※この作品はR-18です。

無自覚無防備なTS聖女は今日も誰かを狂わせる(R18版)   作:月見ハク

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第40話 【元聖女視点】可愛すぎる聖女

 国境沿いの村で初めてフィーネちゃんと合流した日。

 

 私は一瞬で彼女に見惚れてしまった。

 

「冒険者 兼 聖女見習いをやっているマイだよー。よろしくね、フィーネ様」

「あ、はい! よ、よろしくお願いします」

 

 自己紹介をすると、フィーネちゃんは向こうから手を差し出してきた。

 思わず握り返すと、頬をぱっと赤くして見つめてくる。

 

 か、可愛い……! 

 この子、めちゃくちゃ可愛い。

 化け物級に可愛い。

 

 ――エルドア領主が命を賭けて守るほどの魅力の持つ。

 ――その美貌は国が傾くほど。

 ――慈愛にあふれた眼差しは女神が降臨したかのよう。

 

 そんな眉唾な情報を聞いて、内心では嘘でしょうと思っていたけど。

 

 全部、本当だった。

 

 顔立ちは可愛らしいのに、成人前とは思えない美しさもあって。

 ふとした仕草とか視線とかが妙に色っぽくて。

 

 本人は無自覚なのだろうけど。

 

 これは男の人だったら、近づいただけで鼻血を出してしまうかも。

 

 でも、フィーネちゃんの本当の魅力はそこじゃなかった。

 

 

「お、けっこう上手いじゃねぇか」

「ほんとうですか!? へへ……」

 

 狼獣人のジャッキーに火起こしを褒められたフィーネちゃんの、あの嬉しそうな顔。

 そのあと照れちゃうあのいじらしさ。

 

 なんでそんなに素直で可愛いの……!

 

 あージャッキー……。

 獣人だから分かり辛いけど、あれはすごく動揺してる顔だ。

 

フィーネちゃんのあの笑顔を至近距離で見てしまったら、それは獣人でも惚けるよね。

 

 ん? フィーネちゃんがジャッキーに何かを言おうとしてる。

 

 フィーネちゃん、人のことを見つめちゃう癖あるよね。

 さっき自己紹介したときも、一人ひとりを真剣な眼差しでじいっと……。

 

 あ~、あんな顔で凝視されたら私でも心臓破裂しちゃうよ。

 

 多分、好奇心が人一倍旺盛とか、その人のことをちゃんと知りたいとか、真剣に話を聞こうとか、そんな感じなんだろうけど。

 きっと、多くの人が勘違いしちゃう。

 

 今もほら、ジャッキーが熱に浮かされたようにぽー…となっちゃってる。

 フィーネちゃん、気づいて~。

 

 だめだ、彼女の視線をこっちに移さないと。

 

「えーと、フィーネ様って今いくつなの?」

 

 事前に聞いていたから知っているけど。

 

 でも、このままだとジャッキーが危ない。

 異種族に対する初めての感情に葛藤してるっぽい。助けてあげないと。

 

「来年成人です。マイさんはおいくつですか?」

 

 あれ、なんか顔が引きつってる……? 

 年齢聞かれるの、嫌なのかな?

 

 なんとなく、年下だと侮られたくないっていう雰囲気が伝わってくる。

 そんな背伸びしているフィーネちゃんが可愛すぎる。

 

 あ、今はこっちの年齢を聞かれているんだった。

 

「もうすぐで十九……だったかなー」

 

 確か、村が焼かれて教会に引き取ってもらったのが三つのときだったから、今は十九で会っているはず。

 

「あ、じゃあマイさんはエラと同い年ですね! ね、エラ」

「そうですか」

 

 フィーネちゃん、「エラ」って呼ぶ時すごく優しい顔するんだな。

 信頼しきってるというか、ちょっと甘えてる感じもあって。

 

 いいな、私もマイお姉ちゃんて呼んでくれないかな。

 

 うわ……エラさんに思いきり睨まれた。

 

「だいじょぶだいじょぶ、フィーネ様は取らないから安心してー」

 

 ……取ったら斬られそう。

 

 

「――囲まれたな」

 

 え?

