※この作品はR-18です。

裸の少女とポケモンだけが住む世界   作:Momyaka

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Chapter34 ~降り積もるは怒りか悲しみか~

『月に呼ばれた子……もしもこの世界を守りたいと願うなら……』

 

 誰……?

 

『お願い、日に呼ばれた子を探して……』

 

 月……? 日……?

 

『あなた一人だけで災厄に立ち向かわないで……』

 

 災厄……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 淀んだ空気、バイブの音が聞こえる程の静けさ、硬い床の感触……。

「ん……んん…」

 億劫な気分で目を開くと、薄暗く狭い部屋が視界に映る。私では到底届かない高い位置にある窓には面格子が取り付けられており、その隙間から日光が差し込んでいた。部屋の一面に設置された格子越しに廊下が確認できるが、そこと繋がる扉は頑丈に施錠されている。

(ここって……)

 閉じ込められている現実に絶望しながら私は思い返す。

 

 テラキオンが言っていた、『二度と犠牲者を増やさないためにギルドの地下に入れる』という言葉。

 

(……地下牢…!)

 どうして私が監禁されないと、と私は立ち上がろうとする。

「ぎゅん♡!?」

 しかし動作の途中で快楽に襲われすぐに木板の床に突っ伏した。

(おマメの根元にリングが食い込んでぇ……!)

 目を覚ましたばかりなのにリングの刺激のせいで発情してしまい私はカクカク腰を震わせる。更に微振動を続けるバイブからも意識を逃がすことも出来ない…!

 

「んぶっ……んぐぅっ♡!」

 ボールギャグ越しに悲鳴を上げ、後ろ手の手錠を鳴らすがそんな抵抗では玩具を取り外す事など不可能。そして快感に浸かり続けることで、刺激から逃れる事よりも絶頂する事への望みの方が強くなっていく。

「んんっ! んぎぃぃっ♡!」

 たまらず身体全体でのたうち回り、脚で床を蹴って激しく音を鳴らすがそんな方法では達する事も不可能。

 

(この部屋……何も無いよぉ……っ! 角オナすら出来ないぃ!!)

 もっと鮮烈な快感が欲しくて欲しくてしょうがないのに、今の私ではどうする事も出来ないのだ。

「んあぁ! んひゅぅぅぅ♡!」

 涙も汗も涎も愛液も止まらず、私は全力で泣き叫んだ。

(インテレオン! 助けてぇ! ここから出してっ! 私の事犯してぇ!!)

 

 

 

「騒がしいです」

 

 どこからか聞こえてきた声に私は我に返る。

 慌てて辺りを見渡すがこの牢屋の中に私以外の者はいない。

「暴れたって何にもならないんですから、こちらにまで迷惑をかけないで下さい」

「ぐぐっ……んぐ?」

 再び声が聞こえてくる……格子がある方向からだが廊下には誰もいない。

 

「まさか喋れないのですか」

「……!」

 ……いた。

 

 廊下を挟んだ真向かいの牢屋に何者かが閉じ込められている。

 私と似たような身体つきをしているが、肌は彩度の無い灰色……。

 

 

「あなたもあの連中に捕まったんですね。ご愁傷様です」

 紫色の瞳を向けて吐き捨てるのは灰色のニンゲンだ。

 

 そういえば『颶風の砂漠』でテラキオン達に捕らえられたという話だ。見てみると彼女の華奢な身体は蔦で縛られており、ポケモンを取り込む事が出来なくされていた。

「みっともない姿ですね。そんなに股を濡らして興奮でもしているんですか?」

「ん、ぐぅ…」

 灰色のニンゲンからそう言われ、私は恥ずかしさで身を捩った。

「数日もすればそんな事をする余裕も無くなると思います、今のうちに覚悟しておいた方がいいですよ」

 

 どういうことかと疑問に思っていると、廊下から足音が聞こえてくる。

「はーあ、面倒だなぁ。どうせ何も変わらねぇだろうし」

「ホントそれ。こんな無駄な事より筋トレやりたいよ」

「師匠の指示だからしょうがねぇだろ。とっとと連れて行こうぜ」

 そんな愚痴を漏らしながら現れるのは複数のワンリキー達だ。彼らは私の牢屋の扉を開けると中にズカズカ入り込んで来る。

 

「んぐう!?」

 脳裏に浮かぶのは小柄だが力の強いワンリキー達に抵抗できず、数の暴力で犯されてしまう光景……!

(嫌だ! 助けてインテ……!)

