※この作品はR-18です。

【完結】ヒロイン全員子持ち人妻の小説が完成した!   作:hige2902

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第十四話 こっち

 まばゆい光が丘陵に輝やき、徐々に消え去ると彼とシレリアはその場にいた。

 

「二回目だと結構慣れてきますね。あんまり疲れてない」

「そうねパフィオもだいぶ使い方を理解したって言ったし」

 

向こうの世界で娘との再会や彼の紹介、その他諸々が終わり、戻れるならチンピラたちの始末をつけなければ再び羽目市に転移した。

 新婚という事で二人だけの時間を用意してやろうというファレノたちの計らいでもある。

 

 追放機で時間を調律してあるので、向こうの時間はほぼ経過していない。

 

 なんだか懐かしいなー、と辺りを見回すと。

 犬衣が和狸の胸を借りて泣いていた。背中をさすってやっていた鯨宮がポカンとする。

 

「あれ、時間が……ほとんど経過してないのかな」

「いい感じに界域を調律してくれてたみたいね」

「へえー、なんか都合良いけど、まあいっか。ただいまです」

 

 今生の別れのつもりだっただけに少し恥ずかしい。

 

「あらおかえりなさい」

 と和狸が呑気に言うと、その大きな胸に顔をうずめていた犬衣が「ぅえ?」と視線を上げる。

 そのままずびりと鼻をすする。

 

 充血した瞳で彼を見やる。駆け寄って抱きつき、胸板で涙を拭くように擦り付ける。

 肩に手を回すと、少し震えていた。

 

 しばらくして彼にだけ聞こえるように、ばか、と呟いた。

 

 

 

 xxxxxx

 

 

 

 その後は警察への通報を済ませた。

 病院送りにされた多数のチンピラたちの証言はちぐはぐだったが、ただ一つだけ、シレリアに関してはみな口をつぐんだ。

 

 彼も聴取を受けたものの、怖かったので家にいたとだけ証言して終わった。被害者だったせいかそれ以上の追及は無く、結局はチンピラたちが土壇場で報酬の分け前で揉めたという線で終わった。

 

 熊については、最初に引き取った愛護団体に対して杜撰な管理体制が指摘され、その後に貰い受けたフロント企業共々なんらかの沙汰が下るだろう。

 肝心の熊は、シレリアに忠誠を誓っているからか大人しく、人の意図をよく汲んだ。

 

 簡単な芸ならこなし、それならといくつかの動物園が保護を申し出る。

 誰かに畏怖しているのかなぜか死んだふりと腹を見せる降参のポーズがめちゃくちゃ上手く、後に爆発的な人気を得た。

 

 

 

「って訳で以前から土地を売ってくれって言ってた奴らは皆捕まったらしいです。たぶんその内に県知事も」

 

「よかった~じゃあこれで一安心ね」

 和狸が大きな胸を撫でおろす。

 

 犬衣たちに電話で事の顛末を伝えると、三人はすぐにやって来て代わる代わる彼とシレリアを心配した。

 

「それで怪我とかは特にないのよね? シレリアさんも、チンピラに囲まれたんでしょう?」

 と犬衣。彼女のセックスシンボルを超えた肉体を前に、犯罪者がどういう行動を取るかを危惧する。

 

「それはまあなんとかなったわ」

 

 微妙に言葉を濁す。昨夜の乱闘を無双した事を話すかどうか、いまいち踏ん切りがつかない。

 

「でも怖くなかった? 話を聞いてるだけでもドキドキしちゃう」

 

 弱った顔で鯨宮が言う。

 

「まあもう終わった事だから。けどドキドキはしてる。本当に格好良かったわ」

 シレリアは思い出して両手を赤く染めた頬にやった。

「ならず者がわたしに酷い事言った時に怒ってくれた時とか、庇うように前に出てくれた背中を見たら……もう胸の奥で花が咲いたみたいになって」

 

「もおー男らしいとこあるじゃない」

 このこの~といった感じで犬衣が彼を小突く。

「けど勇気あるわね。逮捕されたのってかなりの人数ってテレビで見たけど」

 

