特務捜査隊エージェントライダーズ!-絶賛排卵中の危険日女捜査官達は特製媚薬になんか絶対に負けない!- 作:オリーブドラブ
――2021年1月某日。純白の雪が降り積もる、北欧某国のとある森林地帯。その秘境の奥地には、1軒の古びた洋館が建てられていた。
その建物はかつて、ノバシェードによる怪人研究のために利用されていた施設だった。彼らはこの秘境に、洋館に
しかし約1ヶ月前、謎の「仮面ライダー」による襲撃を受けたこの洋館は今、その人物が占有する「隠れ家」となっている。
この洋館を襲い、そこに居たノバシェード構成員達を、薙ぎ払うような早撃ちで全員
そんな彼の眼前には、一つの巨大な培養槽が設けられている。薄暗い隠し研究室の中に置かれているその培養槽を、マグナは歓喜の表情で見上げていた。
「……ついにこの時が来たようだな。待ち侘びていたぞ、
リボルバースパルタンの鎧を纏う彼の眼前では、培養槽に入れられている
「さぁ……最古にして最恐の怪人よ! 今こそ長い眠りから目覚め、『仮面ライダー』と名乗る戦士達を1人残らず殲滅するのだ! それこそが……かつて一度はライダーに敗れた、君達の望みでもあるはずッ!」
自身の
その動きにますます喜ぶマグナは、無警戒に培養槽へと近付いてしまう。しかし次の瞬間――動き出した馬型怪人は、真紅の両手剣を一気に引き始めた。
「……!?」
怪人の挙動から次の行動を察したマグナは、咄嗟にその場から飛び退こうとする。だが、すでに遅かった。
馬型の怪人は培養槽の中から両手剣を突き出し――そのガラス面を突き壊して、マグナの身体を貫いてしまうのだった。ガラスが砕け散る音が響き渡ると同時に、この一帯が一瞬のうちに血の海と化す。
「がはぁああぁあッ!? あっ、がぁあッ……!」
仮面の下から絶叫を上げるマグナ。両手剣に刺し貫かれた彼の身体は、そのまま軽々と持ち上げられてしまっていた。
ますます深く突き刺さって行く巨大な刃。その威力を思い知らされながら、マグナは仮面の
培養槽の中で目覚めの時を迎えた馬型怪人は、眼前のマグナことリボルバースパルタンを、倒すべき「仮面ライダー」の1人と認識したのだろう。自分まで抹殺対象にされるとは想定していなかったマグナは、思わぬ形で致命傷を負ってしまった。
(こ、これ、は……!)
仮面の中で血反吐を吐きながらも、マグナは驚嘆したように打ち震えている。その感情は、「恐怖」などという言葉で足りるようなものではなかった。
こうして、ただ相対するだけで本能が理解する。「思考」よりも先に「直感」が結論を弾き出す。
――この存在は、単なる「怪人」などという枠に収まるような代物ではない。その呼称で呼ぶに相応しい領域からは、とうに逸脱している「何か」であった。
真正面から敵として対峙することを、人間という種の本能が拒絶する。決して敵対してはならない、抗おうなどと思ってはならない。有無を言わせぬ直感の警鐘が、脳細胞の稼働よりも速く全身を支配する。
隆々としている逞しい真紅の身体。その手に握られた両手剣。獰猛さと凛々しさを兼ね備えた馬型の頭部。その荘厳な外観だけでは理解出来なかった、生物としての圧倒的かつ絶対的な「力」。ただ目の前に存在するだけで、対象にその片鱗を感知させる絶大なオーラが、マグナの本能を支配したのだ。
マグナが――否、現人類が知っている「怪人」の類ではない。あまりに規格外。あまりに埒外。これまで見て来たノバシェードの改造人間達とは、種としての根本から隔絶されている。
ビッグ・ノア号での戦いでB.A.V.A.R.F.との死闘を愉しんでいたマグナですら、その感情を忘れ「恐怖」を覚えるほどの威圧感。並の改造人間なら、目が合うだけで戦意を喪失してしまうことだろう。
B.A.V.A.R.F.の特務捜査官達と互角の死闘を繰り広げていたD.A.S.T.も、
その力の差も確かに歴然であったが――今マグナの目の前に居る始祖怪人との「差」は、それをさらに上回っていた。もはや、「勝負」が成り立つような次元ではない。ただ相対するだけで、まともに戦意を維持することすらままならなくなる。
