『黄護島』を進んでいたら『ロイヤルズ』と遭遇した私達。キングラーの提案で、折角だからと共に行動することになり三匹と一人で森の中を進んでいた。
「ルーアはん、無理せんでええねんで? 昨日もミミズズはんを町へ連れ帰ってくれたやん」
「ええと……灰色のニンゲンを探すついで……じゃない! あの、その……」
「……」
その最中、キングラーに心配され私は答えるがエンペルトに視線を向けられ慌てて訂正の言葉を考える。凶暴化ポケモンの救出を"ついで"などと言ったせいで怒られるかもしれない……。
「奴が黒装の欠片を持って行ったことに責任を感じているのか?」
「……」
「お前の責務ではない。あれは奴を引きつけられなかった私の失態だ」
先頭を歩くエンペルトはそう言うと前方の警戒に戻ってしまう。
「……伝聞だけど『黒装モンスター』になってたチルタリスから剥がれ落ちた表皮を灰色のニンゲンが持って行ってしまったんだよね」
「せや、あの黒装はワテらの動きを封じる靄を放つさかい下手に近付くと返り討ちやろな」
「キミ達も彼女の足取りを?」
「アマージョを助けんとあかんしな……けどもホンマはもうちょい作戦練った方がええと思うねん。例え見つけたとしても靄にやられてエンペルトまで取り込まれようもんなら……」
インテレオンとキングラーの会話を聞いていた私はゆっくり振り向く。
「……エンペルト、必死なのかな」
「……まあな」
小声で尋ねるとキングラーは一つ溜息をついて視線を落とした。
「表情では解り辛いけどもあいつは焦り易い性分なんや。仲間が危機に見舞われるような事態なら尚更な……」
思い返してみると確かに『蒼海晶洞穴』にてエンペルトはキングラー達を助けるために、黒い繭が発生させる靄の中を無理に進もうとしていた。
「力を持つなら苦しむ者を救わなければならないとも言ってたな。何かあったのかな?」
「あいつ自身は何も言わへ……待てよ、何か気になる事言うてたな」
顎に手を当て思案するインテレオンに返事しようとしたキングラーは何かに思い当たった様子を見せる。
「……思い出したわ、ワテとアマージョをスカウトしに来た時や。『あの時己の力を使っていれば……と後悔する前に行動へ移さないか』ってな」
後悔する前に行動を……。
「……」
その時前を歩いていたエンペルトが足を止めた。まさか話の内容を聞かれてしまったのだろうかと思ったが彼女は振り返ってこない。
その代わりに前方の広間には神を祀る祭壇のようなものが鎮座していた。
「見覚えがあるな……」
「ああ。『カプ・コケコのギルド』のギルド長室にある祭壇……それのオリジナルがこれだ」
インテレオンの呟きにエンペルトが振り返らないまま答える。
つまりこの祭壇は、『黄護島』に住んでいた頃のカプ・コケコの住処だったようだ。しかし所々ツタが伸びており暫く手入れがされていないのが見て取れる。
「この島のポケモンはカプ・コケコと仲が良かったみたいだけど……凶暴化したせいで掃除もしなくなってしまったのかな」
祭壇に近付き木の葉を手に取るインテレオン。
「あっ! その話題はシーッ、や!」
「え?」
慌てた様子でキングラーが言うが時既に遅し。
「別に隠すような話題でもないだろう。長を島から連れ出し……この島へ帰れなくしたのは私だ」
エンペルトは淡々と言い、翼のエッジでツタを斬った。
「帰れなく……どうして連れ出したのさ」
それに対しインテレオンが真面目な表情で問いかける。
「『サマーリゾート』でも救助隊のギルドを立ち上げるために伝説ポケモンとしての力、そして求心力が欲しかった。あの町にはポケモンコンテストという通常のポケモンでも目立てる舞台がある故に、救助隊の存在をそれ並み……いや、それ以上に強くアピールするには長の力を借りるしかなかったのだ」
確かにいくら救助隊ギルドを用意したとしても、救助隊として活動しようと思うポケモンが来なければいつまで経ってもポケモンを救助することなど不可能だろう。
「長……カプ・コケコは自由気ままな性格故に、何度も追い返されたが……私は何度もこの島に足を運んだ」
「キレイハナ達と仲良くしている姿を見ても諦めようとは思わなかったのかい?」
「諦める訳にはいかなかったのだ。一匹善がりな罪悪感に折れて諦めたら、また救えるはずのポケモンを救えずに後悔するだろうから」
エンペルトは質問に答えるがその表情は暗い。
「……しかし一匹善がりだったのは長をギルド長に据えようとしたこと自体だったのかもしれないな。この島はダンジョンと化し長は帰る場所を失った……そのままにしておけば凶暴化した者同士となり、排他されずに済んだだろうに」
「そ、その話はええやろエンペルト。結果論やけどもギルド長……伝説のポケモンが凶暴化せずに済んだんは不幸中の幸いやん! ランクルスはんのリライブ研究が進めばまたギルド長もこの島に戻れるようになるて!」
溜息をつくエンペルトに対しキングラーが慌ててフォローを入れる。私としてもキングラーと同じ意見だ。
「気に食わないな」
「……へっ?」
私は目を丸くしてインテレオンの方を向いた。エンペルトもまたゆっくりと彼へ視線を向ける。
「キミ、リライブが使えるからと言ってルーアを無理矢理ダンジョンへ向かわせようとしただろう。 カプ・コケコの件から何も変わってないって事じゃないかな?」
「いっ、インテレオン……ちょっと……」
私は慌てて彼の下へ寄り、宥めようとする。
「確かに自分の力が足りないから周りの協力を仰ぐことは正しい事だと考えるけれど……それで相手の幸せを奪ってしまったら本末転倒ではないかい?」
もしかしてインテレオンは私に凶暴化ポケモンの解放を強制しようとしたエンペルトの事を許していなかったのだろうか。更にカプ・コケコを連れ出し故郷へ帰れなくした一因でもある彼女に対し、同じく元の世界に帰れなくなった者として怒りが抑えられないのだろうか?