 

「おい、逃げんな!」

「捕まえろ!」

 呆気なく私はワンリキー達に捕まると、そのまま牢屋の外に連れ出される。

「んぐぐぐ!」

「……」

 私は灰色のニンゲンに助けを求めるが、彼女は目を付けられたくないのか牢屋の中で黙っていた。

「面倒くさいな、歩けよ!」

「っ!」

 立ち止まっていた私に痺れを切らした様子でワンリキーが『けたぐり』を放ち転ばされてしまう。

「ぐ、ううっ……」

「おいおい、転ばせるなよ。立たせるのも一苦労なんだぞ」

「もう運べばよくない?」

 痛みで身を捩る私に近付いたワンリキー達は溢れるパワーで一回り背の高い筈の私を軽々と持ち上げた。そのまま私は何も抵抗出来ないまま運ばれていく……。

 

 

 

 ワンリキー達は収監所から『テラキオンのギルド』の敷地に出ると、一つの建物へと向かう。

 赤色に塗装された木造の壁と黒色の三角屋根を持つ建物の前には石畳の修練場が築かれており、私はワンリキー達の手でそこへと放り投げられた。

「んぐうっ!」

 痛みをこらえながらすぐさま起き上がると、周りにはかくとうタイプポケモンを筆頭に沢山の屈強そうなポケモン達が並んで私を見下ろしていた。

(私……何されるの? このポケモン達に一斉にレイプされちゃうの……? インテレオンの所に帰れないぐらいに辱められちゃうの……?)

 そんな想像をして私は顔を青ざめさせる。

 

「師匠の前でいつまで座ってんだ、立て!」

「むぎゅっ……!」

 一匹のポケモンに無理矢理起こされるが恐怖で膝がガクついてしまう。

 まるでおしっこのように膣液を垂れ落とし石畳にシミを作る私を立たせたのは恰幅の良い体格をしたポケモン……。

「っ!?」

 そのフォルムには見覚えがある……体と手が繋がっていたり、体色も黒一色ではなかったりと相違点は幾つもあるが、そのポケモンはまさしく……。

 

 テツノカイナ。

 

「ハリテヤマよ、乱暴はよすのだ!」

「……ウス!」

 何者かの声が鳴り響き、ハリテヤマと呼ばれた恰幅の良いポケモンは私から離れていく。

(このポケモン……テツノカイナと何か関係があるの……?)

 どうにも無関係に思えず、私はハリテヤマと名乗るポケモンをまじまじと見つめる。もしかしたら彼がテツノカイナを操っていたのでは……。

 

「よくぞ来た! 吾輩はこの『テラキオンのギルド』の道場主、ジャラランガである!」

 

 その時、先程声を響かせたポケモンが私の前に立ち名乗りを上げた。

「ニンゲンよ、何故ここへ連れてこられたか分かるか!」

「……っ」

 大声で問いかけられ私は委縮してしまう。この町へ連れてこられた時に多くのポケモンから敵意を向けられたことを否が応でも思い出し、それと関係があるとしか思えない。

 

 

 

「そう! 我らポケモンと共に汗を流し切磋琢磨することで、認め合う存在になるのだ!」

 

 

 

「……ん、ぐ?」

 ジャラランガの言葉に私は冷や汗を垂らす。

「吾輩は信じている! ニンゲンが吾輩達に危害を加えるのは互いを分かり合えないからだと! 心や言葉で語り合えぬのならどうするべきか……そう、身体で語り合えばよいのだ!!」

「……んぐっ!?」

 私は嫌な予感を覚え後退り。

「なれば共に鍛錬を積み競い合うことが互いを知る第一歩となる! そうだろう愛弟子たちよ!」

 彼は瞳に闘志を燃やしながら叫ぶ。

 

「…………」

 しかしジャラランガの弟子ポケモン達は一様に黙り込み、私に向け懐疑的な視線を向けて来た。

「うんむ! お前達もこのニンゲンとまだ語り合えておらぬ段階故、それも良し! しかしこれからは共に稽古に励む仲間、互いに助け合い、競い合い……遥かなる高みを目指すのだぞ!」

「んぎゅううっ!?」

 勝手に話を進められ、私はたまらず首を横に振る。稽古や鍛錬なんて大の苦手であるし、そもそも手も口も使えない上にバイブやクリトリスリングを身に着けたままでそんなこと出来るわけがない。

 

「師匠、お言葉ですが灰色のニンゲンと同じでこいつも俺達を嫌っているみたいスよ。語り合うつもりもない相手に歩み寄るなんて無駄だと思いませんスか」

「……っ」

 しかしその否定の意志が違う意図で伝わってしまい、私は身を震わせる。

「うんむ! 一朝一夕で結果は出ぬのだから今はそれで良し! 大事なのは日々の研鑽、日々の交流……その積み重ねである!」

 ジャラランガが意思を曲げるつもりが無いと見るや、ハリテヤマは小さくため息をついて下がった。

 

「では本日も皆で鍛えようぞ! まずは『オータムビレッジ』走り込み三周!」

「ウス!!」

 

 道場主の指示を受け、周りの弟子ポケモン達が一斉に走り出した。

(走り込みなんて嫌だよ……でも、もしかしたらその途中で逃げられるかも……?)

