只人♂はエロトラップダンジョンで助けようとしたポンコツクソエルフ♀に身体を入れ替えられてしまった! 作:あかん子を説法
ダンジョンは狡猾だ。
人の欲望をよく知っている。
欲を掻き立て、誘き寄せ、喰らう。そういったものとしてできている。
理解していたつもりだった。
いや、そのつもりになっていたからこそ、餌食となるのだろう。
「ふふふ」
「レノワ、さ……?」
ドワーフ娘の妖しい微笑みは、蛇のように歪んで。
その正中に、裂け目が入った。
「っ⁉︎」
そして、蛹を破り蝶が出るが如く。
「っ、はぁ〜〜」
ぱさ、と、先に縄が落ちる音がした後、ずるずる、ずるり。
今まで見せていた姿を、脱ぎ捨てて。
中から、魔物が現れた。
「やってみるものですねぇ、“ギタイ”」
むわり、目に見えそうなほどの、濃厚な色香が解き放たれ、視界の端がピンクに侵されるなか、その姿を見据える。
直立二足歩行。胴体から生えた両手両足は2本ずつ。ヒトの女に酷似した姿をしているが、どうやって収めていたのか。頭部からは鬼とは似て非なる2本の黒く長いツノが、背中には蝙蝠のような翼が、尾骨あたりからは黒くぬらりとしたしっぽが生えていて、局部に張り付いた黒い何か以外、全てを露けだした浅黒い肌の輪郭は、不自然なほどに女性的に豊かで、卑猥に特化していた。
報告書の中の知識を思い返しても、おおよそ、該当する種は一つしかない。
アークサキュバス。まごうことなき、色欲の怪物だった。
ああ、そうか。
はぐれたにしては、妙な位置での遭難。種族的特徴に見合わぬスタミナ。あまりに小慣れた口付け。あまりに生々しかった淫夢。
どこか引っ掛かりつつも、「まあ、そういうこともあるだろう」と、希望的観測で目を背けていた些細な出来事が、今更頭の裏で繋がっていく。
そうだ、追い詰められて、縋っていたのだ。心の拠り所として、あまりにも都合のいい、自身を理解し助けてくれるという存在を。
そのせいで、招き寄せてしまったのだ。
にしたってなんで、こんなヤツが。
「やっと、二人きりになれましたね……ア、ル、さん」
それは、皮を被っていたころとは違う、深い紅の豊かな唇を揺らし、甲高いが低く抑えられた甘ったるい声で、俺の名前を呼んだ。
「……っ」
結んだ口元が熱く痺れ、閉じ切った舌が、唾液の甘さを感じた。
ぞわぞわぞわ。静止しているはずの身体から、妙な震えが込み上げる。
恐怖と発情。相対する振り切れた情報が、魂を震え上がらせている。
「は〜〜、どうしたんですかぁ? お話、しましょうよ」
視線を逸らして、脱ぎ捨てられた皮を見た。
なんと、動いている。「たすけて、たすけて」と、どうやってか、微かに声を上げている。
が、「うるさい」と、冷酷に豹変した悪魔によって向こうの端まで蹴り飛ばされて、聴こえなくなってしまった。
「ふふ」
何事もなかったかのように表情を微笑みに戻して、一歩、また一歩と近づいてくる。
意識は全力で離れようとするが、身体は静止したまま、一切動かせない。
「そんなに怖がらないでください。大丈夫、あなたはあんな皮になんかしませんから」
視線の高さを合わせるように膝をついて、さも親しげに、子供を寝かしつけるような態度で、恐ろしいセリフを吐く。
そんな決して相容れない存在に、すぐそばまでにじり寄られた。
優しく包み込んでくる、柔肌の感触。
それに反し、漠然と直感した。
これはもう、助からないと。
「……なら」
すると、思いの外、覚悟が決まった。
「それなら、何にするつもり、なんですか」
強張った口角を上げて口元を開き、命乞いの代わりに、強がった軽口を叩く。
すると相手は、気に召したのか、眉尻を下げて身を寄せると、こちらの首元へ人差し指を伸ばし、ちょっかいをかけるが如く、優しくつついた。