「あの時は必死だっただけで」

「もお~謙遜しない。はあ~わたしにもそーゆーカッコいいところ見せてほしいなあ」

 

「え~嫌ですよ」

「……ふぅ~ん、シレリアさんだけなんだ」

 

 胸にチクリとした痛みを隠して、犬衣は口を尖らせる。

 

「だってそれって犬衣さんが失礼な事言われたり危ない目にあったりするって事でしょ? それは嫌なんで、おれはカッコ悪くてもいいですよ」

 

 それを聞くと、犬衣は自分でも意外なほどに顔が赤くなった。きゅっと口を結んで、彼の頭を胸に抱く。

 

「ちょっと、もご、待っ」

 

 ブラ越しにでも柔らかい肉が顔を包んだ。暑いほどで、かぐわしい香りが鼻に広がる。

 

「だめー、人妻のエロいスイッチ入れたのはそっちなんだから責任もってよね」

「わ、わたしもよね? 同じ事言ってくれるわよね」

 

 上気した和狸が後ろからしなだれかかる。そのままずりずりと豊満な胸を押し上げて、犬衣のそれと合わせて彼の頭をおっぱいでサンドした。

 

「あら~二人だけって事は無いわよねぇ」

 

 じっとりとした湿度で鯨宮が左から頭におっぱいを押し付ける。

 出遅れたシレリアが事に慌てて右側を埋めた。四方を柔肉に囲まれ、円熟した色香に包まれる。出来る事ならこのままいつまでも堪能したいところだが、今ばかりはそうもいかない。

 彼が犬衣の肩を何度かタップする。いつもとは違う反応に胸を離した。

 

「なに? いつもだったらこのままヤリ部屋へ直行なのに」

「ぷはぁっ、いや、おれもそうしたいんですけど、これから人が来る約束なんで」

「えっ! そうなの!? じゃあとりあえず急いでヌかなきゃじゃない!」

 

 和狸がズボン越しの男根を撫でながら言った。すでにバキバキに勃起して痛そうだ。慣れた手つきでベルトのバックルを外す。

 

「いやでも、もう時間無くて」

 

 シレリアが焦って口走る。

「まあ大変! あとどれくらい? なら急がないと。ほらバンザイして、上を脱がすから」

 

「そうじゃなくて」

 口ではそう言いつつも従う。

 

「でもおちんちんがこんなじゃ会えないでしょ?」

 鯨宮が腰に手を当て、諭すように言う。

 

「ほっとけば収まりますからっ!」

 

 犬衣がゆっくりと彼を押し倒し、手早く下を脱がせた。ぼるんと現れた肉棒に舌なめずりする。

 

「すぐですよ、もうすぐ! 数分もないかも!」

「んーじゃあギリギリ大丈夫そうね、わたしたち四人なら」

 

 シレリアがヤル気満々で「がんばるぞー」と、意気込みを口にする。

 

 四人の人妻が妖艶な笑みで彼を見下ろす。むわりと淫靡な気配が立ち込めた。

 これから最短で射精させる為に全力で絞ろうとしている。

 彼が逃げられるはずもなかった。不意に暖かな感触と共に視界が塞がれる。

 シレリアがワンピースを首元まで捲り上げてその大きな乳肉で彼の頭部を後ろから包んだのだ。

 

 少し汗ばんだもっちりと柔らかい乳房で、愛おしそうによしよしと彼の頭を揉むように擦る。彼はその際に生じた僅かな隙間から入る空気でかろうじて呼吸できた。

 彼女の鼓動と血管を流れる血流の音さえ聞こえそうだった。嗅いでるだけでチンピクしそうな熟れた甘い香りが、この状況では意志とは関係無く強制的に鼻腔を刺激する。

 

「よしよし、大事なお話の前にすっきりしましょうね~」

「あ、あらためて見ると凄い迫力ね」

 

