※この作品はR-18です。

特務捜査隊エージェントライダーズ!-絶賛排卵中の危険日女捜査官達は特製媚薬になんか絶対に負けない!-   作:オリーブドラブ

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◆今話の登場ライダー

鳥海穹哉(とりうみくうや)/仮面ライダーケージ
 警視庁に属する巡査長であり、真っ直ぐな正義感の持ち主でもある熱血刑事。人類の希望たる「新世代ライダー」の一員であり、ワンオフタイプの外骨格「仮面ライダーケージ」を任されている。現在はノバシェード対策室本部の合同訓練に参加しており、トレーニングの一環として一時的にマス・ライダー重装型を使用している。身長は183cm。年齢は29歳。
 ※原案はたつのこブラスター先生。

忠義(チュウギ)・ウェルフリット/仮面ライダーオルバス
 アメリカでは騎馬警官として活躍していた父の影響で警察官となった、ハーフの青年。人類の希望たる「新世代ライダー」の一員であり、ワンオフタイプの外骨格「仮面ライダーオルバス」を任されている。現在はノバシェード対策室本部の合同訓練に参加しており、トレーニングの一環として一時的にマス・ライダー重装型を使用している。身長は175cm。年齢は21歳。
 ※原案はX2愛好家先生。
 ※X2愛好家先生の3次創作作品「仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil(https://syosetu.org/novel/316771/)」の主人公。


【挿絵表示】




特訓編 愛する女を寝取られかけた男達は、強さを求め限界に挑む

 

 カズハを筆頭とするB.A.V.A.R.F.の女傑達が、対策室本部のオフィスビル内に設けられたフィットネスルームでじっとりと汗を流し。そのオフィスから遠く離れた超高層ビルの屋上で、真凛と麗牙が人知れず激突していた頃。

 本部オフィスの地下に設けられている訓練施設では、通常型マス・ライダーの男性装着者達が模擬戦訓練に励んでいた……のだが。白基調の外骨格を纏う彼らは今、戦闘試験場(アリーナ)の一つで繰り広げられている「格闘戦」に注目している。

 

「お……おい、あそこの試験場……見てみろよ……!」

「……は……!? い、いや、おい、ちょっと……何だよアレ、冗談だよな……!?」

 

 その場に集まった男性捜査官達は皆、信じられないものを見るような眼で、その試験場での模擬戦を観戦している。どよめく彼らは互いに目を見合わせながら、試験場で殴り合う2人のマス・ライダーに釘付けになっていた。

 

 この地下施設に集まった男性捜査官達の注目を集めている、2人のマス・ライダー。戦闘試験場の中で苛烈な肉弾戦を繰り広げている彼らは、重装型(・・・)の外骨格を纏っていたのだ。

 屈強な装着者でも歩き回るのがやっとだという重装型で、近接格闘の模擬戦を繰り広げているのである。彼らは重装型の重さなどものともせず、素早いパンチやキックの応酬を繰り返している。

 

「おい、いくらなんでも冗談が過ぎるだろ……? あの2人が装着してるのって、マス・ライダーの重装型……だよな? 外装(ガワ)だけってことじゃないんだよな……!?」

「むしろそうであってくれた方が、よっぽど腑に落ちるぜ……! 何なんだよ、あの2人……! 何で重装型の外骨格を着た状態で、あれほど動き回れるんだ……!?」

 

 重装型を装着した状態での、足となる専用車両(GクルーザーII)に頼らない通常戦闘がどれほど困難であるか。それを身体で理解している男性捜査官達は、驚愕の表情でこの模擬戦を観戦していた。一体どんな馬鹿力があれば、あんな重い鎧を着たまま殴り合いなんて出来るのか、と。

 

「……」

 

 そんな中。独り取り乱すことなく、冷静な佇まいで模擬戦の様子を観察している髭面の巨漢が居た。2ヶ月前のビッグ・ノア事件の際、B.A.V.A.R.F.のサポートに徹していたビリー・ケンド捜査官だ。

 対策室きってのタフガイと評された彼でさえも、重装型を着た状態では「歩行」が限度だった。走ったり、跳んだり。ましてやまともな格闘戦など、出来るはずもなかった。彼ですらも、そこまでが限界だったのだ。

 

