※この作品はR-18です。

無自覚無防備なTS聖女は今日も誰かを狂わせる(R18版)   作:月見ハク

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第7話 敵軍司令官の毒牙 ◇

「うっ……」

 

 頭が痛い。

 

 これは、力を使いすぎた際の欠乏症状だ。

 床の上に横向きに寝かされているのだろう。硬い木板の感触が痛い。

 息が苦しくて視界は真っ暗だ。

 

(ここ、どこだろう……?)

 

 そうだ、私はオレンダイ軍の兵士に攫(さら)われたんだ。

 

 意識がはっきりしてきたと同時に、魔力を練る。まずは自分の状態をチェックするのが先決だ。

 

 ……おかしい。魔力が散り散りになってしまう。

 

「無駄だ。この部屋では魔力を使えないようにしてある」

 

 頭上から低くしゃがれた声が聞こえた。そこに含まれる圧に、思わず体が強張る。

 

「そう緊張しなくていい。おいしい紅茶を用意したから、交渉を始めようじゃないか」

 

 ふざけたようなセリフだけど、声色には一切の感情が宿っていない。それがすごく不気味で恐い。

 

(この人は、危険だ)

 

 冷淡で、目的のためなら淡々と人を殺めるような、そんな雰囲気がある。

 

 ブチッと後ろ手に縛っていた縄が裂かれる感触がして、両手が自由になる。

 頭を覆う皮袋が取られ、視界が明るくなった。同時に目の前に大きな人影が立っているのを見て「ひっ」と声が出かかる。

 

 私は目深に被ったフード越しに、目が合わないよう注意しながら男を見た。

 

 背格好は軍隊長くらいだが腕や足は一回り太い。

 四十代くらいだろうか、黒髪をオールバックに固め、眼光は鋭くこちらを見据えている。

 口ひげが綺麗に整えられているけど、そこに優雅さは感じられない。まるで剥き出しの獣が人間のフリをしているみたいだ。

 

「申し遅れた。私はオレンダイ軍総司令官のエコンドだ。名を聞いても?」

 

 白々しく名前を聞いてくる。あくまで交渉の場というていなのだろうか。だったら時間を稼げるかもしれない。

 

 私は力を振り絞りながら、それを悟られないようゆっくりと立ち上がり、エコンドを真っすぐ見据えた。

 

「エルドア領主代行、フィーネ・ドゥ・エルドアです」

「ふむ。フィーネ嬢、席につきたまえ」

 

 ここは、おそらく領都に近い村の民家だ。窓から差す陽の高さから、気を失ってからさほど時間が経っていないことが分かる。

 建物の外では、兵士たちが忙しなく動いているのを感じる。逃げ場はなさそうだ。

 

「失礼します」

 

 テーブルを挟んでエコンドの向かいに座る。

 

 エコンドは、その体に比べるとミニチュアのようなティーセットを器用に操り、二つのティーカップに紅茶を注いだ。

 

 礼儀には反するけど、正直このお茶に手を付ける気にはなれない。

 

 エコンドはそんな私の様子を気にする素振りも見せず、優雅に紅茶をすすると一方的に話し始めた。

 

「単刀直入に言おう。我々の目的は聖女、つまりフィーネ嬢の身柄だ」

「私、の……?」

 

 聖女……つまり、私の治癒や防護の力をエルドアから奪うのが目的だということだろうか。

 

「私は、聖女ではありません」

「王国教会に任命された正式な聖女ではないことは分かっている。でも君はそれに匹敵する、いやそれ以上の力を持っているというのが我々の調べだ」

「そんな……」

 

 私は大手を振って治癒魔法を披露しまくってはいない。

 それなのに力の多寡まで調べ上げられているということは、領内にスパイがいたということだろう。

 

「本来ならば君の生死は問わず、王国から消すことが目的だったのだがね」

 

 唐突に殺意を向けられ、体がぶるりと震えた。

 冷や汗がどっと吹き出る。フードを目深に被っていなければその殺気に射抜かれていただろう。

 

「エルドアに潜ませた間者(スパイ)が、奇跡を見ただの、生け捕りにすべきだのと執拗に進言するものだから、初手で聖女殺しに失敗した場合は撤退しつつ身柄を確保するよう命じたのだ」

 