 ごくりと三人の人妻がその光景に固唾を飲む。

 成人男性の頭部がおっぱいにまるまる飲み込まれる絵面は見られるものではない。

 背をシレリアに預けて僅かに上体を起こした彼の下半身は、すでにギンギンになっていた。

 

 豊乳で包まれ視界の利かない中、不意に左右の玉に暖かな吐息が掛かったかと思えば、ぱくりと食べられた。それぞれ犬衣と鯨宮が陰嚢を熱い口内で包む。

 

「んもっ、んりゅん♡ れろぉ~~んっぷ」

「はぷっ♡ んちゅ、にゅちゅ~~ーー♡」

 

 男の急所、生命線が二人の人妻に握られた。睾丸を含んだまま優しく袋を引っ張っり、舌で激しく舐め回し、甘噛みして弄ぶ。

 

「んじゅぐじゅっ、ぁあむぅぅ……れろれろれろぉ♡」

(すっごい重い♡ 濃いの期待できそ♡)

 

「じゅるるるっ! ぞちゅっ、ずるずるずるッ! んあ~~ちゅぼっ♡」

(こんなにザーメン溜めてたらお話集中できないわよ♡ オバさんたちがた~~っぷりヌいてあげる♡)

 

 最後に小柄な和狸が彼に背を向ける形でのしりと跨った。上を脱いでたわわ過ぎる大きな二つの果実で、我慢汁を垂れ流す男根を挟み込む。

 砂粒1つですら滑り落ちそうなほどきめ細やかで上品な乳房でパイズリされ、重量感のある身体を密着される。

 

「あんっ、おちんちんすっごい熱い。シレリアさんほどじゃないけど、わたしだって大きさには自信あるんだから♡ 仕事中にいつも見てたおっぱいでたぁ~っぷり可愛がってあげるからね♡」

 

 だぷっだぷっ。と乳袋を上下させ、僅かに覗いた亀頭をはぷりと咥える。

 

「あむっ、じゅるっ。ん、ろう? ふぁいずりふぇら♡ んぇろんっ、ひもひいい? んむちゅっぢゅぽっ♡ にゅぽっにゅぽっ」

 

 首を上下させ、みずからの乳房に顔を埋めながら、しなやかな唇をすぼめてでカリ首まで何度も愛撫する。その間にも舌をれろれろと裏筋を舐めながら溢れるカウパーを吸い上げた。

 

「ほら、すぐそこに和狸さんの柔らかくてかわいいお尻があるわよ」

 

 シレリアが彼の手を取り、和狸の大きな桃尻に当てがった。もうどうにでもなれと欲望の赴くままに手探りでロングスカートをたくし上げ、生尻を両手で掴む。

 妊娠を経験し、ホルモン分泌量の増加で骨盤の広がった人妻の尻は、ゆったりとした肉付きも相まってふくよかだった。むにゅむにゅと動かすように愛撫すると和狸は身をよじり、お返しとばかりに一際強く亀頭を唇で締め付ける。

 

 シレリアの乳肉に頭部を包まれ、母性たっぷりにあやすような乳房で揉まれていると、まるで胎の中にいるような居心地だった。

 陰嚢は左右同時にスケベ人妻になぶられて精液を強制製造させられる。

 

 男根は優艶な双丘と真反対に貪欲な口淫で責められ、脂のたっぷり乗った主婦の体重を全身で感じながらその臀部を握るように揉む。

 どんな男だって離れがたいほどの至福の肉感と快楽に、彼は抵抗を諦めた。

 

 仲の良い四人の熟れた女が、ただ一人の男の速やかな射精の為だけにする奉仕。

 そう長く耐えられるはずもなく、陰嚢が溜め込んだ精液を吐き出すためギュッっと蠕動した。スケベな二人の人妻が見逃すはずも無く、同時に強く吸い付いた。一滴でも一ミリリットルでも多く射精させるべく。

 

 和狸の胸の中でシゴかれていた肉棒がビクビクと跳ね回る。暴れる猛獣を無理やり押さえつけるように、左右の乳房をじぶんでも痛いほどおっぱいを押しつぶしながら上下させる。

 

(んっ、来る♡ 濃いお精子♡ みんなには悪いけど全部飲んじゃわないといけないわよね? このあと人に会うんだから胸の中に出したら大変だもの♡ あっ、だめわたしもイきそ、あっイクっ♡)

 

 一際強く猛った男根が乳房の中でにゅるりと躍動する。

 

 びゅぶっ! どびゅるるっびゅるる~~! 