「……」
「……そ、そないな話はやめようや! 喧嘩はあかんあかん!」
沈黙するエンペルトを庇う様にキングラーが声高に叫ぶ。
「すまないキングラー。しかし下がってくれないか」
しかし彼女は仲間に伝えるとインテレオンの前に出た。
「貴殿の言う通りだ。これは私の悪癖とでも言えよう」
「……悪癖、なるほどね。そうしてしまう心当たりはあるのかい?」
「言い訳になるぞ」
「聞かせてくれないか?」
正直に言うエンペルトに対してインテレオンは問いかける。
「『あの時、力のある自分が動いていれば』……そういう後悔を味わって欲しくない。 私と同じ失敗をさせたくない……どうしてもその一匹善がりな思いが抜けず、例え嫌がっている相手でも力を発揮するように強要してしまう。今は辛くても努力すれば後悔せずに済むのだぞ、と」
「同じ失敗って……」
過去を思い返すように語るエンペルトの表情には陰りがあった。
「ああ、私にはそういう経験がある。 だからこそ力があるのに積極的な行動をしない者を見ると心配……ではないな。 そう、私自身が落ち着かないのだ」
島に引きこもったまま『歪みの穴』現象を見て見ぬ振りし続けていたら、もはやギルドの設立すら不可能な段階になった時に大いに後悔するのではないか。
あまりにも大きな負担には耐えられないという気持ちを理由に動かないでいたことで、更に事態が悪化すれば余計に心が苦しくなるのではないのか。
確かに実際の伝え方はデリカシーに欠けていたが、エンペルトはカプ・コケコや私が将来後悔しないのか気になっていたのか。
「キングラー、お前達もそうだ。かなりの力を持ちながら繁華街で遊んでばかりいたお前達を見て救助隊に誘ったのだ」
エンペルトはそう言い再びツタを切り裂く。
「だが、その結果がこれだ。キングラーの親友であるアマージョが灰色のニンゲンに……!」
「私の一匹善がりのせいでー、か? ええ加減にせえよ」
その時、キングラーの鋏がエンペルトの胸元にコツンとぶつけられた。
「お前と『ロイヤルズ』組んだんはワテらの選択やぞ? ワテらはお前の道具ちゃう、仲間や」
「……選択か。ならば私を途中で見限る選択もあったのではないか」
「勿論思う所はぎょうさんあるで? 言葉選びもヘッタクソやし、効率を重視してワテらにまで嘘ついたり、いくら暑くて茹で上がりそうでも『甘えるな』の一言で切って捨てるし……」
(結構ズケズケ言う……)
「そんな嫌な所だけならワテもアマージョもとっくに辞めとるわ。 せやけどお前は苦しむポケモン達を救うことに必死で不器用な奴や。 そんなお前の気概が気に入ってワテらは支える事にしたんやぞ」
キングラーはエンペルトをまっすぐ見つめて言い放つ。
「灰色のニンゲンに捕まったんもワテとアマージョのミスや。この島がダンジョンになってギルド長が帰れんなったんも不測の事態や。何よりお前が汗水垂らして『サマーリゾート』で救助隊が活動できる礎を作ったことによる成果を忘れんな! これ以上しけたツラ見せるならブチ切れるで!?」
普段温厚で揉め事を抑える立場にあったキングラーが鋏をシャキシャキ鳴らして叫んだ!
