※この作品はR-18です。

【完結】ヒロイン全員子持ち人妻の小説が完成した!   作:hige2902

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第三話 シレリア 2

「だから、やっぱり土地売るのやめます」

 

 アパートの裏手で、彼がスマホに言うと担当の媚びるような声が返ってくる。

 

『いやあここにきて急にそれはちょっと……もう話はほとんど纏まってたじゃないですかぁ』

「それはまあそういう雰囲気でしたけど、もうちょっと考えさせてって言いましたよね。サインしてないし」

『こちらとしては、もしここで決断していただけるなら、というお値段の提示でして』

「すみませんけど」

 

 取り付く島の無い彼の返答に、一拍の沈黙があった。

 

『……わっかりました! でしたらもう一度、金額面でもう少し融通出来ないかこちらで検討しますので、せめてもう一度お話する機会を──』

 

 その後も続いた担当の粘り強い営業に、めんどくさくなった彼は適当な理由を付けて通話を切った。

 ほんの少し、もうちょっと交渉して値段を釣り上げた方がよかったかと考えが過りもしたが、鼻で笑った。

 

(融通ったって、どーせたいした金額じゃないだろうし)

 

 この担当に最初に提示された土地の売却金額は、それにかかる税金と同程度の額でしかなかった。それに色を付けられてもたかが知れているだろう。それよりは、身元不詳のシレリアの安全を考慮した場所に住んだ方がいい。ヤれるかもだし。

 進展はまったくないが、彼はいずれくるかもしれない時を夢想してむくむくする。その思考の片隅で、小さくささくれだった疑問が掠めた。

 

 けど、こんななんも無い広いだけの土地を買って何すんだろ? 

 

 山を見上げてみる。埋蔵金があるとか? 裏の丘陵に温泉とか油田が湧くとか? 

 バカらしい頭を振って妄想をそこそこに部屋に戻り、別の妄想に耽る。

 なんか思ったよりエッチな事が起きないな。

 

 小学生用の国語ドリルを解くシレリアを眺めながら、彼はぼんやりする。

 すでに彼女の肉体がスケベなので日常的には十分エッチなのだが、もっとこう、下着とかを目の当たりにするかと思っていた。

 のだが、身の回りの世話を買って出たシレリアがなんとか洗濯機の操作を覚え、洗濯を受け持ったのでその機会はおそらく永遠に失われた。

 

 下着は一緒に買いに行ったのでどのようなショーツか知っているが、そういう問題ではない。

 まあこういう日常が悪いわけではないし、と紅茶を啜る。

 

 そしてその悪いわけではない日常のほつれは、あっけなく訪れた。

 二人の奇妙な同棲が始まってそれほどの日時が経過するまでもなく、初めての買い出しから初めての休日。

 休みなので彼の起床は少し遅く、早起きしたシレリアは彼の眠りを妨げないようにゆっくりとベッドから出た。

 

 出来れば自分がソファで寝て、彼にはベッドを使って欲しいのだがどうも意地や見栄のようなものを感じて、甘えさせてもらっていた。男のそういった所は意外と柔らかく傷つきやすい事を彼女は知っているから。

 

 そっと、慎重に音を出さないように朝食を作ってあげようとし、その前になんとなく彼の寝顔を覗き込む。こうして誰かの無防備な顔を見るのは、冒険中と自分の子供を除けば夫だけだった。

 そういった朝の前にはそういった夜もあったわけで、その事を思い出して誰に対するでもなく恥ずかしくなって苦笑した。

 そして洗面所へ向かおうとして視線が固まる。

 

 暖かい春の気候もあって、薄いタオルケットを掛けただけ彼の下半身が隆起している。その生理現象がどういったものか知らないシレリアでは無かったが、親切で優しい彼のオスの部分を初めて認識した。

 

(そ、そうよね。男の子なんだから当然よね)

 と自分に言い聞かせて平静を努め、音をたてないように顔を洗う。

(やっぱり私がいるからイロイロと発散しづらい……わよね)

 

 六畳一間にプライベートなスペースは無いに等しく、スるとなれば風呂かトイレしかない。ひょっとしたら、とシレリアは顔の水をタオルで拭って浴室のドアを見やる。あそこで入浴中にこっそりと自慰をしているのかもしれない。

 自分が裸になっている場所で、彼がイチモツをシゴく様子が脳裏に揺らめいた。いびつな官能を覚える。

 

(い、いやだわ私ったら)

 

 それは久しく忘れていた情感だったが、年下相手に何をはしたないという理性がまだ働いていたし、何より彼からしてみればこんなオバサンがみっともないと思われるだろうという恐怖がある。

 ただ、どこかに仕舞い込んで久しい情念に火種が灯されたのは確かだった。今まで背負ってきたすべてから強制的に隔離された休暇という大義名分の下に。

 

 

 

 ワンピースの下に使い古された男物のジャージのズボンという奇妙ないでたちで、シレリアはアパートの裏手にあるちょっとした山を散策していた。

 一応は彼の私有地なのだが、様々なゴミがぽつりぽつりと落ちている。どこかの誰かが捨てていった物をトングでビニール袋に拾いつつ山頂にたどり着く。

 

 見下ろすと、緩やかな起伏のある地形が広がっている。だいたい見渡せるところまで彼の土地と聞いた。

 羽目丘陵と呼ばれているらしく何とも見晴らしいのいい景色だが、山と同じくやはり大した価値は無いらしい。この国にはこういう活用されないが、かといって手放すにも買い手がいない場所がよくあるらしい。

