『サマーリゾート』繁華街の中に屹立する巨大ヤシの木……その根元にある『カプ・コケコのギルド』。私はそこの救助隊スペースへ飛び込む。
「あ、あの! ダンジョン巨大化って話が……!」
「おや、まさか調査に協力して下さる救助隊の方ですか!?」
慌ただしくしていたギルド職員が私を見て顔を上げた。
「救助隊じゃないけど……一体いつ、そんな事態が!?」
「報告があったのは本日の昼前です。幾つかの救助隊が調査へ向かいましたがまだ新たな情報は得られていません」
ダンジョン巨大化……『スプリングタウン』管轄のダンジョン『つめとぎ山』でも発生した、ダンジョンが拡大する現象だ。それに巻き込まれると中にいた通常のポケモンも凶暴化してしまい、当然救助隊も例外ではない。
「戻ったよー」
「あら、随分と閑散としてるわね…」
その時救助隊スペースへやって来るのはアシマリとチコリータだ。丁度救助を終えてダンジョンから帰って来たらしい。
「……ってルーア! あなた!!」
「わわわっ!」
そしてチコリータは私に気付くなりすぐさま凄まじい剣幕で近寄ってくる。単独かつ無断で『無獣島』へ向かったことに対して怒っているのだ。
「もうっ! あんまり心配させるんじゃないわよ!」
「ご、ごめん……」
「まーまー、無事で良かったじゃん。はい、報告書」
私達を見て笑いながらアシマリがギルドの受付へ書類を提出する。
「お疲れ様です、こちら報酬となります。ですが、現在緊急事態が発生していまして……」
「えっ?」
緊急事態という言葉に目を丸くする二匹。
「……ダンジョン巨大化ですって!?」
ギルド職員から話を聞き、チコリータが大声を上げた。
「はい。ですので救助隊は手が空き次第『蒼海晶洞穴』の調査に加わって欲しい…というのがギルド長からの通達となります」
「もう向かってるチームもいるの?」
「シルバーランク『ロイヤルズ』、カッパーランク『ダンシング』、ノーマルランク『げんきズ』……あとは『スプリングタウン』からゴールドランク『ナイトスター』……他のチームへも調査の依頼を出す予定です」
「なるほど、マホイップ達はもう向かったのね。流石だわ」
「ねえチコリータ。インテレオンは……」
巨大化ダンジョンの調査に向かったポケモンの中にインテレオンがいないことが気になり、尋ねてみる。
「まだ『海底の地割れ』調査中じゃないかしら。少なくとも町には戻ってきていない筈だわ」
「そっか……」
『蒼海晶洞穴』に向かうにしても、彼が隣にいないとかなり不安だ。『海底の地割れ』調査が終わり次第追って来てくれるのを期待するしかないだろうか。
「……チコリータ、我儘言っていいかな。『蒼海晶洞穴』の調査…手伝って欲しいんだ」
「任せなさい、これでもダンジョン巨大化の当事者なんだから」
アシマリからの願いにチコリータは笑顔で頷く。
「わ、私も連れて行って! もしかしたらまた黒い靄が出てきたりするかも…」
「……そうね。何から何まであなたに頼り切りになるのは申し訳ないけど、力を貸して頂戴」
そして私も彼女らに同行することに。インテレオンは一匹で潜入調査を頑張っているのだから、私もやれることをやらなくては。
「皆さん、見えてきましたよ」
ラプラスの言葉を受け視線を向けると、夕日でオレンジ色に染まった海の向こうに島影が見えた。
あの島に巨大化したダンジョン『蒼海晶洞穴』があるようだ。
「ごめんねー、まっすぐ向かって貰って」
「いえ、緊急事態とのことですから仕方ありません。各地の停留所には運航数が減る旨を掲示済みですのでご心配なく」
他の救助隊ポケモンを運ぶために何度も往復したであろうラプラスだが、私とチコリータ、アシマリが乗っていてもあまり疲れている様子はない。やはりこれが彼らの天職なのかもしれない。
しかし、逆に背中に乗っているだけの私の身体から汗が滲み出ている。
「……♡」
ラプラスの甲羅の突起が股間に触れていることで快感が走り、私はピクピク身体を震わせていた。海上であるため突起も揺れ、不規則な軌道を描きながら私の股間周りを刺激してくる。
「ルーア、船酔いでもしちゃったの?」
「べっ、別に平気だよっ♡?」
そんな私を見て心配してくるチコリータに対し、私は慌てて回答。
「注意して下さいね、ダンジョンの範囲が洞穴の外……島の地上部にも広がってしまっているので、上陸してすぐに凶暴化ポケモンが出てくる可能性もあります」