「……っ」
その剣幕に私が慄いていると、ゆっくりと彼が振り返ってくる。
「インテレオンはん、こいつは失敗もするけど『サマーリゾート』の平和を願って沢山の苦しむポケモンを救った奴や。そしてワテはエンペルトの仲間やからこれ以上こいつを責めるなら悪いけどワテも怒るで」
以前エンペルトから責められ苦しんだ私を守ったインテレオンの如く、今度はキングラーがエンペルトを守る為にまっすぐ視線を向けて来た。
「……いや、悪かったよ。ルーアを手酷く責めた件で僕も少し苛立っていた」
幸い一触即発とはならず、インテレオンが謝罪を述べるとキングラーも鋏を下ろす。
「……えっと、インテレオン。その件については……私もうエンペルトから謝られてて」
「……」
私がおずおずと述べると彼は数秒沈黙した後に目を黒い瞬膜で隠した。
「それは……尚更申し訳ないな……」
「構わない。不快になったのはルーアだけではなく貴殿もだろう」
恥をかいて溜息をつくインテレオンにエンペルトが言う。
「……だけどキミが何もかも身勝手であんな事をした訳じゃないと知れて良かったよ。正直、もう少し物の言い方は考えて欲しいけどね」
「せやねん! なんべん言うても直してくれへんねん!」
「……善処する」
緊迫した雰囲気がようやく落ち着いた……そう思った時。
茂みから一つの影が突然飛び出してきた。
「っ!?」
咄嗟に対処して距離を取ろうとしたインテレオン。
しかし彼の膝が地面に落ち、呼吸が荒くなる。
「……っ、貴様は……!!」
同様に動けなくなったエンペルトは飛び出してきた相手を睨みつけた。
灰色の肌。紫の瞳。両腕から伸びる黒一色のポケモン達。
「灰色のニンゲン……!」
なんと、『蒼海晶洞穴』で出会った少女が私達の前に現れていたのだ。
黒いアシマリの背に黒装の欠片が乗せられており、黒と紫の靄を放っている。
「あんた、まだ化け物達とつるんでたのか」
「……っ!!」
私は咄嗟にランドセルを揺すり『すいみんのえだ』を取り出す。
「遅いんだよ!」
「あっ!」
しかし少女に操られた黒いアマージョの蹴りを受け、枝が吹っ飛ばされてしまった。
だけどめげている訳にはいかない。周囲に漂い始めた靄のせいでインテレオン達が動けなくなっているからには私が目の前の灰色のニンゲンを止めなくては……!
しかし相手はアシマリを操って『みずでっぽう』……水のバルーンを生成して来た。普段アシマリが出すバルーンより一回り大きいそれは独特な軌道を描いて近づいてくる。
(道具を使ってもすぐに弾かれる……こうなったら……!)
私はある目的のために場所を移動。
「喰らえ!」
そんな時にアマージョの『トロピカルキック』で蹴飛ばされた水のバルーンが猛スピードで迫って来た!
「……ごめん!」
私は謝罪の言葉を述べてその攻撃を浴びる。
弾ける水に吹き飛ばされる私……そして。
「うわっ!」
私が移動した先にいたインテレオンも吹き飛ばされて地面を転がった。
彼を巻き込んでしまった……が。
「ありがとうルーア!」
靄の範囲から脱出した彼は素早く『れいとうビーム』を発射!
動けないインテレオンを救うためにわざと彼をバルーンの破裂に巻き込ませたのだ。
「!」
しかし灰色のニンゲンもすぐさまアシマリを盾にして攻撃を防ぐ。
「……ねえ、何が目的なの!?どうしてこの島に!?」
起き上がろうと身を捩りながら私が問うと少女は鼻を鳴らした。
「言っただろ、化け物達を倒すって。あたしの見立てならこの祭壇には何かを祀ってそうでな……神だか悪魔だか判らねえが、ここに現れる強い化け物を取り込めれば更に力を得られんじゃねえかって思うんだ」
彼女は見下すような視線を私に向けつつ、いまだに動けない『ロイヤルズ』の下へ歩き始める。エンペルトかキングラーを取り込むつもりか……!
「化け物じゃなくてポケモン! あなたを襲ったのだって凶暴化したせいだってば! ちゃんと話せば敵対しなくても済む筈だよ!」
「……ルーア?」
少女に対し叫ぶ私を見てインテレオンが何かに気付いたような表情になる。
「なんでいきなり襲って来るような連中に下手に出なきゃならねえんだ!」
「くっ……」
灰色のニンゲンは聞き入れるどころか余計に怒りエンペルトを踏みつけた。
「やめろ! 『ねらいうち』!」
「痛っ!?」
インテレオンの放った高圧縮の水弾が少女の額に命中。多少仰け反らせるがダメージは通っていない……私と同じで身体が丈夫なのだ。
「ば、化け物風情が舐めやがって!」
「んがっ!」
少女は激昂した様子でアマージョを操ってキングラーを『トロピカルキック』で蹴飛ばす!
