【完結】ヒロイン全員子持ち人妻の小説が完成した! 作:hige2902
いつだったか土地売買についてもう一度話がしたいと言っていた担当がやって来た。
たしか断ったような気もするがあまり覚えていない。
なんとなく不安に思っていたところ話を聞いた犬衣が同席を申し出たので甘える事にした。
「これで土地を売って頂けないでしょうか」
そう言ってテーブルの上に置かれたのは、上品な紫の風呂敷だった。
そっと広げられると札束が数個包まれていた。
初めて見る大金に、彼の目は奪われた。
魔法というものは、ある意味で現代に存在する。
現金という力がそれだ。
例え同額、あるいはそれ以上の金額であっても、契約書面や電子マネー、預金通帳に刻まれた数字には無いモノが、現金には間違いなく有るのだ。
一万円札の百枚束。板チョコ程度の大きさしかない思いのほか薄いそれはしかし、いざ目の前にし、それが自分の物になるとなれば尚のこと濃密に匂いたち、力に満ちだす。
そして魔法のように人間を魅了する。
この世に産まれてからずっと金とは縁の無かった彼には、まさに人生を変えてしまうほど強力な契機の具現化に見えた。それが複数個、積まれている。
穴の開いた財布を捨てる、天からもたらされた最後のチャンス。掴まない手は無い。
維持費ばかりかかる二束三文の土地がこの金額なら即決すべきだった。
ちらとスーツを着てかしこまった男を見やる。柔和な顔立ちをしていて、いかにもこちらの事を第一に考えていますと言った雰囲気。
その男が言うには、生前の両親とは売却の合意形成が出来ていたらしいが、いよいよ契約の手前となった時に死亡したので有耶無耶になった。らしい。
親から捨てられ、事実上の絶縁状態にあった彼が知る由もなく、事実かどうかはわからない。
「もし、今お住まいのこの場所と山を手放したくなければそれでも結構です。減額無し、一括でこの金額をお支払いします」
まばたきも忘れて黙りこくった彼に、かしこまった男が柔らかく言った。
「いかがでしょうか」
アパートが残るならシレリアを匿い続ける事が出来るし、問題は無い。あんな土地で何をするのか、何を建てるのか知らないが、広いだけの丘陵などさっさと手放してしまえばいい。
「じゃあ……」
了承の言葉を口にしようとしたところで、隣に座っていた犬衣が男にバレないよう密かに彼を小突いた。
「えっ? っと、あ……すみません。売れません」
あれだけあればシレリアさんにいろんなもの買ってあげられたのにな。
彼はコップのお茶を少しばかり眺めて、幾度目かの疑問を脳裏に浮かべては指先でつつくように弄ぶ。あの札束があれば、叶いそうな気がした。
しかしもう契約は蹴ってしまった。諦めて一息でコップの中身を一息で流し込み、ほんの少しの恨み節で犬衣に尋ねる。
「……そんな悪い条件でした?」
「まあー破格だったわよ」
「ならどうして……」
「不動産仲介業者無しでいきなり現金を包んで見せるなんて、あれはヤクザの手口よ、舐められてる、まともじゃない。関わったら絶対ダメ。牧場レジャーや環境保護なんてのも適当だわ」
そんな事言ってたっけ?