 

「んぶっ!? ぐっ、おぶぅっ、ごぷ♡ んりゅりゅるっ、るろぉん」

 

 和狸は吐き出された精液を全てその小さく可憐な口で受け止めた。受け止めつつ、唾液と汗でぐちょぐちょの柔肉をぬぢゅぬじゅと卑猥な音をさせながら狭射の手を緩めずに、口内の亀頭を容赦なくべろんべろん舐め回す。

 すでにイっているのにも関わらず加え続けられる快楽に、射精は止まらなかった。

 

 びゅるっっ、びゅぶっびゅるる! 

 

 あまりの気持ちよさに彼は呻いた。いや呻こうとしたが、射精を察知したシレリアが前腕も使って、大切なものを握りしめるようにぎゅっと爆乳を締め付けたのでそれすら叶わなかった。おっぱいはゆで卵を指で締め付けたようにゆるやかな8の字にむにゅんと形を変えている。

 

 彼女の汗で蒸れ蒸れの乳房の中で、濃厚な色香をかがされ続けながら長いあいだ絶頂した。意識が朦朧とするほどの快楽だった。いや酸欠かも。

 

 じぶんの肉体に埋没した夫に慈愛の目を向け、囁くように言った。

 

「すぐ射精できてえらいえらい。あら、和狸さん、挿入もしてないのにイってる。下着がぐしょぐしょ。素敵よ、あなた。お話が終わったらすぐまた気持ちよくしてあげますからね♡ だからわたしたちの事も……ね?」

 

 うんうん、わかったから、それはわかったから解放してくれ、と彼は頷くがしかし四人の女たちはなぜだか責めの手を緩めてくれなかった。とっくに射精は終わっているはずなに。

 

 んふーっ、んふぅーっ! と口の中にある大量の精子を少しずつ飲み下しながらチンポを咥えたままの和狸の鼻息は荒い。犬衣と鯨宮は次の精液を作らせるべく口淫で陰嚢を酷使させる。シレリアは変わらず、自慢の夫の吐精っぷりにご満悦だった。

 

 やばい、これローテに入ってる!! 

 

 危機感を覚えたが、どうしようもない。そんな時にシレリアが車の気配に気づく。

 

「あっ、もう着きそうよ!」

 

 むりゅんと乳の獄から解放される。顔は赤く、茹っているようにも見えた。

 

「っぷはぁッ! はぁっ、いそが、急がないと」

 

 本当にキンタマの中のザーメンを全部ぶっこ抜かれたかと思うほどだった。時間さえ許せば余韻に浸っていたがそうもいかない。

 

 じゅぽっ! と下半身に群がっていた三人も男性器から口を離す。

 

「ん゙ー!」

 

 頬を膨らませた和狸が自分の口を指さすと、犬衣と鯨宮はすぐさま代わりばんこに唇を重ねる。

 和狸は口内にたんまりある、メスを魅了する濃密でドロッドロの精液をそれぞれの口に流し込んだ。

 一人では一度に消費し切れないので、口移しでザーメンを分け合い喉を鳴らして恍惚の表情で飲み下す。

 

「んっ、ごくっ、んく♡ っはあ……あはは、すごい量、最高記録なんじゃない?」

 と犬衣がなぞの達成感で言った。

 

「ごっく、ごきゅっ♡ うふふ、相当気持ち良かったでしょうね」

 と鯨宮が妖艶に笑い、口元に垂れた一滴をぬろんと舌で舐めとる。

 

「あ、見て和狸さんのお尻」

 シレリアがみんなを手招きして指さす。

 