「なんてことをするんだ!!」
「一番最初に危害を加えて来たのはあんたらだろうが! 抵抗されてからいきなり被害者ぶるんじゃねえ!!」
インテレオンと灰色のニンゲンが怒りのままに睨み合った。
「……そうか」
靄に晒されたまま、エンペルトが呟く。
「私達ポケモンを嫌うのは……それが理由か……」
「はっ、今更謝ろうってか?」
倒れたエンペルトを灰色のニンゲンが鼻で笑った。
「謝れば仲間を解放するのか……?」
「そんな虫が良い話ある訳ねえだろ。でもそうだな……こっちの小さい奴は弱いからアンタと取り換えてもいいかもな」
少女は嘲笑いながら黒いアシマリを揺らす。
「……分かった」
「えっ!?」
エンペルトの言葉に私は目を見開いた。
まさかアシマリの代わりに自分が犠牲になるとでもいうのだろうか。
(そんなことやっても皆が悲しむ……!)
「『アクアブレイク』!!」
「っっ!!??」
エンペルトが突然立ち上がり、完全に油断していた灰色のニンゲンの腹部をエッジのついた翼で勢いよく打ち付けた!
靄の中でも動けるのか……と思ったがエンペルトはすぐに倒れてしまう。『蒼海晶洞穴』の時と同じように靄による苦痛を無理矢理に乗り越えて技を放ったのだ。
「お前の言い分は分かった……だが、ポケモンを道具のように使う狼藉を……許す訳にはいかない……!」
「が、あっ……おえっ……! げほっげほっ……!! いたい、いたいぃ……!」
そんなエンペルトの一撃は灰色のニンゲンには効果覿面だった。
彼女は涙を流して蹲っている。私と同じでいくら傷を受けないと言っても、痛みは全く軽減できず腹部を全力で殴られた激痛に耐えられないのだ!
「はっ!!」
そしてインテレオンが拾い上げた枝を振る。それは私が最初に蹴飛ばされた『すいみんのえだ』。
「うっ……あ、あ……っ」
背中から光弾を受けた少女は眠気に耐える間もなく、次第に瞼が落ちていく。
「……ごめんね」
そして私は。
黒いアシマリの背に乗っていた黒装の欠片に触れ、霧散させた。
「もうすぐ『無獣島』の領域に入るよ」
後ろから聞こえるインテレオンの声。
ボートの運転席から振り返ると、ここまで泳いできたインテレオンとエンペルトの姿が海上に見えた。
そして彼らの前には動かない黒のアシマリとアマージョが海面を漂っている。二匹の背中に伸びる黒い触手のような腕はボートの後部座席で眠っている灰色のニンゲンのものだ。
「……えいっ!」
私は意を決し、足を思い切り踏み込んでボートを漕ぎ『無獣島』へ更に接近。
その瞬間、後ろから紫色の光が放たれる!
「……よしっ!」
「アマージョ!」
インテレオンとエンペルトがポケモン達を抱き留める。振り返って見てみると元の姿に戻ったアシマリとアマージョは彼らに支えられ静かに眠っていた。
ポケモンが入る事が出来ない『無獣島』。灰色のニンゲンに囚われたままのアシマリ達を解放するためこの島が持つ、ポケモンを拒む力を利用したのだ。
「良かった、上手くいった!」
「……感謝するルーア。お前の提案のお陰で仲間を救うことが出来た」
笑顔になるインテレオンと無表情のままのエンペルト。しかしエンペルトも声音からとても喜んでいるのが分かり、私も嬉しい気持ちになる。
「それじゃ、二匹の事お願いね」
「任せろ」
「……」
私はそう言い再びボートを進めようとするが今度はインテレオンの顔から笑みが消えた。
「……本当に大丈夫なのかい?」
黒装の欠片を消した後、私は灰色のニンゲンの事についてインテレオン達に話した。
彼女らは自分の生まれた理由すら知らず、ダンジョン巨大化を意図して起こしたわけではないこと。
この世界にやって来てすぐ凶暴化ポケモンに襲われ、ポケモンに対して恐怖を抱いていること。
イヴ……『つめとぎ山』に現れた方は今『追放の遺跡』で大人しくしていること。
「インテレオン達ポケモンが傍にいたらまた取り込まれちゃうから。イヴと協力して落ち着かせてみるよ」
『サマーリゾート』といったポケモンの町で拘束していても、欲しい情報は得られない上に余計に少女が怒りを募らせるだけだろう。一旦ポケモン達から離して頭を冷やして貰うしかない。
「……」
それは分かっていても、やはりインテレオンからしたら私の事が心配なのだろう。
だから。
「やらせてよインテレオン、これが私にやれる事なんだからさ。大丈夫、絶対に戻るから」
彼を安心させるため笑顔を向けた。