 立ち止まったまま彼らの背中を見つめていた私の元へ一匹のポケモンが近寄ってくる。

「ハァイ、始めましてネ」

「……?」

 朗らかに話しかけて来たのはピンク色の肌と長い舌が特徴のポケモン、ベロリンガであった。

「ワタシ、ベロリンガ言いマース。さっきアナタを起こしたハリテヤマと同じチーム『ちゃんこ』の救助隊デース」

 

 彼女は自己紹介すると走るポーズを取る。

「アナタのサポート、ジャラランガから指示されてマース。後ろから追うので安心して走って下サーイ」

「んっ!?」

 それは別の言い方をすればサボったり逃げたりしないように監視されるという事ではないだろうか。

「ドウゾ、ダッシュスタートデース!」

「んぐぐぅ!?」

 ベロリンガに背中を押され、私は走らざるを得なくなってしまう!

「途中でキツくなるかもしれんが、そこから更に自らを追い込む事が強くなる為の重要事項である!」

 鳴り響くようなジャラランガの声を背中に浴びながら、私は涙目で走るのだった。

(な、なんでこんなことにぃ!?)

 

 

 

 しかし、手錠で上手く走れず、ボールギャグで呼吸も苦しいまま走るなど無謀そのもの。更に走れば走るほどクリトリスリングが擦れて脳内の快楽中枢が刺激されてしまう。

「んぎっ!」

 走るための作りになっていない膝下丈のロングブーツが重く、私は走り始めてから五分も経たずに転倒した。

「今転んだのってニンゲンじゃん」

「ジャラランガさん、灰色のニンゲンだけじゃなくてアイツも稽古させるつもりなんだ」

「心や言葉で語り合えないなら体で語り合う……だっけ?」

「ポケモンならともかく、ニンゲンに伝わるとは思えないなぁ」

 

 『オータムビレッジ』の通りで転倒した私へとポケモン達の視線が集まり、小声での会話も聞こえてくる。

「オーウ、大丈夫デスカ?」

「んうう……」

 身体に怪我は無いが、この村に来てからろくな目に合っておらず心が限界だ。

「んー、傷はないですネ。痛がって休んだら鍛錬になりませんヨ」

 ベロリンガはそう言って立つように急かして来るが、もう限界である……。

 

 

「ふんんっ♡!!」

 私は恥も外聞もかなぐり捨て、虚ろな目でうつ伏せのまま腰を上下に動かし出した!

 意識も股間に全集中させてバイブとリングによる刺激へと必死にしゃぶりつく。

 今の状況の辛さに耐えきれず理性が機能しなくなってしまい、残された本能が自慰に逃げているのだ。

 

 

「んー、ベロロロロ」

(ひゃんっ!?)

 

 突然ベロリンガに背中を舐められ、私はビクンと身を跳ねさせた。長い舌がそのまま私の身体に巻き付き、立たされる。無理矢理立たされるのは今日だけで何度目だろう。

「転ばないように舌で支えてあげマス、安心して走って下サイ」

「んぐ、んぷ……♡」

 ヌルヌルの舌に巻かれたまま私は身を捩る。

(私……公衆の面前で拘束されて…唾液でベトベトになってるぅ……やらしいよぉ……)

 恍惚とした顔を紅潮させる私の姿に、町のポケモン達が訝しげな顔を向けてくる。

「体調でも悪いのかあのニンゲン?」

「喜んでるようにも見えるね」

「うーん、ニンゲンってよく分かんない」

 唾液の臭いで意識が遠のく中、舌の締め付けが強まる感覚がボンヤリと伝わって来た。

「さあ、早く走るデス。まだ一周目の一割すら進んでないですヨ」

「…………っ♡」

 

 結局、他のポケモン達が三周の走り込みを終えた頃になっても私は殆ど進めていなかった。

 

 

 

「んぐぐ!」

「逃げんなって!」

 道場前に連れ戻された私は、まだ続くという稽古から逃げようとするがワンリキー達に押さえ付けられる。

「稽古が辛い気持ちはよく分かるぞ! しかし辛いという状況が己を磨き上げる最大の好機なのである! さあ、次は……」

 

「ジャラランガ、『オオキバ台地』での救助依頼が来ていますぞ」

 

 声を張り上げる道場主の傍にやって来て割り込むのはオーロットだ。その手には確かに救助依頼書がある。

 救助隊たちが朝から訓練していることから、救助はやらないのかと訝しく感じていたが『テラキオンのギルド』では鍛錬の間に救助依頼が来たらダンジョンへ向かう、という方式を取っているようだ。