 しかし今、重装型を装着して肉弾戦を繰り広げている2人の装着者は、鎧の重さなど意にも介していない。無論、2人の重鎧が特別に調整されているわけでもない。この2人は自身の膂力だけで、この鉄の棺桶を完璧に使いこなしているのだ。

 それほどの超人振りを披露しているこの2人は、一体何者なのか。それをよく知っているビリーは、冷や汗をかきながらもゆっくりと口を開く。

 

一品物(ワンオフタイプ)の外骨格を任されてる新世代ライダーってのは、とんでもねぇ実力者揃いだとは聞いている。……聞いているんだが、こいつぁ……噂以上なんてもんじゃねぇぜ」

 

 ――ノバシェードの残党を追跡する旅の途中で、この対策室本部が在るマンハッタン島に立ち寄っていた2人の新世代ライダー。彼らに重装型のテストを依頼したことが、この模擬戦が始まるきっかけだったのだ。

 

 彼ら2人は、重装型を着た状態で人間がどこまで動けるのか、という動作試験のためにこの重鎧を装着していたのだが――いつしか、近接戦闘の模擬戦へと発展してしまったのである。彼らの身体能力が並外れていなければ、そもそもそこまで発展する機会もなく動けなくなっていただろう。

 

 だが、彼らにそんな「常識」は通用しなかったのだ。彼らは、ワンオフタイプの強力な外骨格を任されている新世代ライダーの一員なのだから。

 

「くぅッ、くっそぉッ! この鎧ッ、重たいにも程があるだろッ! なんッて動きにくい外骨格なんだッ……!」

 

 高速のワンツーパンチをまともに喰らい、数歩後退している重装型。その重鎧を纏っている、金髪碧眼の美青年――「仮面ライダーオルバス」こと忠義(チュウギ)・ウェルフリットは、重装型の重さに苦言を呈していた。並の人間なら身動きすら取れないほどの重さでも、彼にとっては「動きにくい」で済む範疇であるらしい。

 

「ははっ、確かにな。どうする忠義(チュウギ)、そろそろ今日はこの辺で切り上げるか? この外骨格……マス・ライダー重装型だったか。確かに強度は大したものだけど……ちょっと動きづらいもんな」

 

 対して、忠義の対戦相手である黒髪の美男子――「仮面ライダーケージ」こと鳥海穹哉(とりうみくうや)は余裕の表情であり、汗の一滴も流していない。そればかりか、重装型の重さに文句を漏らしている忠義を気遣ってすらいる。彼にとっては重装型の重さなど、「ちょっと動きづらい」程度でしかないようだ。

 

「……バカ言わないでくださいよ、穹哉(くうや)さん! 勝負はまだまだこれからですッ!」

 

 そんな彼の優しさを「挑発」と受け取ったのか。負けず嫌いな忠義は猛烈な勢いで走り出し、穹哉目掛けて飛び蹴りを仕掛けて行く。地を蹴って宙に舞った彼は、滞空しながら後ろ回し蹴りを繰り出そうとしていた。

 無論、重装型を着た状態でそんな挙動が出来る人間など対策室には1人もいない。そして、そんな芸当をやってのけている忠義ですら、新世代ライダー達の中では「未熟」な部類だというのだ。

 

 あまりに規格外。あまりに埒外。そんな新世代ライダー達の「実力」を目の当たりにした男性捜査官達は、わなわなと肩を震わせて、彼らをここに呼んだビリーの方へと詰め寄って行く。

 

「ビリーさん、一体何なんですかアイツら……! 新世代ライダーってのは、あんな化け物揃いなんですか……!?」

「アイツら、実は改造人間なんじゃ……!? いや、むしろそうでなきゃ説明が付きませんよ! ビリーさんですらまともに動き回れない重装型で、あんな……! まるで軽い外骨格を着てるかのような動きが出来る生身の人間なんて、この世に居るわけが……!」

 

 男性捜査官達は動揺と困惑を露わに、ビリーの元へと集まっていた。実はそもそも生身の人間ではないのでは。ノバシェードの戦闘員達と同じ、改造人間なのでは。そんな疑惑の視線で忠義達を睨む捜査官達は、その心根に嫉妬の感情を滲ませている。

 

 そんな同僚達の猜疑心を肌で感じ取ったビリーは、最も近くに居た男性捜査官達の肩に手をポンと置き、首を横に振る。この世は常に、「上には上が居る」のだと。

 

