかき乱す。
ナオに残っているのは見た目相応の筋力。
鍛えてない細い身体だけ。
「抵抗すれば悦ぶ。抵抗しても変わらない」
「ハハハッ」
そういうナオだが、彼女は気づいていない。
心と肉体は乖離することを。
自身の眼がヒイラギを睨みつけていることを。
「さあ、夜が明けるまで愛し合おう」
「愛? くだらない。そんな得体のしれないモノ」
「俺も大してわかってねーけどよ、多分大体の奴がわかんねーまま口にしてるってのは最近気づいたぜ?」
愛など曖昧で、そうでないなら世界がこんなにも愛で満ちているワケがない。
愛がヒイラギの思っていたような高尚で尊いなら愛はもっと希少だ。
「だからんなモン気にすんな。要は俺に本気で愛させてみろ、そうすりゃ『俺の手綱を少しくらいは握らせてやる』って話だ」
「愛は鎖?」
「そこまで重苦しかねーよ」
抑えつけた手首をゆっくりと離し、腕をゆっくりと背に回し、身体を起こし上げる。
「ま、わからなくていい。なんせ今は──調教の時間だ」
脳への絡みつかせるように耳元で囁き、直後のキス。唾液を送りこみ、飲ませて自分の味を刻み込ませる。
そして同時に背とは反対の空いた手で尻を揉む。
「気色悪い……」
「一度は許してやる。今後、その手の言葉をこういう場面で使うな。ツバを飲んだら美味しいとでも言ってろ」
「は、なん──ぐぃッ!?」
口答えをしようとした瞬間、腹が殴られた。
一度振るった拳を、理解させるようにグリグリと押しつけるヒイラギ。
「は、はは、モンスターの私が、殴られるだけで従うと──」
「ああ、だろうな。だから不可避の恐怖を与えてやる。お前は俺に殴られるたびに最悪の不快感を与えられる。だ」
ヒイラギ自身の認識も、ナオの意地も関係ない。最も不快、強制的な地獄。
「ぇ……」
「一発試してみるか」
「ゃ……──ぅっ……」
軽く殴る。
ただそれだけでナオは地獄を幻視した。
「お、効果テキメンじゃーん」
生後一年に満たない存在の恐怖と不快、ましてやモンスターというこの世界の人間とも前世の人間とも自分とも異なる精神性の存在。
想像すらできないが、その表情だけで十分だった。
「あっ、あっ……」
「くふっ」
絶望の表情。
絶叫するようの口を大きく開けるが、出るのは僅かな呻きだけ。
一瞬、その眼に涙を見たが、それすらも幻覚。
表情と声だけで視覚を惑わすその表情にヒイラギは心底愉快そうに唇を歪める。
「やめて……おねがい……こんな……」
ブレる焦点。
口角からは唾液が垂れる。
痙攣する身体と声。
パチパチと漏れる魔力を目に、ヒイラギはふとした興味から乱魔の魔道具をオフにした。
「──」
まるで高音が度を越して可聴域を過ぎたように、口から放たれるのは僅かな空気のみ。
吐き終えてなお続く無音の絶叫に意識は手放された。
「お、おい? そんなに効果強いの? お前……なんなんだよ……」
所詮はただの不快感。
現実と幻覚の区別は明確につき、大切な人を失う幻覚を現実と誤認することはない。
そもそもが不快感だ、認識を歪める力はほとんどない。
あったとしても悪口を向けられる、そんな幻聴程度だ。
「起きろ」
迷った結果、一応精神の確認をすることに。
「ひぃッ!」
「なんだその悪魔でも見たような……最悪の不快感を与えられたらそりゃ悪魔認定か……」
「やめて、殴らないで、逆らわないから、おねがい!」
「あ?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ。叫んでごめんなさいッ」
異常な恐れ具合に多少の不快感を感じるもすぐその理由に納得し、どうしたものかと後ろ髪を掻こうと手を持ち上げた瞬間にナオ様子が急変した。
恐怖と支配の狭間で恐怖から逃げるようにプライドを捨てて縋るその姿。
困惑に声を発するとそれは悪化する。
「……さっき言ったこと、憶えてるな?」
笑顔でそう尋ねるとナオは声が出ない状態でコクコクと頷いた。
「よし、いい子だ」
対応を子どもを相手にするようなそれに変えたヒイラギはナオの頭を撫でる。
「じゃあ、それを守れるよな? 守れたらナオが今言ったように殴らないし、優しくもしてやる。どうだ?」
「守れる……良い子にする」
「そう、ナオは良い子だ。他人を傷つけないし、俺のもとから勝手にいなくならないし、俺の言うことをちゃんと聞ける良い子だ。そうだろ?」
「うん……」
子どものように、事実ナオが経た時間は子どものそれだが、大人のような会話能力と子どものような精神性で彼女は頷いた。
「ナオ。お前はナオだ。誰かが造って、それに支配される実験体7号じゃない。ナオだ。俺のナオだ。わかるだろ?」
「ナオ、ナオ……ナオ。私はナオ」
「そうだ。良い子のナオは俺に従えるよな?」
「うん」
何度も自分がつけた名を刷り込み、そして『良い子』と口にさせ、自分に従うと意識に刻み込む。
「そう、良い子だな」
子どものよう、であって子どもではない。