「……」
それを聞いたインテレオンは暫く黙る。
「……戻るって事、約束してくれるかい」
まだ心配は抜けていない表情だが、そう言ってくれた。
「うん!」
「……よいしょっと」
『無獣島』の砂浜に到着した私はボートから降り、後部座席にいる灰色のニンゲンの様子を窺う。
「……すぅ、すぅ…」
起きていた時の激しい敵意が嘘のように安らかな寝顔だ。
(手錠つけた私じゃ降ろせないから…イヴに力を貸して貰おっと)
そう考えて『追放の遺跡』と繋がるゲートのもとへ移動しようとしたその時。
「ルーアっ!」
「うぶっ!?」
横から駆け寄って来たイヴに勢いよく抱き着かれ、私は彼女諸共砂浜へ転倒してしまう。
「なっ、イヴ……どうしてここに」
「資材集めてたらボートが近付いてくるのが見えた」
目を白黒させる私に対してイヴは嬉しそうな表情で答えた。
いきなり地面に叩きつけられた事に言いたいことはあるが、イヴの方から来てくれたのはありがたい。
「ねえイヴ、ちょっと手伝って欲しい事があるんだ」
「何?」
私は乗ってきたボートの後部座席に視線を向ける。
「……この子は……私と同じ?」
もう一人の灰色のニンゲンの存在に気付いたイヴが目を見開いた。
「お願いって言うのは……この子を『追放の遺跡』や『無獣島』の外に出さないようにして欲しいんだ。ポケモン達を敵とみなしてて積極的に攻撃仕掛けようとしちゃうの……ポケモン達にこれ以上刺激を与えないためにもこの子を押し留めたいんだ」
「ふうん……」
私の話を聞くとイヴは寝息を立てる灰色のニンゲンをまじまじと観察。
いつまでもボートに乗せたままではどうしようもないため、イヴに少女を降ろして貰う……が。
「ん……んんっ」
「あっ」
そこで少女が目を覚ましてしまう……まずい!
「なっ、アンタは……ってここどこだ!?」
灰色肌の少女は私を視認するや否や意識をハッキリさせると慌てた様子で周囲を見渡す。
「誰だあたしを引っ張ってる奴は!」
「むっ!」
そして彼女は暴れ出しイヴの手を払い除け……。
「……っ?」
「……」
灰色のニンゲン同士、目が合った。
「あんたは、もしかしてあたしの仲間か?」
「……どうだろう」
紫の瞳を揺らして問う少女と、静かに答えるイヴ。
「いや、間違いない、あたしとそっくりだし! だから力を貸してくれ、こいつはあたし達を襲う化け物達の仲間なんだ!」
「えっ!? ちょ、ちょっと待ってイヴ!」
そしてあろうことか少女は一緒に私を倒そうとイヴに提案した。血の気が引くような感覚に襲われる私は咄嗟にイヴに弁明しようとする。
「知ってる」
「……あ、まさか眠ってたあたしを助けてくれたのか!? それなら話は早い、とっととこいつを……」
イヴが頷くのに対し、少女は笑みを浮かべて私へと腕を向けて来た!
「……ん?」
すぐに怪訝な表情になる少女。
「なんでだ? おい!」
必死に少女は自らの両腕に呼びかけるが、灰色の細腕は触手のように動くこともポケモンの姿を形どる事もしない……既にアマージョ達を解放したのだから当然だ。
「よいしょ」
「うわっ!」
そんな少女の隙をついてイヴが羽交い絞めにする!
「ルーアは私の仲間。ルーアを襲うなら怒るよ」
「……こ、このっ! あんたまであたしの敵なのかよ!?」
少女は暴れながら叫ぶ。
私と会った時と同様に、仲間だと期待していた相手に裏切られた故かその表情はとても苦しそうだ。
「ちくしょう!」
「むぐっ!」
少女は無我夢中で滅茶苦茶に暴れ、イヴの腕を再び振りほどいた!
「もういい! 一人で化け物退治をやってやる!」
「駄目ーっ!」
「ぐふっ!?」
島の外へ走り出そうとする少女に私は体当たりをかまし、二人揃って倒れる。
「この薄橙の馬鹿、邪魔すんな!」
「ルーアだよ! お願いだからポケモン達を襲うのやめて!」
私は少女が逃げてしまわないよう、圧し掛かったまま説得した。
「……ルーア、ちょっと頑張ってて」
「え、どこへ!?」
しかしこちらが大変な状況だというのに、イヴはそう言い残してどこかへ走り去ってしまう……!
「このぉ……」
「う、ぐぅ……」
少女は手でこちらを押し退けようとしてくるが、私自身は手錠のせいで腕が使えない。このままではいずれ抜け出されてしまうだろう。
(手は使えないけど……道具なら!)
暴れる少女を止める為、私はランドセルを揺すると一つの道具を取り出した!