「……実際、新世代ライダー達の中には人間ですらねぇ奴も居るらしい。最強格の1人とされる『仮面ライダータキオン』に至っては、元ノバシェードの改造人間だって話だ。ただ、あの2人は本当に生身の人間なんだよ。とんでもなく鍛えてる……ってだけのな」

「そ、そんなことが……!?」

「俺だって信じられねぇよ。だが、それでも目の前にある現実を受け止めるしかねぇんだ。俺達は……信じられねぇような化け物共と渡り合わなきゃいけない、ノバシェード対策室の特務捜査官なんだからな」

 

 あの新世代ライダーの一員が今回の模擬戦訓練に参加すると聞いた時から、自分達の実力を彼らに示してやろう、あわよくば専用外骨格(ワンオフタイプ)の資格を奪い取ってやろうと目論んでいた男性捜査官達。彼らの野心的な思惑は、戦わずして見事に破綻してしまったようだ。

 

 ――しかし、そんな中。この場に居る誰もが敵わないと諦めた新世代ライダー達に、真っ向から挑もうとする2人の青年が居た。通常型のマス・ライダーを装着している彼らは、穹哉と忠義が戦っている戦闘試験場(アリーナ)に躊躇なく足を踏み入れている。

 白を基調とする、オーソドックスな量産型仮面ライダー。そんなマス・ライダー通常型の外骨格を纏う2人は、一品物(ワンオフタイプ)の鎧を任されている新世代ライダーが相手でも臆することなく、挑戦状を叩き付けようとしている。

 

「……鳥海穹哉巡査長、忠義・ウェルフリット巡査。俺達ともお手合わせ願えませんか」

「せっかくの合同訓練なのです。俺達にも、『新世代ライダー』であるあなた達の強さの秘訣を学ばせて頂きたい」

 

 周りの同僚達のような野心も無く、ただ真っ直ぐに強さを求めている2人の男性捜査官――装太(そうた)衝矢(しょうや)。通常型のマス・ライダーを装着して試験場に上がって来た彼ら2人を前に、穹哉と忠義は一度顔を見合わせて大きく頷いた。

 

「そうだな……せっかくだし、良い経験になるかも知れない。よし、俺達も通常型の外骨格に着替えて来るよ。少し待っててくれ」

「必要ありません。このままで()りましょう」

「え……?」

 

 戦う前に「条件」を揃えるため、穹哉と忠義は自分達も通常型に着替えて来ようとする。しかし装太はそんな2人を呼び止め、今の状態のままで格闘戦を挑もうとしていた。その言葉に、穹哉と忠義は思わず困惑する。眉を顰めてため息を吐く忠義は、腰に手を当てて装太と衝矢を嗜めようとしていた。

 

「……はぁ〜。あのなぁ、重装型と通常型のウェイト差は知ってるだろ? 今俺達が使ってる重装型のパンチが当たったら、通常型なんて軽く吹っ飛んじまうんだぞ」

「実戦の世界では同じ条件が揃うことなんてありません。……俺達は2ヶ月前、それを嫌というほど思い知りました」

「2ヶ月前……俺達は、スパルタンライダーの襲撃を受けて瀕死の重傷を負いました。奴らが使っていた外骨格の前では、俺達が積み上げて来たモノは何一つ通用しなかった……」

「……」

 

 約2ヶ月前。D.A.S.T.のスパルタンライダーに襲撃された装太と衝矢は、殺しのプロである凄腕の傭兵達に全く歯が立たず、死の淵に立たされた。リハビリを終えて現場復帰を果たした今も、その時の屈辱は彼らの脳裏に深く刻み込まれているのだろう。

 その後、D.A.S.T.はビッグ・ノア号での戦いでB.A.V.A.R.F.に敗れ、壊滅した。装太の恋人である咲。衝矢と将来を誓い合ったリン。彼女達の活躍によって、装太と衝矢の無念も無事に晴らされたのである。

 

 しかしその後――ノバシェードに囚われた咲とリンを含めたB.A.V.A.R.F.アルファチームは、媚薬を打ち込まれ苛烈な快楽地獄に堕とされた。そして膣内射精(なかだし)まで許してしまい、「妊娠」の危機にまで陥ったのである。

 後もう少し避妊処置が遅れていれば、彼女達の子宮内膜には憎きノバシェード戦闘員達との受精卵が「着床」していたのだという。その事実は、最愛の女を寝取られかけた装太と衝矢にとっては、何よりも耐え難い屈辱であった。自分達がD.A.S.T.に敗れたことよりも、遥かに許し難いことであった。