 さっきから、この人の言動はおかしい。

 第一王子派であるオレンダイ領の司令官にしては、その後の混乱を全く考慮していない。

 

「……あなたは、王国の人間では、ありませんね」

 

 声を絞り出す。まだ体が酷くだるい。

 

 エコンドは表情一つ変えず、淡々と言い放った。

 

「ああ、我々の目的は王国を領土に組み込むことだ。オレンダイ領をたき付け助力までしているが、正直勝とうが敗れようがどうでもいい」

 

 エコンドは私の目の前に手を差し出すと、何かを握りつぶすような仕草をした。

 

「エルドア諸共、いずれは我が国の領土とする。その際の抵抗が少なく済むよう、王国を疲弊させておくのが我々の目的だ。聖女狩りもその一環だな」

 

 我が国、とエコンドは言った。実り豊かな王国を狙う国は、オレンダイ領を挟んで国境を接する帝国しかない。

 

 まだ体は思うように動かない。

 頭も痛い。

 でも、沸々と怒りが込み上げてくるのを感じた。

 

「そんなことのために、エルドアの民を殺め、蹂躙したのですか」

「そうだ。最小の労力で、最大の損害を与えるのが任務だからな。それなのに貴様のために、我が精鋭二人の命を犠牲にしてしまった」

 

 光球を放った三人のうち、エラと剣を交えていた二つの影。エラはその両者とも倒してしまったらしい。

 

 エラは、無事だろうか。

 

 パキン。

 

 陶器の割れる音がした。エコンドの持つティーカップの持ち手が粉々に砕けている。

 

「たかが貴族の小娘一人を生け捕りにするのに、割に合わないではないか」

 

 エコンドの口調に怒気が交じる。

 

 まだだ、まだ動けない。

 

「分かっているとは思うが、二度と祖国の土は踏めんぞ。多大な犠牲を払ったのだ。今後は我が国のためにその力も、体も、相応に役立ってもらおう」

 

 エコンドが立ち上がり、近づいてきた。

 

 思わず私も立ち上がり、後ずさる。しかし思うように足が動かない。

 

「顔を見せてみろ」

 

 エコンドは一歩で距離を詰め、私の顔を隠していたフードをはぎ取った。勢いで体勢を崩し、そのまま壁に背中を打ち付ける。

 

(いっつ……ッ)

 

 ――絶対にフードを脱がないでいただけますか?

 

 エラの言葉を思い出し、ハッと顔を上げる。呆然と佇むエコンドと目が合った。

 

 こちらを見つめるその目に、何か醜悪な色が宿っているように感じる。

 思わず身震いした。

 

(この人、なんだか分からないけど、やばい。とにかく離れなきゃ)

 

 しかし一瞬で間近に迫ったエコンドが、片手で私の両手をつかみ上げた。

 

「いっ……」

 

 痛みに声を上げそうになり、下を向いてこらえる。

 

 すると、今度はエコンドのもう片方の手が私の顎(あご)をくいとつかんだ。獰猛(どうもう)な顔が覗き込んでくる。

 

「ほう……。間者が殺すには惜しい、美の化身だなんだとしつこく迫ったのも頷ける。この俺が、小娘なんぞに昂(たかぶ)ってしまっているほどだからな」

 

 両手首の痛みに思わず涙がにじむ。

 

 まだだ、あと少し。それまで耐えないと。

 

「泣き顔も、そそる。この絶望的な状況で目に光を失っていないのもいい。我が王に慰みものとして献上し、いずれは聖女を量産する孕(はら)み袋となってもらう予定だったが……その前に味わってみたいと思ったのは初めてだ」

 

 ゾクリ。

 

 体中に悪寒が走った。

 

 エコンドの言葉はいまいちよく分からない。でも、それがおぞましい意味を含んでいることはなんとなく分かった。

 

 顎をつかんでいたエコンドの手が、ゆっくりと私の首すじに触れ、なぞりながら下りていく。

 

「んっ、うっ……」

 

(気持ち悪い……!)