彼にはそのあたりの肌感がわからなかったが、彼女がそう言うのならそうなのだろう。
「けどとりあえずこれで一段落付いたからオッケーですよね?」
「んー……そうねえ」
煮え切らない態度の犬衣の悪い予感は、しばらくして的中する事になる。
xxxxxx
xxxxxx
「お疲れさまです」
彼からかけられた言葉に、和狸は同じように返す。出勤時間が同じ日は、変わらずよく一緒にタイムカードを通していた。
彼の無言の気配りに、なんだか頼もしさを覚える。
しかし問題が一つあった。
「朝ももうすっかり暑くなってきましたねー」
「ええ、そうね……」
シレリアたちのアドバイス通り、再び彼をセックスに誘う事には成功していた。成功していたが、不満が無いわけではない。
彼と世間話をしながら、すん、と小さく鼻を利かす。男女の匂いが僅かに漂っていた。発情したオスとメスの、交尾の残り香。
実際のところは出勤前にセックスする時間は無いだろうし、軽くフェラかパイズリで一発ヌいただけかもしれない。
(脚コキもあるかも、腋だって可能性は……ひょっとしたら前夜は3Pでお目覚めダブルフェラ!? ありえる、ありえるわ)
朝っぱらから悶々とAVやエロ漫画の知識を総動員しているのには理由があった。
なぜなら和狸だけが、他の2人と比べてはるかに彼とセックスの回数が少なく、情欲を持て余していたのだ。
(いえ、彼ならエッチする為に早起きするかも。む~~ずるいわ二人だけ)
彼とは肉体関係を継続しているとはいえ、シレリアや犬衣と違い持ち家で主婦をやっている和狸は、なかなかアパートに行く機会が無い。
日中は、旦那は仕事で子供は学校とはいえ、家事はあるので休みのたびに彼の所まで行くわけにはいかない。そもそも自分の休みと合うかどうかが難しい問題だ。
彼の仕事終わりに合わせて夜中に家を出て訪問するなどもってのほか。
仕方なく彼とのハメ撮りで性欲を満たす日々が続いていた。チンポの代わりに指で慰めるだけの自慰行為、何度も彼の身体を思い出してオナるのは、逆に欲求不満になっていた。
(本当だったら見るだけじゃなくて、本物のオチンチンでガンガン突いてもらえるのに……)
「あの、和狸さん?」
呼ばれてハッとする。ついつい彼の股間を凝視してしまっていた。
「あ、ごめんなさい。あはは」
笑って誤魔化そうとするが、いつもは自分の胸ばかり見ている彼に注意している手前、立つ瀬がない。
同時に、こっちはこんなにムラムラムラムラしているのに、あっけらかんとしている彼に小さなイタズラ心が芽生えた。
(きっとシレリアさんたちに毎日ヌきまくってハメまくってもらってるからそんなに平気な顔してるんだわ、わたしはこんなに人妻おまんこイライラさせてるのに! 人の気も知らないで! もうっ!)
「あの、和狸さん? どうしたんですか?」
んむぅ~~としてる和狸におそるおそる尋ねるが、「別にぃ」といった感じの反応が返ってくるだけだ。
めちゃくちゃな八つ当たりだが、とにかく彼を一泡吹かせるというか、動揺させないと気が済まない。ので──
「……ちょっと後ろゴメンね」
広いとは言えない作業場で彼の背後を通る時に、むりゅりん、と乳房を背中に擦り付けた。ブラ越しでも伝わるその柔らかさに、彼は思わず和狸の方を見やった。背の低い小さな背中からはなにも察せない。女の湿った色香以外は。
「え? あの……」
戸惑いながら、サッと売り場の方へ視線を向ける。幸いなことに誰にも見られていないようだ。背面で起きた事なので、そもそも勘付かれにくいが。
その後も和狸のささやかな、しかし執拗なまでのイタズラは続いた。胸だけではなく尻もさりげなく密着させたり、半立ちのチンコに触れる。
いや、これはもうセクハラだ。
しかしやめてほしいかと問われればなんとも言えないので、彼は黙っている。
(うふふ、だいぶ参っているみたい)
ひとりほくそ笑む和狸だったが、エロい事をしているので当然じぶんの欲求不満も昂ってくる。諸刃の剣だった。なにがしたいんだ、このおっとり主婦は。
