無自覚無防備なTS聖女は今日も誰かを狂わせる(R18版) 作:月見ハク
カランカランと神殿内に荘厳な鐘の音が響き渡った。
ローブの女に案内されたのは王都神殿で最も広い大聖堂だ。前方、祭壇や舞台があるはずの場所に今日は暗幕が掛かっている。
――「暗幕が上がり次第、儀式が執り行われます。それまでお待ちを」
ローブの女はそう言っていた。
神殿内に人の気配はない。この大聖堂内に出口は三カ所。いざという時には、フィーネ様を抱えてでも撤退するようウォルム様に言われている。
懐に隠し持った筒状の物体に触れる。ウォルム様に授かった魔道具で、昨日フィーネ様に頼んで防護魔法を込めてもらった。
「エラは心配性だなー」
そう言って笑ったフィーネ様の顔も、どこか不安そうだった。
なぜだかオレンダイ軍に攫われた時を思い出す。
あのとき突っ込んだ建物の中で、フィーネ様は敵軍の司令官に服を暴かれ悪戯をされていた。
涙を浮かべたフィーネ様の顔を、私は忘れることができない。
ぎしり。
奥歯がきしむ。
あのような思いは二度とさせない。
それにしても、鐘が鳴ってから随分経つ。フィーネ様と別れてから半刻は過ぎただろうか。いまだに儀式が始まる気配はない。
コツコツと大聖堂内を歩き、暗幕の前に立つ。……大きい。
なんとはなしに触れてみると、ピシと音がして手が弾かれた。
結界だ。
――そう気づくと同時に右手を腰のベルトに伸ばす。シュルシュルシュルとほどいたベルドを左拳に巻きつけると、全力で振り抜いた。
ゴーンと鐘を叩いたような音がして、拳に痛みが走る。
結界の破壊は困難と判断し、ローブの女が去っていった出口に走り寄り、拳を振り抜く。
扉が壁ごと砕け散る。やはり扉には鍵が掛かっていたようだ。
かつてオリヴィア王女の護衛をしていた際に覚えた神殿内の地図を思い浮かべ、フィーネ様がいるであろう舞台への最短距離を割り出す。
足音を消しつつ最速で廊下を移動する。進路を塞ぐ敵はいない。
心臓の鼓動が九つ脈打つ間に、舞台袖に到着した。
行く手に人の気配がする。
見れば暗がりの中、あのローブの女が舞台のほうを向いて座り込んでいた。
静かに背後から近づく。
ローブの女は、舞台上を見ながら股ぐらに手を伸ばし――自慰にふけっていた。
ハッとして舞台上に目を向ける。
台座に、フィーネ様が寝かされていた。新王が覆いかぶさろうとしていて、その手がフィーネ様のあらわになった胸と、下半身に添えられている。
一瞬、その光景に固まってしまった。
「あっんんっ――」
フィーネ様の苦しげで、切なげな声が響く。
我に返り、まずローブの女に拳をお見舞いする。しかし暗幕を殴ったときと同じ衝撃で拳が弾かれた。
次の瞬間、ローブの女が猫のような動きで背後に回り込もうとしてくる。
その動きは王族直属の隠密部隊の動きに似ていた。
正攻法では勝ち目はない。
奥歯に偽装して仕込んでいた
「くっ……」
礫は女の左目あたりに直撃した。おそらく致命傷だろう。
崩れ落ちる女の横を通り過ぎ、舞台上に躍り出る。
「そこまでだ!」
大声を上げて気を引きながら、新王の視界から外れた死角に魔道具を投げ込む。
瞬間的に発動した防護魔法により、新王と大司教が吹っ飛んだ。
ほぼ全裸のフィーネ様をマントで覆うと、優しく抱えて神殿の出口へと走る。
裏口から出て、乗ってきた馬車とは別で秘かに待機させていた貨物用馬車に乗り込む。
御者を務める馴染みの護衛騎士に、打ち合わせ通りの指示を出す。
「目立たぬように迂回して帰還だ」
御者は返事をせず、馬車は静かに走り出した。
フィーネ様の護衛に付くようになってから、怪しい輩は跡を絶たなかった。
誘拐を企てたり、屋敷に侵入しようとしたり……そのたびにウォルム様は防衛体制を見直し、騎士たちの練度も上がっていった。