「ううっ♡!?」
突如として少女がビクリと身体を跳ねらせる。
「なっ、何をぉ……っ♡!」
息を荒くして身を震わせる少女の抵抗する力はどんどん弱まっていた。
それもその筈……彼女の股間にローターを当てているのでまともに集中など出来ない筈だ。
「くひぃ……♡ 身体がおかしいぃ……!」
少女は依然として私を睨みつけるが、その目には涙が浮かんでおり発情し始めているのが分かった。
「……」
どうにか動きを止めることは出来た……しかし、別の問題が新たに浮上している。
「……ん♡」
私は少女に圧し掛かったまま腰を揺らした。
そう、目の前で発情顔を見せられたことで私までエッチな気分になって来てしまったのだ。否が応でも自らの股間に意識が集中してしまい、バイブの振動による刺激が鮮烈に伝わってくる!
「あ、ああっ……♡!」
私は気持ちいい気分になりローターを自分の股間に移動させたくなるが必死に我慢。目の前の少女を止めるにはローターを彼女に当て続けるしかないのだ。
「うああっ! ブルブルするのがどんどん押し付けられるぅぅ……♡!」
「はぁぁ♡ あぁぁ♡」
イヤイヤと首を横に振る少女のすぐ上で私は喘ぎ声を上げる。
(欲しい! もっと刺激欲しい! 私もローター当てたい!!)
自らの溢れる性欲に抵抗出来なかった私は腰を下ろして少女と下腹部を密着させた。そして勃起したクリトリスをローターへ当てる!
「んああああっ♡♡!!」
少女だけではなく自分自身にもローターの刺激を与え私は嬌声を上げた。あまりの気持ちよさに全身がビクビク跳ね大量の汗が流れてしまう。
「も、もうやめてくれぇ……♡ お、おかしくなるぅ……♡」
涎を垂らして懇願してくる灰色のニンゲン……しかし私はまだまだ刺激が欲しいのだ。
私はローターに念じ、振動を更に強くさせる!
「んぎゅっ♡!!」
「うああっ♡!」
強まった快楽に私と少女は同時に歓喜の悲鳴を上げた。
「お、おおっ……♡」
そしてヒクヒクと身体を弱々しく痙攣させ始める少女……どうやらイッてしまったようだ。
「……え、えへへぇ♡」
だけど……私はもっと欲しい。絶頂に辿り着くまでもっと沢山快感が欲しい!
「ひああっ♡!」
私はローターを股間に更に押し付け刺激をたっぷり味わう!
「うあっ……も、もうやめっ……!」
私と股間を密着させているせいで巻き込む形で刺激を与えられる少女が泣いて懇願してきた。絶頂したばかりの状態で更に快楽に襲われ苦しいのだろうか。
「き、気持ちいいよぉ♡」
それでも私はやめられない。炎天下の中でオナニーをするなんて暑くて汗が止まらなくて苦しいけど子宮がキュンキュンして逆らえないのだ。
(手錠と首輪、熱い……。ランドセルも靴下も汗でじっとりして気持ち悪い……。だけど……ローター気持ちいいいっ!!)
暑すぎて意識が遠のきそうになるが、鮮烈な快楽ですぐに引き戻される。
「ゆ、許して……もう……っ♡」
抵抗する気力がとっくに失せたらしく、力無く少女が頼み込んで来た。
「私も……い、イクね♡」
でも、今はいい所。もうすぐ絶頂なのに、止めるなんて出来ない……!
私は快楽に狂いながら力強くローターを密着した二つの股間に押し込んだ!!
「イクぅぅぅぅ♡♡♡!!!」
「うああああっっ♡♡!!」
二つの膣から愛液が噴き出しローターが濡れていく。
「あ、ああ……♡」
そして力を失った私は気絶した少女の上にぐったりと覆い被さるのであった。
「これをこうして……」
帰って来たイヴが器用に手を動かす。
依然として気を失ったまま倒れている灰色肌の少女の身体を這うのは赤色をした糸。
イヴが『追放の遺跡』から持ってきた『あかいいと』は少女の腕を後ろ手に縛り上げてガッチリと拘束する。
「うーんと……」
それだけでなくイヴは更に糸を伸ばして少女の股間を通らせると、そのまま股縄風に緊縛した。赤色の糸が少女の割れ目にしっかりと食い込んでおりとてもいやらしい。
「おーい、おはよう」
「んっ……?」
イヴは少女の頬をペチペチと軽く叩き目を覚まさせる。
「……なっ、うえっ♡!?」
そして少女は即座に自分が拘束されていることに気付いて暴れようとするがそれにより股間に食い込んだ『あかいいと』がより締め付けを強くした。
「イヴ……いつの間にそんな技術を……?」
「……その、色々と」
私は恐る恐る尋ねるがイヴは目を逸らしてまともに答えない。
しかし彼女自身もモジモジしているのを見ると、もしや『追放の遺跡』の罠で出て来た機械から何度も拘束され性感帯を責めるプレイを受けたことで意図せず学んだのだろうか。
「ほ、解いてくれ……! お願いだからぁ……♡!」
「でもこれで何も出来ない筈。きっと反省すると思う」
イヴが見下ろす先では立つことすら出来ずに少女が身を捩っている。