 

「ええ、それも手練が……十人以上。フィーネ様、じっとしていてください」

「野盗を装っているがおそらく兵士だぜ。ニオイで分かる」

「む」

 

 ……兵士?

 てことは、フィーネちゃん狙いだ!

 

 戦闘? 殺し合いになる……?

 まだ人を殺したことはない。殺したいと思った人はいたけど。

 ……どうしよう。

 

 いやだめだ、この子は私が守らなきゃ。

 

 教会の子たちは守りきれなかった。

 だから、この子は絶対に守る。命をかけてでも。

 

「フィーネ様、私、守るからね」

 

 腰に差した短剣を引き抜く。

 あの人にもらった、私のお守りだ。

 

 すると、茂みから男が出てきた。

 

「そこのローブの女二人を引き渡せ。さもなくば射抜く」

 

 女二人……私も、ターゲットだ。

 

 身元がバレた? 

 私を……聖女を欲しているということは、この人たちは帝国の兵士だ。

 

「なぜ最初に俺達を矢で殺さねーんだ? お前らこの二人に傷をつけたくないってことだろ?」

 

 ジャッキーがそう言ったとき、あたりが一瞬にして煙に包まれた。

 

 どうしよう。

 私の唯一の攻撃魔法……麻痺の魔法を打っても、味方に当たってしまうかもしれない。

 

 あれ、フィーネちゃんは? 

 フィーネちゃんは無事!?

 

 そのとき、フィーネちゃんがいたはずの場所から、青く輝く半円状のドームが広がった。

 ドサ、バキッ……と、上からたくさんの何かが落ちてくる音が聞こえた。

 

 今のは、防護魔法……?

 

 あ(・)の(・)人(・)と、同じ魔法だ。

 

 信じられない。

 防護魔法は限られた人しか会得できない。特に聖女とは相性が悪いと言われている。

 

 私も、たくさん練習したけど全然会得できなかった。

 

 それなのにフィーネちゃんときたら、とんでもない広範囲に展開しちゃった。

 

 きっとそれは、血のにじむような修練のたまもの。

 誰かを守りたくて守りたくて、一心不乱に祈り続けた結果だ。

 

「……そっか。フィーネ様、頑張ったんだね」

 

 まだこんなに若くて、小さいのに。

 

「ほんとによく頑張った」

「へぁっ……!?」

 

 すごくいい匂いのするフィーネちゃんを抱き締めながら、私は少し泣いてしまった。

 

「こりゃあ帝国の諜報員だな」

 

 ジャッキーが結論付ける。

 

 やっぱり、帝国だった。

 

「噂の聖女狩りってヤツかな……」

 

 教会にいた頃から、その噂はよく耳にしていた。

 

「マイさん、聖女狩り……について詳しく教えてください」

 

 フィーネちゃんが聞いてくる。

 

「ああうん……あたしもよくは知らないんだけどね、なんか帝国のあたりって強い魔獣が出る割に聖女が生まれにくい土地なんだって。だから他の国から聖女を誘拐しているって噂があるんだ」

 

 そう、あの人が言っていた。

 だから聖女は常に気を付けていなければいけないって。

 

「それにこれも噂なんだけどね、なんでも帝国の好色帝って人が聖女をせいど――」

 

 性奴隷にして弄んでるとも、聞いたことがある。

 

「マイ殿!」

「あーごめんっ、あくまで噂だから鵜呑みにしないで!」

 

 つい考え事をしながら喋っていたせいで、いらない情報までフィーネちゃんに伝えるところだった。

 

 危ない危ない。

 純真無垢なフィーネちゃんが知ったら、きっとすごく恐がらせてしまう。

 

 この子の怯える姿は見たくない。

 

 

 

 

 身元が判明している可能性が高いということで、みんなで冒険者パーティーを装うことになった。

 

 冒険者か……。

 私もなりたてだから勝手が分からない。こんなに長距離を旅するのだって生まれて初めてだ。

 

 でも、お姉ちゃんとして、私がしっかりしなきゃ。

 きっとフィーネちゃんのほうが冒険は不慣れなんだから。

 

