【完結】ヒロイン全員子持ち人妻の小説が完成した! 作:hige2902
「シレリア……大丈夫? 大丈夫そう? シレリア。起きてください」
ぺたぺたと頬を軽く叩かれる感覚に、おぼろげながら意識を覚醒させる。
「んぅ、んん……わたし……」
ゆっくりと上体を起こし、見知った顔に安堵した。エルフの特徴である長い耳、それに知的な瞳と美しい月銀の長髪。祈りによる魔法を扱う僧侶のファレノ。妙齢で以下略。純白の露出度の高い修道服のような物を身に着けている。
「招来措置は成功しました。それにしても無事でよかった。武器も置き去りにされてしまっていたので、戦う際はさぞ不便だったでしょう」
なんとなくこの部屋には覚えがある。壁床天井の四方を木に囲まれ、それに深い新緑と草花の香り。ファレノの実家の一室のようだ。隅には、長辺が一メートルを超える四角柱の金属塊が頭のハンマーがある。柄も槍のごとく長く、常人には到底扱えない得物。
「いえ、魔物もいないしとても安全な場所だったから。少しモメた事もあったけど全然大したことなかった。けどわたしの武器が失くなってなくてよかった」
「ちゃんと魔法で運んできましたよ。しかしそうでしたか、治安が良かったのでしょうね。魔物がいないというのは少し羨ましい世界です」
「ええ……本当に、素敵な所だったわ」
思い出し、目じりを拭う。無事に戻ってこれた喜びと、二度目の別れに。
「……それで、あの奇妙な格好をした彼はいったい」
ファレノがシレリアの背後に視線を向ける。え、と口から戸惑いがこぼれた。まさか、そんなはずは、だって、あるわけないのだから。
それでも期待に振り返る。口元を抑えた。これは本当に起こっている事なのか、心臓が跳ね上がる。
そこには彼がいた。まだ力が入らないのか手で上半身を支えたまま、珍しそうに室内をきょろきょろと見回している。
「へえーこれが異世界? すげー、なんか全部木だ。っていうか木の中の部屋みたいな」
「きみ、誰。招来措置に巻き込まれた向こうの世界の現地人? 大丈夫? 立てそ?」
薄い桜色のウェーブがかった長髪の魔女、パフィオがとろんとした瞳を興味深そうに手を差し出してやる。
健康的な褐色の肌と例によって例に漏れず豊満な身体つきだった。夜色のとんがり帽に同色のボンテージの装いで、やはり他の2人と同じように露出度はもちろん高い。
「そうなるのかな。はい、そうです」
「おお! ホントぉ? へえ、カワイソだけど帰れないよ? きみんとこの世界の座標を特定する因子は」
ちらりと視線をシレリアに向ける。
「一緒にこっちに来ちゃったから」
「それはなんとなくわかってましたんで、大丈夫です。気持ちの上でって意味で、こっちの世界で生きてけるかはわからないですけど」
「へえ~、きみ、ウケるねえ。見知らぬ世界に全部捨てて来れるんだあ。まあなんか知らないけど言葉は通じてるから、なんとかなるんじゃない?」
初めて見るタイプのおもちゃを見つけた子供ように、パフィオはニタニタと笑みを浮かべる。
「どお? 食べてくアテなんか無いだろうし、わたしの従者になんなよ。頑張ったらイイ事もしたげるよ~」
ゆっさゆっさと胸を揺らす。今更だがファレノもパフィオもシレリアと同じく極端に露出が多いので目のやり場に困る。見たいところがいっぱいあり過ぎるから。
「二回目があるかはまあ、わたしが気に入るかどうかだけど」
「パフィオ……またあなたはすぐそうやって……」
「えー気になるじゃん、異世界の男だよ、全然知らない体位とかしてきたらウケるし~」
ファレノが頭を抱えてため息をつく。いつものやり取りなのだろう。仲間の無事と帰還も果たし、また一つ危機を乗り越えたという安堵の雰囲気が広がった。
祝福するように、気持ちの良い柔らかな薫風が窓からそよぐ。
「な、なんで……どうして、来て、くれたの」
その風に乗って、声がした。
控えめで、妙齢の女性の、どこか恐る恐るといった雰囲気の声がした。
シレリアがパフィオの肩を借りて立ち上がり、声を投げかけたのだ。彼は視線を向け、一歩あゆみ寄る。自然に言葉が出てきた。