新世代ライダー達が相手ならば、例え敵わずとも多少の手傷を負わせることくらいは出来るかも知れない。少なくとも「戦い」は成り立つだろう。だが、この紅い馬型怪人を目にしていると、その程度のビジョンすらも見えて来ない。
仮にD.A.S.T.全員がこの時点で生存していて、アイングレイザーを含めた全員で挑めたとしても。7人全員が、3秒足らずで原型すら留めぬ肉塊と化していただろう。どれほど好都合な条件でシミュレーションしても、その世界線しか視えない。
勝てるどころか、「戦い」が成立する可能性すら感じられないのだ。勝てるか否か。その2択を考えること自体が全くの無駄なのだと、本能が脳裏に直接叩きつけて来る。まさしくアイングレイザーの目論見通り――否、それ以上であった。NCレベル20.5相当のアレジアント・オーガでさえ、この人智を超越した怪物の前では巨大なだけの木偶の坊にも値しない。
そんな怪物が今、マグナの胸に刃を突き刺しているのだ。彼に限った話ではない。人類という種にとって、これ以上の絶望は無いだろう。
このような怪物が、マグナの眼前に居る馬型怪人を含めて――まだ15人も残っているというのだから。
「……!」
その時。培養槽の下部に備え付けられていた計測装置が、この怪物の「数値」を弾き出す。どれほど目を背けても決して逃れられない、ただそこに現存する簡潔な真実。その値を目の当たりにしたマグナは、己が味わった真の恐怖さえ、ただの「数字」で片付けられてしまった事実に乾いた笑みを溢していた。
(故障ではない……! NCレベル……87.3ッ……!?)
NCレベル5.8のリボルバースパルタンことマグナにとっては、文字通りの
「……ぐぅうっ、ふふふっ……! そうかそうか……! 私のような、紛い物の存在さえ許せないと……! いいぞいいぞぉ、実に好都合だぁ……! 君達にとっても、『仮面ライダー』とはそれほど憎い存在なのだなぁッ……!?」
だが、マグナはこの窮地の中であっても取り乱すどころか、薄ら笑いすら浮かべていた。仮面ライダーを殲滅するためならば、他の何を犠牲にしても構わない。そんな
しかしマグナ自身にはまだ、為すべき役目が残っている。それを果たせぬうちに死ぬわけには行かない。
彼は腰部のホルスターからリボルバー拳銃を引き抜き、蘇った馬型怪人の脚へと銃口を向けていた。圧倒的な絶望に慄き、恐怖で震え上がる前に――彼にはまだ、やるべきことが残っている。
「だがッ……私にはまだ、果たすべき『使命』があるッ! 他の始祖怪人達も目覚めていることを確認するまで……私は死ぬわけにはぁあぁあッ!」
次の瞬間、マグナのリボルバー拳銃が火を噴いた。しかし馬型怪人のボディは強靭の極みであり、リボルバー拳銃の専用マグナム弾ですら全く通さない。その現象により、改めて理解させられてしまう。この怪人はあまりにも、「次元」が違い過ぎるのだと。
「ぐふぅうッ!? は……ははっ、ははははははッ! 素晴らしい、素晴らしいぞ始祖怪人ッ! 何という暴力、何という殺意ッ! これぞまさしく、我々が求めて来た究極のぉおッ……!」
やがてマグナは両手剣を胸から引き抜かれ、鮮血を散らしながら床に墜落してしまう。自分に向かって巨大な刃を振るおうとしている馬型怪人に向けて、彼は狂気の笑顔を咲かせていた――。
◆
――それから、約1時間後。マグナの「隠れ家」と化していたノバシェードの洋館を目指して、6台のGクルーザーIIが森林地帯を駆け抜けていた。白い雪に彩られた道に、タイヤの跡が残されて行く。
二輪を展開した陸上形態で雪の山道を走り、青いボディを輝かせているマッシブな大型バイク。その特殊車両に跨っているのは、B.A.V.A.R.F.仕様の軽装型強化服を纏う6人のマス・ライダーだった。彼女達は極薄の青い強化服の上に、黒革のライダースジャケットを羽織っている。ハンドルを握る赤いグローブが、眩い煌めきを放っていた。
「ねぇちょっと、ホントにこの道で合ってるんでしょうね!?」
「ビリーの情報を信じよう! 『彼』はきっと、この先に居る……!」