しかしいくら二人がその気になったとしても、さすがに仕事場で致すのは難しい。というか彼からすれば最悪クビになって収入を失う。それは和狸も望むところではないので我慢して、家に帰ってからなんとかこっそりオナる日々を繰り返していた。
といった事を通話で犬衣に相談した。
『あー、それでか。こないだ帰ってすぐシレリアさんに性処理してもらってたのは。玄関で即尺してたわよ、お喋りしてたわたしほったらかして、抜かずに二発も』
「それでか、じゃないわよ、も~っ! わたしが興奮させたオチンチンなのに」
平日昼間の休日なので、家には誰もいない。傍らに置いてあるタブレットで彼とのハメ撮り──ネット販売していない、趣味で撮った自分用──を流しながら愚痴る。もぞもぞとマンコを弄りながら。仕事終わりの、汗で蒸れた彼のチンポを想像して。
「いいわよねー犬衣さんたちは、ハメ放題で」
『あはは、パケ放題みたいに言わないでよ。懐かし、今はフラットなんとかだっけ』
犬衣は冗談交じりで返答するがしかし、和狸の言い分もわかる。一人だけ、彼とセックスするハードルが高い。
まず和狸家や仕事場でスるのは論外だ。そして彼はフルタイムでバイトに入っているので、二人同時に休日かつ、旦那に怪しまれない日に出かけなければならない。せいぜい週に一回程度。
「ヤリ部屋まで作ったんでしょ? わたしはオナニーばっかり……」
本気の溜息が犬衣の耳に聞こえてきた。一応その辺りを考慮して和狸が来た時はほぼ彼を独占してヤっているものの、確かに職場では毎回彼に会っているのに事実上のお預けは可哀想。
これでは仕事も手が付かないだろうし、抜かずに二回目の口淫の際は犬衣が乳を揉ませながらベロチューしていたし、最後はダブルフェラだったことは言わなくて正解だった。
『そうねえ……んー、それじゃ』
効果は微々たるものかもしれないが、犬衣は一計を案じた。
xxxxxx
xxxxxx
就寝前のひと時。和狸が友達を家に招待したいと切り出し、優詩は快諾した。
「ああ、いいよ。もしあれなら出掛けとくけど」
「ううん、いいのいいの。気にしないでちょうだい。ちょっと台所を使うだけだから」
「どこで知り合った友達なんだ?」
「どこ……っていうか、スーパーでパンを並べてた時に話しかけられてそれからって感じ」
事の発端をたどるとだいぶ遡る。
ある日シレリアが料理をしたいと彼に申し出たのだ。断る理由も無いのでお願いすると、早速と言わんばかりに張り切る。
「じゃあお昼の仕込みをしましょうか! 料理には自信がるの、台所は玄関のよね? シチューでいい?」
いそいそと向かい、固まった。
「それで……えーと、火を起こす薪とか魔力は使わない……タイプ、というか……どうすればいいのかしら?」
「ここの、何て言えばいいんだ? 取っ手を押して捻ると火が出て」
「きゃっ! へえ、こっちの世界の台所の火は青いのねえ。もう少し勢いよく燃やしたいのだけれど」
「いや、これが限界です」
ごうごうとコンロから最大火力で燃える火を、ハラハラしながら彼は眺める。
「そうなの? でもこれ、消火壺のような蓋が出来る構造じゃないけど、水をかけて消すの?」
「……いや、あの、やっぱ火を使う料理は俺がやるんで。万が一があったら怖いし、すみません、せっかくだったんですけど」
一人の時に使われると火事になりそうだったので、彼のいない時のコンロの使用は禁止となった。
「うぅ、せっかく役に立てると思ったのに……」
「いや美味しいですよ、シレリアさんの作ってくれたサンドイッチ。サラダも」
サラダも料理と言えば料理だが、なんとか暖かい食事を振舞いたかったので彼がいる時に調理を見てもらうもなかなかうまくいかない。
シレリアのいた世界とこちらの世界の食材は、姿かたちは似ているものの味や根本的な構造が微妙に、あるいは大きく違う場合もあったのだ。
元の世界ではバッチリな味付けや焼き加減、煮込み時間でも、こちらの世界の食材を使うと塩気が多すぎたり、生焼けや煮過ぎて形が崩れたりする事が多かった。