 

「大切な人が、俺達のために奴らと戦っていた時も。俺達は意識すら無く、病院のベッドで寝ているだけでした。その間に、彼女達は『大変な目』に遭っていたのに……!」

「俺達はもう2度と、あんな惨めな思いはしたくない……! そのためにも、俺達は自分の限界を越えなければならないんです! もう一度……『彼女』と肩を並べて戦えるように……!」

 

 共に将来を誓い合い、幼い頃から愛を育んで来た大切な恋人。その心も、肉体も、貞操も、何もかも奪われ陵辱され、穢し尽くされてしまった。それは1人の男として、最大の屈辱に他ならない。あの柔肌を他の男達、それも憎むべき仇敵達に蹂躙されたのかと思うと、絶大な怒りと悲しみで身も心も張り裂けるようだった。

 もう2度と、あのような思いはしたくない。させたくない。今度こそ、愛する女を守り抜ける力が欲しい。そんな切実な願いを込めた眼差しを仮面に隠し、2人は外骨格の拳をわなわなと震わせている。詳細を語る気が無くとも、その震えが穹哉と忠義に全てを伝えていた。

 

 2ヶ月前のビッグ・ノア事件の後。昏睡状態から目覚め、恋人達との再会を果たした2人はリハビリの日々を送る中で、これまでの辛い記憶を塗り替えようと、各々の恋人と深く濃密な「逢瀬」に耽っていた。

 最愛の恋人との、深く溶け合うようなまぐわい。そのひと時は、恥辱の記憶を幸せな逢瀬の色で塗り潰せる――はずだった。

 

 だが。装太と衝矢がどれほど情熱的に愛撫しても。熱く激しく抱いても。咲とリンは、一度も大きな絶頂に達することが出来なくなっていた。どれほど身体が甘く火照っても、快楽に染め上げられても。最後の一線を越えた、天にも昇る快楽が得られなくなっていたのである。

 その変化が、ノバシェードの男達に「調教」された結果であることは明らかだった。咲もリンも、最愛の恋人との優しい逢瀬ではイけない身体にされてしまっていたのである。改造人間特有の、常人ならざる体力と精力にモノを言わせた獰猛なパワーセックス。そのケダモノのような交尾でしか得られない快感を教え込まれてしまった彼女達の肉体は、今もなお操舵室で味わった極上の快楽地獄を忘れられずにいたのだ。

 

 自分達の逸物では、愛する女を「満足」させることが出来ない。そればかりか、憎き仇敵であるはずのノバシェード戦闘員達の逸物の方が、彼女達の蜜壺に深く馴染んでいるというのだ。男として、雄としての尊厳をこれ以上ないほど傷付ける、あまりにも残酷な現実であった。

 

 対策室に属する専門家の見解によれば、それはあくまでも媚薬の後遺症による一時的な症状に過ぎない。これから時間が経つに連れて、徐々に彼女達の肉体も、恋人達との逢瀬の悦びを思い出して行くのだという。この悪夢が、いつまでも続くわけではない。いずれ必ず、彼女達の愛を取り戻せる時が来る。

 

 だが、それで装太と衝矢が受けた屈辱が消えるわけではない。命を賭けて愛する、守ると誓った女の全てを、一時とはいえ全て奪い尽くされたことに変わりはないのだ。

 

 今度こそ、愛する女の心と身体を取り戻すために。そしてもう2度と、何者にも最愛の人を奪わせないために。自分達は己の限界を越え、今よりも遥かに強くならねばならない。装太と衝矢はその信念を帯びた眼光で、穹哉と忠義を射抜いている。

 

「……分かった。それなら精一杯、後悔が残らないように()ろう。良いな? 忠義」

「やれやれ……穹哉さんがそう言うんじゃあ、仕方ないですね。……2人とも。言っておくけど、怪我しても知らないからな!」

「はい……! 望むところです!」

「胸をお借りします、お二方!」

 

 そんな2人の悲壮な決意は、仮面越しでも伝わっていたのだろう。特に、2人を死の淵から救出した「当事者」の1人だった忠義は、装太と衝矢の覚悟に対して少なからず思うところがあったようだ。