「うんむ! 救助に向かいたい、我こそはというチームはおるか?」

「じゃあ俺ら『ちゃんこ』が行くっス」

 ジャラランガに問われ、真っ先に手を挙げたのはハリテヤマだ。

「では任せる! 日頃の鍛錬は嘘をつかんぞ!」

 彼は頷くとベロリンガ、そしてもう一匹のメンバーらしいマリルを連れて道場から出て行く。

 

 オーロットもギルドへ戻る……のかと思いきや、私の存在に気付くと大きな一つ目を細めた。

「……ジャラランガ。またニンゲンを勝手に外へ出したのですかな……周りのポケモン達を悪戯に怯えさせるのは長の意向に反しますぞ」

「当然、今回も許しは頂いている……そして怯えるのもニンゲンについて知らぬから。共に鍛錬をすれば必ずや得られるものがあると信じているのだ」

「……くれぐれも程々に。いくら道場主といえど、救助隊ポケモン達も手放しで賛同はしていないようですからな」

 オーロットは短いやり取りの後、呆れた様子で道場を後にした。

 

 

「待たせたな、では修行に戻ろうぞ。次は技の訓練! 各々思うままに技を練習するのだ、吾輩も見て回り助言出来ることがあれば伝えよう。また一匹で特訓するもよし、技を撃ち合って戦闘訓練するもよしだ」

「ウス!!」

 

 ジャラランガの指示を受け、ポケモン達はこの修練場で技の特訓を始める。

 壁や身代わり人形に向かって技を繰り出すポケモン。

 ペアになって交互に技を撃ち合うポケモン達。

 ベテランの救助隊からコツを教えて貰う新米救助隊ポケモン。

 自らに合った方法で鍛錬を積むポケモン達を横目に、私はそそくさと移動を……。

 

 

「おいおい、帰っちゃダメだろ」

「師匠の考えはなかなか分からないけどな、その気持ちを踏みにじるのは許さんぜ」

「少しオイラ達に付き合って欲しいんだなぁ」

 しかし三匹のポケモンに囲まれ、私は逃走を阻止されてしまう……!

「んぐぐ、むぅぅ……!」

 

「俺達ポケモンの事が嫌って気持ちは分かるぞ。俺達もお前達ニンゲンにいい気持ちは抱いてないからな」

 必死に首を振るが、ワカシャモが半目になりながら言った。

「分かるか、優しい師匠は悪者のお前にまでチャンスを与えてくれてんだよ。流石にそれを自分から捨てちまったらどうなるのかまで分からねぇことはないだろ?」

 モウカザルは私を指さし、睨みつけながら確認してくる。

「オイラがこいつらとチームを組んだのも一緒に稽古して意気投合したからなんだぁ。ニンゲンが同じとはあまり思えないけども、やってる内に考えが変わる可能性も否定できないしなぁ」

 チャオブーはそう言いながら私を後ろから押し始めた。

 

「んうっ!?」

 彼はワザとではない様子だが触れられている場所はお尻だ。

「まあ安心しろよ。俺達はカッパーランクの救助隊『ヒートソウル』……加減を間違えるようなヘマはしないさ」

 モウカザルも口端を上げ、馴れ馴れしい態度で私に触れてくる。そこは脇腹であり私は身体をブルリと震わせてしまう。

「鍛錬で技を撃たせて貰う訳だが……急所はこの穴か? それとも色が少し違う場所か?」

「っ!!」

 そしてワカシャモは尖った爪で私のお臍や乳首を突いて来た……!

 

(わ、私……オスポケモン達に囲まれて、身体の色んな所触られてる……! ほぼ全裸の姿でセクハラされてる……!)

 

 ワカシャモ達はそういう知識を持っておらず、悪気も無いのだろうが私は涙目で必死に身を捩る。

 喋れないために指摘することも出来ず、両手も使えないため振り払う事も出来ず、ただただ触られるのを受け入れるだけ……。

 

(私が身体を許してるのはインテレオンだけなのにっ!!)

 

 

「ごふっ!?」

 本能的に私は脚を動かしてしまい、後ろにいたチャオブーを蹴ってしまった。

「チャオブー!?」

「こいつ、いきなり……!」

「……っ」

 ただ鍛錬の準備をしていただけなのに何の合図も無く攻撃された、と判断したワカシャモとモウカザルが途端に敵意をむき出しにし、戦闘態勢に入った。

「ん、なんか『ヒートソウル』達、様子おかしくないか」

「まさかニンゲンと喧嘩かも?」

「止めた方が良いかもしれませんね……」

 剣呑な空気に気付いた周りのポケモン達が動き出そうとしたが……。

「少し様子を見よう。本心のままに正面からぶつかり合うことで心がつながる事もあるのだ」

 ジャラランガが割って入ろうとしたポケモン達を呼び止めた。

(そんな……っ!)