彼の見ている前で得意な料理を失敗してしまうのが、たまらなく恥ずかしい。しかも、彼に料理を見てもらうとなると休日の時間を奪うか、疲れた仕事終わりになってしまう。何度も付き合わせるのは気が引けた。
なので、犬衣に相談する事にした。最初からそうすればよかったのだが、彼女に料理を教えて欲しいと頼むのは嫌な事を思い出させてしまわないか心配だったのだ。
「料理? おっけーおっけー、まかせてよ」
それは杞憂で快く引き受けられる。これは仕事でも何でもない。友人の為なのだから、犬衣は嫌な顔どころか嬉しそうだった。
そんなわけで、二人は彼に内緒でちょくちょく練習していた。犬衣はシレリアの浮世離れした料理の常識に疑問が湧きもしたが、まあなにかしらの事情があるのだろうとは思っていたので特に追及する事も無い。
そんな折に和狸から悩み事を受けたので、一石二鳥とばかりに和狸家でお菓子作りを敢行したのだ。
数日後、二人は昼過ぎに和狸家へと訪れた。
「どうぞあがってあがって、準備できてるから」
和狸が二人を招き入れると、優詩が奥から軽く挨拶をする。
「こんにちわー」
そしてすぐ寝室に引っ込んだ。リビングに居て構わないという事だったが、さすがに女性三人で盛り上がる空間に男一人は居心地が悪い。
娘は出かけているし、息子は部活でいない。やる事も無いので、微かに聞こえる談笑や調理の音を耳に昼寝で時間を潰した。
しっかし、すごいバストだったな。いや、ダメだダメだ。おれには想実さんが……
と、誰もが思う感想を抱きながら。
やがて和狸に揺り起こされる。寝ぼけまなこで時計を確認した。
「あれ、もうお帰りになったのか?」
「ううん。ちょうどクッキーが焼けたから、優詩さんもどうかと思って」
「そう、か。ならお呼ばれしようかな」
リビングに向かうと、テーブルには小皿に分けられたクッキーと紅茶が用意されていた。
「ごめんなさいね。やかましくしちゃって、せっかくのお休みの日に」
シレリアが申し訳なさそうに軽く頭を下げる。
「ああ、いやいやそんな。気にしないでください。美人さんたちの手作りお菓子を食べられるんですから。ラッキーって言うか」
「もうっ! 優詩さん、それセクハラですよ」
「あっ、どうも申し訳ない。言ったらダメですね、こういうのは」
「気にしなくていいですよ。それに、美人さんだなんて口が美味いんだからもー」
犬衣がうまい具合に取り持って、歓談が続けられた。
「どう? かしら、和狸さん。わたしが作ったのは。結構いいと思うんだけれど」
おそるおそる、シレリアが尋ねる。
「うん! 上手に出来てるわよ~。これならきっと喜んで食べてもらえるわ!」
和狸も犬衣と同じく、シレリアのどこか変わった点に薄々気づいてはいるが、じぶんも結構おっとりしたところがあるのでその類だろうとしか思っていない。
よかった、と胸を撫でおろし自分も一口齧ってみる。
ホットケーキミックスで作ったお手軽なものだったが、素朴でほんのりとした甘さが美味い。なにより出来立て香ばしさが良かった。
彼に作ってあげられると考えると、自然に顔がほころんだ。
あら~、これは……あら~と和狸と犬衣は視線であらあらする。あら~。
「そういえばさ」
と犬衣が紅茶を一口やって言った。
「二人も育てるのなんて大変じゃなかった? うちは一人でもキツかったけど」
実際はほとんど手が掛からなかったが、この後の展開の為の話運びだ。
「もー大変よ、毎日毎日大忙し。学年が違うから行事やプリントなんかもごちゃごちゃになっちゃて。最近やっと手のかからない年齢になって一息付いたってところ」
「じゃあようやく自分の時間が出来るって感じ?」
「そうねえ、まあ落ち着いたら旅行とか行きたいけど」
ちらりと優詩に視線を向ける。
「おっ、いいじゃないか。そういえばそんな話もしてたな。夫婦水入らず」
「けどさすがにまだ子供たちだけ残すのは不安よねえ」
「んー、そうかぁ」
と優詩は腕を組んで思いを巡らす。もしも強盗が入ってきたら可愛い我が子たちが……特に娘が心配だった。
「そうだな、うん」
「何か趣味とか無いの? やってみたい事とか」