ノバシェード対策室のビリー・ケンド捜査官から届けられた情報を頼りに、マグナの行方を追っていた6人の
「……どうやら、あそこのようね」
「うへぇ、気味の悪い館だなぁ……」
やがて彼女達はついに、山奥の秘境にひっそりと建っていた古い洋館を発見する。その近くに愛車を停めた6人のマス・ライダーは、肉感的な美脚を振り上げてGクルーザーIIから降りて行く。黒革のライダースジャケットを翻し、蠱惑的なボディラインを露わにしている彼女達は、青い仮面の下で鋭く目を細めていた。
「ビリーからの情報によれば、D.A.S.T.の生き残りはこの洋館を隠れ家にしていて、何らかの研究を進めているらしい。今度こそ……彼を捕えるよ、皆」
「研究……ねぇ。あの傭兵、一体何を企んでるんだか」
「さぁね。いずれにせよ、好きにさせておくわけには行かないわ」
「ビッグ・ノア事件から続いて来たこの因縁にも、そろそろケリを付けないとね。……装太君とのデートが台無しになったツケは、たっぷり払わせてやるんだから」
B.A.V.A.R.F.アルファチームの6名。その筆頭であるカズハの言葉に、ランヒルド、ハンナ、咲の3人は深く頷いている。ビッグ・ノア事件で恥辱の快楽地獄を味わった後、暫しの「
そして数日前、同僚のビリー・ケンド捜査官から、ついに有力な手掛かりを得たのである。彼の情報によればマグナは現在、この山中の洋館を隠れ家にしているらしい。そこで、今度こそ確実に彼を捕えるため、アルファチーム全員でこの洋館に突入することに決まったのだ。
「そうだな……咲の言う通りだ、皆。私達にとっての決着を、今こそ付けようじゃないか」
ビリーからの有力な情報。その「出所」が、同じくマグナの動向を探っていた
「今週は装太君達とショッピングに行く予定だったっていうのに……あの偽物クソ野郎〜っ!」
「衝矢君も楽しみにしてたのに、あいつめ〜……! 咲さんっ、もしあいつに会ったら絶対ぶった斬ってやりましょうっ!」
「もちろんよリン! 死なない程度に殺してやるんだからっ!」
「……2人とも。意気込むのは結構だけど、目的は『捕縛』だってことは忘れないで頂戴」
特に咲とリンの2人は、幼馴染兼恋人である装太や衝矢との
「……リフィルと一緒に、美味しいもの食べに行くはずだったのになぁ……!」
「トリニティ……怒る気持ちも分かるがね、任務内容だけはくれぐれも失念しないでくれたまえよ? ネジ飛んだ時の君が1番手に負えないんだから……」
「むぅ……」
「むぅ、じゃないんだよ全く」
対怪人用強化サブマシンガンを構えているトリニティも、チャーリーチームのリフィルと一緒にフランス料理を食べに行く予定が台無しになったため、明らかに機嫌が悪い。もしノバシェード戦闘員達が今の彼女達と遭遇すれば、間違いなく地獄を見ることになるだろう。愛用のガトリングガンを担いでいるランヒルドも、トリニティの様子を心配げに窺っている。
――そんなアルファチームの様子を、遥か遠くから見つめている者が居た。
(これで一つ貸しよ……皆)
遥か遠くの木陰に身を隠し、木の幹に背を預けて腕を組んでいるチャイナドレスの爆乳美女――
ドレスのスリットによって強調されている白い脚は、雪にも勝る美しさだ。彼女はか細い両腕で豊満な爆乳をむにゅりと寄せ上げながら、蠱惑的な眼を細めて「旧友達」の様子を人知れず見守っている。
(あの傭兵達の狙いが何だったのか……あなた達の捜査を通じて、確かめさせて貰うわ。私自身の手で、ノバシェードを潰すためにもね)
やがて彼女は踵を返し、ゆっくりと森の中へと消え去って行った。木々の隙間から吹き込む風がふわりとドレスの裾を靡かせ、その肉感的な美脚を露わにしている。ウェーブが掛かった黒髪のロングヘアも、風によって艶やかに揺らめいていた。
さらに裾が大きく舞い上げられた瞬間、際どいスリットに隠されていた「絶景」が人知れず暴かれる。安産型の巨尻に深く食い込んだTバックのパンティが、その尻房の豊満さを際立たせていた。
(……目的は同じなのだから、どう転がされても別に構わないでしょう? ねぇ、カズハ)