 

 そうだ、と思いつく。

 

(こんど彼に食べられる野草かなにかを聞いてみようかしら。少しでも食費の足しになるかもしれないし)

 

 どういう料理にしよう……われながら良案な気がして上機嫌のまま下山し、麓に沿って歩くと雑誌が捨ててあるのを見かけた。

 小さな憤りを感じながら拾おうとして、固まる。

 すでに国語ドリルを解いているのでこの世界の印刷技術に今更驚くような事は無い。無いが、問題はその表紙だった。

 

 若い女性が胸をさらけ出し、妖艶な笑みを浮かべている。

 

 アオリ文には『幻惑のシルエット ~JKの隠された情熱~』と書かれており、まだ文字の読めないシレリアだったがどういった内容なのかは予想が付いた。

 ゴクリと生唾を飲む。心臓が高鳴った。なんとなく、きょろきょろと辺りを見回す。

 

(み、見なかった事にしようかしら)

 

 しかし彼の山の手入れを申し出た手前、ゴミを放っておくわけにはいかない。

 自分でも気づかないうちに頬を染め、意を決して回収を試みる。その瞬間に春風が吹いた。ぺらりとページが捲られると、おそらく若い女性が男の性をぶつけられて喘いでいた。

 いけないと思いつつしゃがみ込み、まだ新しいながらも湿気で波打つページを恐る恐るめくる。じっとりと下腹部が熱を持った。

 

(うそ、こんな……なの? すごい)

 

 育児と家事仕事で埋没していた情欲が疼きだしているのを感じた。胸の火種がゆっくりと燃え広がる。ところで、断ち切るように顔を振った。手早くトングで回収して、袋をキツく縛った。

 そのままずんずんと彼の家への帰路をたどる。

 その途中で不法投棄された大型冷蔵庫を見つけたので、ひょいと持ち上げて、彼に指定されたゴミを纏めて置く場所へ運んだ。

 

 落ち着きを取り戻して今度は部屋の掃除をしながらも、火照った身体は別だった。無視するように洗濯機に洗濯物を入れようとして、しかし手が止まった。

 彼の下着があった。今朝脱いだばかりの物で、あって当然だ。家事をやるようになってから見るのは初めてではない。それなのに、こんなにも、これから行う事に対する罪悪感が先行してシレリアを苦しめる。

 

 そっと鼻元に近づける。ほんのりとした汗と男を感じた。

 ずくり、ずくりと下腹部が熱を持つ。

 香りは人間の記憶と強く結びついていると言われており、それは異世界人のシレリアにしても変わらない。

 

 粘質な炎が燃え上がるように、行為を止める事など出来ず、また止めようなどという考えも無かった。一瞬でその気になり、枚数の少ないショーツとワンピースを愛液と汗で汚す訳にいかないので、すぐに脱ぎ捨てた。

 そのまま浴室で中腰になり、彼の下着に顔をうずめて深く息を吸った。

 

「ああっ……こんな」

 

 肺までオスの匂いで満たされ、脳は酩酊しそうなほど興奮している。たまらず愛液の滴る雌穴に指を入れる。痺れるような快楽があった。

 元の世界ではまだ幼い子どもを四六時中面倒見ねばならず、久しぶりのオナニーは初めてイった時のような快楽だった。

 

「んあっ! あ、ごめんなさい。スーッ、ハァー……んスゥウーー! こんな、本当は違うの、違うのぉお、おっ! っく!」

 

 自分でも驚くほどあっけなくイってしまい、同時に物足りなさを覚えた。

 

 秘密の自慰は日に日に過激さを増していく。

 どうせ洗濯するのだからバレないだろうと、彼の下着の陰茎が当たる部分でクリトリスを撫でまわしたり、指に被せてそのまま膣の内壁を擦ったりもした。

 そういった性の知識があったわけではなく、本能に従うままの行為だった。

 

「やぁっもうイっちゃう、んぅう、あっイッ! ……ク」

 

 ぐちゅぐちゅと激しい水音が浴室にこだまし、淫液がタイルに滴る。

 そのまましばらく荒い呼吸のまま快楽の余韻に浸りながら自責する。

 

(彼の下着を、こんなエッチな使い方するなんて……変態だわ)

 

 自らに対する軽蔑と彼に対する罪悪感は当然あった。あったが、やり場のない性欲を発散するにはそれしかなかった。

 彼と関係を持つのが手っ取り早い解決方法だが二つの問題がシレリアを悩ませる。

 

 一つは当然、夫に対する不義理。

 他の男の下着を使い性処理している時点で綻んでいるものの、やはり気になる。

 何より二つ目が大きな要因のように思えた。そもそも彼がこの身体に情欲するのかどうか。

 

 そのどちらも深く考えないようにし、ゆっくりと立ち上がる。みっとくもなく発情したメスの匂いを念入りに洗い流さなければならない。

 

 風呂を洗い終わったついでに身体の汗と淫液を流して、洗面台の鏡で裸体を眺める。身長は成人男性ほどあり、二の腕と太ももには肉がしっかりとついていた。到底、山に捨てられていた雑誌に出てくるような女性の体形とは似ても似つかない。

 おそらくあの雑誌に載っていたような女性がこの世界では好まれるのだろうことは想像がつく。ほっそりとしていて、ほどほどの肉付きが良く、そして何より、若い。

 

(こんなオバサンじゃイヤよね……)

 