「どうしてあたしが反省しなきゃ!! だって化け物達がぁ♡!」
「あいつらはともかく。ルーアは仲間だよ」
「ふぎゅっ♡♡」
必死に叫ぶ少女だが、イヴに糸を引っ張られたことで股間が締め付けられ悲鳴を上げた。
「……」
そんな光景を見ていた私は心臓の鼓動が高鳴るのを感じる。
(わ、私もあんな風に虐められたい、かも……)
「どうしたのルーア」
再び発情しそうになる私を見てイヴが首を傾げた。
「…その糸、少し分けて貰えないかな……?」
「いいよ」
私の願いを快諾してくれたイヴが数メートル分の『あかいいと』をくれる。視界に入れているだけでドキドキが止まらないが、これは『サマーリゾート』に戻ってからのお楽しみだ。
大事にランドセルの中に『あかいいと』をしまい、私はイヴ達に視線を戻す。
「こっちだよ」
イヴは『あかいいと』を少女に巻き付けるとリードの如く引っ張り出した。
「もうやめろよぉ……♡! なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだよぉ♡!」
操っていたポケモン達を失った上に拘束もされた少女はイヴに一切抵抗出来ず、ただ腰を揺らして歩くしか出来ない様子だ。
「強い化け物を捕まえればこの世界で安心して暮らせると思ったのにぃぃっ♡ 作戦が台無しになったぁぁっ♡」
彼女には悪いがポケモン達に危害を与えるのは見過ごす事は出来ないのだ。どうか近しい存在であるイヴと一緒に暮らしてポケモン達に対する敵意を落ち着かせてくれることを願いたい。
「……」
それにしてもイヴといい、もう一人の少女といい……灰色のニンゲンとは一体どういう存在なのだろうか。ポケモン達を操る能力や漆黒の闇の中から現れた事など今でも彼女らについては分からないことだらけである。
(分かる事は……イヴ達の心根は悪者じゃないって事。凶暴化ポケモンに襲われたことでポケモンを怖がってたり、敵だと思っちゃったりしてるだけなんだから)
だから……いつか彼女らがポケモン達と仲良く出来る日が来る事を信じたい。
「それでイヴ、その子任せても大丈夫?」
「うん。いい暇潰しになりそう」
「……あ、ありがとね」
少し言い方に恐怖を感じるものの彼女の管理を引き受けてくれることには本当に助かる。
「それで、この子名前あるの?」
「多分無いんじゃないかな……」
「う、うるさいっ♡!」
その時イヴに尋ねられ、私は今も喘いでいる少女を見下ろす。やはり何かしら考えた方がいいだろうかとも思うが、それを本人が受け入れてくれるかどうかも分からない。
「うーん、ここが硬くなってるから『カッチ』」
「ふざけんなぁ♡ ……そんな名前却下ぁ……!」
少女のクリトリスを摘みながらイヴが提案するが、当然の如く相手は首を振った。
「じゃあ……ぶるぶる身体が震えてるから『ブルブル』」
「いい加減にしろぉ……!」
「げふっ!?」
再びイヴが案を挙げるが少女は彼女の顎に頭突きを食らわせる。しかし縛られた状態でそんなことをしたせいで少女自身も再び砂の上に倒れ込んでしまった。
「ルーア、私の時みたいに考えて……」
「ええっ!?」
イヴが涙目になりながら要求してくるが、当の少女は私を敵視しているのだ。快諾するとはとても思えない。
「後で私が考えた体で伝えるから」
「……うーん…」
それなら、と私は暫し思案する。
イヴは紫色の瞳を夕の空に例えて名付けており、現在砂の上で喘いでいる少女も同じく紫色の目をしている。
「……トワイライトで『トワ』とか……?」
耳打ちして提案するとイヴは賛成といわんばかりに頷いた。
「分かった、それにしよう」
そしてイヴはトワを再び立たせると島の奥……ゲートがある方向へ向けて引っ張り出す。
「んうっ、どこ連れてくんだよ♡!?」
「私の住処。それじゃあルーア、またね」
「ありがとうイヴ!」
孤独が解消されるためか少し嬉しそうなイヴ、拘束と快楽から逃れようと必死に身を捩るトワと別れると私はボートに乗り込む。
さあ戻ろう、インテレオンが待つ『サマーリゾート』へ。
夕日が落ちかなり暗くなる頃になってようやく『サマーリゾート』へ戻った私は急いでコテージに向かっていた。繁華街から離れた海岸付近はあまりポケモンもおらず、私は暗い道を一人で走る。
(うう、インテレオン心配してるかも)
考え事をしながら先を急いでいたその時。
「あっ!」
ブーツの爪先が石畳の隙間に引っ掛かりバランスが崩れる。
「んぎゃっ!」
手錠のせいで腕を動かす事も出来ず、顔面から石畳の地面にぶつかる私。身体が丈夫になっていなかったら鼻血が出たり鼻骨が割れたりしていたかもしれない。
「いだいぃ……」
あまりの激痛で中々起き上がれない中、私の耳に何かが届いて来た。
(あ、足音……?)