かと思えば、艶めく長い黒爪を立てて、蠱惑的に囁く。
「あなたの、望む姿にしてあげます」
瞬間、ジジジジ! と、魔力的干渉による火花が散り始めた。
危機感に、声は震える。
「それは、魅力的なご提案で……っ」
相手は「でしょう?」と声を上擦らせて微笑んでから、少し眉間にシワを寄せ、かりかりと。軽く掻く動作で、静止の魔法を剥がしていく。
「どんな姿がいいですか? やっぱり、愛される姿がいいですよね?」
案外、手こずってるらしい。語気に度々、苛立ちが混じる。
「いや、それは、今で十分だと、思いますよ……この身体、見た目だけは、いいですし」
「そうです、かぁ?」
がりっ。強く引っ掻かれた後、表情が晴れた。
捲れて、取っ掛かりができたようだ。そこがつままれて、思い切り引き裂かれる。
「っ、ぉ」
胸から上だけ、静止が解かれた。纏わりついていた蠢く服が動き出す。
ぐちゅ、ぷちゅ。淫猥な水音が戻ると共に、背筋は反って、弄ばれる薄紅の胸の先からちゅーっと、細く複数本、乳白色の噴水が上がった。
淫魔はそれを長い舌でぺろりと攫って、満足げに微笑む。
「まだまだ、もーっと、なれますよ? だれもかれも、皆々さまに、愛される姿に」
「はっ、っ……」
必死に、乱れる呼吸を抑えて、気丈に振る舞う。
どうしたって視界は涙で滲むが、情けない声だけは、噛み殺してみせる。
笑みを作って、虚勢を張る。
「っ、はは、別に、これ、俺の身体じゃ、ないんで……どうでも、いいんですよね、ははは」
「……」
沈黙。その後、「うーん」と、耽美な淫魔の眉間に皺が寄った。
指先でまた、残りの部分を掻きながら、こちらの頬に顔を寄せる。
「うそ、ついてますよね?」
愛着ある人形を愛でるように、頬擦りされた。
「は、そうみえ、ましたか?」
滑らかで、ひんやりとしていて心地いい感触がするが、空気は張り詰める。
もう少し、茶番に付き合ってもらいたいんだが。
「ついちゃ、だめ、ですよ。許しませんっ」
「っ!」
願い虚しく、唇を奪われた。
長い舌が、あっという間に口内に滑り込んで、こちらの舌べらに巻きつくと、甘く、ただひたすらに甘く、ねぶりあげてくる。
「んっ、っ……!」
ほどよくざらついた弾力のある感触が脳髄に響き、経験を掘り起こす。
長さと本気度が違うだけで、やり方が前と一緒だ。本当に、あの時のキスは、この化け物がやっていたのだ。
「れるっ……は、ふぅっ……!」
やるせなくなって、弱った心が嬲られる。くちゅ、れろ、ちゅ。得体の知れない人外の唾液が、こちらの唾液と撹拌されて、甘美な酒の味になり、喉の奥へと落ちていく。
抗えない。酩酊する。粘膜が灼ける。視界が回って、とろんと蕩ける。
「ちゅ、ふふ、ほんとは……ん……相手が、欲しかったの、でしょう?」
「んぅ、っ、は、ぅ」
合間合間、言葉がぬらり、まとわりつく。
「認められて……チヤホヤされたい。ずっとそう……思っていたはずです」
「ぁ、っぅ」
「だから、その身体になれて、よろこんでる」
「ひ、ぁ、ぅ」
「はむ……ちゅはっ、ちがいません…………はぁ、はじめてだったんですよ? 私におだてられて、あそこまで……カンタンに、よろこんじゃうヒト」
頭の中に、染み込んでくる。
反論しようにも、恥が涙となって溢れるばかりで、上手い返事が見当たらなかった。
反抗しようにも、舌は完全に弛緩してしまっている。甘く痺れてひりつき、快感に灼かれて、もう力が入らなかった。
「なってなきゃ、こんなにかまって……ぷはっ、もらえてませんでしたからね。あなたみたいな、地味なヒト」
「ふっ……っーー……!」
「んふふ」
巻き付かれたまま、根本から引き出されて、弄ばれる。
快熱が駆け上がり、脳裏で火花が散った。「ーー〜〜〜〜!」と、くぐもった悶声が絞り出され、淡い絶頂感が連鎖して、頸がかぁっと熱くなる。