 自嘲してワンピースを着る。

 結局のところ、彼が勃たなければ話にならないのだ。年の離れた中年女性相手に興奮してくれるはずだという自惚れは持ち合わせていない。

 

 二つ目の問題が、このあとすぐ解決されるとも知らず。

 

 

 

 xxxxxxxxx

 

 

 

「ただいまー、です」

 

 どうなんだろ、この言い方って。と彼は自宅のドアを開けてなんとなく思う。

 帰宅の挨拶として「です」は付けなくていいのだろうが、年上のシレリアに対しては敬語を使った方が気持ちとしては楽なので妙な語感の言葉使いだ。

 そしてなぜだかシレリアは、彼がドアを開けるとちょうど出迎えてくれる。おおよそ同じ時間に帰宅しているにしても、タイミングが良すぎる。ずっと待っているのかと聞いたが、そんな事はないらしい。

 不思議だ。

 

「おかえりなさい。飲み物用意するわね」

「ありがとうございます」

 

 意図せずどこかそわそわして台所へ向かうシレリアとすれ違った。といっても狭いアパートの廊下はやっぱり狭い。なのに二人は通れるだろうと高を括って、シレリアは壁に胸を向けて、彼は背を向ける形で避けようとして冗談のように嵌った。

 ちょうど立ちバックの形になる。

 

「えっ」

「やだ、ごめんなさい」

 

 シレリアが身をよじるが、ぴたりと動きを止めた。ごくりと固唾を飲む。

 

「……いや俺のほうこそ、あの、その……すみません」

 

 嵌った原因は、バイト帰りで彼がリュックを背負っていたのもあった。

 いや問題はそこではなく、彼が主に謝っているのは別の事柄だ。シレリアから甘く香る匂いと股間に押し付けられた柔らかな巨尻に愚息が反応したのだ。

 

(うわ~シレリアさんのこの反応からしてバレてるよ。やべー軽蔑されるかも)

 

 内心では焦るものの、意志に反して男根はどんどん硬くなっていく。ズボンの中では窮屈で、痛いほどに勃起していた。

 

「これはその」

 なんと言い訳すれば誤魔化せるか考えてはみるが、どうにもダメそうだ。

「えー、わざとじゃなくて」

 

「い、いいの。気にしないで……んっ」

 

 シレリアが力んで身体をずらす。ぼるんと胸が躍って二人は抜け出した。

 気まずそうにやや前傾姿勢になる彼に、シレリアは作り笑いで言う。

 

「恥ずかしがらなくていいのよ、男の子なんだし。それに、わたしもまだまだ捨てたもんじゃないんだってわかって、ちょっと嬉しいくらいなんだから」

「そー、ですか」

 

 そういうもんか? と疑問に思わないでもないが、好感度が落ちないならそれでいいかと、彼は考えない事にした。

 シレリアはアクシデントなど無かったかのように振る舞い、コップを手に取る。その内面ではすでにある決断を下していた。

 

 最初に着ていた服のポケットから小さな袋を取り出す。中には米粒ほどの植物の種子が入っており、その内の数粒を、彼の許可を貰ってアパートの裏手に置かれたままの鉢に植物の種を植えた。残りは彼女に割り当てられた棚の収納箱にひっそりと収める。

 

 それは女性の冒険者が危惧する事態の一つ、暴漢に犯された際に望まぬ妊娠のリスクを軽減する植物だった。

 簡単に言えば避妊薬で、種子を経口摂取する事でただちに効果を発揮する。コンウェニと呼ばれ、シレリアのいた世界では夫婦の性生活にも使われるポピュラーなものだ。

 

 とても都合がいいが、実は似たような植物はこの世界にもあった。古代ローマに存在していたといわれるハーブで、シルフィウムと呼ばれる。発熱などの病症から媚薬や避妊も兼ねたそうだ。設定盛り過ぎだろホントかよ、と疑いの目で見てしまうが、乱獲により絶滅してしまったので確かめるすべは無い。

 

(これは念のため、念のためだから)

 

 そう言い聞かせて、矛盾を飲み込む。

 彼はこの身体で欲情するという事がわかった。わかってしまったからには、なにかの間違いが起きるかもしれないのだから。

 備えは冒険者として当然のことだった。

 

 

 

 翌朝、いつものように二人で朝食を取る。が、シレリアの胸中は不純が燻ぶっていた。

 いま彼が履いている下着はおそらく、前日に自分が性処理に使った物なのだ。

 ちゃんと洗濯したとはいえ、そう認識するとショーツが染みを作った。愛液とでぐしょぐしょになって、膣にも入れた所が彼のペニスと間接的に接触していると思うと。

 

(私ったら……いつからこんな)

 

「どうしたんですか? なんかぼーっとしてるかんじですけど。体調悪いとか」

「えっ!? いやそんなことはないけど」

 

 心なしか顔が赤く見えたので、彼は続けて尋ねる。保険証が無い彼女が病気にかかるのは困るのだ。

 

「けど?」

「本当に、何でもないの」

 

 取り繕ったような笑みで言って曖昧にする。

 ただの欲求不満などとは口が裂けても言えない。

 

 

 

 その夜は春にしては寒暖差が激しく、肌寒かった。

 ソファで寝ている彼は薄手のタオルケット一枚では寝付けず、面倒だが冬用の寝具を出すしかなさそうだった。

 それを察したのか、先んじてシレリアが口を開く。

 

「今日は少し冷えるけど、大丈夫?」

「ええ、まあ、少し」

「よかったら……一緒に寝る?」

 