「えっと、ちょっと恥ずかしいんだけど、その……キャンプとか?」
「いいじゃない、てかなんで恥ずかしがるのよ」
「だってもうこんなオバさんがねえ、そういうのって若い子がやるものじゃないの?」
「まあ、最近流行ってるしねー。若いとフットワークが軽いから人口が多く見えるだけだって。なんなら、一緒に始める?」
「え!? いいの? だったらシレリアさんもやってみない?」
「で、でもわたしに出来るかしら」
不安そうな顔をしているが、冒険者なので野営の経験は豊富というか、本物のプロだ。
「試してみましょうよ、みんな初心なんだし、失敗しても平気よ」
そういうわけで女友達三人は共通の趣味であるキャンプを始めることになったが、これは半分というか九割がた副次的な目的に過ぎない。
本命は、和狸が一人で家を抜け出しても怪しまれない事由を作る事にあった。
夫の目の前で仲の良い主婦達であることをアピールし、共に行動すればまず怪しまれることは無い。たとえお泊りする事があっても女子会という方便が立つ。
そしてついでにシレリアのお料理修行もこなす一石二鳥案だった。あとキャンプは本当にちょっとやってみたかった。
「それじゃあさっそく行ってみましょうか」
にこやかに和狸が言った。
「え、今からっていうか今日?」
他の三人が呆然とする。
「む、無理かしら?」
(お泊りしたさすぎでしょ)
あきらかに彼と一晩中セックスしたいがための提案を察した二人は、少し呆気にとられる。予定にないぞ、そのセリフは。気持ちはわかるのでなんとかしてあげたいが、さすがに唐突過ぎて不審に思われるだろう。
「ちょ、ちょっと気持ちが先走り過ぎてるんじゃない? 準備とか、いろいろあるし」
シレリアの言葉にいくらか気落ちして「……そう」と諦めた。
(あ、本気で今日一晩中ヤるつもりだったんだ)
そんなこんなで、そろそろシレリアたちはお暇することになった。
「和狸さん、今度はわたしの家に遊びに来てよ」
犬衣が一人で出かけても不自然でない理由を作る。そのうち、お泊り会だとかに発展させても不審がられないだろう。なにせ全員主婦だ、間違いが起こるはずもない。普通はそう考える。
「そうね、絶対行くわ。じゃあ優詩さん、わたしは二人を送っていくから……あ、どこか寄る所ある?」
(ついでにアパートで一発ヤる気だ)
どんな小さなチャンスも見逃さない野生に、二人はある種の感嘆を覚える。
「じゃあちょっとスーパーで」
「ちょっとでいいの?」
「えと、ついでに……キャンプ用品も見てみようか」
「それがいいわね。だから優詩さん、帰りが遅くなるかもしれないけど」
(スーパーだけ寄ってがっつりヤる気だ)
「ああ、わかったわかった。ゆっくり楽しんできてな」
子育ては任せきり、という訳ではなかったが。仕事が半ば趣味になっている優詩としては、今まで自由な時間が少なかった和狸には好きな事をしてもらいたいので止める理由は無い。
そんな折に、ちょうど部活帰りの息子が帰ってきた。
「あらおかえり。お母さんちょっと出かけるけど、晩御飯までには帰るから」
「ただい、ま」
シレリアの規格外の規格外に視線が釘付けになる。しかもニップレスなのでだゆんだゆんだった。
気付いたシレリアが小さく会釈するように笑いかけ、車に乗り込み去っていった。
なんだ、あの、あれは。
息子は謎の動悸を覚えながら、自室に戻りベッドに潜り込む。
なんだ、あの、あれは。
スイカよりも大きな、たわわな果実。
なんなんだー! あれはー!!
そのままベッドで悶々とごそごそしていた。
xxxxxx
案の定と言うか、キャンプ用品店にも寄らずにアパートに向かう途中、和狸はハンズフリーで彼に電話を掛けた。
「もしもし、急にごめんね。いまシレリアさんたちを送っててあと十分くらいで着くんだけど、勃たせといてくれないかしら? うん……こっちはもう濡れてるし、すぐ……雰囲気とか台無しかもだけど、夕食前には帰らなくちゃなの、うん、本当にごめんね。じゃあお願いね」