「なになに~」

 

 白い臀部には彼の指で赤くなった痕があった。射精時のあまりの気持ちよさについ力を入れ過ぎて掴んでしまったのだろう。

 

「え? え~~ほんと~~?」

 

 最後にようやく精飲し終わった和狸は、困惑しつつもどこか嬉しそう。

 

(や、やだ。なんだかこの子のモノにされたみたいじゃない♡ わたしには優詩さんがいるのに)

 

「ちょっとちょっと和狸さん、そんな嬉しそうにしてないで上着てってば」

 

 犬衣がデカいブラを投げ渡す。

 鯨宮が家じゅうの窓を開けて換気した。

 シレリアがワンピースを下ろして身なりを整える。

 彼は濡れタオルで陰部を拭き、水を一杯飲み干した。

 

 つまり全員がバタバタと忙しくしており、気付けないでいたのだ。

 和狸の身に起きていた、ある異変に。

 

 チャイムが鳴る。

 それは犬衣、鯨宮、鷹峯にとって唐突な地獄の始まりだった。

 

 

 

 xxxxxx

 

 

 

 妙齢の女性が彼のアパートを訪れた。

 タクシーからパンツスーツ姿の鷹峯が降車し、内心でこの先の交渉に暗澹たる気持ちを覚えながらチャイムを鳴らす。

 到底すんなりと話が進むとは考えられない。

 

 バタバタと物音がした後、ドアが開く。

 そして迎えた彼は、鷹峯に対して既視感を覚えた。どこかで会った事があるような。

 

 鷹峯が正座のまま頭を下げ、手を付いて詫びる。

「この度は大変なご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」

 

「そんな謝らなくても大丈夫ですよ!」

 

 続く文言を遮って彼が慌てて口を開く。

 鷹峯が直接的に彼に対して危害を加えたり唆した訳ではないが、責任者とは責任を取る為の役職だ。

 元より彼女の信念においては、この問題を清算しないままに土地の売買契約について踏み込む事を良しとしない。

 

「ですが今回の事は当方の不手際が原因の一端になってしまった以上は……」

「あー、おれは大して気にしてないんで。けど、そうですね、じゃあこの人たちに謝ってもらえれば」

 

 少し後ろに並んで座る女性陣に視線を向ける。

 

「危ない目に遭ったのはおれだけじゃなくて、ここに住んでくれてる人や、心配して様子を見に来てくれる人も巻き添えになっちゃったし」

 

「……正直、実害を被ったのは確かなのよね」

 犬衣が腕を組んで言った。

「危なそうな連中が地上げしてるらしいってなったから、短時間だけど住居を移さなきゃならなくなったし」

 

「実際、トラックで突っ込まれそうになったんでしょう? もしそうなったら損害賠償って話だけど、ああいう人たちにすんなり話が通じるとは思えないし」

 と鯨宮がさめざめと。

 

「あ、そう言えば玄関の凹みって熊がやったのよね。あの時は怖かったわよねえ?」

 思い出したように和狸が合わせる。

 

「ええと、あの夜は男の人たちに囲まれて凌辱されそうになったわ」

 最後に少しだけ棒読みのシレリアが。

 

 実は犬衣の発案で、彼は知らないが今後の商談を優位に進める為の布石だった。

 悪事を働いたのは県知事たちで、鷹峯に対して主たる責任が無いのも理解しており敵愾心も抱いていない。なので少し嫌味ったらしい女を演じてしまうが、少しでも彼の懐に入るお金が増えるならと一致団結したのだ。

 とはいえ実際に行動に起こすと罪悪感を覚える。やっぱやめたくなってきた。

 

「あ、すみません。紹介がまだでしたね。こちらから順にアパートの管理人のシレリアさん、親戚の鯨宮さん、バイト先の同僚の和狸さんと住人の犬衣さんです」

 

「失礼しました。関係者の皆様には、このような不測の事態により──」

 