子どもに対するよう、であって子ども扱いではない。
ヒイラギはナオをそっと抱きしめ、彼女の震えが止まるのを待ってから静かにキスをする。
触れるキス。
それを数度繰り返すとヒイラギはキスをやめて至近距離で動きを止めた。
すると今度はナオの方からキスを始め、教えられたモノを真似するだけの触れるキスから舌を使う濃密なモノへと変わる。
「おいし……」
ヒイラギの唾液を吸ったナオはそれを呑み込むと不器用ながら誰かのモノではない彼女自身の笑みを浮かべた。
「それでいい」
「ね、もっとキスしよ?」
「ならいいやり方がある」
そう囁くとヒイラギはナオの股へ手を向け、優しく押し、撫で、揺らす。
「んぅっ」
はじめは違和感に眉を潜めていたナオだったが、複数の相手と行為に及んできたヒイラギの経験からすぐ快楽を覚えることになった。
垂らす蜜とかすかに漏れる嬌声。
「どうして、やめるの?」
止めた手をゆっくりと離すとか細い橋が渡る。
だがナオはそれを引き止め、掴んだ手を股へと引き寄せる。
「これで中をぐちゃぐちゃにするからだよ」
「ゎぁ……」
血の集中したそれを目に、ナオは声を漏らす。
「入れるぞ」
「ぅん」
くち、と滑りのある音が発され、ぬぷと沈みこむ。
「んぁっ」
人を模したモンスターだからか、不自然な生命だからか、どれだけ進んでも破瓜はなく、奥へと達した。
「んっ、んんっ、ぁっ、だめっっ」
奥をトン、トン、と小突く。
「んぶッ?! ──んじゅっ、じゅるっ、っぁは……はぁ……はぁ……」
そして口を重ね、意識をとろけさせる。
「こっちのがいいだろ?」
「うん……こっちが、いい……」
そう呟くとナオはさっきと同じようにキスを求め、ヒイラギはそれに応じつつ腰をほとんど動かすことなく押しつける力の強弱だけで刺激を生み出した。
ねっとりとしたスローな快楽。
それはまるで過冷却のように、自分が絶頂の限界に達していることを気づかせず、100を超えた快楽を蓄積する。
当然それはナオだけでなく、ヒイラギも。
「ぁ──んんんん〜ッッ!!」
「ぐッ! でるッ」
だが限界突破も無限ではなく、溜まりに溜まった快楽は唐突に臨界へたどり着いた。
意思も状況も関係なく、快楽数値だけがタイミングを決める。
ナオは跳ねる魚のように全身をビクつかせ、ヒイラギは堰を失ったような射精とともに両腕両脚の力を失って足を滑らせ、ナオへと覆いかぶさった。
「ぶぎゅっ?!」
「がッ!?」
「あがッ、あっ、あっ、んん〜っ!」
プレスされながら中に吐き出される。
微かな刺激で敏感になった奥底ではその衝撃によってさらなる絶頂を生み出す。
膨大な快楽によって筋肉を弛緩させ、白濁は長く放出。
両者みっともなく意識を溶かし、再起までに時間を要した。
「──死ぬかと思った……」
「重かった」
「それは素直にスマン」
押しつぶされ、思うように呼吸ができなかったナオはヒイラギが退くことでなんとか呼吸をでき、荒い呼吸を少しずつ沈める。
「こんなの……初めてだ……」
同じく荒い呼吸を少しずつ沈めるヒイラギ。
まさしく『腰を抜かした』状態であり、まともに力の入らないヒイラギは全身を使って転がるように横に移動したが、それだけ。
動けそうにないのはナオから見ても明白だった。
「えへ」
「?」
「好き」
ふいに笑うナオへ視線を向けると彼女は少し嬉しそうに笑いながらヒイラギへと抱きついた。
「そうかい」
それが彼女の真意かはわからないが、ヒイラギは今はそれでもいいかと思考を振り払い、ナオを受け入れた。
前話後書きにて素材になった幼児は1歳と書き、今回ナオの年齢について1年に満たないと表記したことについて
まあ、単純に作られてからの年数ですね
素材の幼児ちゃんも処理で精神は崩壊してますし魂もムリな改造によって記憶はほとんどなく残滓程度にしか残ってない。そういう理由でナオの年齢は1年未満、ということ
ちなみにナオがヒイラギの能力によって想定以上の恐怖を味わったのはナオの精神性と能力に起因するものです
周囲の感情などを読めるナオは魔道具で大気の魔がかき乱された中でもその感情自体は読んでいました
そして精神的に幼く、読み取って形成した精神の表層が大人に見えるだけで本人の精神性はまだ素直な子ども
さらにいえば苦痛やその中の最悪というのは個々人や状況によっても変化するワケで、その取捨選択が難しくすべての不快感に対して同じ『不快』というラベルだけを貼ったワケですね
つまり不快感に対しての数値化、強弱表現をできなかったためにナオは『その全て』を一度に味わうことになった、ということです
読み取れる全ての人間の感情、最大の相乗効果で心が屈伏した、というワケです
結果、内部に残った幼児の残滓およびそこに共鳴した幼児たちの精神が寄り集まって幼児退行のようになった、という感じ
魔道具で大気の魔がかき乱されてなかったら?
さぁ? 精神の摩耗で死んだんじゃない?