 

 今まさに私の眼前に迫るワカシャモ達……クリトリスリングのせいで動きが鈍っている私では避けられるわけがない!

「喰らえ『きりさく』!」

「『かえんぐるま』だ!」

「んぎゅっ!?」

 一斉攻撃を浴び、私は呆気なく石畳の上に倒れ込む。

 

「チャンスだ、『レンケイ』行くぞ!」

「チャオブー、行けるか?」

「任せてくれ! オイラ、二匹と一緒に頑張るぞぉ!」

 彼らは起き上がろうと藻掻く私を包囲すると各々技を放つ態勢を取った。

 

「まずは俺……『みだれひっかき』!!」

 最初に動いたモウカザルが何度も引っ掻き攻撃を繰り返してくる!

「次はオイラだ! 『つっぱり』!!」

 モウカザルが飛び退くと同時に、今度はチャオブーが連続で張り手を放った!

「んぎっ! うぐうっ!」

「ふっ……!」

 連続攻撃を浴び、全く身動きが取れない私に迫るのはワカシャモだ。

 

「『にどげり』!」

 二段蹴りを顎に叩き込まれて私は大きく仰け反ってしまう……。

 

 

「『レンケイ』継続! 『みだれひっかき』!」

「!?」

 だがそれで終わりではなく、再びモウカザルが攻撃を放ってきた!

「『つっぱり』行くぞぉ!」

 チャオブーもまた私へと何度も張り手を撃ち……。

「そらっ『にどげり』!」

 締めにワカシャモの蹴りが炸裂。

 

 『ヒートソウル』の『レンケイ』は三匹で順番に連続攻撃技を放ち、自分の攻撃後の隙が出ている間は他の仲間が攻撃し、仲間の攻撃後の隙には自分が攻撃して相手の反撃を封じるものなのだ……。

 

「終わらないぞ、『みだれひっかき』!」

「『つっぱり』だぞぉ!」

「『にどげり』!」

「……ぐぶっ」

 三匹がかりで一方的に攻撃を浴び続ける私。

 身体中が痛くて、涙が止まらない……。

 ギブアップしたくてもボールギャグのせいで何も喋れない……。

「やっぱりあいつらの『レンケイ』、息が合ってるな」

「しかしあのニンゲン、全然倒れないぞ」

「あんなに攻撃浴びてるのに傷一つないなんて……もしかしてすごく強いのか?」

 身体が丈夫なせいで周りのポケモンも私には『レンケイ』が通用していないと誤解しているらしく、誰も止めてくれる様子が無い。

(なんで……なんで私、こんな事されなきゃいけないの……? 痛いよ、酷いよ……)

 

 

 

 それからワカシャモ達のわざのパワーが尽きるまで攻撃を浴び続けた後も、様々な修行を無理矢理やらされ続けた私は夜になってようやく解放されることになった。

「……」

 しかし解放といっても、道場での稽古が終わっただけでまた牢屋に逆戻りなだけである。また明日も……明後日も……ずっとこんな地獄みたいな鍛錬をやらされてしまうのだろうか。

 

「……ぐすっ」

 倒れ伏したまま身を震わせる私。

 ポケモン達はここまで私の事が……ニンゲンの事が嫌いなのだろうか。これまでこの世界で暮らすために頑張って来たのに、その仕打ちがこれなのだろうか。

 

「……その様子ですと、あなたもあの連中にやられたようですね」

 

 話しかけてきたのは、道場に連れて行かれる前から変わらず閉じ込められている灰色のニンゲンだった。

「だから言ったんです。みっともなく腰を振っている暇があったら覚悟しておけと」

 彼女は呆れた風に言うが、私は何も返事しない。

 

「きっと明日もあの鱗塗れの竜は変なこと言って強制的に特訓させて来るでしょうが……嫌なら徹底的にサボって悪態つけばいいですよ。そうすれば数日で向こうも諦める筈です。そのお陰で私は無駄な稽古なんかせず、ここで寝て過ごせるようになりましたから」

「……」

 そんな情報を与えてくる灰色のニンゲンに、私は身動ぎして格子越しに視線を向けた。もしかして彼女はぶっきらぼうな口調ながらも、私の身を案じているのだろうか?

 

 

 

「あの喧しい竜の言う事なんて聞く価値ないですよ。私達をいきなり攻撃して来て、いざ抵抗されたらこうやって牢屋に叩き込むような連中とどうして心を通わせてやらなきゃならないんですか」

 

 違う……私は……インテレオンや『ゆけゆけズ』や『ナイトスター』みたいなポケモン達とは……心を通わせたい。

 

 だけどテラキオン達は私を無理矢理捕まえて、『オータムビレッジ』に連れて来た……。

 私……この村のポケモン達に対して心を通わせたいって、思ってるのかな?