「私とチコリータは平気だから大丈夫! 『レンケイ』でやっちゃうよ!」
「あの『レンケイ』はまだ練習中でしょ…」
「ん……うぅ♡」
ポケモン達が話す中、私は自分から腰を動かして割れ目を突起に擦らせる。
「そうだ! ヒバニーくんが『蒼海晶洞穴』に来たら三匹での『レンケイ』をやろう!」
「ぶっつけ本番にも程があるでしょ!」
「お、んっ♡ あうっあうんっ♡」
必死に声を抑えながら私は腰を動かすリズムを上げていく。膣から愛液が垂れ始めてラプラスの甲羅を濡らし始めた。汚してしまうことに罪悪感を覚えるが、それが更に私の感度を上げていく。
「私がバルーンを飛ばし…ふあー…」
「ああもう、欠伸なんかしちゃって。島に到着したら休憩ね」
「ふひっ♡ うっあっ♡」
小さなポケモン達が可愛らしいやり取りをしている後ろで、変態な私がいやらしく身を捩る。そんなことをしている間に島もかなり近づいて来ていた。
「この辺りは岩礁が多いので方向転換を多用します、ご注意ください」
「はひぃぃっ♡!?」
ラプラスが岩礁を避ける為に右へ左へ向きを変え、慣性で私の股間がさらに弄られてしまう!
「うわっ…よくこんな狭いところ通れるわね!?」
「おっとと、こんな複雑だったっけ、ダンジョンが拡がった影響かなっ?」
私は悲鳴を上げるがチコリータ達も自分の事で必死らしく私に意識を向けてこない。
「波が来ます、大きく揺れますよ」
ラプラスが忠告した直後、彼の身体が大きく揺れる。
そして甲羅の突起が私の性感帯に勢いよくめり込んだ!
「ひゃふぅぅぅ♡♡♡!!!」
私はラプラスに跨ったまま絶頂を迎え、潮を噴いてしまうのだった。
「おっ! アシマリはんにチコリータはん! それにルーアはんも! よう来なはった!」
『蒼海晶洞穴』のある島へ上陸した私達を出迎えるのは『ロイヤルズ』のキングラーだ。
「拠点はこっちや、凶暴化ポケモン達に気付かれんよう静かーにな」
「静かーに……」
ダンジョン化したことにより発生した通路を通り、私達は一つの広間へ到着する。
そこには『カプ・コケコのギルド』で支給される緑色のテントが幾つか建てられており、その中には見覚えのある青白いクリームのようなテントも。
「あら、ルーアとチコリータ!」
「来てくれて嬉しい」
そのテントの持ち主であるマホイップとアノホラグサが私達を笑顔で出迎えてくる。
また、広間の中心では報告書を前にエンペルトとアマージョが話し込んでいた。エンペルトはすぐに私達の存在に気付いたが、即座に報告書の方へ視線を戻してしまう。
「インテレオンさんはまだ『海底の地割れ』かしら? それとヒバニーもまだ回復してないようですわね」
「その通りよ。ヒバニーは明日か…明後日頃には出てこれる筈。いきなり無茶はさせたくないけれどね」
「……ドラミドロは?」
「テントで休んでる。少し働きすぎ」
私達は仲間の現状に関して情報交換を行う。
「せやアシマリはん。『エキサイト』はん達は?」
「うーん……ここの調査するための準備の時に町を駆けまわったけど見かけなかったよ」
「ほんならまだ救助しとるんかな。確かゴールドランク以上しか救助許可されん『巨大珊瑚礁』行く言うてたし……しゃあないか」
アシマリの答えにキングラーが残念そうな顔で呻く。彼らにとっては初のダンジョン巨大化であるため、なるべく戦力を上げたいと思うのは当然だろう。
「それで……『つめとぎ山』の時と同じなの?」
「ですわね、ここに救助に来ていた救助隊も凶暴化してしまっているようですわ。ただダンジョンの巨大化の規模はまだ不詳ですのよ。地上部分はこの小さな島の範囲であることは分かっていますが……」
「洞穴、深くなってる。最深部、不明」
『つめとぎ山』が巨大化した時は周囲の山を取り込んでダンジョン化してしまったが、今回の『蒼海晶洞穴』では地上部分の影響は少ないものの、地下の洞窟がより深くなってしまっているらしい。
「不謹慎かもしれませんが……『つめとぎ山』の時よりは被害は小さいと言えますわ。周辺に住んでいたポケモンが新たに凶暴化することはありませんでしたし、巻き込まれた救助隊と救助対象も一チームと一匹だけですもの」
「不幸中の幸いって奴やわ。ダンジョンも深くなっとる言うても逆に言えば凶暴化ポケモンの密集度が下がる言うことやし」
しかしマホイップ達はあの時ほどの深刻な事態ではないと付け加える。
「……もし、『灰色のニンゲン』の仕業なら。捕獲、絶好のチャンス」