 

 自由になった顔を思わず背ける。

 離れたい。

 この人を見たくない。

 さわられたくない。

 

「どれ、聖女の具合を確かめてやろう」

 

 エコンドが獣のような笑みを浮かべた。

 

 

***

 

 

「どれ、聖女の具合を確かめてやろう」

 

 エコンドはフィーネの白い首すじを撫でた。指が滑るほどのなめらかな触り心地に驚く。

 

「うぅっ……」

 

 顔を背けて嫌がるフィーネの素振りに、エコンドの嗜虐心が沸々(ふつふつ)と高まる。

 

「くくく、これは上玉どころではないな」

 

 つい笑いがこぼれてしまう。それほどフィーネの横顔は美しかった。

 

 噂には聞いていたフィーネの美貌。それは隣領オレンダイでも耳にした。年端もいかぬ小娘に酔狂なものだと思っていたが。

 

 実際に目にしたフィーネは、その美しさもさることながら表情や、まだ発達途上の体から匂い立つような色気を放っている。

 

 何より聖女としての心根の無垢さ、清らかさが、声や言動から伝わってきた。貴族としての気品も相まって、汚してみたいと股間を奮い立たせるには十分だった。

 

「邪魔だな」

 

 エコンドは、フィーネを重厚に守っていたローブを首元でつかむと、留め具を力まかせに引きちぎった。

 

「やっ……!」

 

 ローブの前がはだけ、無骨な革の胸当てと膝丈の革のズボンがあらわになる。

 

 エコンドは面倒そうに胸当てに手をかけると、それも難なく引きちぎり、ぽいと放った。

 

 ぴしりと肌に密着する純白のブラウスが、胸元にかけてなだらかな丘陵を描き、腰に向けてしなやかにくびれていた。その膨らみがフィーネの荒い吐息に合わせて、上下に揺れている。

 

 胸当てを引きちぎられた際にブラウスのボタンもいくつか外れ、その隙間から雪のような生肌が覗いていた。

 

 しばし、フィーネの吐息の音だけが部屋に充満する。

 

「ほう……これは、たまらないな」

 

 エコンドはごくっと唾を飲み込んだ。

 フィーネの両手首を左手でつかんだまま、右手でブラウスを引っ張り乱暴に開く。ボタンがブチブチと弾け飛び、床に落ちた。

 

「んっ、やだっ……」

 

 フィーネの白い肩と二の腕があらわになる。胸元とウエストまでを包むベージュのロングラインブラは、頼りなさげにフィーネの素肌を隠していた。

 

「服の上からは分からなかったが、小娘の割に意外といい体をしている。抱き心地も良さそうだ。貴族の令嬢が、どこまで耐えられるかな」

 

 エコンドは鼻から息を吐きながら手を伸ばし、ブラ越しにフィーネのふくらみに触れた。軽く揉むと、綿菓子のような柔らかさと確かな弾力が伝わってくる。

 

「触り心地もいい」

「あっ、ぅ……いや、だ」

 

 エコンドは、フィーネの胸全体を撫で回しながら、時おり大きさや弾力を確かめるように指を押し込んだ。

 その執拗な手つきに、フィーネは今まで味わったことがない嫌悪感に襲われていた。

 

(さっきからいろんな所……嫌だ。気持ち悪い。触られたくない……!)

 

 フィーネは唇をきゅっと結び、顔を背け、恥辱と嫌悪感に耐える。

 

 目に涙を浮かべ、時おりその汗ばむ体をピクッと震わせるフィーネの反応に、エコンドは夢中になった。

 

 フィーネの胸元を弄っていた手が、ブラ越しにわずかな突起を見つけ出す。親指でゆっくり捏ねると、美少女の口から空気がこぼれた。

 

「ふっ……んんっ……」

 

 エコンドはフィーネの硬くなった突起を布越しにいじりながら、その顔に鼻を近づけ、美貌が時おり歪む様を堪能していた。

 小さい突起を捏ねくりながら親指に人差し指を添え、きゅっと摘まむ。

 

「んぅっ、ん……や、だ……」

 

 電流が走ったような刺激に、フィーネの体がビクッと震える。

 

 フィーネの苦しげな、切なげな声に、エコンドの獣欲の抑えが効かなくなる。汗で湿ったブラジャーをつかむと、力任せに縦に引き裂いた。

 

「うぅっ……!」

 

 フィーネの透き通るような美肌が外気にさらされた。

 

 あらわになった白い乳房は、成熟しきってはいないものの膨らみをたたえ、小さい薄桃色の乳首がピンと立っている。

 腰のくびれは艶かしく、縦線のへそは可愛らしく、また淫靡(いんび)だった。

 