気がつけば護衛騎士は、全員女性になっていた。
出入りの業者を装った貨物用馬車で上屋敷の裏門をくぐる。
私たちは荷物箱に潜んで上屋敷の中に入った。
「フィーネ様っ!」
駆けつけてきたマリエッタに問う。
「湯浴みの準備はできていますか?」
「できています。一体フィーネ様に何があったのですか!?」
心配そうな顔の中に、好奇心と歪んだ欲望が垣間見えた。
(マリエッタもか……)
フィーネ様は周囲の者を虜にし、一様に狂わせる。
「あとで説明する。フィーネ様を清めるので誰も浴場に近づかせないように」
一階廊下の最も奥まった場所に、フィーネ様の浴場はあった。
ウォルム様がフィーネ様のために造らせたもので、中は広く、白い大理石で覆われている。
(早く洗い流さないと)
体中に塗り込まれているのは、おそらく媚薬の一種だ。
こんなこともあろうかと、フィーネ様に媚薬に対抗する治癒魔法を会得してもらおうと考え、どう説明したものかと迷っていた矢先にこれだ。
護衛服を着たまま、フィーネ様とお湯の中に飛び込む。
お湯の温かさが服の中に浸透してきて、ようやく緊張を解く。
広い浴場は壁一面にランプが並び、空間を淡く照らしている。
屋敷の一番内側に位置し、窓一つないこの場所は、ウォルム様の過保護を通り過ぎた執着を感じさせた。
フィーネ様を抱きかかえたまま、お湯をすくってその細い肩に掛ける。
その体には、異常なほどに薄い布がまとわりついていた。
(こんな淫靡な服を着させられていたとは)
薄布に触れると、ヌルヌルとした媚薬が染み込んでいる。
脱がそうと薄布を留めている紐をつまむと、上衣もスカートも簡単に外れ、浴槽の中を漂っていった。
(なんて、綺麗なのだろう)
あらわになった白磁のような素肌を眺める。
おそらく男の理想を詰め込んだような裸体なのだろう。女の私が見ても見惚れてしまうほどなのだから。
フィーネ様の肩にお湯を掛けながら、その美しい横顔を見つめる。
女でありながら武に秀でた私は、王都騎士団で早くから頭角を現した。
成人してすぐ、年下の王女殿下に気に入られ専属の護衛騎士となった。だが若くして出世した私への風当たりは厳しい。
それを見かねた王女殿下が、女性の護衛騎士を探していたウォルム様を紹介してくれたのだ。
初めてフィーネ様と出会ったとき、この世には王女殿下よりも美しい少女がいるのだと驚いた。
女神の化身――それがフィーネ様の第一印象だ。
フィーネ様は私の褐色の肌を「健康的で好き」と言ってくれた。
慈愛にあふれる彼女は、護衛を連れて孤児院や療養所を訪問しては、片っ端から治していた。その魔力は異常で、心の無垢さもまた規格外だった。
「……ん……エラ? おはよぉ……」
鈴を転がしたような美声が浴場に響く。
薄目を開けたフィーネ様が、トロンとした瞳でこちらを見ていた。
媚薬が抜けきっていないのか、力を使いすぎたせいなのか……その眠そうで気だるげで、心地よさそうな声に、思わず心臓が高鳴る。
「お、おはようございますフィーネ様。お湯加減はいかがですか?」
胸元の美少女に、平静を装って問いかける。
「んっ……ちょうどいいよ」
猫のように身をすくめたフィーネ様は、腕をほんの少し折り曲げてささやかな伸びをした。
「ぃてて。……エラ、よろい着てるの?」
伸びをした際に、フィーネ様の痛めた左腕が私の胸当てにコツンとぶつかった。
「も、申し訳ありません、すぐに外しますので」
フィーネ様の体を少しだけ浮かすと、急いで胸当てを外す。
「だいじょうぶだよ、治すから」
フィーネ様はいつもの調子で言うと、もう次の瞬間には左腕から痛々しいアザは消えていた。