悶々と、思考に桃色のモヤが掛かっていき、とうとう首を、相手に預けてしまった。
「っはぁ……」
解かれた。それにも関わらず、舌が引っ込められない。惚けた様を晒してしまう。
勝ち誇った捕食者は、下拵えの済んだ獲物を前に悦に浸った。
「今までよっぽど、評価されてこなかったんでしょう。飢えていたんでしょう。わかりますよ、わかります」
「ぁ、っ」
「よしよし、よーしよし。いっぱい、褒めてあげますね」
頭が撫でられる。それだけなのに、心地良い。
全てを委ねたくなるような場違いな悦びが胸の奥から湧き上がり、視界が明滅を繰り返す。
「えらいえらい。ここまでよーく、頑張りました。もっともらしい、男らしい正義感を理由にして……こーんなに情けない苗床のカラダに、自分から志願して。あなたは、とーってもえらいです」
見下し、弄ぶ。
生殺与奪を握ったものにしかできない、特権行為。
不自然極まりないダンションで、数少ない自然の摂理だ。
「いい子なんだから、意地を張らないで。素直になりましょう? 欲望のままに、溺れましょう?」
これについて、何かを思うことは最早、的外れなのだろう。
「……」
しかし、変な話だ。
絶対的捕食者の癖に、なぜ、獲物の気持ちをわかったような口を聞くのだろうか。
「っ、おあえ……」
「?」
脳裏に響く、“下等種族”を誹る声。
憤り、最後の力を振り絞って、舌を噛む。
「ぅ゛」っと鈍い痛みに顔を顰めれば、なんとか、格好がついた。
「おぁ、え」
とはいえ酷く不格好で、ほとんど母音だけの、赤子のうわ言のようだった。
しかし、まっすぐ相手を見て、口を開いて、声を形にしていけば。おそらく、セリフは真に迫った。
「────」
おまえ、ガワだけ美人の、ゴブリンでも……愛せるタイプか、と。
「……は」
一瞬不安になったが、問題なく、伝わったようだ。
戸惑いか、不機嫌か。相手は人外だ。表情から感情を完全に推し量ることはできない。
しかし、笑顔のままフリーズしているという事実だけで、俺は十分に達成感を得られた。
ああ、クソエルフを笑えない程度に、俺もいい性格してるかも。
「は、へへへ」
ヘラヘラ笑う、掠れた女の声が、自分の喉から弱々しく響く。
淫魔は「そうですか」少しばかり俯いた。
そうか、なら諦めてくれるのか────などと、そんなことはない。
嘆息したように息が吐かれると、「素直に、なれないのは……」と呟きながら、こちらの首元にそっと、手が掛けられた。
「これのせい、ですよね」
がぎっ、ぎぎぎぎぎ!
魔法的な力が、軋む音が響いた。
物理的には、捻るような力の込め方をされている。軽くボトルを空ける感じに近く、苦しくはない。
ただ、それにも関わらず、先程までよりも一段と切迫を感じる。
「今まで、いっぱい、気持ち良いこと、されてきましたよね」
視線が合う。
さっきまで以上に、恍惚とした紅の光が、爛々と輝いていた。
「堰き止めていたものが、なくなったら……どうなると思います?」
しくじったな、これ。
自分の寿命を減らしてしまった気がするし、何より、一番ろくでもない結末を選んでしまったような、そんな気がしてならない。
「は、ははっ、ひ」
目の前で、鮮やかな青と濁った紫黒の光が衝突し、壮絶な火花が散る。
その向こうで、服に弄ばれ踊る乳房が、また乳白色を吹き上げて悦ぶ。反りが大きい。いつの間にか、胸から下の静止が剥がされている。
見ていられず、目を瞑ろうとした。が、許されない。相手は空いたもう片方の手で禍々しい紅色の魔力を真上に発すると、そこに目玉を生成し、その視覚情報を俺の頭へと繋げて、「ほら、こぉんなに、びくびくしちゃってるんですよ?」と、視ることを強制した。
「ぅ、く、ふぅっ……!」