「ここまで自分のモノにしたいと思った女は、初めてだ」

 

 エコンドは、それ以上言葉を発することはなかった。

 顔をフィーネの温かい谷間に埋めると「ハッ、ハッ」と野犬のように、甘い匂いを荒々しく吸い込む。両頬が柔らかい乳房に圧迫されて気持ちがいい。

 

「あっ、やだっ……やめ……」

 

 フィーネは自身の胸元にしゃぶりつく野獣に戦慄していた。エコンドの髭がチクチクしてとにかく気持ちが悪い。

 

 涎れがフィーネの双乳を濡らし、丘陵に沿って垂れていく。

エコンドは片手で自分の服を脱ぎ捨てていくが、興奮と焦燥感でもたついてしまう。

 

 

 いつの間にか、建物の入口で部下が何事かを叫んでいた。

 しかしどうでもいい。フィーネをもっと味わいたい。この無垢な体を犯したい。

 

「敵……単騎……攻めて……ます!」

 

 エコンドが部下の言葉を理解するのと、フィーネから魔力が立ち上るのは同時だった。

 

 今までむさぼっていたはずのフィーネの体が、虹色の膜に包まれている。その膜が収縮したかと思うと、一気に弾けて広がった。

 

「ぐぬっ……」

 

 エコンドは二、三歩ほどの距離を吹っ飛ばされ尻もちをつく。

 股間を露出した情けない姿で呆然としている司令官に、なおも声を掛けようとした部下の首が、宙を舞った。

 

 フィーネは、その様子をゆっくりと見ていた。

 室内に飛び込んできた見知った顔に、思わず声を上げる。

 

「エラ!」

「フィーネ様!」

 

 エラは、無残に服を暴かれ素肌があらわになったフィーネを見た。次に眼前に転がる醜い男を見定めると、静かに男に迫る。

 

 エコンドは下半身を露出しながらも、獣のような身のこなしで床に転がった剣を抜く。そのまま素早く一直線にエラの腹を突いた……はずだった。

 

 エコンドの剣は、エラの腹に展開された虹色の膜に弾かれていた。刺し違えるような形で、エラの剣がすっとエコンドの喉元を貫く。

 

 串刺しになったままエコンドの体がゆらりと傾いた。

 

 エラは倒れ伏すエコンドには目もくれず、愛しい主に駆け寄る。自分のマントをフィーネに被せると、ぎゅうっと抱きしめた。

 

「遅れてしまい、申し訳ありません……!」

「エラこそ、無理させてごめん」

「そんな……フィーネさまにこんなお辛い経験を……」

「私は、大丈夫だから。さあ、帰ろう?」

 

 フィーネが優しく微笑むと、エラは今にも泣きそうな顔で「はい」と頷いた。

 

 

---

 

 

 涙を浮かべるエラの目元を、私はそっと拭った。

 

 間に合ってよかった。

 

 エコンドの責めに耐えながらずっと、この部屋に張り巡らされていた魔力封印を解析し、自分の魔力を中和させて分解を試みていた。

 

 封印が解けたら防護魔法で自分を覆い、単身突破するつもりだったけど、エラが単騎で突っ込んでくるなんて。

 

 もし分解が間に合っていなかったら、咄嗟に防護魔法を展開できなかったら、エラはエコンドと刺し違えていただろう。

 

 見れば、エラは体中傷だらけだった。

 

 私はエラを呼び止めると、自身を覆っていたマントを広げる。

 

「エラ、おいで」

「ふぇ……?」

 

 間抜けな声を発するエラを、急かす。

 

「肌と肌の接触面が広いほうが、治りが早いんだ。急いで」

 

 飛び込んできたエラをぎゅっと抱きしめて、自分の露出した肌を押し付ける。彼女の体中の傷が一瞬で治った。

 

「あ、ありがとうございます……フィーネ様、参りましょう。防護魔法はまだ使えますか?」

「うん、領都までは保つよ」

「では正面から出ましょう」

 

 

 ある兵士は怒号を発し、別の兵士は矢を放ち、たまに光球を撃ってくる者もいた。

 

 私の防護魔法はその全てを防ぐ。

 

 エラの乗ってきた馬を癒やすと、そのまま堂々と陣地を出て行った。

 




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