「これで少しは時間稼ぎになればいいですが……。フィーネ様、申し訳ございません。ここからは冒険者パーティーを装うことになります。かなり不自由な思いをさせてしまうかもしれませんが――」

 

 ああそうか、フィーネちゃんは侯爵家の令嬢なんだっけ。

 汚くて危険な冒険者なんて、キツいだろうな……。

 

 あれ、でもさっきすごく上手に火を起こしていたような。

 なんて思っていたら。

 

「わ、分かった。足手まといにならないよう頑張るよ!」

 

 鼻息フンスな感じで、手を胸の前でグーにしてる。

 

 え、フィーネちゃん、冒険者に憧れていたりするのかな。

 うそ……かわいい。

 ほら、みんなも「かわいい……」って顔してる。

 

 あれ、アーセムも……?

 

 

***

 

 

 アーセムの様子がちょっとおかしい。

 

 二日目の野宿場所にした川べりで、彼を呼び出した。

 

 元々は王都から私を連れ出すのが任務だった聖教会の聖騎士だ。

 彼は聖女護衛のエキスパート。なぜかと言えば……。

 

「アーセムって、確か女の人興味なかった……んだよね?」

「あ、ああ……そうだ」

「だから安心していいって言ってたよね?」

 

 そう。

 聖女は男を惹き付けてしまう。

 

 だから聖女の力に目覚めた子は男に嫌な目に遭わされ、男の人を忌避する人が多い。

 

 だからこそ、教皇様はアーセムを聖女護衛役に抜擢したのだとか。

 実際、私も安心してた。

 

 今の今まで。

 

「アーセム、フィーネ様を見てドキドキしてるよね? 今だにフィーネ様の前だと『む』しか言わないし。可愛いらしいとかじゃなくて、なんていうかエッチな目で見てるよね……!?」

「い、いや誤解しないでくれ。今も私は女性に興味がないし、聖都に同棲中の恋人もいる」

「じゃあ、なんでよ」

「……それが、自分でも不思議なのだ。私は女性には反応しない。だがフィーネ様はなんというか、男、いや少年……のような魅力があるのだ」

 

 この人、何を言ってるんだろう。

 

「いやいや、フィーネ様はどっからどう見ても女の子だから。むしろ女の子より女の子だから」

「分かっている。分かっているのだがっ……」

 

 ふう……どうしたもんかなこれ。

 

 モヤモヤとした気持ちのまま、アーセムと焚き火のところまで戻る。

 

 あ、フィーネちゃんだ。

 やっぱりどこからどう見ても女の子だよね。髪の毛も艶っぽいし、体つきも色っぽいし……ん?

 

「あれ、フィーネ様の髪濡れてる。洗ってきたの?」

「はい、とっても気持ちよかったですよ。ついでに洗濯もしちゃいました。ところで釣りとかって――」

「え、洗濯? ってことは……」

 

 あの岩に置かれている布切れは……まさか胸を覆う下着?

 

 てことはちょっと待って、今フィーネちゃんはブラジャーを付けていない?

 いやまさか、侯爵家の令嬢様がね……。

 

「あ、はい。そこの岩で乾かしてます。それで明日釣りしますか?」

「えぇっ!? えっ、釣り……?」

 

 うわ、やっぱり!

 

 やばい、アーセムがドキドキして……ない!?

 なんかスンて顔してる。どうして。

 

 ん? 

 

 今フィーネちゃんツリって言った? ツリ……釣り?

 え、釣りがしたいの?

 

 なんか情報量が多くて混乱してきたよ!

 

「あ、いえ、釣りに憧れているとかそういうことではなくて、ぼ、冒険者として川で食料調達をする必要があるのでは、と、思いまして……!」

 

 ああ、フィーネちゃん釣りがしたいんだ……。

 

 どうしてこの子はこんなに顔に出やすいんだろう。

 近寄りがたいほど美しくて、可愛くて素直で色っぽくて、でも以外に隙もあって残念なところもあるとか……最強じゃない?

 

「むぅぅぅ……!」

 

 え!? アーセム!?