かつての「同期」を静かに一瞥し、蠱惑的な笑みを浮かべて闇の彼方に消えて行く孤高の女探偵。彼女は妖艶な微笑を零しながらも、全身の隅々から濃厚な雌のフェロモンを振り撒いている。
一歩踏み出すたびにゆさっと弾む爆乳と巨尻は、ノバシェードに嬲られた時よりもさらに淫らに「成長」しているようだ。その豊満な果実と柔肌から分泌される芳醇な色香は、風に流されこの森の向こうへと漂い始めていた。
そんな元同僚の存在に気付くことなく、相棒とも言うべき各々の武器を構えているカズハ達は、周囲を警戒しながらゆっくりと洋館に近付いて行く。ビームガン、ガトリングガン、実弾拳銃、サブマシンガン、そしてビームソード。それぞれの得物を手にした彼女達は、鋭い眼光で洋館を射抜いていた。
「……敵の気配がまるで感じられませんね。静か過ぎて……逆に不気味です」
「ふぁあ……そだねぇ、静か過ぎて眠くなっちゃう」
カズハ達の後方に立つリンはトリニティに背中を預け、慎重に林の中を歩いていた。眠たげに欠伸をしているトリニティも、その佇まいとは裏腹な気迫を全身から放っている。気怠げな雰囲気に反して、その眼光は刃のように鋭い。
「……最低限の見張りさえ全く居ないところを見るに、そうなってしまうだけの『争い』があったようだね。やはり彼らも、一枚岩ではなかったらしい」
カズハ達は全神経を研ぎ澄まし、辺りを見渡しながら進んでいるが、周囲に敵の気配は無い。マグナはあの事件以来ノバシェードとは距離を置き、単独で行動していたようだ。
依頼に失敗した傭兵など、
「……ノバシェードも彼を随分と持て余していたようだね」
「だけど……それも今日までよ」
雪が降り頻る中、慎重な足取りで正面入り口の前に立ったカズハは、扉に身を寄せてノブを静かに掴む。そしてハンナ達と強く頷き合い、意を決して扉を開け放つのだった。次の瞬間、それぞれの武器を構えた6人が、一気に屋内へと突入する。
「……人の気配が無いね。彼は一体どこに……」
「カズハ、あそこを見て」
「微かだけど……壁の色が違うわ」
正面入り口からホールに侵入したカズハ達は、壁に偽装された隠し部屋への入り口を発見する。トリニティと咲が察した通り、色違いの壁が偽装の痕跡となっていたようだ。
互いに顔を見合わせた6人は、この先にマグナが居ると推測し、息を合わせて入り口を蹴破る。アルファチームの女傑達は安産型の巨尻をばるんっと大きく弾ませて、隠し部屋へと突入して行った。
「ノバシェード対策室だ! 大人しく両手を上げなさッ……!?」
――だが。その先の隠し研究室に広がっていた光景は、6人の想像から遥かに逸脱したものとなっていた。眼前に広がる夥しい血の海に、カズハ達は仮面の下で瞠目する。
「うそっ……!?」
リンが思わず短い悲鳴を上げる中、カズハ達は険しい表情のまま、冷静にその血の海を見つめていた。
「この遺体……首が……!」
ランヒルド達の目の前に倒れていたのは、首の無い死体。それは紛れもなく、カズハがビッグ・ノア事件で交戦したリボルバースパルタン――マグナのものであった。見覚えのあるモスグリーンの外骨格とカーキ色のロングコートは、首の断面から広がる血の海に染まっている。
「コイツは……」
「……あぁ、間違いない。私達があの船で戦った、スパルタンライダーの1人だ。彼はやはり、この洋館で何かを研究していたのだね」
血溜まりの中で片膝を着いた咲の声に頷き、カズハは首無し死体の状況を確認する。外骨格に包まれたままの身体はまだ温もりを保っており、「斬首」されてからそれほど時間が経っていないことを彼女達に教えている。
カズハ達は死体の近くに置かれている培養槽にも目を向けていた。内側から突き破られたかのように破られている培養槽のガラス片は、あちこちに散乱している。
どうやら、この培養槽から出て来た怪物に殺害されたと見て間違いないらしい。リボルバースパルタンの外傷は凄まじく、首を斬られているだけでなく、胸部も巨大な刃のようなもので貫かれていることが確認出来た。
(……信じられない。あの彼が、こうも呆気なく……!)