後部座席に座るシレリアと犬衣は視線を合わせ、和狸の後頭部を見やった。口を開きかけたが、仮に自分が同じ立場だったらと考えて飲み込むことにする。スーパーには寄って欲しかったが。
アパート前の適当な場所に停車させて二人が降車すると、和狸は「ごめんね、バタバタしちゃって」と申し訳なさそうにした後、小走りで彼の部屋に向かった。
すぐに喘ぎ声が聞こえてくる。
「んおっ♡ いいっ! これっ、これが欲しかったのぉん♡ あ゙っあ゙っあ゙ぁ~~ん、ん゙ん゙ぅう~、あー、ダメ。下品な声っ出ちゃうっ! おぉんっ!! イ゙グッッ!!」
二人は再び顔を見合わせて、ほんの少しだけ開いていた彼の部屋のドアを閉めてやる。ちらりと覗いた隙間からは、二人が玄関で盛っていた。
よがり声も聞こえなくなったことなので、「とりあえず」と犬衣が口を開く。
「とりあえずウチでゆっくりしてく?」
「そうね」
和狸に対して微笑ましい笑みを浮かべながら犬衣の部屋に向かう。
「しっかし、ほんとに夕食に間に合うのかしらね。あの様子じゃだいぶ溜まってたみたいだけど」
「大丈夫よ。彼がキツ目にハメればすぐだと思うから」
「ま、あんまり時間無いのは伝えてあるし、いっか。にしても見たー? 和狸さんって意外と身体柔らかいのね、I字開脚でぱんぱんハメてたけど」
「あれくらいならわたしもできるけど……」
「えっ!? そうなの! わたしだけかー。で、どう? 気持ちいい? イイところに当たる?」
シレリアは頬に手を当て、はにかみながら答えた。
「やっぱり体位ごとに新鮮さというか、良さはある、かな。彼が言うには、太ももを上半身で感じられるから興奮するって言ってたけど」
「うーん、お風呂上りに柔軟するかぁ」
そんな猥談で、二人は犬衣の部屋に消えていった。
日が傾く頃になって、和狸から連絡が入る。外に出て落ち合うと身体はへろへろだったがしかし、充足した顔をしていた。
「ごめんなさい、お部屋をだいぶ汚しちゃったんだけど……キレイするに時間が無くて」
「いいのよそんな、お掃除しとくわ。どうせこの後すぐ汚れるんだから。ついでよ、ついで」
あはは、やだもー。
わたしのぶんの精子、残してある?
えー、うふふ、どうかしら~。だいぶ絞っちゃったかも。
あらあら、和狸さん溜まってたのね。
そんな主婦の笑い声の後、車で去っていくのを見届ける。
「よし、それじゃあ」
と、意気込んで彼の部屋に帰る。濃密な男女の臭いが充満していた。大きく唾液を飲み込む。発情するなという方が無理だ。
(羨ましいわ、玄関で彼のオチンチンに出迎えられるなんて……今度わたしもお願いしてみようかしら。山のお手入れの帰りとかに)
玄関には水溜りが出来ており、そこで和狸は何回かイかされたようだ。そこから続く足跡は一つしかないので、繋がったまま移動している。
じわりと下着が湿った。
リビングに入る前に大きく潮を吹いたらしい。しかも精液の塊が滴り落ちていた。背面駅弁だと読み取れる。
(あぁ、二人同時にイったのね。気持ちよさそう……)
シレリアの乳首は、ニップレスが剥がれ落ちそうなほど完全に屹立している。
ベッドでは全裸の彼が座って一息ついていた。汗だくで、和狸の付けた歯形もある。性交後の少し気だるげな彼の雰囲気に、シレリアは抗いがたい色香を感じた。
「あ、シレリアさん。すみません。和狸さん、ヤリ部屋に行く余裕も無かったみたいで」
「ううん、いいのよ気にしないで」
彼の股間をじっと見下ろす。半勃ちのそれは確かに、和狸はキレイにする時間が無かったようだ。なにせシャワーを浴びて、身支度を整えなければならないのだから。
「わたしがちゃんと、お掃除するから」
言って股座に顔をうずめる。まずは男女の淫液でどろどろの玉袋を、片方ずつ丁寧に舐め上げた。
「んちゅっ、れろれろぅ♡ れりゅれりゅれりゅっ、んあ~、んりゅりゅ」
その後は同じように片方ずつ口に含み、優しく皺を伸ばすように吸いながら中の睾丸を舌で愛撫する。
「はぁむっ♡ んむっ、んっろ。んろろろ、じゅるぅぅうう、っんぽ、んぅ、っぷぁ♡ いやらしい味が、ちゅぱっ♡ 染みついて、ぶぢゅっ。お掃除のし甲斐があるわぁ♡ ちゅぱっじゅぱっ」
