固有能力は【洗脳】 ~エロ目的に使うしかねえ!~ 作:レイジー
「初めまして開拓兵さん。
「開拓兵のヒイラギです」
「同じくイヴォンヌ」
「同じくメイソンでーす」
早朝。
ルートヴィヒ北門。
合流し、夜が明けるころ出発をした。
ちなみにクランというのはギルドの下部組織というか、ギルド所属の個々人が同一の目的のために結成した独自の組織のこと。
ルヴィスアグナは輸送系クラン。
独自の護衛を有しているらしいが、今回その護衛に欠員が出て補充のために依頼を出したとのことだ。
「イヴォンヌから聞いてるかもしれないけど、今回パーティをお願いしたヒイラギだ。よろしく、メイソン」
「よろしく~。昇格のためにグラーベンシュタットに行きたいんでしょ~? 頑張るんだぞ」
「ああ」
メイソン。
彼女はイヴォンの知り合い開拓兵だ。
俺がパーティを探しているとのことで護衛依頼を受けるのは2人だけだろうと察したイヴォンヌが急遽彼女を応援として呼んでくれたとのこと。
俺の取り分が1割に減り、9割を2人で分けるらしい。
「でもなんで北なわけ? 南のゼーフルスの方が良くな~い?」
「なんとなく! あと商業都市っていうし、色々面白いモン見れっかな~って。ほら、俺って異世界人だから色々珍しく映って」
「ホントだー、髪が変色しかけの面白い色してる~」
「え?」
変色しかけ?
どゆこと?
メイソンの言葉に俺は髪を少し掴んで視界に入るように持ち上げた。
色は黒、朝日に透けて僅かな茶色。
そんな髪がほんの一部、少しだけ白んでいる。
新たに生えた根元ではない。
そもそも根元ならこちらの世界に来て僅かな間でわかるほど伸びはしないだろう。
白んでいるのはあちこち。
場所関係なく、色んな所が白く。
そして時には空色や、緑に変じていた。
「わ、わぁ……」
「気づかなかったの?」
「気づかんかったぁ……何この中途半端、クソダセー」
陽が照るにつれてその変化が晒される。
斑点のような髪色の変化。
異世界人はこの世界に適応するにしたがってそういった変化があるというのは知っていたが、もう既に起きているとは思っていなったというのと、変化を旧常識的に考えてしまっていたため新たに生えた根元からと想定していた。
「細いしすぐ変わるんじゃない?」
「へ~、髪質関係あるんだ」
「知らな~い」
「おまっ……」
適当かよッ!?
キミそういうタイプの人間なのね!?
ひどく自由人なメイソンに振り回されながら歩く。
位置は隊列中央後方寄り。
――――――――――
「護衛依頼ってこんな感じなのな。2人は経験ある?」
「ない」
「1回だけ~」
歩きながら昼食を済ませる。
護衛依頼だけではなく、集団での長距離移動の時はこういうモノらしい。
大量の荷物を馬車(馬以外の生物も
馬車に乗るのは御者くらい。
そして時間を無駄にしないために昼食は事前に作っていたモノを食べる。
そうやって歩き続けて目的地まで向かう。
ちなみにルートヴィヒからグラーベンシュタットまでは約200キロ、約4日を掛ける予定とのことだ。
「メイソンは開拓兵の歴はどれくらい?」
「今が17だから~……6年かな? といっても1年同じ街にいて、そこで移動してまた1年みたいな動きだからそこまで経験はないんだよね~」
「長いな。てか同い年か。ズレはわかんないけど」
「へ~、魔力があまり感じないし身体細いからもっと若く感じたけどヨソからきたなら仕方ないか~」
「一応筋肉あるんだけどまあ、上に比べたらなぁ……。てかその言い方だとメイソンは筋肉あるってことになるけど?」
「一応はね~。見る?」
「是非」
「ほら~」
来ていたコートをバサッと翻し、その中身が見える。
ホットパンツにチューブトップをベースにいくつかの開拓兵としてのアクセサリ。
つまり極めて軽装で、コートの中は肌面積が多かった。
そんなメイソンの肉体――特に腹部が引き締まっていてその点では俺を上回っているように見える。
「うぉ、すっげー。やっぱ肉体美は努力の結晶って感じがして良いよな~」
「ふふん、やっぱわかっちゃう~? 存分に見惚れろ~」
後ろ向きに歩きながら腹筋を見せつけるメイソンはめくっていたコートをそっと放し、今度は俺の服をめくってきた。
俺の格好は少し重めのマントに通常服と片胸鎧や肩鎧などパーツを一部だけの軽装鎧。
腹部を抑えるものはなく、抵抗する気もないこともあってあっさりとめくられる。
「ふむふむ。そこまで余計な肉はついてないけど筋肉もついてないって感じの普通のお腹だね~。腹筋が浮き出てるのは痩せてるからかな?」
「ま、そういうこった。……お腹冷えるんだけど? いつまで見るのさ」
「おへそ近くのホクロがえっちぃですな~」
「そういう趣味?」
「いや~? 特別そうってワケじゃないよ~」
じゃあなんなのさ。
てかホント腹冷えるからやめーや。
男って案外お腹弱いのよ? こっちの世界の人間はそうでもないの?