「えーなんかやっぱもうちょっと一緒にいたいなーって思って」
気恥ずかしそうに頬を掻き、少し自嘲義気に続ける。
「犬衣さんたち、今頃は怒ってるかなー。ていうかやっぱ迷惑ですよね、いきなり付いてこられても、けど考える時間とか」
言い終わる前に、シレリアは彼に抱きついた。
抱きついて、深く口づけを交わした。
「んちゅ♡ んちゅぅちゅっちゅっ、っぷぁ♡ れろれぉ」
これまでの気持ちを発散するかの如く濃密に舌を絡め、啜り上げる。激しく貪るように。
犬衣たちが彼とキスする度に抱いてきた羨望、本当はずっとこうしたかったという隠してきた欲望を一纏めにしてぶつけた。
彼の手が背に回され、同じくらい強く抱かれるのがたまらなく嬉しい。
なによりも一緒に来てくれた事に涙を流しながら、うっとりと長いディープキスに没頭する。
「んっく、ん、ごくっ♡ ずぢゅっっ、んぢゅぅぅう♡ んぁん、じゅるっ、じゅるじゅるっ!」
「へえーあのシレちゃんがねえ、まさかこんな事になってるとは」
「けど、これは、その、いいのでしょうか」
「あー? まあそうねえ」
正直な所、シレリアの夫に対して二人は良い印象を抱いていない。
引退後に市井の生活に馴染めないというのは同じ冒険者として共感できなくもない。再び冒険者として活動するのもよく聞く話。だが元仲間のシレリアとその子を置いて行った事に関しては別だ。
その夫を探してぶん殴るなら理解できるが、また一緒に冒険するというのは賛同しかねていた。ただ、それは男女の色恋沙汰でありプライベートな気持ちの領域なので、あまり直接的にシレリアに苦言を呈する事は無かった。まあ本人が良いのなら良いケド……くらい。
冒険者はその辺りの感性がラフなのだ。
なので、異世界からすべてを捨ててシレリアを追いかけてきた彼の方が好感が持てている。というかそっちにしとけー、という心境。
「いいんじゃない? 夫を探し出して一緒に冒険する為の旅が、探し出してぶん殴るに替わるんなら」
「彼女の性格上、復讐に走るとは考えられませんが……まあそうですね」
特に話す事も無くなったので黙ってシレリア達の激しい接吻を眺める。
そして同じことを考えていた。
「ずろろぉっ! りゅむりゅむぅ、んふぅ~、んっんぅ~、んん~~すき、しゅきぃぃ♡、ちゅぱっ♡ ぢゅぱっ! んぢゅ~~」
(いつまでやってんだ)
乱れた吐息が部屋に響く。彼が足をシレリアの股に入れ、濡れた秘部を押し上げ、巨尻を揉む。同時にシレリアがジーンズの中で苦しそうに張り上がっているイチモツを撫でまわした。
「っは、っは! はぁっ! 好き、好き好き愛してる♡ っはぁ、んちゅ、ちゅっちゅっ! 本当に、好き、んああぁ、愛してます♡ はあぁあ、やっと言えた、ずっと伝えたかったのぉ、んはぁ、ずちゅっ! 嬉しい♡」
今まで押しとどめていた彼への気持ちを口にするたび、内ももに愛液がとろとろと流れ落ちる。
「おーい、おい。まさかここで始めるんじゃないだろーな」
パフィオがシレリアの肩を掴んで引き離そうとするが、ビクともしない。ファレノが諦めて冷静に尋ねる。
「一応聞きますが、もう元夫? でいいんですよね、が戻って来てもその辺は気持ちの整理が出来ているという事でいいですか?」
わざわざ聞きただしたのはやはり、仲間内で敵味方の情報を共有する必要があったからだ。後に元夫が現れても即座に敵と判断する訳ではないが、味方(というより身内)ではないという認識の明示。
個々の戦闘能力が彼の世界とは桁違いに高いこちらでは、その一瞬の判断の遅れが命取りとなりうる。今回は痴情のもつれになりかねないので尚の事。
「んぢゅっ、あむ、ん、ふぅ~♡ ふぅーッ! もし今あの人が戻って来ても、ちゅぅ、絶対この人に付いて行くぅ♡」
「理由は?」
とパフィオ。
「んろぉっ、んちゅ♡ わたしの事を想ってくれる気持ちも、エッチも全部上だもの♡ だから、ん、あの人はもう忘れるからぁ♡ れろぉ、おいひ……ずじゅうう、っぷあ、あっ、しゅきぃ」