(すごい、もうこんなにタマタマがずっしり重く♡)
「掃除って言うより精液作ろうとしてません?」
「んそんな事、んちゅ♡ 無いわ。皺の一本一本まで、んぽっ、キレイにお掃除するってぇ、んろぉ、和狸さんに約束したんだからぁ♡」
ホント~? と首をかしげる。多分こういう意味だとは思ってない。
彼はシレリアのワンピースを胸元までたくし上げて、豊か過ぎる乳肉を下から持ち上げた。汗に濡れたそれは、いつまでも揉んでいたい程の質感がある、ニップレスを剥がすと、シレリアがピクリと震えた。
そのまま大きな乳首を摘まみ、優しくシコシコと擦る。
「んんっ!? んあぁっ、えろれろぉおんっ、ずちゅっずりゅりゅっ」
(あんっ、お掃除中なのに、びんびんの乳首いじっちゃ♡ うんっ♡ 集中できないじゃない)
乳首責めに反応してフェラの調子が変わるのが面白い。
シレリアはいよいよ竿の掃除に掛かった。すでにガチガチに勃起した男根の、ぶっとい尿道を下から丁寧に何度も何度も舐め上げながら舌を左右に這わせる。カリの返しの部分を舌先で丁寧にほじくり、丹念に磨き上げた。
しかしそうやって汚れを取ればとるほど、鈴口から先走り汁が溢れ出す。
「んはぁぁ~~~、んろぉ~~、れろっ、れろぉっ。じゅるるるぅぅうううぅっんっ♡ ぢゅるっ」
(あんっ、おいしいお汁がどんどん溢れて♡ せっかくキレイにしてるのにぃ)
ポタポタと床に愛液が音を立てて滴る。シレリアもマンコが疼いてもどかしいのだろう。
ふりふりと振られるデカ尻を眺めると、彼も辛抱できなくなる。すでに十五分以上も舐められ続けていた。
「シレリアさんそろそろ……」
「んぶっ、ちゅぅっ、んっじゃあ仕上げに入るわね」
はぷりと先端を加えて、舌で舐め回しながら浅く短い動きで首を振る。力強い吸引と舌使いで敏感な亀頭を責めまくるのが、シレリアの得意技だった。
「んっぶっ! じゅぐっ! んぼっ、んぼっ、んぼっ! んりゅ、ちゅぱっぢゅぱっ! じゅっぼっじゅっぼぉ」
(本当は全部お口の中に入れてあげたいけど)
これは彼女の胸がデカすぎてデカすぎて、犬衣や和狸のようにディープスロートがしにくい事に起因していた。二人に相談して編み出したのが、高速で亀頭を責めるこのやり方だった。
シレリアのラストスパートに、急激な射精感が込み上げてくる。
「んぼぉっじゅるぼっじゅぼじゅぼっっ、ぢゅぱっぢゅぼんっ♡ んぼっ、んぢゅっ、ずりゅぢゅぢゅるるぅぅうううう!!」
(お掃除、これはお掃除だから一滴残らず、全部お口の中に出してぇ、絶対に零さない♡ 全部、飲み干させてぇええ♡)
びゅぶっ! びゅるるるるぅぅううう、どびゅっ!! どくっ……どぷぅっ!
「ずずじゅるるぅううう、じゅるぅぅうう! んぐっ、ごぶっっ、ぐぅ、んっぅ、ふうぅぅ、ぢゅるるるぅ!!」
口内に射精された大量のザーメンで、シレリアの頬があっという間に膨らんだ。とろんとした表情で、なおも彼女の舌は執拗に這い回る。
長い吐精が終わり、ちゅぽんっ、と可愛らしい音を立てて、ようやく亀頭が解放される。
零さないように少しずつ、どろどろの白濁液を音を立てて飲み下した。
「んぷっ、んんっ! ごっきゅ、ごくっ、んぐっ……ん~~、ごきゅん♡ っぷはあぁっ♡ はあぁ、はあっ、おいし」
こうして彼の男根はキレイになった。しかし猛りは収まっていない。これはもう、性処理係としての役割を果たすべきだろう。
シレリアが女の微笑で言った。
「お部屋のお掃除は、もう少し後でいいわよね? 今から汚しちゃうんだから♡」
xxxxxx
xxxxxx
「朝には着くと思うから、いつも通り、ええ。それじゃ明日ね。楽しみにしてるから」
ハンズフリーにしていた通話が切れる。
集合住宅の一室で、例によって豊満な胸と胴と尻をした妙齢の女性、
使い込んで毛玉の付いた灰色のスウェットに年季の入ったエプロンをし、黒髪を後ろで纏め、眼鏡の奥の糸目で衣の色加減を見極める。二度揚げの後に皿に積み上げられた揚げ物は、三人家族で食べるには少し多い。
そのうち「ただいまー」と娘の