「確かにそうね。そこそこ戦力も揃っているしもしかしたら……」
「……」
ダンジョン巨大化を発生させた容疑者の捕獲に意気込むアノホラグサ達に私は複雑な心境を抱いた。
「『こんらんのえだ』が有効なんだっけ……ふあー」
「眠そう。私達も今日は休む、ルーア達も今日は休んで」
再び欠伸をするアシマリを見てアノホラグサが言ってくる。確かにボートをずっと漕いでいたため疲労が無いと言ったら嘘になる。明日万全の状態で巨大化したダンジョンの奥を目指すためにも休息を取った方が良さそうだ。
翌日。
今日も晴れだがこれから洞穴の中に入る為、暑さの影響は少なく済むだろうか。
「さて、『蒼海晶洞穴』の巨大化調査二日目だ。早速本日の編成を伝える」
『ロイヤルズ』のリーダーであり、ギルド長補佐という立場でもあるエンペルトは整列させた一同をゆっくり見渡す。
そして私は思わず目を合わせないように視線をそらしてしまう。キングラーからは悪いポケモンではないと言われているし、実際その通りだとは理解しているがどうしても苦手意識が勝ってしまう。
「編成って? チームごとに行動じゃねえのか?」
「ダンジョン巨大化による影響で凶暴化ポケモンが強化されている。そのため戦力を集中させて調査を進める方針とした」
『ダンシング』のメンバー、紅のオドリドリに問われるとエンペルトは毅然とした態度で答える。
「まず調査部隊その壱、我々『ロイヤルズ』と『ダンシング』の混合部隊だ。部隊長には私がつく」
「うっ……あいつと一緒かぁ」
「ぱちぱちちゃん、そんないけずなこと言うたらあかんよ~」
小声で山吹色のオドリドリが不平を漏らすが、紫のオドリドリが注意。
「意見は全体の発表後に受ける。では調査部隊その弐、『ナイトスター』にルーアが同行する部隊。部隊長はマホイップに頼もう」
「私達としては文句ありませんわ」
「ほっ……私も大丈夫」
親しい相手達と調査することになり、私は安堵しながら頷く。
「そしてこの拠点防衛部隊が『げんきズ』とアシマリ、チコリータの編成とする。部隊長はカルボウ」
「ええっ!?」
「なにっ!?」
残りのメンバーの発表にチコリータと『げんきズ』のカルボウが声を上げた。
「ちょっと待ってよ! どうして僕達が待機なのさ!?」
同じく『げんきズ』のイワンコがエンペルトに対し抗議する。
「はっきり言おう。お前達では足手まと……」
「あーっ! あーっ! ほんまスマンな、拠点荒らされる心配もあるしどうかキミらの力を見込んでよろしゅうしたいねん!」
それに回答しようとするエンペルトの口を塞ぎながらキングラーが愛想笑いしながら答える。
「私達まで防衛?」
「はい。『つめとぎ山』での話を聞くと大勢の凶暴化ポケモンが拠点に攻めて来る事があったとのこと。念のため防衛部隊の戦力も上げておきたいのですよ」
少々不服そうなアシマリに対してアマージョが申し訳なさそうに回答した。
「『ダンシング』からの意見も聞こう」
「えっ!? あははははっ、問題ないよっ!?」
「文句言ったら防衛部隊に回されそう~」
エンペルトに視線を向けられ、山吹色のオドリドリが笑顔で答える。その後ろでは薄桃のオドリドリが顔を青ざめさせながら頭を抱えていた。
「他に意見が無いのであれば、本日はこの三部隊で行動とする。報告書の作成もぬかりなく行う様に、では解散! 調査部隊その壱はここに残れ」
集会が終了し、私は一緒の部隊となったマホイップ達の元へ向かうことに。
「……ルーア、くれぐれも気を付けてね」
「ありがとね。そっちも無理はしないでよ」
その途中でチコリータに声をかけられ激励し合う。
「ルーア、こっち」
そしてアノホラグサに呼ばれた私は彼女らが使うテント隣へ移動。
「よろしくお願いするわねルーア」
「うん」
ぱっと見は平静そのものなドラミドロに対し、私は少々不安を感じながらも頷く。昨日は働きすぎだと言われていたが、何か思う所があるのだろうか。
「今回の目的はダンジョン巨大化の原因調査と、どれだけダンジョンが深くなったかの確認ですわ。そして必要に応じて柔軟な対処も求められますの。具体的には『つめとぎ山』でのスピアーのように『黒装モンスター』と化したポケモンがいれば解放、そして『灰色のニンゲン』がいれば無力化した上で捕獲……よろしくて?」
「……うん」
『黒装モンスター』解放はともかく、『灰色のニンゲン』捕獲にはあまり気乗りしないがとりあえず頷く。そもそもイヴがここにいる訳がないのであまり心配はいらないが。