 彼らの意を汲んだ穹哉と忠義は互いに頷き合い、重装型の鉄拳を構え始めている。英雄と名高い新世代ライダー達との「手合わせ」に奮い立つ装太と衝矢も、不敵な笑みを浮かべて身構えていた。

 

 ――かくして、この合同訓練における最大の戦いが幕を開けたのだが。

 

 模擬戦に熱が入るあまり、重装型の駆動系統がショートするまで「手合わせ」を続けてしまった忠義と穹哉は、貴重な重装型を2機も壊したことで始末書を提出する羽目になったらしい。全身痣だらけになった装太と衝矢は日付が変わるまで、そんな2人の手伝いに明け暮れていたのだという。

 

 ◆

 

 ――2020年12月某日深夜。日本、東京。

 華やかな夜景と純白の雪に彩られた、大都市の繁華街。その裏側に隠された路地裏を、1人の男がゆっくりと歩んでいた。

 

 モスグリーン基調の外骨格の上に、カーキ色のレザーコートを羽織っている仮面の男。凶悪に吊り上がった複眼を持つ鉄仮面で、素顔を覆い隠している彼は、その腰のホルスターに1挺のリボルバー拳銃を納めていた。

 

 人目を憚るように、雪が降り積もった薄暗い道を行く男――マグナ。

 そんな彼が路地裏を抜け、人気のない裏通りに姿を現した瞬間。突如、彼を取り囲むように6人もの巨漢が現れた。

 

「そこまでだ、D.A.S.T.の死に損ないッ!」

「貴様達が復活させようとしている始祖怪人(オリジン)……その遺体が隠されている場所を全て吐くんだッ! 奴らをこの時代に蘇らせるわけには行かないッ!」

 

 特徴的な野戦服を纏う彼らは皆、片腕を刃や銃器に変異させている。その野戦服と異能を見るに、ノバシェードの戦闘員であることは明らかだった。

 改造人間でありながら、明確な「怪人」に変異し切ることが出来ない「半端者」。そんな戦闘員達を見渡すマグナは仮面の下でほくそ笑み、彼らを嘲笑する。

 

「……随分なご挨拶ではないか、ノバシェードの諸君。何故私の邪魔をする? 仮面ライダーの打倒は諸君らの悲願でもあるはず。感謝されこそすれ、邪魔立てされる謂れなどない」

「黙れッ、この裏切り者が……! 始祖怪人は我々でも制御出来ない、あまりにも危険過ぎる存在なのだ! もし奴らが目覚めてしまったら……ライダー共や対策室の連中はおろか、我々ノバシェードさえも今後どうなるか……!」

 

 表情は見えずとも、マグナの白々しい態度からその真意を察した戦闘員達は、怒りを剥き出しにしている。どうやら彼らは、D.A.S.T.の企みに気付いた斎藤空幻が送り込んで来た刺客だったようだ。

 

 アイングレイザーやマグナをはじめとするD.A.S.T.の傭兵達。彼らの狙いは、改造人間という生物兵器の祖たる「始祖怪人」の復活にあった。

 

 仮面ライダーのみならず、自分達ノバシェードさえも打倒し、その圧倒的な「力」で全てを破壊しかねない危険な存在。そんな始祖怪人達を蘇らせてなるものかと、斎藤はD.A.S.T.最後の生き残りであるマグナを執拗に追い続けていたのだ。

 斎藤空幻直属の私兵部隊である、6人の改造人間。彼らは全方位からマグナを取り囲み、異形の腕部を標的に向けている。

 

「……はっ、はははは! はーっ、ははははっ!」

「何が可笑しいッ!」

「今の話は可笑しいものだろう? つまるところ、斎藤空幻の我が身可愛さということではないか。要は、自分達の支配体制を破壊されることが怖いのだろう? 暴力による変革を求めて来た君達が、それ以上の暴力に怯えるとは……これをなぜ笑わずにいられようか」

 

 だが、6人もの刺客達に包囲されているというのに。当のマグナは涼しげな佇まいで辺りを一瞥し、彼らを嘲るような笑い声を上げていた。そんな彼の底知れなさに刺客達は戦慄を覚えつつも、剣呑な表情を露わにする。

 

「だ、黙れ黙れッ! いいからさっさと、貴様が持っている情報を全て吐き出すんだッ! でないとッ――!?」

 

 そして彼らは挑発に乗せられるまま、全員一斉に各々の得物を構えようとする。その瞬間、マグナはまだ棒立ちのままであった。

 