 

 

 

「向こうが私達を敵視するなら、こっちにもあの連中を敵視する権利ぐらいあるでしょう」

 

 ポケモンは……インテレオン達は敵じゃない……。『清流森林』でポケモン達が最初に襲ってきたのも凶暴化が原因で……。

 

 だけど凶暴化してない筈の『オータムビレッジ』のポケモン達は、私が人間だって理由だけで悪者扱いするような目で見て来た……。

 私……この村のポケモン達が味方だって……『歪みの穴』現象の完全な被害者だって思えるのかな?

 

 

 

「嫌な事からは逃げればいいです。嫌な奴の言う事は全部否定すればいいです。嫌な連中との間には壁を作って拒絶すればいいです」

 

 最初は嫌だって思ったエンペルトとだって分かり合うことが出来たのに……。

 

 だけどエンペルトはエンペルトなりの価値観があったのに対して、この村のポケモン達はただ単に私を偏見で否定するばかり……。

 私……この村から早く逃げたいのかな? テラキオン達を拒絶したいのかな?

 

 

 

「……そうすれば怖い思いも、傷つく心配もせずに済むんですから」

 

 …………。

 

 怖い思い、しなくていい?

 これ以上傷付けられなくてもいい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この村なんてどうでもいいって思えば……心の痛み、なくなる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は立ち上がると足元を見つめる。

(……格子、壊したい)

 身体から滲み出た黒と紫の靄が足元に収束し、一つのタイルが出現した。

 それは以前『蒼海晶洞穴』で見た……『ばくはのワナ』だ。

 

 

 私は躊躇わずそれを踏む。

 

 

 迸る閃光、爆音、爆風!

「ぎゃふっ!?」

 灰色のニンゲンの悲鳴を聞きながら私も壁に激突。

 

 だけどこれぐらいの痛み、どうってことない。

 『オータムビレッジ』で受けた心の痛みに比べたら、全然軽いから。

 

 目論見通り木製の格子は爆発で吹き飛んでおり、私は廊下へと歩み出た。

「な、何をやったんですか……?」

 咳き込みながらも灰色のニンゲンも牢屋から出てくる。爆風でその身を縛っていた蔦も千切れているようで彼女は自由を取り戻した様子だ。

「んぐ、ぐぐ」

 私は口が塞がれていることをアピールし、少女に自らの後頭部を近づける。

「……あ、これを外せば……?」

 牢屋から脱出出来た事への礼なのか、灰色のニンゲンは躊躇することなく私のボールギャグを外してくれた。

 

「……はぁ、はぁ……ありがとう」

 ようやく口が自由になった私は『味方』の少女に向けてお礼を述べる。

「……?」

 しかし少女は何も返事をしない。

 

 振り返ってみると、彼女の手にあったボールギャグが紫の光に包まれて消えてしまうのが見えた。

 

 

 

「なんだ、今の音と振動は!?」

「おーい集まれ!」

 その時、続けて上階から『テラキオンのギルド』のポケモン達の声が聞こえて来る。

「……」

 灰色のニンゲンが振り返った先……廊下の向こうから『敵』が現れる。

 ワカシャモにモウカザル、チャオブー……私を散々痛めつけた『ヒートソウル』だ。

「なっ、どうやって牢から……!」

「止めるぞ! 『かえんぐるま』!」

「『きりさく』!!」

 真っ先に飛び掛かってくるモウカザルとワカシャモ。

 

「……仕返しします」

 前に出た灰色のニンゲンが両手を突き出し、直接攻撃を仕掛けて来た二匹へと触った。

 

 

 その瞬間、少女の両腕が黒く変色し蠢き始めると一瞬のうちに紫色の光と化したワカシャモとモウカザルを取り込む!

 

 

「…………え」

 取り残されたチャオブーがポカンと立ち尽くす。

 そんな彼の前に現れたのは先程取り込まれたばかりのワカシャモとモウカザル……その姿は全身真っ黒だ。

「……」

「邪魔です」

「ぶっ!?」

 黙ってその光景を見つめる私の前で、灰色のニンゲンはポケモン達を操りチャオブーに対して『みだれひっかき』と『にどげり』を叩き込む。

「……行こう」

 目を回して倒れるチャオブーを暫し見つめた後、私は『味方』となった少女と共に上階へと向かった。

 

 

 

 階段を上がり収監所から出るとそこには案の定、多くの救助隊ポケモン達が待ち構えている。

「やっぱりニンゲンは悪者だったって事か……」

 最前線に立つハリテヤマが私達を睨みつけて言う。その隣にはベロリンガやマリルの姿もあった。

(この数、どうしよう。灰色のニンゲンだけじゃ対処難しいし、えだとかの道具使われたら困るかな……)