「黒い靄が出た時、ルーアに対処任せる……ごめん」
「ううん、気にしないで」
あの靄を浴びるとポケモン達が動けなくなってしまう為、その時はどうしても私一人で奥へ進まなければならなくなるだろう。凶暴化ポケモンも例外ではないので危険は少ない筈だが、黒い繭の中にまたポケモンが眠っていたとしたら…。
「それでは出発いたしましょう。先頭はアノホラグサ、殿は私で……」
「いいえ、昨日と同じであたくしが先頭に……」
「ドラミドロ、今日は無理せず程々にして欲しいのですわ」
「……分かったわ」
意見するドラミドロだったが、マホイップに心配そうな表情をしながら諭されると重々しい口調で答えつつ大人しく引き下がった。
二度目の巨大化ダンジョン調査。
前回と何もかも同じとはいかないだろうが、それでも経験を活かせる場面はある筈だ。
洞穴を彩るのは吸い込まれそうな程に深い蒼。
その宝石に魅入られ欲に呑み込まれようものなら、その深い蒼は深淵と変貌するだろう。
海に囲まれた孤島の地下に広がる地、『蒼海晶洞穴』。
「綺麗……」
「だよね。お宝、お宝」
アノホラグサが採掘した蒼色の宝石を見て私は目を輝かせる。
元の世界では手のひらサイズもある宝石など見た事ない。もしインテレオンがこんな素敵な宝石を差し出しながらプロポーズしてこようものならすぐに襲い掛かって……。
「目的忘れたら駄目ですわよー」
「おっと、そうだった」
少し呆れた顔のマホイップに注意され、私達は慌てて移動を再開。
「それにアノホラグサ。昨日も言いましたけれど『サマーリゾート』では結構流通しているので価値はあまり高くありませんわよ」
「『スプリングタウン』に持って帰る、売りさばく」
「あ、あはは……」
続けて小言を言われてもアノホラグサは儲ける気満々だ。
「……寂しいものね」
そんな中、ドラミドロが壁に露出している蒼色の宝石を見つめて呟く。
「寂しいって?」
「ここがダンジョン化する前はこの宝石はもっと貴重で、小粒だけで何万ポケもの価値があったのよ。だけどダンジョン化したことで大量に採れるようになって価値も暴落……沢山のポケモンが得られるようになったと考えれば好ましい事なのだけどね」
「『預かりボックス』のような生活の利便化だけでなく、こういう所でも私達はダンジョンの影響を受けてしまっているのですわね。良い事なのか悪い事なのか…」
ダンジョンによる悪影響は多大ではある筈なのだが、逆に有益な恵みも確かにありポケモン達もその恵みを享受する事に慣れ始めている…確かにマホイップ達が複雑そうな表情をするのも分かる。
「……宝石の価値が落ちるだけならまだいいわ…ダンジョン化による一番の悪影響は凶暴化よ!」
その時、ドラミドロは突如『かみなり』を放つ!
「ぐああっ!?」
岩陰に隠れていた何者かに落雷し、悲鳴が上がった。
「えっ、な、何!?」
「……ドラミドロ、『春寒沼地』から帰って来た時に言ってませんでした? こちらから先に攻撃したら『リライブ』しても襲撃者とみなされる可能性があると」
困惑する私とは逆に平然とした様子のマホイップがドラミドロに苦言を漏らす。
「いいえ、こいつはあたくし達を襲撃する気満々だったわ」
ドラミドロはそう言い岩陰から気絶したポケモン……カメテテを引き摺り出した。
陰から見られていることに私は全く気が付かなかったのに、彼女らは把握していたらしい。流石はゴールドランクだと感嘆しながら私はカメテテの凶暴化を解除。
「なるほど……俺達は長らく凶暴化していたのか…」
「道理でここにやってくるポケモンが減ってしまった訳だ…」
一つの岩に二匹で乗っかったカメテテはマホイップ達の話を聞いて呻く。
「長らくってダンジョン化自体が起きたのはいつなの?」
「……もうすぐ二年になるわね」
私の疑問に対し、妙に詳しいドラミドロが静かに答えた。
「……む、そういえばそこのお前……前にも戦わなかったか?」
そんな彼女に対し、カメテテが昔のことを思い返すように尋ねる。
「……いいえ、覚えていないわね」
「そうか、気のせいだったらしい。しかし奥を目指すなら気を付けろ、お前たちの言うダンジョン巨大化なる現象の影響でこの洞穴が深くなってしまっているからな」
しかしドラミドロは首を振り、カメテテもそれ以上追及することはなく忠告をくれた。
(ドラミドロ……もしかして何か隠してるのかな?)