あれほど手強かったスパルタンライダーを、ここまで一方的に惨殺してしまうほどの怪物。そんな化け物がこの近くに潜んでいることを悟り、カズハ達は戦慄を露わに顔を見合わせていた。
研究室の一帯はマグナの鮮血で赤く染め上げられており、地獄のような光景となっている。しかしその中においても、奇妙な痕跡が残されていた。
血の雫がポタポタと落ちたような痕が、この研究室の外へと続いていたのだ。何らかの力で破壊された壁は、そのまま屋外へと繋がる横穴になっている。
「……皆」
「分かってる。……行こ、カズハ」
「先に進まなければ、『答え』は見つからない。その『答え』を見つけ出すことが、私達の仕事でしょ?」
「あぁ……そうだね」
この先に、斬り落とされたマグナの首を持ち去った者が居る……ということなのだろうか。仲間達の方へと振り返るカズハに対し、トリニティとハンナは鋭く目を細めて「調査」の続行を促していた。
マグナを殺害した怪物の仕業と予測した6人は、警戒を厳にして武器を構えつつ、血痕を辿るように横穴から外へ出る。降り積もった雪を赤く染めている血の跡は、さらに奥へと続いていた。
「皆、くれぐれも周囲には気を付けて。何が居るか分からない」
「分かってる、心配しないで。……いきなり目の前にヤバい奴が出て来ても、私とリンで叩き斬ってやるから」
鬱蒼と生い茂る森の中を進むカズハや咲達は、足元の血痕を見遣りながら背中を預け合う。そして四周を警戒しつつ、ゆっくりと歩を進めていた。しかしその途中で、血痕の道標が途絶えていることに気付く。
「ここで血痕が途切れている……。一体、彼の首はどこに行ったのか……」
「……奴の遺体はまだ腐敗していないようだった。それに、この血痕もまだ新しい。奴が殺害されてから、それほど時間は経っていないはずだよ」
「彼を殺害した何者かは、まだ遠くには行っていない……ということですね。周囲を調べましょう、何か見つかるかも知れません」
カズハの呟きに対し、ランヒルドとリンは目を細めて神妙な表情を浮かべている。手掛かりは途切れてしまったが、実行犯が遠くに行ったとは考え難い。
どこかに身を潜めている可能性を視野に入れて、6人は周囲の探索を始めた。各々の命を預けた武器を構え、あらゆる角度を警戒し、彼女達は培養槽から逃げ出した謎の怪物を追う。
――そんな彼女達を、頭上の崖から冷たく見下ろしている男が居た。野戦服の上にレッドブラウンのトレンチコートを羽織り、艶やかな銀髪を靡かせている美男子。彼は崖の上からカズハ達の姿を見下ろし、呆れたように呟いている。
「おいおい……何なんだァ、あのイカれた格好の痴女共は。まさかとは思うが、あんな裸より恥ずかしい格好してる連中が……この時代の『仮面ライダー』だって言うんじゃないだろうな?」
ため息を吐いている彼の足元には、一つの鉄仮面が転がっていた。否、それは
この銀髪の男こそが、カズハ達が探している怪物の「正体」なのだ。培養槽の中で目覚めた瞬間、憎き「仮面ライダー」の鎧を着ていたマグナを惨殺し、その首を斬り落とした真紅の馬型怪人。そんな彼の「人間態」が、この銀髪美男子なのである。