 薄暗い部屋の中で、ベッドに横たわったままのシレリアが掛布団を半ばほど捲っていざなっていた。

 豊満な胸はその自重で自然に着崩されたナイトガウンから零れ落ちそう。

 返事の無い彼に慌てて口調で続けて言った。

 

「べ、別にヘンな意味は無いの! 今日は寒いし、冒険していると宿代を節約する為に一緒のベッドで寝るなんて当たり前の事だし……その、今日は寒いからどうかなって、わたしでよければ、だけど嫌だったら」

 

 徐々に言葉が小さくなったシレリアに、ようやく事態を飲み込んだ彼が口を開く。

 

「え! いいんですか!?」

「え、ええ。もちろん!」

 

 彼は期待に胸を膨らませ、いそいそとベッドに潜り込む。シレリアの体温で温まった布団の中は、むわりとボディソープと女の匂いがした。

 シングルベッドに成人が二人も入れば、自然と肌は密着する。ましてや規格外の胸に触れずには無理だ。硬くなった先端がわかるほどに、柔らかな乳房が押し当てられる。

 すげえ、なんかしらんが何もしてないのに都合の良い状況になってる。

 

()()()()()()()?」

「……()()

 

 もう一度、横になったまま視線を合わせて同じ事を尋ねた。しかしその意味する所はまったく異なると、わからないシレリアではない。彼の腕が腰に回され、抱き寄せられる。大きな胸が潰れた。鼓動が期待に速まるのを感じて、けれども言い訳だけは口にした。

 

「けど、これはあなたの身の回りの世話をする延長線にあるものだから……都合がいいと聞こえるかもしれないけど、だからキスと……あっ♡ 待って」

 

 彼の勃起した男根が子宮のある位置に押し当てられた。寝巻越しでもわかるほど熱く、硬く、脈打っている。太ももに愛液が滴るのがわかった。ごめんなさい、と夫に内心で謝罪する。

 

(これは彼に対する恩返しと、わたしの仕事である身の回りの世話を兼ねた事だから、ただの性処理だから)

 

 だからキスと挿入は無し。

 

 それがシレリアの決めた、夫に対する義理立てだった。

 しかしその心情が本音と建て前で倒錯している事は、自分でも理解していた。

 

 挿入しないと決めているのであれば、何ゆえコンウェニを植え、あまつさえ服用しているのか。なぜそこを意図的に目を伏せるのか。

 彼がナイトガウンの結びをほどきながら、ゆっくりと柔らかな肉体に口付けて下へ下へと向かう。徐々に女の甘い色香が濃くなってきた。

 

「んっ、だからっ身勝手な言い分だってわかってる、けど……んはぁっ! これはぁただの性処理っ……だから。わたしがいるせいで出来なくなった」

 

 しどろもどろのシレリアの秘部は、ショーツ越しでもわかるほど濡れていた。脱がすと粘質な糸を引く。薄暗い室内の中、彼はそのまま熱い肉壺に舌を這わせた。

 

「ど、どこ舐めて!? は、恥ずかしいっ、から止めっ。あっく」

 

 どうもクンニは初めてらしいシレリアの反応に、彼はほんのちょっぴり嗜虐心が芽生える。音を立ててむしゃぶりつくと、シレリアは初めての快楽に反射的に足を閉じて彼の頭をむっちりとした太ももで挟み込む。

 

「だっ……めよ、そんなところ、おっ! あっ、だめだめだめ吸わないでぇ! なにこれぇ、んあっ、すご、いっ」

 

 舌を入れるとぬるぬるの膣が初めての感覚にビクビクとうぶな反応を示した。夫婦の性生活は割と淡泊なものだったようだ。ねっとりと浅い所をほじくり、果汁のように甘いトロリとした愛液を啜る。

 

 ぞくりとシレリアの意識が震えた。

(う、嘘っ。飲まれてる、エッチなおつゆ、そんな音を立てて)

「!? ぁあっ! こ、こんなの初めてっ! あっあっ! イク♡ きちゃう!! んあああああ!」

 

 ほとばしる快楽にシレリアが身をこわばらせる。膣口がキュッと締まって舌先を捕まえた。

 ゆっくりと身体の緊張がほぐれるのを待ってから、マンコから口を離す。シレリアの荒い息遣いが部屋に満ちた。

 

「舐められるの初めてなんですか?」

 

 若い男に一方的にイかされた恥ずかしさから、目を前腕で覆ったまま力なく頷く。

 

「イヤでした?」

 

 シレリアはゆるゆると頭を振った。

 決して口にしてはいけない言葉を内心で呟く。

 

(舐められただけで、あの人との……夫とのセックスより良かったなんて……)

 

 その罪悪感と悦びが混濁し、自分でも何と言っていいかわからない。

 

 そんなシレリアを見下ろし、こんなエロい身体してるのに、なんか意外だな。と彼は思った。まるで少女のようなギャップがそそりもする。

 旦那さんとの性生活に興味が湧いてきたが、聞けば心を抉る話題だろう。ひょっとすると、関係を持ってすぐ冒険者を引退し、その後の生活基盤を整えるのに忙しかったのかもしれない。あるいは失踪か。

 とにかく気落ちしてお預けをくらうのは避けたかったので深堀りはやめておいたほうがいいだろう。

 

 いきり勃った男根をクリトリスに押し付ける。

 

「んひぃっ!」

 