パフィオがちらとファレノに視線をやる。
「精神制御術を掛けられた訳ではなさそうです。もっとも、向こうの世界でこちらの魔法体系に無い術を受けた可能性もありますが」
「その場合はもうどうしようもないねえ。まあ暫定的オッケーって感じで後はウチらで違和感とか探ってくかあ」
大きな心の変化があった場合、いかにプライベートな事でも言語化を求める。返答に魔法を掛け、第三者の作為を看破する為だ。
もっとも、ここまで徹底するのは彼女たちのような一線級の冒険者たちに限られる。
それはともあれ、どうやらシレリアは本当に自身のこころの従ったらしく一安心といったところ。
ぽたぽたと愛液が床に滴り出した。
「あの、ここ、わたしの部屋なんだけど……」
ファレノがおずおずと言ってはみるが、たぶん聞いちゃいない。
しかし、「あっ」と彼が気付いて口を離す。
「そう言えばお子さんは?」
「!? そ、そうね! いやだわわたしったら! ねえ娘はどこ!?」
バッと振り返って二人尋ねる。招来措置の万一の事故に備えて別室にいるそうだ。
「股くらい拭いてけ~?」
パフィオがその辺にあった布を投げ渡す。
「それわたしのスカーフ……」
ファレノがぼそりと零したが、それは誰が聞くでもなく床に落ちて消えた。
「ありがとう。それと……後でいいんだけど」
シレリアが顔を赤くしてもじもじしながら彼に言った。
「落ち着いたら、娘に紹介したいんだけど……いい? かな」
「もちろんですよ!」
「よかったぁ、それじゃあ行ってくるわね!」
それだけ言って、バタバタと部屋を後にする。
「それにしても、彼女が元気になって良かったです」
ようやく区切りが付いたとファレノが一息つく。
蒸発した元夫の問題と、追放機による騒動のどちらもがキレイに解決したのだ。仲間としてこれほど嬉しいことはない。
しかし、どたどたと足音がしてシレリアが戻ってドアから顔を出す。
何事かと三人は面食らった。
「忘れてたわ! パフィオ、さっき彼に従者になったらイイ事してあげるって言ってたじゃない?」
「あー言ったね」
「悪いけど先払いでシてあげてくれない? おちんちんをそんなにさせちゃったの忘れてたわ、ごめんなさい」
言って彼に申し訳なさそうにする。
三人は股間に視線をやった。確かにバキバキになった男根がある。
「あ~~……わかった。ヤっとくよー」
「ありがと! けどあんまりキツくしちゃだめよ? 気を失っちゃうから」
「はーい」
彼とパフィオが同時に答えると、シレリアは再び廊下を駆け出し去っていった。
「いや、シレちゃんはわたしに言ったんだけど……」
「おれだと思いますよ……ていうかいいんだ、他の人とセックスしても」
「ん? あ~きみの世界って一夫一妻制な感じ? こっちは割とラフなんだよね……それよかさーさっきの話の続きだけど、さすがに聞き捨てならないねえ。今なら許したげるけど」
ん~? と舌なめずりして彼の顎を細い指でなぞる。
確かに見た目が魔法使いの人相手に啖呵を切るのは少し怖い。感度を何倍にもされて、ヘタすれば後遺症とか残るかもしれない。
だがシレリアがあの言葉を自分に言ってくれていたら嬉しい。期待? に応えたい。なので引き下がるわけにはいかなかった。
「そっちこそ、潮吹きすぎて脱水症状にならないように気を付けてくださいよ」
言ってシャツを脱ぐ。
「あの~、ここわたしの部屋って言いましたよね?」
間でファレノが口を挟むが、誰も聞いてくれない。
彼の交戦的な姿勢に、パフィオは口元を歪ませる。
「おー言うねえ、じゃあ賭けよっか。わたしが勝ったら、そうだなー、んー、使い魔になってもらおっかな」
「パフィ! それ、人間相手にやるのは犯罪ですよ!」
「なーに言ってんの。こいつは異世界人なんだから厳密にはこっちの定める人間じゃないよ、魔法の禁則が対象としてるのは、あくまでもこの世界の人間やエルフなんかの知性体なんだから。それに、たぶんそもそもの物質的な構造もちょっと違ってるだろーからダイジョブダイジョブ」