 失念していた訳ではなかったが、謝罪が遅れてしまった事に鷹峯は内心で毒づく。

 彼の後ろに座る四人の妙齢の女性たちにそれとなく窺った。当然ながら怒っているように見える。部屋に招かれた時からずっと気にはなっていた。

 途中で「ん?」と思う人間関係もあったが、ここはあまり詮索せず平に徹する。

 藪蛇でこれ以上交渉を難航させたくはない。

 

 だがどうしても気になる。一つだけ、気になる。

 むぅっ、とした作り笑いならぬ作り怒りしている和狸を盗み見た。なぜ、どうして。聡明な鷹峯であっても理解に困る事象だ。

 

「あ、あのっ、この子はわたしと一緒のスーパーで働いているんですけど、えと、時給は高いとは言えなくて」

 

(なぜ、なぜなの? この人……)

 

 鷹峯は真剣な表情を崩さず、慣れない怒り口調の和狸の言葉を聞いていた。

 

「だからあんまりお金も無くて、あっごめんなさい今のはちょっと一言余計だったわね。だからその……」

 

(どうして、こんな状況で、正気?)

 

 数々の商談や交渉をまとめた海千山千の彼女であっても理解不能だった。

 

「め、迷惑料と言うか、ね? そういうのもちょっと付けてくれると助かるのよ」

 

(なぜこの人の口元に陰毛が付いているの?)

 

 この場に縮れ毛のような髪質の人はいないのでおそらく陰毛で間違いない。

 言いたい、というより尋ねたい。どうして口に陰毛が付いているのか。

 いやそれは口淫をしていたからなのだろうが、鷹峯とてその程度の性知識はあるのだが、どうして今。というより話し合いの直前にそういう事があったという訳で……いやそれよりどうすればいい、注意していいものなのか、それとも気付かない振りを続けていた方がいいのか。

 

 鷹峯の名と鶴技の命運を背負う彼女は、この交渉でのミスは決して許されない。一言一句、すべての応酬で正答を選び続けなければならない。

 言わば人生を賭けた大勝負だというのに、この選択肢は理解の範疇を超えていた。

 

 ぐるぐると出口のない思案に捕らわれた鷹峯を見て、犬衣は反射的に思った。

 明らかに性格的に向いていない和狸の空回りし続ける交渉術に、戸惑っている。ある意味でそれは正しい。和狸をそれとなく止めに入ろうとし……入ろうとして気付いた。

 

(こんな事ある!?)

 

 抗いがたい可笑しさが鼻先まで込み上げてきたが、この緊迫した状況で吹き出すのはマズい。その笑ってはいけないという前提がまた可笑しさを加速させる。

 よく見るとカーディガンの袖の所にも一本付着している。

 

(大丈夫、喋らなければ、耐えられる!)

 

 犬衣は渾身の力を顔に込めた。

 

「ねえ! 犬衣さんもそう思うわよね! ヒドイと思わない!?」

 

 腕を組んで精一杯の威圧感を出そうと一生懸命の、口元に陰毛が付いている和狸が話を振ってきた。今もなおヒドイよ。酷いわよ、和狸さん、あなたが今は一番。誰か、たす、たすけ……

 犬衣は歯を食いしばって耐えた。目じりがぷるぷると震えだし、涙が浮かんで一筋流れた。

 

(え!? そこまでするの!?)

 

 和狸はその女優っぷりに驚いた。まさか泣き真似までするとは。ホントは磨り潰された笑い泣きのそれが太ももにポタリと落ち、気づいた鯨宮が和狸を挟んで覗き込む。

 そして、どうしましょうと判断を仰ぐような和狸と目が合った。いや陰毛が合った。

 

(嘘でしょ!)

 

 反射的に口元を覆った。そのまま唇を内側に巻き込んで思い切り噛み締めて耐える。耐えろ! 