 そのままチンポで擦り上げた。ゴムを置いてある棚まで取るのが少しばかり面倒だったが、とはいえ妊娠でもしようものなら金銭的に終わる。少しでもナマの感覚を味わおうと、シレリアに覆いかぶさり素股した。

 腰を動かすたびに耐えるような女の喘ぎ声が室内に響く。

 

「あっ、いいっ♡ それ、おまんこ、ずりずりって♡ ああん」

(けどダメよ、それだけは……そこは、あの人の)

 

 けれども熱した鉄のような男根がマンコに擦れるたびに、もしこれを挿れたらと期待して子宮が疼く。

 

(い、言わなきゃ、キスと挿入だけは許してって。それだけは)

 

 意を決したように、シレリアは口を開いた。潤んだ瞳で彼を見上げて、熱っぽく。

 

「……ッ、キスだけは、許して、ちょうだい」

(あ、ああ。なに言ってるのわたしったら……)

「大丈夫。わ、わたしの世界から持って来ていた避妊薬を飲んでるから」

 

「マジすか。すげー、そんな都合の良い薬が?」

「コンウェニっていう、種子なんだけど、んはぁ……いいから、大丈夫だから、お願い……れて」

(ダメよ、まだ間に合う、今からでも謝って、挿入は許してもらわないと、言わなきゃ)

 

 次第に声が小さくなっていくので聞き返すと、ガバリと背に腕を回された。ギュッと目を瞑ったシレリアが懇願する。

 

「これからは、わ、わたしが性処理、するから」

 

 くちゅりと亀頭がが膣口に当てがわれたかと思えば、ずにゅんと一気に根元まで挿入して子宮口を叩く。

 その痺れるような衝撃で、シレリアは目を見開いて身震いした。

 

「あッ!! っは! こんなっ奥までっ♡……イッ、ああっ♡」

 

 挿入されただけで軽くイッてしまった。

 男日照りだった膣が久々のチンポを貪るように吸い付く。彼は熱い女の体温と淫液でにゅるにゅるの秘部を、ゆっくりと味わうように腰を動かす。

 男を知っているはずの中年女性の膣は、意外にも初物のように未成熟だった。肉厚のマン肉がぎゅうぎゅうと男根を圧迫する。

 

「きっつ。すげ、こんな締まるの初めてかも」

「待っ、て。ちょっと、待ってぇ。んあっ、いま動かれたら。あっ」

 

 いやいやと首を振るシレリアを無視して、硬い肉棒はじっくりと膣の具合を探る。弱い所、擦り付けると自分が気持ちいい所、どこにどういうヒダがあるか、突くとより締まる所。

 時間をかけて入念に調べ上げる。

 

 まずはねっとりとした膣壁を味わいたいというのもあったが、彼はどうもシレリアの言動が気になる。

 

 受け身の建前を押し出して、自分の欲求を隠している。

 ヤれるのならばそれでいいが、理性によるブレーキがあるのならば一夜の過ちで終わってしまうかもしれない。

 

 だから彼女の口から求めさせるために焦らし続けた。

 絶妙な腰使いで、シレリアは何度もイク直前でお預けをくらう生殺しを味わわされる。

 

「んああっ、そこ、あっ♡ そこ引っ掛かってぇ、ひぅっ」

(イ、イキたいっのに、なんでこんな)

 

 小さな悦びだけが繰り返し与えられ、理性は決壊しそうだった。欲しくてたまらない、この性欲の先にある未知の快楽が。

 汗だくになり、どれくらいの弄ばれたのかもわからないほど時間が経過した時、ようやくシレリアの本能が顔を覗かせる。

 食いしばった口を開いて懇願を叫んだ。

 

「抱いて、欲しいのぉ! 抱いてッ! あなたのオチンチンではやくっ、イカせてぇッ!! ぐちゃぐちゃに突きまくってほしいのぉおお♡♡!」

 

 ごりゅっ! 

 

 イチモツがシレリアのGスポットを抉る。

 たった一突きで、イク一歩手前で溜められた快楽のダムが決壊した。

 

「いくいくっ……ンン──イグッ!! あっ、あぅぅうう、これ、これすごっ♡ 頭がぞわぞわって、して……っはあ、っはあ」

 

 肩で息をするシレリアの媚肉は、達すると同時に奥へ奥へと蠕動してチンポに絡みついてきた。本来であれば注がれる精を、子宮に吐き出せと言わんばかりに。

 

「ごめん、なさい。わたしだけ、先に気持ちよくなっちゃって♡」

 快楽でぼーっとしていた頭だったが。彼の性処理としての役割がある事を辛うじてまだ認識していた。

「ちゃんと出来てるか、わからないけど、ふぅ、ふぅ……わたしのおまんこでよければ好きに使ってちょうだい」

 

 はにかんだような笑みを彼に向ける。

 その官能的な姿に我慢できるわけが無かった。

 何度も何度も腰を打ち付ける。

 

「あっ♡ 来た♡ おちんちん来たぁあ♡ んっ、んううううぅううっ!! もっと、さっきみたいに激しくっ! してぇえ! あそこメチャクチャにしてぇえええ!!」

 

 最初こそ戸惑いが混じった喘ぎ声だったが、今では恥も外聞も捨てて思うがまま感じるままに嬌声をあげている。身体中からオスを興奮させる色香をむんむんと放ちながら。

 

「んっ、ぁあっ♡ んほっ♡ おおおおんっ!! ああっこんなっ! はしたない声だしちゃうなんてッ!! 許してっ、おっお願いだからッ! 幻滅しないで、こんなイヤらしいオバサンでも嫌いに、ならないでぇええ!」