 ――そう、刺客達の方が先に(・・)動き出したのだ。にも拘らず、後から(・・・)動き始めたマグナはカーキ色のレザーコートを翻し、ホルスターからリボルバー拳銃を一瞬で引き抜いていた。

 

 そして、自身より先に動いていた刺客達よりも遥かに疾く。愛銃を構えた彼は薙ぎ払うような早撃ちを繰り出し、全員の心臓に鉛弾を撃ち込むのだった。後から(・・・)動き出したはずのマグナが、刺客達よりも先に(・・)引き金を引いたのである。

 

「が、あッ……!?」

「……嘆かわしい鈍さだ、0.1秒もくれてやったというのに。人の身を超えた力が泣くぞ?」

 

 6人の胸から鮮血が吹き出し、彼らが驚愕の表情で吐血した時。リボルバー拳銃の銃口から硝煙を立ち昇らせるマグナは、落胆した様子で愛銃をクルクルと回転させていた。彼の指先で回転する銃身が、月明かりを浴びて妖しい輝きを放つ。

 

 ビッグ・ノア号で戦った対策室の女捜査官――カズハが相手だったなら、「0.1秒の隙」は致命的なロス(・・)になっていただろう。しかしその「猶予」を与えられてもなお、刺客達はマグナの早撃ちに追い付けなかったのだ。

 

「が、はぁ、あッ……!」

「うッ……裏切り者、めッ……!」

 

 生身の人間にすら劣る反応速度では、一生掛かっても仮面ライダーには勝てない。その事実を突き付けられ、致命傷を負った6人の戦闘員達は苦悶の声を上げ、次々と倒れ伏して行く。うつ伏せに倒れた彼らの身体から広がる血の海が、確実な「死」を物語っていた。

 

「……何が裏切り者だ。私の隊長(ボス)は君らではない」

 

 そんな彼らの骸を冷たく見下ろすマグナは、愛銃を何度も回転させた後――その銃身をホルスターに納め、大都会の中を再び歩き出して行く。カーキ色のレザーコートを翻し、闇の彼方へと消えて行くリボルバースパルタン。その行方を知る者は居ない。

 

 ◆

 

 ――その翌朝。事件現場となった繁華街の裏通りには何台ものパトカーが集まり、大勢の警察官達が現場の捜査を始めていた。規制線の黄色いテープの外側には無数のマスコミや野次馬が集まっており、辺りはざわざわと騒がしくなっている。

 

「しっかし……こりゃあ並の芸当じゃねぇな。全員心臓に1発、全員漏れなく即死。恐らくはノバシェードの内輪揉めってところだろうが……一体何者の仕業なのかねぇ」

 

 ブルーシートで隠されている6人の遺体。その惨状を確認していた壮年の熟練刑事は、頭を掻き毟りながらため息を吐いている。クリスマスも近いという時期に厄介な事件(ヤマ)に当たってしまった彼は、今年も家族でパーティーとは行かなくなってしまったようだ。

 

「……これが現場に残されていた銃弾、か。間違いない、これはノバシェード製の対改造人間用特殊マグナム弾ね。実行犯はかなりの使い手のようだわ」

 

 刑事の隣に立っている、ノバシェード対策室の特務捜査官――ヘレン・アーヴィングは、ビニールの証拠品袋に収められている1発の銃弾を神妙に見つめている。整然とした黒スーツを内側から押し上げている、規格外のプロポーション。その曲線をくっきりと浮き上がらせている彼女の肢体は、野次馬の視線やマスコミのカメラを一身に集めていた。

 

 艶やかなブロンドのショートヘアに、蒼い宝石のような瞳。蠱惑的な桜色の唇に、誰もが振り向く絶世の美貌。そして、スーツ姿でも全く隠せないほどの豊満な爆乳と、安産型の巨尻。

 そんな美人捜査官のルックスに周りが夢中になっている中、当の本人は周囲の視線など意に介さず、真剣な眼差しで銃弾を見つめていた。彼女の隣に立つ熟練刑事も、アメリカから来た特務捜査官の言葉に、真剣に耳を傾けている。

 

「B.A.V.A.R.F.からの報告書(レポート)によれば、この弾丸を使うリボルバー使いの傭兵がノバシェードに与していたらしいわ。彼がビッグ・ノア号から生還していたのだとすれば……この状況にも説明が付く」

「そいつがまだ生きていて、今はノバシェードに追われているお尋ね者……ってことか? 一体なぜ……」

 

 ビッグ・ノア号から逃げ延びていたD.A.S.T.の傭兵が、なぜノバシェードと事を構えているのか。その背景など知る由もないヘレン達は、剣呑な佇まいで顔を見合わせていた。始祖怪人の存在を知らない彼女達では、マグナの目論見に辿り着くことは叶わなかったのである。

 

(……胸騒ぎがする。例の傭兵は一体、何をするつもりなの……?)