彼女は綺麗になった自分の左腕を不思議そうに見つめている。まだ意識がはっきりしないのだろうか。お湯に濡れた薄い蜂蜜色の髪の毛が、その頬や肩に張り付いていた。
「フィーネ様……」
無性に抱きしめたくなり、体をピタリとくっつける。
「ひゃっ」
フィーネ様がピクッと震え、可愛らしい声を上げる。
しかしすぐに頭を私の肩に預けると、ほぅっと小さくため息をついた。
フィーネ様は、普段一人で湯浴みをしたがる。
少なくとも私が護衛に付いてからは、誰かを伴って湯浴みをしたことはない。お召し替えですら最低限しか侍女に手伝わせなかった。
以前どうしてかと聞いたら、「いやだって恥ずかしいから」と頬を赤らめていた。
妙なところで恥ずかしがり屋なのに、たまに驚くほど大胆だったりもする。
奥ゆかしくも、思いきりのいいフィーネ様が……本当に愛らしい。
だからこそ、新王と大司教の犯した蛮行に腸(はらわた)が煮えくり返る。
私は、白くて華奢な体を後ろから抱きしめた。
「フィーネ様は何も悪くありません。もう誰にも、あなたに指一本触れさせません。私が命を賭けて守りますから」
「…………大げさだなあ、エラは」
しまった。
先程まであんなお辛い目に遭われていたというのに、さっそく思い出させてどうする。
自身の浅はかさを呪っていると、ふわっとフィーネ様の手が頬を包んだ。
いつのまにか絶世の美少女がこちらを向いていた。
「エラ……命を賭けてなんて言わないで。私はだいじょうぶだから……ね」
その優しい笑顔に、胸が締め付けられる。
ついその手を握ってしまう。なめらかで柔らかい、フィーネ様のお心のような手の感触に涙が出そうになる。
なんとかフィーネ様を慰めようと思っていたのに、これでは私のほうが……。
「エラは、脱がないの?」
その妙に色っぽい声に、心臓がドクンと跳ねた。
そういえば、私はずっと服を着たままだ。
「し、失礼しました。湯が汚れてしまいますね、すぐに脱ぎます」
「うん……あっ、じ、じゃあ、むこう向いてるから……」
少し慌てるフィーネ様に、くすっと笑いそうになる。
ご自分で服を脱ぐよう言っておきながら、なぜこんなにも恥ずかしがるのだろう……本当に可愛い人だ。
私は一度お湯から上がると、衣服をすべて脱いでいった。
キツく巻いていたサラシも解いていく。
「ふぅ……」
胸部の締め付けがなくなり、解放感がため息となって漏れる。
「フィーネ様、失礼します」
「……あい」
明後日の方向を向いて耳を真っ赤にしているフィーネ様が、なんだか面白い。
お湯に浸かりながら彼女の背後に忍び寄り、今度は強めに抱きついてみる。
「あぅっ……あ、あのっ」
「どうされました?」
「むね、あたってます……」
ウブな少年のような反応をするフィーネ様が可愛らしい。
昔から発育がいいと言われ、物心つく頃には男の視線を感じるようになった。
騎士団内で女性騎士は珍しかったので、酒に酔った同僚がよく触れてきたり、時には襲ってくることもあった。もちろんその全てを返り討ちにしたが。
「気になりますか?」
「そ、それはもう……」
「フィーネ様も、もっと成長なさいますよ」
「そ、そうですカ…」
「はい」
(だから、どうかあなたを本当に思ってくれる人に出会ってください)
フィーネ様の綺麗な背中を、体の前面で味わってみる。
ツルツルと滑るほどにきめ細やかで、柔らかい生肌。
胸を密着させていると、どうしてだか腹の奥が熱くなってくる。
「はぁ……はぁ……」
しばらくすると、フィーネ様の呼吸が乱れているのに気づいた。
のぼせてしまったかと焦るも、そのうつむいた横顔に違う色が見えてハッとする。
人よりも研ぎ澄まされた五感が、フィーネ様の今の状態を感じ取る。
(性感が、高まっている……?)