「なに言ってるんですか、嫌いになんてなるわけないですよ。こんなドスケベ女」

 

「おっ♡ おほぉおん♡ そうなのぉ、ドスケベなエロ女なのッ! ホントはわたしがシたかったのッ! あなたの朝勃ちおちんちん見てからずっと欲求不満で、オナニーばっかりだったからあぁ♡」

 

 シレリアは盛った野生の獣のように響くよがり声をあげた。彼の腰に脚を回して抽挿を一層激しくさせる。

 どこか幼さの残っていた表情は消え、快楽に目を細めて、メスの顔を見せていた。

 肌寒かった春の夜に、二人の男女が熱情に狂う。

 

「ごめんなさいぃ、お風呂場で、あぁっ♡ こっそり、一日に何回も、あなたの下着の匂いを嗅ぎながら、ひゃううん、んっ、あっ、あぁあイクッ!」

 

 すっげ、と彼は下で悦び続ける彼女を見下ろして改めて思った。

 アニメや漫画ですらそうそう見た事の無いほどの爆乳。片手どころか、両手でも収まらない程の肉袋が、ぶるんぶるんと柔らかさと大きさを誇示するかのように弾けている。その度に汗が飛び散った。

 

 それだけではない。熱気で汗だくの身体の内にある蜜壺は愛液と本気汁でドロドロのねちょねちょ、それでいて膣壁は激しく収縮している。

 久方ぶりの餌に食らいつく、飢渇した狼の口のように貪欲だった。

 一度口にした肉棒を決して離さないという貪欲な下の口から無理やりチンポを引き抜き、毎回処女膜を破るような挿れ心地。油断するとすぐにでも射精してしまいそうだった。

 

「ホントに、中で出していいんですか?」

 

 すでに何度も達していたシレリアだったが、その言葉を聞いただけで身震いし、更に絶頂を重ねた。それはつまり渇望しているのだ。彼の精液を子宮に迎え入れたいというメスの本能が。

 

「出してっ! 一番奥で、射精してぇええ!」

 

 知らず知らずのうちに快楽で涙まで流しながら、シレリアは懇願した。

 一際強く、彼の腰へ回した脚を締めて結合部を密着させる。

 

「えっ!? ちょ、あっ、いやコンウェニってホントに効果あるん」

 

 膣肉が容赦なく狭窄しチンポを責め立てる。子宮口が亀頭にむちゅっと吸い付いた。

 陰茎に精液と射精の強い快楽が込み上げてくる。

 

 びゅぐ~ー~ぅぅ! びゅぶっ! どぷぷっ! びゅるるっ、どぷぅ! 

 

 子宮に濃厚な生命の源が大量に撃ち付けられた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「イクイクイクッ! イきゅッ! んイクゥゥウウ!! あっ──っは♡ 来てるぅッ! んお゙ぉお♡ おまんこに、あっつい精液が、またイっ、だめ止まらなっ♡ あっあっ! ッ!? ヤダッ! なにこれ、んっ、あっ出るっ、出ちゃううぅうぅ!!」

 

 ぷしっ、ぷしゃっ、じょばああああぁぁぁ!! 

 

 シレリアは生まれて初めて、盛大に潮を吹いて絶頂した。

 夫との情事は頭に無かった。彼とのが良すぎて、無意識にセックスを比べるという罪悪感も覚える事もない。ただただ膣肉は射精で激しく脈動する男らしい陰茎に纏わりつき、さらなる餌を得ようとしていた。

 

 ぐぼっ、ごぼゅ、と掴み取れそうなほどの濃厚な精液が下品な音で掻き出されながら、ピストンは再開される。

 若いオスの性欲も、女盛りの性欲も一度の射精で満足するはずもない。余韻に浸るのもそこそこに、どちらが言い出すわけでもなく繋がったまま性交は再び始まった。

 

「凄いっ! こんなエッチッ! んほおっ♡ こんなっ、あっあっあっ♡ 気持ちいいなんてえぇん」

 

 シレリアはよがり狂いながら彼を抱き寄せた。乳肉が歪み、汗で濡れた身体を密着させ、耳元で男の息遣いを聞くだけで女としての嬉しさがみ上がってくる。代わりに羞恥心や遠慮を捨てた、性の悦びを叫ぶように口にする。

 

「き、気持ちいいっ! いいのぉお♡ 頂戴ッ! はっ♡ はっ♡ はっ♡ うれしい、嬉しいっ、こんな……こんなオバサンに興奮してくれるのが、オバサンおまんこに、もっとあなたの濃いい精子ちょうだいッ♡!!」

 

 室内はいやらしい粘質な水音と安物のベッドが軋み互いの肉がぶつかる音、それに男女の激し息遣いで満ちていた。シーツはシレリアの女性器から溢れ出た淫液で大きく染みを作っている。

 

「出しますよ、また奥で!」

 

 肉棒に走る血管がぶくりと太くなる。尿道から昂ぶりが吐き出された。

 

「おっ、ぐぅ、あ゙っあ゙ぅぅう、アッ! 熱いの来たぁああっ! あっまたっ、また漏らしちゃいそうッ、なにこれぇえ!? いく、またイクイクイクぅ♡ あっあぁっあぁっあっ! イ゙グイ゙グッ♡ ん゙お゙お゙お゙おおぉ!!! イ゙グッッッ!! っア゙ッッッ!!!」

 

 ぶしゃああああ──! 