「ヒイラギはどーゆーのが好きなの?」
「俺? 俺は、なんだろうな? 性格……なんか違うか。こう、前に進める系の信念の女が好きかな~。あとはノリが良いとか、見た目とか?」
「見た目は?」
「といってもそこまでこだわりないぞ? 最低限見てて不快にならない容姿なら基本イケる」
ただ人間としてアウトな顔は2つある。
親顔だ。
アレは認めん。
「イヴォンヌはそういうのどうなんだ?」
「私? 私は…………さぁ?」
「長時間考えた挙句それってのがガチっぽいわ……」
「イヴォンヌは昔からお兄さんを探すために生きてきたらしいからね~、そういうのわかんないと思うよ~? ほとんど憶えてない人間探すためにずっとだし」
「……そういうのってほぼ初対面の俺相手に言っていいモンなの?」
「別に」
「だってそもそも私が初めて会ってどうして開拓兵に~? って聞いた時に答えたモン。理由を隠す理由がないからじゃない?」
「さよか……」
案外そういうの気にしない奴もいるんだな~。
そういう文化観?
……いや、サンプル数少ないしそうって決めつけるのは良くないよな。
異世界、異文化といえど知的生命体の営む文明。
そこで構築された価値観なんだから共通は多いハズ。
自己防衛のために余計な他を排斥するのだって生物としては当然。
「ところで、モンスターって案外少ないのか?」
「ああ、戦ってないからってこと?」
「今のところ2回――俺らに関してはまだ戦ってないじゃん?」
昼を過ぎ、これまでの全体戦闘回数はたったの2回。
1回が先頭付近、もう1回が俺たちがいる場所よりも少し後方を横から。
王都近郊だから平和なのはわかるが、少し拍子抜けだった。
「いっても私たちは部外者だからね~、大事な商品だったり襲撃の可能性が高い場所には配置されにくいんだよね。実績少ないから信用もないし」
「加えて見習いの俺がいるしな!」
「そそ。だからこの荷馬車も中身は私たちが食べる移動の食糧だったでしょ?」
「あ~、そういえば」
昼に配られた食事。
それは複数の馬車から全体に配布されたが、俺たちは俺たちの隣にある馬車から配布されていた。
客の商品よりも、自分たちの食糧の方が優先度は低い。
そういうことなのだろう。
「つっても、やっぱ働かずに歩いてるだけってのはちょっと心苦しくない?」
タダ飯サイコー。
「何言ってるのさ~。人数に入るってのも立派な活躍だよ~? 人がいるだけで襲われにくくなったりするんだから。それに敵はモンスターだけじゃないんだよ? 盗賊だっているんだからさ~、多い相手にはモンスターも盗賊も襲い掛かりにくいってね。実際王都近くの森にいるっていう盗賊は襲ってこなかったし」
「人数か。なるほどな」
その盗賊。
既にお縄についてるんだよなぁ。
「それに、グラーベンシュタットまでだったら1回か2回くらいは戦うんじゃないかな~?」
「ほぉ、それはよかった」
――――――――――
「そういえばさ~、イヴォンヌが探してるお兄さんってどんな人なんだ? 今回力になってくれたしそれっぽい人を見かけたらギルドの伝言掲示板にでも書いておこうと思うんだけど」
「…………そこまでは憶えてない」
陽が沈み始めたあたりでこれ以上の移動は危険だ、と止まった。
そうして食事がはじまり、夜営前半を俺たちがすることに。
「一番鮮明な記憶は? 人の特徴とか、その人がいた場所とか」
「……空? 澄んだ……ヒイラギの髪みたいな空色……。牛……牛がいた気がする。それと……紫の長い髪」
「ん~、キレイな空に牛ねぇ、トリゴとかの場所で酪農か? 人間の特徴は紫の髪ってのと男って要素か」
「歳は……わからないけど20は過ぎてる」
「紫の髪の成熟した男、かぁ」
そんなモンそこらに居るわ!
街歩けばいっぱいいるわ!
なんなら数人見かけたぞ!?