ファレノの小言を慣れた口八丁でいなし、三角帽を脱いで、彼の首に両手を回す。柔らかな双丘がむにゅりと潰れた。ふわりと色香が漂う。
「で、あんたが勝ったらどーする? わたしをペットにでもする? 適当に名前を付けて、なんでも命令できるようなさあー。それともなんかのマジックアイテムとか? あ、お金も結構あるけど」
「え、うーん、じゃあおれに魔法を教えてください」
「そんなんでいいならいいけど、才能無かったら無理だよ」
「その時はその時で。俄然やる気が出てきた」
哀れな子羊を見る狼の瞳で、パフィオは密かに笑った。
(こっちは魔法使いだってのに、分身する魔法でいろんなとこおっぱいで挟んだり擦ったりすれば楽勝ー。こいつの世界は一夫一妻制らしいし、複数プレイなんてした事無いだろうから負けるわけないわー)
「んじゃファレノ、審判よろしくー」
「出来る事なら無効試合にしたいです……うう。そもそも何をどう判定すればいいのか」
諦めた表情で、もう好きにしてくれといった感じ。
彼はそう言えばとズボンのポケットから小箱を取り出した。
「あ、それ」
とパフィオ。先ほどのまでのヤる気満々の表情を冷ややかな物にした。ファレノも打って変わって剣呑な表情を見せる。
「……綺麗だね、どしたの?」
「向こうの世界でシレリアさんの衣食住を提供してたんですけど、お礼にって貰ったんです」
「あ、そう。なーんだそういう事ならよかった。もし盗んでたり拾ったとか適当なこと言ってたらアレしてるとこだったよ」
「ええ。一応あとで本人にも確認しますけど」
アレってなんだろうと気にはなったが、知ってしまうと萎えそうなので黙っておくことにした。
「これ、コンウェニ入れるのにちょうどよかったんで持ち歩いてたんです。こっちの世界の植物でしたよね」
箱を開くと、種子が十分入っている。もちろんそれはパフィオの避妊目的だ。
「んー、あーありがと。え? ってことはもうシレちゃんとは、まあ……あんなエロいキスしてたんだからそんな気もしてたけど、にしてはずいぶん残ってるね」
しかし招来措置以前から使っていたのなら、転移後に何日経過してから使い始めたかは不明だがそう残っていないはずである。
「裏庭で育ててたんで困る事は無かったです」
と、いう事は。
パフィオは顎に手をやって逡巡する。
追放機が干渉するための座標を特定する因子は、
裏庭に植えてあるというコンウェニを辿ればもう一度座標を特定出来るのでは? 例え種が発芽し、植物として姿かたちを変えていたとしても世代交代していないのだとしたら同一個体であると言えるだろう。そしてそれが可能なら、自在に二つの世界を行き来できるという事になるのでは?
「パフィオ、どうかしました?」
固まった彼女を、怪訝そうにファレノが覗き込む。
「いや、なんでも……」
この世界でただ一人、いや二つの世界でただ一人だけ反則に辿り着いた事実に心臓が高鳴った。
もちろんこの事実は後で仲間と共有するが、今はまずこの生意気な異世界人を使い魔にしてやる方が先だ。そうすれば向こうの世界の珍しいものを取って来させられるし、将来的に向こうに行った時にいろいろ面倒を押し付けられる。
むっふっふと含み笑いで彼をベッドに押し倒す。コンウェニを含んで分身魔法を起動すると、三人のパフィオが勝ちを確信する。
「えっ、すごッ! 魔法ってやつですか!? 凄すぎる!」
「ふふん、どう? 三人も相手した事はないでしょ~」
「はい! ちょっと前までは無かったです!」
「……言っとくけど、全員をトばさないとダメだかんね」
「それ以上は分身出来ないんですか?」
期待で顔をキラキラさせる彼に、三人のパフィオが、話が違うぞといった感じで互いの顔を見合わせる。
その後パフィオは負けたし、ファレノはびしょびしょのべとべとになった部屋に頭を抱えた。
それに彼は裏庭のコンウェニを辿って元の世界に再転移できたし、犬衣たちにそれぞれ色々言われたがまあこれ以上ないほどの事の顛末だった。
そして最後に残った問題を解決しに、一人の妙齢の女性がアパートにやって来た。
鷹峯家の一人娘、鷹峯鏡花が。