 

 潮吹きで彼の身体を汚しながら、悦びにどっぷりと浸かる。

 子供のように無邪気に性を貪り、恍惚の表情を浮かべた。

 

「子宮っ、もうっずっとパンパンになってるぅ♡ 苦しっ♡ これっ、コンウェニ飲んで無かったら、はあっはあっ……絶対、妊娠してる♡」

 

 ホントに効果あるんだろうな。

 なんとなく彼は少し不安になった。出産費用がいくらかなんて正確には知らないが、相当な金額であろう事は予想がつく。

 しかし眼下のセックスシンボルを二乗したような円熟した肉体の前では、知能は猿以下になった。まだまだ衰える様子の無い男根で再び膣を抉った。

 どうせもう二発出したのだから、この後いくら出しても同じこと。だったら楽しんだ方がいいに決まってる。

 

「んぁんっ♡ ま、まだシてくれるの!? う、嬉しい♡ あっあぁっ、そこ好き、すきぃ♡」

 

 

 

 山中にある、ボロい外見の安アパートに女の燃え盛る声がこだまする。

 その夜は一睡もする事無く、饗宴は朝まで続いた。

 空が白んだ頃、息も絶え絶えのシレリアの秘所からは白濁液が大量に流れ出ており、股の間で沼が出来ていた。

 

 これ洗うの大変だな。と彼は頭をかく。

 夢想を断ち切るようにスマホのアラームが鳴った。

 

「やべー、バイト行かなきゃ。すみませんシレリアさん、後始末とかいろいろお願いしていいですか?」

「……え、ええ」

 

 少し枯れた声で力なく返事が返ってくる。ぶぴり、と膣口から精液が噴き出た。

 彼は身体にこびりついた潮と汗、その他の体液をシャワーで洗い流しバタバタと出勤の準備を済ませ、食パンを流し込むように食べる。

 

「じゃあ……行ってきます」

 

 ドアに手をかけ振り向くと、シレリアが恥ずかしそうに、着る暇がなかったのでワンピースで胸元と恥部を隠しただけの姿で見送った。

 

「い、行ってらっしゃい、気を付けてね」

 

 昨日は生まれたままの姿であれだけ盛ったというのに、この程度の事でなぜだか二人は照れくさくなって顔を赤らめた。

 

 

 

 xxxxxx

 

 

 

 その日の彼はもちろん上機嫌だった。

 徹夜で情事に耽っていたので労働は体力的にしんどいものがあったが、一日くらいなら耐えられる。なんせ、なぜだかわからないがシレリアとセックスが出来たのだ。疲れなんていくらでも誤魔化せる。

 

「ニュース見た? なんかどっかの県の山に熊が出たんだって」

 店長がいつものように、休憩室で彼に話しかけた。

「民家の近くに降りて来たから捕まえられて、なんとかって保護団体が引き取ったらしいけど、きみんとこ大丈夫?」

 

「さあ、どうなんですかね。山では見た事ないですけど、その裏にある土地は広いからいるかもです」

「マジかよ、こえーな……お? どうした。なんかいい事あった?」

 

 店長が目ざとく彼の表情を読み取る。

 

「わかります?」

「そりゃまあ見ればなんとなく……え? マジで?」

 

 店長は一瞬だけ表情を固まらせた後、にやにやと隠し切れない笑みを浮かべて言った。

 

「嘘っ!? こないだ悩んでたアレ、なんとかなる感じ? え、なった?」

 

 店長の語るアレとはもちろん、人妻にアプローチを掛けようとしていた事を指す。

 

「え~まあー、何ていうか」

 

 続きを言おうと口を開いたまま彼は逡巡する。あまりシレリアの事を話題に出したくはない。

 異世界人である彼女はいつ何が切っ掛けで法に触れるかわからないのだ。注目は避けるべきだろう。

 

「んー……何とかなりそうというか、目途がついたというか」

 

 上手くいかなかった、の一言でこの話題を葬るのがいいのだが、それだと見てわかるほど上機嫌の説明が付かない。また彼は、適当な嘘をでっち上げるほど器用な人間ではなかった。

 

「すげっ! え~ほんとぉー。きみ凄いな」

 

 彼が試みている不貞が成功しそう。

 という情報は、口が軽い事で有名な店長によって休憩開けを待たずに広がったし、なんなら午後から出勤してきた和狸の耳にも当然のように入った。

 もちろん彼女の夫は数年前から行方不明ではないし、子供とは毎日顔を合わせている。だが噂話に尾ひれはひれが付くのと同じように、なんとなく口にしにくかったり矛盾する点は省かれ、そうだったら面白いだろうという思惑で加工されがちなのだ。

 

(えっ! 成功しそうなの!?)

 

 確かに彼とは仲がいい方だ。だがそれは仕事仲間としてであって、もう一押しで関係を結べるまで発展させた覚えは無い。和狸は顔を赤らめて当惑しながら心当たりを探る。

 

 忙しい時間帯を乗り切った時の連帯感みたいなものは確かにあったりするが、ひょっとしてその事を指しているのだろうか? いやそれはあまりにも恋愛として稚拙。

 

 ただでさえ息子の友人に身体を狙われている身としては気が気ではない。確かめなければ。

 ちょうどその日は同じ時間に仕事をあがった。

 

 更衣室はもちろん男女別で、着替えは彼の方が早いが毎回それとなく時間を見計らう。それは入店出勤の時も同じで、出来る限り合わせるよう心掛けていた。

 そうしてどこにでもあるような世間話をしながら、和狸が退店のタイムカードを切るのを確認する。

 

 その後は分かれたが、和狸は彼の後をこっそりと追ってみる事にした。そういった探偵行為にワクワクしたのもある。

 そんな尾行になど気付かない彼は、てくてくと帰路を歩きながら眠い頭でセックスの事を考えていた。今晩は、さすがに眠りたい。けど一発くらいなら。シレリアさん、フェラとかした事あるのかな、などなど。

 

 そーいや、あのコンウェニって種子はどれくらいストックあるんだろ? 