 

「……ちょっと走ってくる。限界だ」

 

 あ、アーセムのあの顔。

 ドキドキしてるときの顔。

 

 どのくだりに反応したんだろう……まさか、釣り?

 男の子っぽい趣味だから?

 ワケが分からない。

 

 ほら、フィーネちゃんもポカンとしてるし。

 

 いけない、フィーネちゃんに男のドロドロしたものを気づかせちゃだめだ。

 

 何か気を逸らせる話題は……。

 

「……あー、ところでさ、あたし浄化の魔法使えるよ」

「え?」

 

 よかった、食いついてくれた。

 

 エラさんに「ほい」と掛けてみる。

 

「エラ、どう?」

 

 フィーネちゃんが目をキラキラさせてる。やっぱりどこからどう見てもとびきりの女の子だ。可愛いな……。

 

「……そうですね、肌や髪のベタつきはなくなったような気がします」

「マイさんすごいです。どうやって会得したんですか?」

 

 フィーネちゃんが屈託のない目で聞いてくる。

 これはね、冒険者が旅の汚れとか……性行為の汚れを落とすために会得するんだよ。

 

「あーうん、昔覚えさせられたんだー」

 

 

 

 

 ……その夜は、久々に昔のことを思い出していた。

 

 村が焼かれたときのこと。

 お母さんとお父さんが焼け死んだこと。

 教会に保護されて、聖女見習いになって、王都教会に引き取られたときのこと。

 

 あの人――リンゼ大司教さまに、初めて出会ったときのこと。

 

 大司教さまは、私をうんと可愛がってくれた。

 つきっきりで治癒魔法の修練にも付き合ってくれた。

 

 私は子どもながらに多くの死に接したからだろう。

 他の聖女見習いに比べて、治癒魔法の覚えが早かった。

 

 そんな私に聖女見習いのみんなは、優しかった。

 この国では珍しい黒髪も、綺麗だって褒めてくれる。

 

 大司教さまも、私の髪を好きだと言ってくれた。

 

 みんなに励まされて、大司教さまにも支えられて、おかげですごく頑張れた。

 

 そして世間知らずの田舎者だった私は。

 

 最年少で王国の聖女に抜擢された。

 

 大司教さまといる時間が増え、聖女のお役目について叩き込まれ。

 そうして初仕事は、第二王子殿下の成人の儀で祝福を授けることだった。

 

 お役目をする際には、毎回大司教さまが「処女の証明」をするのだと聞かされていたのだけど。

 

 一緒に向かった控え室で、私は大司教さまに初めてを奪われた。

 

「マイ、君の黒髪も、この豊かな体も、全てがいい。私の大切な聖女よ、これが君の役目だ」

 

 かさかさの唇に口付けをされ、骨ぼったい手に胸を揉まれ、太くて大きいものに突かれた。

 初めてだったのに、硬い肉棒で何度も貫かれた。

 こわくて、泣きたくて……でも頭がぼーっとして、大司教さまに触れられるところがアツくて、大司教さまので突かれると苦しくて、気持ちよくて……。

 

 多分、そこで一生分の涙を流したと思う。

 

 その後の成人の儀のことは、ほとんど覚えてない。

 

 それからは聖女のお役目がある度に、大司教さまに抱かれた。

 地方のお役目のときは大司教さまの部屋で一晩中抱かれたこともあったな。

 

 身を清めるのが面倒だろうからと、浄化の術を覚えさせられたんだっけ。

 

 いつしかお役目がない時も抱かれるようになって。

 私も、受け入れて。

 

 受け入れるだけじゃなくて、私からも……。

 

 

 大司教さまは、教会を変えようとしていた。

 

 司教たちが聖女見習いに手を出さないように睨みを利かせてくれた。

 性の知識に疎かった私は中々気づけなかったけど、聖女見習いの中には司教に裏で手籠めにされている子もいたから。

 

 大司教さまのおかげで聖女見習いに手を出す司教はいなくなったけど、ただ一人、ゴーゼ司教だけは違った。

 

 大司教さまがいないときを見計らって、聖女見習いを卑劣な手口で襲っていた。

 

 許せなかった。

 ゴーゼ司教から彼女を守り、こらしめる力を身に付けようと修練に励んだ。

 