 真っ先に向かってきたワンリキー達を灰色のニンゲンがなぎ倒すのを見ながら、私は有効な手段を思いついく。

 

 

 

 私は黒装の欠片を生み出すと、周囲に黒い靄を漂わせた。

 

「な、なんだこの靄は……」

「これは『颶風の砂漠』にもあった……ぐっ!」

「動けない……」

「くそっ……」

 黒い繭などが出していたものと同じ……ポケモンを動けなくさせる靄でハリテヤマ達を無力化したのだ。

 

「……」

 ポケモン達が這いつくばる姿を見下ろしていると、日中に私が倒れていた姿を見下ろしてきていた彼らの姿が脳裏に浮かぶ。あの時とは真逆の立場になった事に私は優越感のような、もしくは安心感のようなものを覚えた。

 

「……これ持ってて、ポケモン達の動きを封じれるからこのまま逃げれる筈だよ」

「はい、分かりました」

 私が黒装の欠片に視線を向けて言うと、灰色のニンゲンは私を頼りにしているような目で見つめながら頷く。

 

「アナタ達……ワタシ達のこと、そんなに……嫌なのです、カ?」

「……」

「……先に攻撃してきたり、こっちの言い分も聞かずに閉じ込めたのはどっちか考えて下さい」

 苦しそうなベロリンガが絞り出すように尋ねて来るが、黙り込む私の代わりに灰色のニンゲンが言い放った。

「『メロエッタ劇団』を……壊滅させた、『黒装モンスター』は……お前らの仕業じゃ……!」

 動けないのに依然として私達を睨みつけるハリテヤマ。

 

「……『銀杏山脈』に動かない『黒装モンスター』がいるよ。ハリテヤマそっくりの」

「っ!?」

 いつまでも身に覚えのないことへ追及されるのに疲れを感じた私はそう呟く。途端にマリルやワンリキー達の視線がハリテヤマへと向かった。

 

「私は何も知らないけどさ……ハリテヤマが何か隠してるんじゃないの」

 それだけ言って私は重い足取りでギルド敷地の外へと歩き始める。

 

 

 

「『ばくおんぱ』!!」

 

「っ!」

 しかし鳴り響いた爆音に襲われて私達は地面を転がされた。

「師匠……!」

「……ふむ」

 救助隊ポケモン達の視線を集めるのはジャラランガだ。

 彼は黒装の欠片が生み出す靄の影響を受けないよう、離れた場所から私達に視線を向けて来ている。

 

「何ゆえに、このような事を?」

 先程の激しい音とは逆に、ジャラランガが静かに問いかけて来た。

「……」

「逃げる為です。閉じ込められたり無理矢理修行させられるのはうんざりですから」

 答えを躊躇う私を起こしながら灰色のニンゲンが毅然として答える。

 

「……吾輩達と語り合うつもりは、露程も無いと?」

「ありません」

 それを聞くと、ジャラランガは目を閉じて俯いた。ポケモンとニンゲンが分かり合う手段もあると考えていた彼にとっては正面から拒絶されたことへのショックは相当なものだろう。

 

 

 私だって、本当はニンゲンに歩み寄ろうとする彼を『敵』にしたくはなかった。

 でも、鍛錬という行為が苦しい私にとって……彼のやり方はどうしても受け入れがたかったのだ。

 分かり合おうと言う根底は同じでも、辛い事を押し付けられたら……やっぱり辛い。

 

 

「……ねえ、取り込んだ二匹……解放してあげて」

「えっ、なんでですか!」

 私の言葉に灰色肌の少女は首を振って反対の意思を示す。

 確かに逃げる為に必要な力を手放すなど躊躇うのは当然だ。

「私、この村のポケモンを滅茶苦茶にしたいんじゃなくて……この村から逃げたいだけだから。なるべく追われたりするのは予防したい……」

「……」

 少女は暫く心の中で葛藤していた様子だが、追われながら生きる事へのリスクを考えたようでワカシャモとモウカザルを解放するとジャラランガ目掛けて投げつけた!

「うおっ!?」

「行こう……」

 ジャラランガに背を向けると、私は全身のだるさを感じながら今度こそギルドの敷地外へと向かう。

 

 

 

 

 

(……私、こんな事やっていいのかな)

 

「ニ、ニンゲンだ! 牢屋から逃げて来たのか!?」

 夜の村の中を進む私達を見て、『オータムビレッジ』のポケモン達が恐怖に顔を歪める。

 

(インテレオン達の耳に届いたら、軽蔑されるのかな。絶交言い渡されるのかな)

 

「こ、怖いよお!」

 黒い靄で動けなくなるポケモンもいれば必死に逃げ惑うポケモンもいる。

 

(会うの……怖いな。これ以上傷付きたくないから逃げようとしてるのに、おかしいな……)

 

「やめてくれ! 俺の家族だけには手を出さないでくれ!」

 守りたいものを必死に庇い、逃げずに立ち向かおうとするポケモン達が視界に映った。

 

(……それじゃあ私……どこに逃げるの? こんなに逃げ続けてたら……居場所なんてなくなるんじゃ?)