 

 ふとそれが気になった。

 以前、裏に転がっていた鉢を借りたいと言っていたのでおそらく育てているのだろう。ハーブと言っていたから成長は早そうだが……

 どのみち自宅にあるゴムの数も少なくなってきたし、念の為ここらで買い足すかとドラッグストアに寄る。金欠の彼には痛い出費である事に変わりは無いが、生理用品だし少ない少ない月々のお小遣いで買うのでセーフだ。

 

 いつものを何箱か手に取ってレジに向かう。

 その様子をばっちりと和狸は目撃していた! 

 

(もうそこまで視野に入っているの!?)

 

 いつの間にか、自分とセックスする事が確定事項のような彼の振る舞いに動悸が速まった。

 先日見たAVの内容が脳内に流れる。あれはオフィスビルの事務所が舞台だったが、もし彼が迫ってきたらと妄想する。

 いつもの休憩室で、あるいは更衣室でロッカーに手を付かされ後ろから……

 

 ごくりと固唾を飲む。

 

(だ、駄目よ。そんなのは絶対。人妻に手を出すなんて。なんとか気付かせてあげないと)

 

 そう思いつつも、後からこっそりと棚を過ぎ去る際にどれを買ったのか盗み見した。

 

 

 

 xxxxx

 

 

 

 跡を付けられていた事など知らない彼は、自宅のドアの前で固まっていた。

 何度か口を開いては閉じてを繰り返している。やがてバカらしくなったので腹を括った。

 ドアを開ける。

 

「ただいま」

 

 

 

 xxxxxx

 

 

 

 xxxxxx

 

 

 

 夕食中に、彼のスマホが鳴った。

 

(またあの不動産屋かな。そーいや会って話したいって言ってたような……)

 

 メンドくさそうに着信を認める。

 

「はい……えっ!? あっ、えー。そりゃもう、ぜひ……はい、今からでもぜんぜん」

 

 予想もしてない内容に胸が高鳴った。

 話がまとまったので通話を切って、思わずぽつりとこぼす。

 

「……すげー、マジか」

「何か良い事でもあったの?」

 

 とシレリアが不思議そうに尋ねる。

 

「部屋の内見したい人がいるみたいです」

「まあ! それって入居してくれるかもしれないって事じゃない!」

「初めてですよ、こんな事。やば、部屋の掃除しとかないと」

「大丈夫、わたしがちゃんと管理してるから」

 

「そうだった。お願いしといてよかったー。ありがとうございます」

「いいのよそんな。置いてもらってる身として当たり前の事なんだから」

 

 そう言いつつも、やはりあらためて感謝の念を伝えられると嬉しくて、シレリアは顔をほころばせた。それはそれとして、いま自分が置かれている状況を冷静に考える。

 

「わたしはその人が入居を決めるまでは会わない方がいいわよね?」

「まあー、そうですね」

 

 年の離れた男女が一緒の部屋で暮らしている。興味を引かれそうなシチュエーションではあった。とりあえずの無難な設定を決め、あとはその時その時で誤魔化すしかない。

 

 

 

「こんにちはー」

 

 快活な声で現れたのは、少し悪戯っぽく笑う目元をした鳶色のショートヘアの妙齢の女性だった。傍らには小さなトランクがある。

 スタイルの良い身体に白いシャツとジーンズ姿で、ぴったりとしたシルエットが豊満な胸と尻を強調していた。

 

「電話した犬衣 日毬(いぬい ひまり)です」

「あ、どうも。大家の──」

 

 自己紹介もそこそこに、さっそく部屋を見たいようだったので案内する。

 

「へえ~思ったより……って言ったら失礼だけど、外見よりちゃんとしてるわねー。お風呂もトイレも別だしキレイ」

「少しでも住みやすくしたくて内装をリフォームしたら外装にかけるお金が無くなったんで外からの見た目は悪いですけど、まだ誰も入居してないから家具も未使用品レベルですよ」

「なにそれ」

 

 犬衣は小さく笑みを浮かべていた。

 

「ちょっといろいろあって一人でぶらぶらしてる身でさ、契約期間とか融通利く? たぶん一年もいないと思うんだけど、ヘタしたら半年とか、何か月とか」

「ええ、それはもう全然大丈夫です」

「ふうん……じゃ決めた。ここに住むことにするわ」

「ホントですか!? 自分で言うのもなんですけど、街までのアクセスめちゃくちゃ悪いですよ。周りは山ばっかりでコンビニすら遠いですし」

 

「そお? 結構良い所じゃない」

 窓を開け放つ。気持ちの良い風と森の香りが流れ込んできた。それに遠くに見える水平線も。

 

 しばらく眺めた後、ベッドに腰掛けてからりと笑った。

 

「こういう景色が良くて自然に囲まれた場所、好きよ。なにより安いし」

 

 

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犬衣さんのシャツのボタンの左右が間違ってますけど、手遅れでした。

文字無し 
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