そうだ。
フィーネ様は媚薬を盛られているのだ、それも大量に。
強力な媚薬になると三日三晩、絶頂し続けて死に至るものさえある。
フィーネ様はまだご経験が無いから、自身の状態に戸惑っていることだろう。
これは私が救わなければならない。
媚薬の抜き方は面倒だ。
深く眠ってもらい、その間に薬抜きの茶を少しづつ飲ませ、時間を掛けて分解する。
そのためには一度興奮状態を解く必要がある。
「フィーネ様、失礼いたします。一度楽にして差し上げる必要があります」
「らく、に……?」
「はい、楽にです」
フィーネ様の太ももの付け根にするりと手を滑りこませる。
「え、ちょっ、エラ!? ……あっ、んんっ」
「フィーネ様、力を抜いてください」
閉じられる内股に優しく手のひらを這わせ、フィーネ様の花園に指を添える。
「やっ、ん……エラ、なんでっ……んッ、ああんっ……」
清らかな蜜壺から、ジワリと愛液が漏れ出していた。
その秘裂をいたわるように撫で、割れ目に指を埋め込んでいく。
ヌルっとした感触と、キュッと指が圧迫される感覚。
「やめっ、あんんっ、ぁっ、エラっ……んうぅっ」
甘くて可愛らしいフィーネ様の喘ぎ声。
聞いた瞬間に鼓膜が震え、頭が蕩け、全身が火照りだす。
ビクビクと反応するフィーネ様の背中が、私の敏感な胸の突起を刺激する。じんわりと熱が広がり、アソコが疼いてしまう。
私のほうが媚薬を盛られたみたいだ。
余ったもう片方の手で、フィーネ様の胸元を包んだ。
ふんわりとした乳房の感触が手のひらを満たす。なんて、柔らかいのだろう。
「んぁっ、やっ……エラ、おっぱい、さわらないでっ……」
「どうして?」
言いながら、少しだけ手に力を込める。
ふにゅんと柔らかい乳肉に指が沈んでいった。優しく丁寧に揉むと、柔らかさの中にも瑞々しい弾力を感じる。
私の手のひらでも収まるほど、成長途中の実り。
でも愛撫を受容できるほどにはふくらみを讃える、いじらしい乳房だ。
ふにふにと揉んでいると、愛おしさが全身に広がっていく。
「ひぁっ、あっ……んんっ、だめ、だよっ……んぅっ……」
「フィーネ様、どうか辛いことなど忘れて。私が、この私が、導いて差し上げます」
秘所にあてがった二本の指を、ゆっくり割れ目の内側に埋め込んでいく。
濡れそぼるビラビラを撫でていくと、可愛らしい突起を指先で捕まえた。
花芽はすでに包皮から露出してピンと立っている。
その敏感な肉粒に、優しく触れる。
「んうぅっ――ふっ、うあっ、んんんんっ――――ッ」
フィーネ様が全身を強張らせ、息を止めた。
私の腕にぎゅっとしがみつき、ビクンと震える。
「あっ――、っ――ッッ」
声にならない喘ぎ声を上げて痙攣すると、フィーネ様の体からふっと力が抜けた。
その小さい後頭部が、私の胸の谷間にぽふっと収まる。
「はぁっ……っ――、ぅっ……はぁっ、はぁ……はぁ……、はぁ……」
消耗したように呼吸を荒らげていたフィーネ様だったが、やがてコテンと体重を預けてきた。
絶頂の疲れで、眠ってしまったようだ。
「フィーネ様……お可愛いです」
その汗ばんだ頭をしばし撫でる。
私もいつのまにか顔から汗が吹き出し、のぼせてしまいそうだった。
先ほど脱がせた薄布が浴槽の中を漂っている。
きっと媚薬が湯に溶け出しているに違いない。
この疼きは、そのせいだ。
私は沸々と湧き立つ情欲を胸にしまい込むと、フィーネ様を横抱きにして浴場を出た。