「まぁ……それならそれで良いさ。俺達が蘇ってしまった意味は……奴らにあるようだからな」
――1970年代から
彼はマグナの頭部を長い脚で蹴り上げ、そのままサッカーボールのようにポンポンとリフティングし始めていた。遺体に対する扱いではない。倫理という概念から極めて逸脱している、まさに「怪人」の所業であった。
「それじゃあ……俺達
鋭く眼を細めてカズハ達を見下ろしている戦馬。彼はマグナの頭部で暫くリフティングを続けていたが――突如、一際高く彼の頭部を蹴り上げる。そして落下して来るタイミングに合わせて、長い脚を大きく横薙ぎに振るっていた。
「そぉ……らよっと」
彼はマグナの頭部を、ボレーシュートの要領で
しかし、そのような「戯れ」に過ぎない蹴りであっても。それを実行しているのは、NCレベル87.3と計測された埒外の怪物なのだ。その膂力は戯れ程度の感覚であっても、仮面ライダーの必殺技に匹敵し得るほどの衝撃力を生み出してしまう。
事実。戦馬によって蹴り飛ばされたマグナの頭部は、肉眼では到底視認出来ないほどの速度で空を裂いている。風を切って吹き飛ぶ頭部が向かう先は、ハンナの後頭部。極めて音速に近しい速さで翔んでいるマグナの頭部は、そのまま鉄の砲弾と化していた。
このままハンナの後頭部に激突すれば、彼女の即死は免れないだろう。何も知らないまま辺りを探索している彼女の背後に、マグナの頭部が急接近していた。
「――ッ!」
だが、カズハはその気配を本能で察知していた。仲間に迫る危機を瞬時に察した彼女は、思考よりも速く動き出す。黒革のライダースジャケットを靡かせ、振り向きざまにビームガンを構えた彼女は乳房と巨尻を揺らし、条件反射で発砲していた。
次の瞬間。カズハが撃ち放ったビームがマグナの頭部に命中し、空中で爆散してしまう。
超高速で飛ばされて来たマグナの頭部を、正確無比に撃ち落とす命中精度。彼女の射撃技術はビッグ・ノア事件の頃よりも、遥かに冴え渡っているようだ。あの事件によって身体と心に刻み付けられた恥辱の記憶をバネにして、己の技を鍛え直していたのだろう。彼女のNCレベルはすでに、軽装型強化服の性能限界を凌駕していた。
「きゃっ!?」
「なにッ!?」
「今のはッ……!?」
一方。自分の真後ろで突如爆発が起きたことに驚いたハンナは、瞬時に振り返って実弾拳銃を構えていた。ランヒルドや咲達も、仲間の危機を察して素早く武器を構え直している。しかしその時にはすでに、爆散した仮面の破片が辺りに散らばるのみとなっていた。
「なっ、何なんですか今の……! 隊長、さっきのは一体……!?」
「……何者かがハンナを狙っていたんだ。とにかく、無事で良かった」
「……びっくりしたぁ……」
思わぬ事態に、リンとトリニティも瞠目している。そんな中、カズハは仲間の無事に安堵しながらも、鋭い眼光でマグナの頭部が飛んで来た方向を睨み上げていた。
しかし、その方向――崖の上には、もう誰も居ない。ハンナの後頭部目掛けてボレーシュートを放った直後に、戦馬は姿を眩ましていたのだ。
(今のは、一体……!?)