 唯一麻痺の力に適性があった私は、それを懸命に覚えた。

 

 でもしばらくして、ゴーゼ司教は王都から姿を消した。

 

 

 そして数年後、王都騒乱が起きる。

 

 いつの間にか王都に舞い戻っていたゴーゼ司教は、第二王子と手を組んで教会を乗っ取ろうとした。

 

 ゴーゼ司教が新たな大司教になったら、聖女見習いたちは好きなように弄ばれるだろう。

 きっと、私も。

 

 今度こそ、麻痺の術でゴーゼ司教を倒す。

 

 そんな覚悟を決めたころ、やってきたのがアーセムだった。

 

 大司教さまが騒乱を察知して、聖公国の教皇様に連絡をしたのだという。

 

 アーセムは他の聖女見習いたちも馬車に乗せてくれた。

 私に懐いてくれて、妹みたいに可愛がっていた子たちだ。

 

 他の子も誘ったのだけど、半分くらいの子には断られてしまった。

 

 聖女見習いは、ほとんどが貧乏な農家出身だ。

 でも聖女見習いになると教会から報奨金が出る。

 だから司教に手籠めにされるかもしれないと知っても、首を縦に振らない子が多かった。

 

「ごめんなさい。私はこの子たちを置いては行けません。私も最後まで、ここに残ります」

 

 そう言って頭を下げたら、アーセムは私の腕をつかんだ。

 

「聖女マイ。あなたを助けるのは大司教様の願いです。それに教皇様は、聖教会としてゴーゼ氏を破門にし、厳しく処断すると言っておられました。しばらくしたら聖教会直々の聖騎士団がゴーゼ氏を連行しに来るでしょう」

 

 私はまた、大司教さまに救われたんだ。

 

 

 聖公国に入国したところで、私は馬車を降りた。

 

 せめて、国境沿いで教会の行く末を見守りたい。

 あの人が、無事でいることを祈りたい。

 もし私の助けが必要なら、すぐにでも駆け付けたい。

 

 そう思ったから。

 

 そんな私のワガママに、アーセムが付き合ってくれた。

 合流した教皇様の使者に聖女見習いたちを託し、私と一緒に冒険者として身分を偽り、同行してくれたのだ。

 

 それからしばらく、私は新米冒険者のマイとして活動するようになった。

 

「マイちゃんはさぁー、冒険者なんだよねー?」

「は、はいそうです」

 

 幸運なことに、最初の仕事で出会った女の冒険者さんにいろいろなことを教えてもらった。

 

「だったらそんな弱々しい態度はだめ、かしこまったその口調もだめだめ、他の冒険者に舐められちゃうよー? ただでさえやっばい美人なんだから、すぐ男に付け込まれちゃうって」

「えっと、舐め……え?」

「あたしが女冒険者のイロハを教えてあげるから、あたしを真似なさい、いい?」

「はい、よろしくお願いします」

「そうじゃなくて、うんよろしくねーって明るく言ってみ?」

「う、うん、よろしくねー」

「そうそう、その調子。あ、あといつでも笑顔は絶やさずにね。辛い稼業なんだからこそ常に笑ってなきゃ。あ、その色っぽい笑顔はだめだよー、あたしみたいにカラカラって感じで笑うの。ほら」

「あ、あははー」

「うん、美人はどうやっても美人だわ……」

 

 そんな感じで、数カ月もすると新米女冒険者マイも板についてきた。

 アーセムがいつも一緒にいてくれたから、危険な目にもほとんど遭わなかった。

 

 そんな折。

 

 ――王国の新王とゴーゼ大司教に狙われている聖女フィーネを密かに保護せよ。

 

 アーセムに新たな指示が下る。

 もちろん私も同行することにした。

 

 聖女のことは、聖女だった私が一番よく分かる。

 それに私と同じようにゴーゼ司教から逃れてきた子だ。境遇も同じ。

 

 

 そうして出会ったフィーネちゃんは、とても可愛い子だった。

 

 この子は私が守る。

 誰からも穢されないよう、絶対に守るんだ。

 

 大司教さまが、そうしてくれたように。

 

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