未知だった。遮断されていた分が溜まっているかどうかなんて、知る由もない。
ただ、その有り様を目にしたら、想像せずにはいられなかった。
「うぅっ……!」
熱い頬を、汗と涙が伝っていく。
それすらも、ぺろり。淫魔は舌で掬い取り、濁り艶めく紫黒光を湛えた掌を踊らせた。
「ほら、ふふふ」
服の繊維はあからさまな触手魔物の集合体の本性を顕し、より卑猥に形を変える。
より集まった太めの触手を、あちらこちらから何本か伸ばし、そのうちの一本をへそ穴に差し込んで、どく、どく、どくと。何かを注ぎ込みながら、もう一本は尻の穴に挿入し、臀部にぴったりと嵌り込んで、抽送運動を行う。
感覚がなくとも、もう、内臓が押し上げられているのは明らかだ。意図せず「ぉ、ぅぉ」と声が漏れて止まらない。
「おまんこなんて、もうすごいんですから。小鳥のヒナみたいに忙しなく、ぱくぱく、ぱくぱく。せがんじゃってます」
「ぅ゛っ……っ」
全身、蠢く歯茎色だらけ。しかしわざとらしく、薄赤色の膣口だけは細かい触手群に広げられ、晒されている。
わざわざ視点が寄って、はっきりと見せつけられた。なんたるザマだろうか。尋常ではない。相手の言葉通り、激しくひくつきながら、尻穴に挿された触手に合わせて、ぴゅっぴゅく浅ましい汁を吹き出している。
「かわいいですねー、しょうがないですねー」
そこへ、淫魔の尾が迫る。
そっと入り口に付けられて、狙いを定められる。
「ぅ、ぁ」
俺は思わず首を振ったが、間も無く。
「はい、どうぞっ」
「かぁっ゛」
ずぷんっ。無慈悲に姦通された。
串刺しにされた身体が痙攣する。ともすれば、魚が神経に致命の刃を通されたかの如く。
されど流れるは血にあらず。接合部は情けなく喘いで、ぷしっ、ぷしっと、透明の潮を噴く。
「は、は……っ」
呼吸ができなくなった。
それでも必死に息を吸おうとして、上の口は、つい先ほどまでの下の口と似た開閉を繰り返す。
まさに瀕死。だが、容赦はされない。
「あはは、すごい音がしますね」
ぐぷ、ぷちゅ、ぐぷちゅ。
ゆっくりと、蜜壺が掻き混ぜられて、粘質で空気混じりな水音が立つ。
それが自分の骨と肉を伝って、耳に届く。おかげでいやによく聞こえて、精神的に追い詰められていく。
ちがう。これは、俺の身体じゃない。
薄皮一枚の自己暗示で、正気を保とうとした。
が、ピシ、パキリ。
「あっ」
明らかにしてはいけない、ひび割れるような音が、首元の術式紋からした。
やってしまった、といったふうに、わざとらしく声を上げた淫魔は、笑みをより悪辣に歪ませていく。
「ぁ、ぁ……」
確実な破綻の予感がよぎり。
俺はとうとう、耐えられなくなった。
「ぃあ……やぇて……」
やめて、くれ、と。情けなく、みっともなく。
一番してはいけない相手に、最もしてはならない懇願を、してしまった。
「いやです」
尻尾を膨らませ、最奥へ、ぐっと押し込みながら。
淫魔は最高潮の笑みで応えた。
次の瞬間、首元に添えられた手に力が込められて────突然の風刃が過ぎると共に、その姿が消えた。
「……ぁ?」
来ると思った瞬間が訪れず、俺は強張ったまま、何度か瞬きをする。
その間に、「ちっ」と大きな舌打ちが、すぐ近くで聞こえた。
「外したか、くそ」
舌打ちの主と思わしき声が、悪態をつく。
耳を疑った。
それは紛れもなく、聞き慣れた俺の声だった。
「おかしいですね、なんで戻ってきたんですか?」
淫魔の声が、俺の心理を代弁する。
小柄な只人の男の背中は、若干言葉に迷うような間を置いた後、返事の代わりに緑光の風刃を飛ばした。
強烈な一撃は岩壁を叩き、轟音が響く。
天井から破片が落ちる中、改めて、粗暴なセリフが吐かれた。
「答える義理はない! しね!」
まるでヒーローみたいだぁ(棒)