 

 そんな中、この怪事件から不穏な予兆を感じ始めていたヘレンは、眉を顰めて銃弾を見つめている。彼女達が始祖怪人の脅威を知ることになるのは、この翌年のことであった――。

 






【挿絵表示】


 これにて特訓編は完結となります! 今話も最後まで読んで頂きありがとうございました! 本作全体で仄めかして来た始祖怪人とは一体どんな奴らなのか。その辺りは本筋の作品である「仮面ライダーAP(https://syosetu.org/novel/128200/)」の特別編(https://syosetu.org/novel/128200/71.html)で描かれておりますので、機会がありましたらこちらの作品もどうぞよしなに!

 また、今話に登場した新世代ライダーの一員である忠義・ウェルフリットは、X2愛好家先生の3次創作作品「仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil(https://syosetu.org/novel/316771/)」で主人公を務めております。彼をはじめとする多くの仮面ライダー達の物語が描かれておりますので、こちらも是非ご一読ください〜!٩( 'ω' )و

 それから現在、咲を考案された泥濡れ龍先生の3次創作「歪んだ純愛に堕ちるマス・ライダー達(https://www.pixiv.net/novel/series/12221546)がpixivにて公開されております! 咲と装太のイチャラブが中心となっているSS作品となっており、他のメンバー達も登場している賑やかな作品となっておりますので、機会がありましたらこちらもご一読ください〜(*´ω`*)
 加えて、G-20先生も新たな3次創作「【RC&レジガール二次創作】ノバシェード残党北欧某国ちはや山荘事件(https://syosetu.org/novel/354513/)」を公開されております。本作のビッグ・ノア事件から4年後の北欧某国が舞台となっており、B.A.V.A.R.F.をはじめとするノバシェード対策室らの奔走が描かれて行くものと思われますので、もしよろしければこちらもご一読くださいませm(_ _)m

 さらにもう一つお知らせです! X2愛好家先生が連載されている3次創作「仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil」のエピソード「特別編 第4話 原初のG/白獣(https://syosetu.org/novel/316771/16.html)」に、アルファチームのトリニティがゲスト参戦しております! 舞台は本作のビッグ・ノア事件から約1年後。アフリカ大陸のナイジェリアに休暇で訪れていた彼女が、異世界からの侵略者・ハンドレッドに遭遇! さらにこのエピソードでは、彼女の「体質」に纏わる知られざる秘密が明らかに……!? 気になる方は、こちらもぜひご一読くださいませ〜!(*≧∀≦*)

 また、トリニティの活躍は同じくX2愛好家先生が執筆された「九十九 光の気ままな実験録(https://syosetu.org/novel/357309/)」でも描かれております。マス・ライダー軽装型を遥かに超える「力」を得た彼女の「真価」が強烈に描写されておりますので、機会がありましたらこちらの作品もぜひご一読くださいませ……m(_ _)m
 同作内のエピソード「開幕:MS(https://syosetu.org/novel/357309/3.html)」では、本来C-6(チャーリー・シックス)になるはずだった元特務捜査官「麗牙(れいが)R(ラモーナ)・レクスドライグ」が登場しております。アルファチームやブラヴォーチームと違ってチャーリーチームが5人しか居ないのは、本来そこの隊員になるはずだった彼女の分が空席になっているためだったのですなー……(ノД`)
 B.A.V.A.R.F.はおろか対策室からも去ってしまった彼女の現在については、こちらの作品で描かれております。幻のC-6こと麗牙の存在が気になる方は、是非こちらの作品もご覧くださいませー!(*^ω^*)


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Ps
 今後の更新予定は未定ですが、少なくとも年内の活動はこれが最後になるかと思われます。皆様、メリークリスマス! そして良いお年を〜!(*'ω'*)
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