 

「んぐぅっ!」

 

 耐えきれなかった。ダメだ。

 が、鯨宮はそれを悲哀の嗚咽に誤魔化す事でこの理不尽な難局を乗り越えようとする。

 

「ん゙っ、っふぅ、ホントにこの子が、心配で……んぶっ! ふっ! っく、ぐ、ひぅっく、親もいなかったのに」

 

 それを見て和狸はハッとして察した。そうか、ここは泣き落としで相手の同情を買う作戦なのか。

 あからさまに閃いた顔の後、急に両手で目を擦るようにして子供がやるようなウソ泣きをする。

 

 彼とシレリアは、急に三人が情緒不安定になって困惑していた。

 

「う、うう、うぇーん。わたし、職場でこの子が笑ったところなんて見た事ないのよ、うぅ」

 

(今のあんたなら誰だって笑わせられるわよ!!!!!!)

 

 犬衣と鯨宮は限界だった。臨界に近い。腹筋は痙攣しているかのように震え続けている。頬が痛い。

 だが同時に希望を見出してもいた。

 この泣き真似で前腕が陰毛に当たって服に付着するなり落ちるなりすることに賭けていたのだ。

 それは鷹峯も同じで、何も無かったでこの場を通すことが出来る。

 

(お願い!)

 と犬衣。

 

(今日だけでいいから)

 と鯨宮。

 

(頼む)

 と鷹峯。

 

 やがて和狸のお粗末な演技が終わり、腕が降ろされる。

 ちらり、おそるおそる伺うような瞳が現れた。鷹峯と、次いでこの後はどうすべきか犬衣と鯨宮を見やる。

 

 口元の陰毛は二本に増えていた。

 

「ぐぉっ」

 

 犬衣が呻いて両手を付く。顔を伏せたままこの地獄を呪った。おそらくカーディガンの袖に付いていたあの一本が、どういう訳か口元に引っ付いたのだろう。陰毛には淫液が付いていただろうから、ありえない話ではない。

 

 事態は最悪な状況へしか傾かないのか。

 緊張と大役からかそれまで戸惑い一辺倒だった鷹峯も、理外の出来事に絶望的な笑いが腹の底から込み上げて急激に苦しい。

 奇跡は起きなかった。

 三人は死を覚悟した。

 

 しかし鷹峯はいち早くその中にあって活を求める。

 

(わたしはっ鷹峯の、鋼とまで……この程度の危機くらい!)

 

「こっ、ふっ、この度はまっ、まこっ誠にっ!」

 

 それは鯨宮と今の犬衣の状態を過度にした合わせ技だった。

 つまり、謝罪を口どもりながらの土下座。これならば破顔しても悟られることは無い。

 

 その手があったかと犬衣と鯨宮は泣き崩れるようにして顔を床に伏せた。

 

「うぅっ、うわぁぁっはっ! はぅ……んふっ! ぐふっ」

 

 え? え? と戸惑った後、和狸もそれに続く。

 六人中四人が土下座して床に顔を擦り付けて泣き出す異常事態に、彼とシレリアはもうどうしていいかわからない。

 

「ちょっとどうしたんですかさっきから。おれなら全然平気ですから顔を上げてくださいよ、鷹峯さんも」

 

 平気じゃないんだ、こっちは。

 今は、今だけは彼のその優しさをそっとしまっておいてほしかった。

 犬衣、鯨宮、鷹峯の三人はひとしきり笑いを小出しにして一時的な難を逃れる。涙もぽろぽろと零れた。

 ひどい地獄を見たが、いったん落ち着くと精神的余裕が出来る。

 

 仮にこのあと和狸の口元の陰毛が三本に増えていても大丈夫だ。もう笑うことは無い。

 耐えきった、乗り切ったのだ。この局面を。

 そう確信すると、ほどなくして三人に続いて和狸が顔を上げる。

 ほら何ともない。

 

 和狸の口元の陰毛は落ちて無くなっていた。

 代わりに犬衣と鯨宮の口元に、床に落ちていた陰毛が付いていた。

 

 和狸が声を荒げる。

「ちょっと二人とも! お口におちんちんの毛が付いてるじゃない!?」

 

 三人は息が出来なくて死ぬかと思うほど笑った。

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