「おかえり、今日早かったのね」
「……うん。一個食べていい?」
「手を洗ってから」
はーい、と素直に従ってあつあつを頬張る。そして、やっぱりだと合点をいかせた。
「ねえ、明日さ、お兄さんのとこ行くんでしょ?」
「んー?」
「あの小さい山の」
「そうねえ」
料理に集中しているせいか曖昧な返答だったが、たいていは前日にこういった料理を作り置きするので色葉が察する事は容易だった。
お兄さん、とは彼の事を指す。最近になって初めて知った遠い親戚。一度だけ母に連れられ、あのアパートで出会った。聞いた事の無い親族の呼び名だったので、勝手にそう呼んでいた。
黙々と調理する母の背に言葉を投げかける。
「今度わたしも行きたいって言ったじゃん」
「えーなんでー」
ぱちぱちと高温の油が弾けた。
「なんでって……」
言い淀み、そういえば最近ユーチューブでたまたま見た、石探しの動画を思い出した。
「大きな川、あったし。ああいう所ってキレイな石があるらしいから、探してみたいし……ていうか平日だと学校あるからわたし行けないじゃんって言ったじゃん」
「お母さんとあの子はお仕事の都合があるから土日は難しいって説明したでしょー」
淡々と唐揚げが積み上げられていく。
「それに川なら、ほら、近くのホームセンターのところにあるじゃない。けど一人で行っちゃダメよ」
「それは、ああいう所じゃなくてもっと奥の方のがいいっていうか、源流?」
「はいはい、今度ね。日にちが合えばちゃんと言うから」
少し不機嫌そうなまま色葉は食卓に腰掛け、頬杖をつく。
別に母親がイジワルをしている訳ではない、とは理解している。ちらりと唐揚げを見やった。最近になって存在を知った親戚にあたる人物の為に月に一度、県外まで定期的に差し入れに行っている。
ただの遠い親戚にそれは構いすぎな気もするが、生まれた時から親を知らず天涯孤独で育った青年なら、その様子を月一で見に行くくらいは人情の内だろう。
やがて父親の
「ねえお父さん、今日のから揚げ、なんかいつもより美味しくない?」
娘に言われて、もそもそと口にする。
「そうか? うん? 一緒だろ」
なら気のせいか? と色葉は内心で首をかしげる。いつもの鶏肉よりクセが無いというか、ぷりぷりしている気がしたのだ。
確かめたくなって、母が入浴中にそっとゴミ箱を除く。鶏肉のトレーにかろうじてくっついているラップの値札シールには国産と書いてあった。
以前買い物に付いて行った時、母が手に取った鶏肉の値札シールにはブラジル産とあった。値段も国産に比べて僅かに安い。色葉は確信した。
(やっぱりお兄さんに差し入れする時はちょっといいヤツだったんだ!)
それは材料の値段だけではなく、揚げ物など手のかかる料理である事も共通点に挙げられる。
なにやら気付いてはいけない真実に辿り着いた気がして、ドキドキした。
(なんでちょっといいヤツ買ったんだろ)
それにもう一つ、疑問がある。
葬式の日以降、体感的にだが母は仕事から早く帰ってくるようになってきた気がする。
パート先の人手不足が解消されて残業が減ったらしいが……
色葉は布団の中で何度も寝返りを打つ。
それは外に対するほんの少しの背伸びのような、いや、一応は他人の彼に対するもてなしの意味と考えると筋は通る気がする。誰だって思いやりの気持ちはある。
胸のモヤモヤをかき消すように、下着の中へ小さな手を差し込んだ。
そんな娘の部屋の前で、鯨宮は一瞬だけ足を止めて浴室へ向かった。
服を脱ぎ、洗面台の前でその熟れた裸体を何世代か前のスマホで撮る。
いつまで経っても慣れない羞恥心と興奮に、肉穴がひくひくと疼く。しかしそれをいま慰める事はしなかった。
画像をラインで送信する。『オナ禁二週間目♡』とメッセージを添えて。
翌朝になって、昂る身体を必死に抑えながら娘と夫を送り出し、手早く髪を三つ編みにする。野暮ったい普段使いの下着からいわゆる勝負下着に着替えた。
出来るだけ外行きの格好で、タッパーに入れた大量の唐揚げを保冷剤と共に保冷バッグに入れて、意気揚々と家を出る。