「そこの君、大丈夫かい?」
涙目で見上げるとそこには一匹のポケモンが。白と黒の身体、そして赤色の瞳と同じく赤の髪のような部位を持つ……見たことも無いポケモンだ。
「怪我はないみたいだけど……転んで痛いんだね? 君に泣き顔は似合わないよ、ほらこれを食べて笑顔を見せてくれないかな?」
踊るような所作を見せながらそのポケモンは懐からモモンのみを差し出してくる。
「えっと、誰……?」
「これは失礼、名乗りもせず近付いて心配させてしまったか」
困惑する私の前でそのポケモンはクルリと華麗に一回転。
「ボクはメロエッタ。この町にお邪魔させて貰っている者さ」
聞いたことも見たことも無いポケモンを不思議に思いながら私はようやく立ち上がった。
「この町には今日到着したばかりでね。明日から仲間と共に公演する予定なんだけど良かったら君も見に来ておくれよ。そしてボクにとびきりの笑顔を見せて欲しいな!」
メロエッタと名乗ったポケモンは華麗に舞い、ポーズを決める。
「……」
「それじゃあ、良い夢を!」
ポカンとする私を残し彼女はステップを踏むように歩き去ってしまった。
(な、なんだったんだろ……?)
その後、コテージのある砂浜に戻った私を出迎えるのはインテレオンだった。
「おかえり、大丈夫だったんだね?」
「うん」
かなり安堵したような様子を隠せていない彼に私は頷いて答える。
「アシマリとアマージョも意識を取り戻したよ。灰色のニンゲンに酷使されて疲労しているけれどしばらく休めば回復するみたいだ」
「そっか、良かった……」
これでエンペルト達も心の荷が下りただろうし、ヒバニーやチコリータも喜んでくれていると思う。
「灰色のニンゲンたちの事についても救助隊連盟に報告を入れたよ。一旦捜索は終了するみたいだけど、彼女らとどう向き合うのかはまだ考える必要があるらしい」
「……」
イヴ達はポケモン達に対してまだ良い感情を抱いていないが、やはりポケモン達からしても自分達を道具のように操る灰色のニンゲンをすぐに受け入れる……というのは難しいようだ。
「と、言う事で目下の問題は落ち着いた状況となった。だから……」
インテレオンはそこで一旦言葉を切り、私の顔を見つめてくる。
「『ナイトスター』が『スプリングタウン』へ帰還するために明日、この町を出発することを決めた」
マホイップ達が『スプリングタウン』に帰る……?
「ペリッパー便でやりとりしていたとはいえ、ファイヤー達に口頭で報告したいことも多いだろうしね。それでルーアはどうする? 僕はキミの護衛の立場だからそれに合わせよう」
「えっと……ん、あれ? ヒバニーとチコリータは?」
インテレオンから問われ思案した私だが、気になったことを尋ねてみる。
「ああ、彼らはある理由のためにもう少し滞在するんだって」
「ある理由?」
「フフッ、僕の口からよりも『ゆけゆけズ』から直接聞いた方が良いよ、きっと」
続けて聞くが、インテレオンは笑みを浮かべてそんな答えを返してきた。その様子から察するにポジティブな理由という事だろうか。
「……」
それは良いとして……私自身はどうしようか。かれこれ二週間近く『サマーリゾート』に居続けた事になり、『スプリングタウン』およびインテレオンの家が恋しくなっているのは事実だ。
しかしこの町のポケモンが凶暴化した件の救出依頼はまだ沢山残っている。ランクルスが今もリライブ研究を進めてくれているだろうが、だからといって私がこのまま帰ってしまってもいいのだろうかとも不安になる。
「……ルーア。『スプリングタウン』に帰ったって二度と『サマーリゾート』に戻れない訳じゃない。この町のポケモンに会いたいとか、やり残したことを思い出したとか……そうなったらまた来ればいいんだ」
「あっ……」
そうだ、世界を越えたという訳じゃない……その気になればいつでも行き来できるんだ。
インテレオンの顔を見ると、笑顔の奥からほんの少しだけ寂寥が感じ取れた。『無獣島』の話を聞いて必死になるぐらい彼は元の世界が恋しく、『帰る』や『また来る』なんて言い辛かっただろう。それでもそう言ってくれたのだ。
「そうだね、また一緒に……」
私はそんな彼に笑顔を向ける。
「じゃあさ、ヒバニー達と一緒のタイミングで帰りたいかな。明日いきなり帰るってのも急だし……」
「ははっ、分かった……そうしようか」
焦らず自分のペースで……私がやれることをやっていこう。
私がやりたいことをやっていこう。