……手掛かり少ないなぁ……。
そんな会話をしながら食事を終える。
そして夜営がはじまった。
「なぁ、イヴォンヌ。ちょっと2人で話せるか?」
「いいけど……何?」
夜営時。
ふと気になっていたことを確かめるためにイヴォンヌに声をかけた。
彼女から許可をもらい、メイソンに謝ってからその場を離れて声の届かない程度まで離れた岩陰に身を隠す。
「それで、何?」
「ああ……『解除するまで俺に従え』」
【洗脳】によって元々気力に欠けていたイヴォンヌの眼がより力を失う。
鋭くも垂れた眼差し、呼吸は機械のように不自然なほど一定に。
「『言っていた兄の記憶。正確に話せ』」
試したいのは人間の意識・無意識や自覚・無自覚の領域。
人間の記憶で思い出せないというのは2つがある。
その記憶が脳から抹消された状態におけるモノと。
脳に記憶はあるがド忘れのようなモノ。
前者はそもそもデータを削除し上書きしてしまっているため思い出すのは不可能。
後者ならばキッカケが作れないだけで脳には残っているため思い出すのは可能。
そして俺の能力なら――【洗脳】ならばキッカケを強制的に生み出すことができる。
「――空色。牛の角。木の感触。紫の髪。体表魔術回路。廃墟。お城。お爺ちゃん。お兄ちゃん。捨てられて――……」
「待て待てどういうことだ。空色は、まあ空として。牛の角が記憶にあったからそこから牛に。木の感触……自然は街中でもあるし森とかの可能性もある。紫の髪は確定情報か。体表魔術回路……
ずっとフードで隠れていた顔。
イヴォンヌに関して知っているのは緑の髪、瞳が赤ということと、持ってきた装備が弓ということ。
そうして彼女のフードをめくると――そこにあったのは普人種の、俺と同じ形の耳だった。
決して
ただ。
フードをめくったことで一緒に覗き見えた鎖骨あたりから続く直線と曲線の模様には憶えがある。
それは
……ハーフエルフってやつか?
あれ? でも
これまで読んだ本にも、聞いた話でもそうだった。
曰く、体表魔術回路は魔術回路の数が多い結果内部だけでは収まらずに体表にまで出てきたモノのこと。
そのため種が混ざれば魔術回路の数が薄まり、体表魔術回路は消える、と。
とはいえ今の時代は多様な種族がまだ生まれつつあるという。
今は昔ほどではないにしても、親と離れた特徴の子どもが生まれる、と。
もちろんそれが繁殖できなければ種ではないにしろ、そういう存在はいるらしい。
だからイヴォンヌもその『例外』である可能性はある。
「ま、実際確かめないとその辺りはわからんわな。廃墟にお城に爺さんに兄で、捨てられて終わり。昔いたところはスラムだった的な感じか? お城ってのは……まあ、デカい建物をそう言ってるだけの可能性はあるな。爺さんはマジわからん」
「……」
「爺さんの特徴は?」
「老人」
「一般解ッ。いや、若い爺さんもこの世界にゃいるけど。ほぼ一般解ッ! ……手掛かりねぇ」
ただ、収穫はあっただろう。
本人の思い出せなかった記憶を、強制的に引き出すことはできた。
その負荷は知らないが。
「……はぁ。『今思い出したことは脳に不自然じゃない程度に刻みつつ、俺とのやりとりは忘れろ』『解除』」
「――用がないなら戻るけど」
「……あ、ああ。もし良かったら一緒に旅しないか?」
「……ごめん。私は探す人がいるから」
「だよな。……じゃあ今度他の街で会ったらさ、何かの縁ってことで飯でも一緒に食ってくれよ。そん時は俺が奢るからさ」
「……それなら、いい」
「そうか。ありがとうな」
記憶の定着は礼のようなモノだ。
実験代。
本人にとっても良いだろう、そのために歩んできている人生なのだから。
……あ~、どうせならセックスしたかったな~。
でもこんないつモンスターが襲い掛かってくるかわかんねー状況で無防備に下半身晒せねぇし。
今度会う時にでも誘うかぁ。
……貧乳も、乙なモノですなぁ。
ちょっとした設定
作中世界だと魔力とかがあるから物性が特殊なのは話したっけ?
まあ、通常の我々世界と同様の水素とかの元素プラス魔的な物質(元素)があるから色々多様性があるのよ
ちなみにポーションは人類が魔術を使えるようになる前から存在する純粋な薬学(魔力が絡んでるからゲーム的な治療ができる)
それはさておき、そういうわけで物性が特殊です、と
そこを理由に作中世界の人類は髪色がカラフルなの(地毛でメッシュ入ってたりツートンだったりするし、変な髪型も多々いる地毛縦ロールとか)
んで、ヒイラギ含めて異世界人たちは転移後こそそれまでと同じ見た目だけど徐々に変化して、今回明かしたみたいに髪色変化が起きたりするワケ
変化は個人差があるけどヒイラギの場合即行で魔術使うようになったり、セックスで他者との魔力と触れ合ったりしてたから変化が早かった
そんな設定