その光景に銃口を下ろしたカズハは、訝しむように辺りを見渡している。しかしやはり、敵の気配は感じられない。目に映るのは、空からしんしんと降る白い雪ばかり。
一体、何者の仕業なのか。分からないことばかりだが、仲間が狙われたことだけは紛れもない事実。カズハ達は以前よりもさらに険しい面持ちで、周囲を警戒し始めるのだった。
◆
――かくして。最恐最悪と恐れられた始祖怪人達は、長い眠りから目覚めてしまった。
そして、この時代を守る「仮面ライダー」達の戦いは、新たなるステージへと突入することになったのである。
【挿絵表示】
本作はこれにて完結となりました! 企画にご参加頂いた参加者の皆様、読者の皆様。ノバシェード対策室の特務捜査官達の物語、最後まで見届けて頂きありがとうございます! おかげさまで本作も無事に完走することが出来ました……m(_ _)m
本作は「仮面ライダーAP(https://syosetu.org/novel/128200/)」のスピンオフ作品であり、始祖怪人(「AP」におけるラスボス級怪人達のこと)が長きに渡る仮死状態から復活していた理由を明らかにする物語でもありました。「AP」では「不思議なことが起こった」としか書かれていなかったのですが、蓋を開けてみたらこんな経緯だったわけであります。
表舞台で新世代ライダー達が民衆のヒーローとして活躍していた頃、その裏側ではこんなことも起きていたわけですなー……。B.A.V.A.R.F.の活躍でノバシェード対策室の壊滅は免れましたが、その水面下では始祖怪人復活のカウントダウンが始まっていた模様。ここから本作世界の物語は、新世代ライダー達と始祖怪人達の戦いにシフトして行くことになります……(ノД`)
今話に登場したレッドホースマンこと戦馬聖を含む始祖怪人達は、どのような経緯で悪の怪人に堕ちていたのか。そしてこの時代に蘇った彼らは、これから始まる新世代ライダー達との戦いで、どのような最期を遂げるのか。それらの顛末は「仮面ライダーAP」の特別編(https://syosetu.org/novel/128200/71.html)で描かれておりますので、そちらのエピソード群をご参照ください。
また、X2愛好家先生作の3次創作作品「仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil(https://syosetu.org/novel/316771/)」は、この最終話から約半年後の2021年7月頃が第1話の舞台となっております。レッドホースマンはこちらの作品でも大暴れしておりますので、彼の強さが気になる方はこちらもどうぞよしなに!
また現在、咲を考案された泥濡れ龍先生の3次創作「歪んだ純愛に堕ちるマス・ライダー達(https://www.pixiv.net/novel/series/12221546)がpixivにて公開されております! 咲と装太のイチャラブが中心となっているSS作品となっており、他のメンバー達も登場している賑やかな作品となっておりますので、機会がありましたらこちらもご一読ください〜(*´ω`*)
加えて、G-20先生も新たな3次創作「【RC&レジガール二次創作】ノバシェード残党北欧某国ちはや山荘事件(https://syosetu.org/novel/354513/)」を公開されております。本作のビッグ・ノア事件から4年後の北欧某国が舞台となっており、B.A.V.A.R.F.をはじめとするノバシェード対策室らの奔走が描かれて行くものと思われますので、もしよろしければこちらもご一読くださいませm(_ _)m
さらにもう一つお知らせです! X2愛好家先生が連載されている3次創作「仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil」のエピソード「特別編 第4話 原初のG/白獣(https://syosetu.org/novel/316771/16.html)」に、アルファチームのトリニティがゲスト参戦しております! 舞台は本作のビッグ・ノア事件から約1年後。アフリカ大陸のナイジェリアに休暇で訪れていた彼女が、異世界からの侵略者・ハンドレッドに遭遇! さらにこのエピソードでは、彼女の「体質」に纏わる知られざる秘密が明らかに……!? 気になる方は、こちらもぜひご一読くださいませ〜!(*≧∀≦*)
また、トリニティの活躍は同じくX2愛好家先生が執筆された「九十九 光の気ままな実験録(https://syosetu.org/novel/357309/)」でも描かれております。マス・ライダー軽装型を遥かに超える「力」を得た彼女の「真価」が強烈に描写されておりますので、機会がありましたらこちらの作品もぜひご一読くださいませ……m(_ _)m
同作内のエピソード「開幕:MS(https://syosetu.org/novel/357309/3.html)」では、本来
B.A.V.A.R.F.はおろか対策室からも去ってしまった彼女の現在については、こちらの作品で描かれております。幻のC-6こと麗牙の存在が気になる方は、是非こちらの作品もご覧くださいませー!(*^ω^*)
ではでは、本作を最後まで応援して頂き誠にありがとうございました! 機会がありましたら、またどこかでお会い出来れば幸いです〜!(*´ω`*)
Ps
強化服の上に革ジャケットという格好は「シン・仮面ライダー」を意識してのものでした。個人的に大好きな映画です〜(*^ω^*)