ダンジョン『蒼海晶洞穴』を下に下に進む私達。
「地下七階ですわ。私達は昨日ここまで辿り着いて、まだ先が長い可能性も鑑み一旦撤退しましたの」
「昨日と全然構造が違う。流石はダンジョン」
あちこちに海水溜まりのある洞穴を見渡しながらマホイップ達が言う。
「黒い靄は漂ってないね、原因はもっと下なのかな」
「そもそも原因が『つめとぎ山』と同じだという保証もないけれど……とにかく更に下へ行く必要がありそうね」
私達の話し声以外は水の音しか聞こえない静かなダンジョン。しかしここの奥底にダンジョン巨大化の原因がある筈。黒い繭か否かはともかく油断せずに進むべきだろう。
「アマージョ達も大丈夫かな」
「あまり心配はいらないと思いますわ。七匹態勢なら並みの凶暴化ポケモンには後れを取らないでしょう。それに今回ダンジョン巨大化に巻き込まれた救助隊もカッパーランクだと……」
私の心配に対して答えるマホイップだがその途中で言葉と足の両方を止める。
「どうしたの?」
「しっ……あそこにバリヤードとウソッキー……ダンジョン化に巻き込まれた救助隊『ダマシチャウ』がいますわ」
マホイップの言う通り、岩柱に隠れて窺うと確かにピエロのような姿のバリヤードと木のような姿のウソッキーがノリノリで芸を見せている。
「昨日の敵は今日の味方~♪」
「そうさ、僕達はキミ達と一緒に盗掘者を懲らしめる事にしたのさ~♪」
「いいぞーっ!」
「楽しい仲間が出来たな!」
二匹の周りにはカメテテやナマコブシ、カムカメといったこの洞穴に住む凶暴化ポケモン達が沢山いる。
「……『モンスターハウス』」
アノホラグサが呟くのは『つめとぎ山』を調査している際にも聞いた単語だ。大量の凶暴化ポケモンが集結するエリアであり非常に危険度が高いと。
そんな所に凶暴化した救助隊が居座っている……ここに突入するのはかなり危険ではないだろうか?
「これを使う時ですわね」
そう言ってマホイップはポーチから道具……ふしぎだまを取り出す。
「……あっ!言った傍から現れたぞ!」
「盗掘者たちだ!」
臆せずモンスターハウスに入り込んだマホイップを見て凶暴化ポケモン達が一斉に彼女へ敵意を向け始めた。
「『しばりだま』!」
しかしマホイップがふしぎだまをかざすと、その凶暴化ポケモン達が全て動きを止める。
「ぐわあっ!」
「う、動けないっ!」
『しばりだま』……周辺の敵対するポケモンを全て硬直させ移動も技の使用も出来なくさせる強力な道具だ。やはり場慣れしているためか道具の扱いも的確だ。
「さて、皆さんは凶暴化してしまっていますわ。今から順番に元に戻させて頂きます」
「何の話だっ!」
「私達を解放しなさい!」
マホイップの後に続いて私達も凶暴化ポケモン達の前に出る。
「『タネマシンガン』!」
「『ヘドロばくだん』!」
「ぎょえっ!」
そしてアノホラグサ達が動けない相手を一匹ずつ撃破し始めた。
「……」
まるで処刑しているかのように見えて私は冷や汗を垂らすが、凶暴化を解くためだと自分に言い聞かせながら『リライブ』でポケモン達を次々解放していく。
カチリ。
「へっ?」
足元から無機質な音が聞こえ、私は恐る恐る足元を見る。
私に反応して現れたのは紋様が描かれた黒色のタイル。
「……『ばくはのワナ』!」
マホイップが表情を凍らせて叫ぶと同時に、タイルから閃光が迸った。
そして私だけでなく『ナイトスター』や凶暴化ポケモン達をも巻き込み爆発が起きるのだった。
……私の不注意が原因で。