 

 

 

 

 

「止まれニンゲンども」

 そして、町の出口に立ち塞がるのはがっしりとした身体を持つポケモン……テラキオンだった。

 

「テメェらの罪から目を背けるつもりか?」

「……っ」

 黒い靄を浴びても顔を顰めるだけで膝すらつかないテラキオンが正面から尋ねてくる。

「先に攻撃して来たのはそちらです」

「凶暴化ポケモンに罪はねェ、俺達ポケモンを道具のように使ったことを反省しろっつってんだ」

 ギルド長は巨悪を前にしたような表情のまま、頭部に光を収束させ巨剣のような角を形作った。

 

「待ってよ、誤解だよ……。この子は身を守るのに必死だったし、私も『スプリングタウン』や『サマーリゾート』でポケモン達と一緒に……」

「……リライブ、か?」

 怒りを宥めようとした私に対し、テラキオンは目を細めて呟く。

「凶暴化したポケモンを元に戻す術……仮に本当だとするなら俺達救助隊連盟が喉から手が出るほど欲しかったものだ」

 彼は一拍置くと、再度口を開いた。

 

 

 

「どうしてテメェがその術を使える?」

 

 え?

 

「正直言うとな、都合が良すぎるんじゃねェかと思ってたんだ。ずっと『歪みの穴』現象に苦しんでた俺達じゃなくて違う世界から来たニンゲンが凶暴化を解く術を持っている事に」

 

 都合が、良すぎる?

 

「テメェ、本当に違う世界から来た何も知らないただのニンゲンか?」

 

 何が、言いたいの?

 

 

 

 

 

「実は『歪みの穴』はテメェが引き起こしてるんじゃねェのか。そうでもないと都合よくリライブなんて力を持ってこの世界に現れるとは思えねェぞ」

 

 

 

 

 

「……あ、え?」

 

 視界が、明滅する。

 

「自分で『歪みの穴』やダンジョン化、凶暴化を引き起こして……それであたかも救世主のようにリライブして……俺達ポケモンを騙して食い物にしようとしたんじゃねェか」

 

 頭が、ガンガンする。

 

「そりゃそうだよなァ。自分しか解決できない問題を起こして、それをポケモン達の前で解決して見せりゃチヤホヤされる……ってのは簡単に思いつく手段だぜ」

 

 心の奥が、急速に冷えていく。

 

「だが今のテメェが本性だろ? 灰色のニンゲンと同じ紫の瞳、そして黒い靄やワナを生成する力……。 思い通りにならなくて遂に我慢できなくなったんだよな」

 

 身体の震えが、止まらない。

 

「この世界を、俺達ポケモンをよくもテメェの玩具にしてくれたよな、あァ? くだらない自己満足で散々弄びやがって……」

 

 ……………………。

 

「全ての元凶……ルーア。俺がテメェを討つ」

 

 

 

 黒い靄による苦痛を跳ねのけ、『せいなるつるぎ』を伸ばすテラキオン。

 灰色のニンゲンが目を開くが、ワカシャモ達を手放したばかりで抵抗出来ない。

 そして私は……。

 

 

 

「……」

 涙が止まらなかった。

 心が痛かった。

 

 

 

 もう、無理だった。

 

 

 

 

 

「……『ものがえだま』」

 

 紫と黒の靄を収束させ、私は涙を流したまま一つの道具を生成した。

 

 

 

 そして正義の剣を振り下ろすテラキオン目掛けて、その道具を発動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『せいなるつるぎ』は私に当たる事はなく、代わりに足元へ『もうげきのタネ』が落ちた。

 当然そのタネは自ら動くことも、何かを喋ることも無い。

「……あ」

 私はタネを見下ろして目を見開く。

「テ……テラキオン様……!?」

 物陰に隠れていたらしいオーロットがワナワナ身を震わせて歩いて来た。しかし灰色のニンゲンが抱えている黒装の欠片から出る靄を浴び、すぐに倒れ伏す。

「そんなっ……テラキオン様……!!」

 それでも縋りつくように彼はジリジリと這い、『もうげきのタネ』へと手を伸ばした。

 

 

 

「う、あ……あ」

 自分のやってしまった事を次第に理解し、私は後退り。

 

 

 

 

 

「……わああああっっ!!!」

 

 

 

 そして……私はその場から逃げ出した。

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