※この作品はR-18です。

裸の少女とポケモンだけが住む世界   作:Momyaka

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Chapter35 ~ともだち~

 その水面は鏡の如く、分け隔てなく全てを映す。

 青き空も、聳える山も、汝の笑顔も。そして笑顔の奥に隠した心も。

 見たいモノも見たくないモノも見せ、何者になりたいかを問う地、『夢想の湖』。

 

 

 

「……」

 

 私は何もせず、横たわっていた。

 

「……」

 

 静かで薄暗い洞穴の中で何も言わずに。

 

「……」

 

 まるで物であるかのように、意識も曖昧なまま。

 

 

 

「……水、汲んできましたよ」

 そんな私の元にやって来たのは灰色のニンゲンだ。

 ピーピーリカバーの瓶を手に少女は私の傍に腰掛ける。

「……」

 視線を動かすが身体を起こす気力が無い私を見かねてか、彼女は少しずつ瓶を傾けて水を飲ませて来た。私もまた抵抗せずに喉を動かして水分補給を行う……。

「……どうします、これから」

「……」

 灰色のニンゲンに問われるが、私は何もしたくないとばかりに首を振った。

 

 『オータムビレッジ』より逃げ出してから二日……私達はダンジョン内にある洞穴に身を隠して過ごしていた。

 最後に立ち塞がったテラキオンを衝動のまま道具に変えてしまい、私は自分のやってしまったことの恐ろしさを受け入れられず、まるで廃人のように何も出来なくなっていた。

 

 唯一出来る事といえば……。

 

「……」

「またですか?」

 緩慢な動作で仰向けになり股を開いた私を見て、灰色のニンゲンが心配げな表情を向けてくる。

 股間はグショグショで蒸れており、小さなクリトリスは根元をリングで締め付けられてヒクヒク勃起していた。身を起こす気力がないまま脚だけで股間をスリスリと擦っていたが、それでは全然足りず限界が来ていた。

「ここですよね?」

「っ♡」

 少女は私の股間に手を伸ばすと、指で割れ目をなぞり始める。灰色をした細くしなやかな指が動くたびに私の中に快楽が流れ幸せな気分が少しだけ滲み出てきた。

 

 ……苦しい気持ちを、嫌な気分を、幸せで無理矢理塗り潰していく。

 

 手マンされる度に膣液が溢れ、ピチャピチャといやらしい音が洞穴に響き私は顔を紅く染めた。最初の時は彼女も慣れておらず快感どころか痛みが走る事もあったが、何度もやって貰っていることでどんどん手つきが良くなっており気持ちいい。流石にインテレオンのテクニックよりは劣るけれど……。

 

 ……駄目……もう戻れないんだから、忘れないと。

 

 灰色のニンゲンは私の小さな割れ目を開くと、反対の手でピンク色の小陰唇を触りだす。少女は私が感じる所を学習してくれたようで、その辺りを重点的かつ丁寧になぞってくれる。

「あ、はぁ♡ ん、ひぃ♡」

 ずっと黙っていた私も喘ぎ声が抑えられず、幸せな快感を享受していた。

 

 更に少女は二本の指を私の膣内へと突っ込む。

「おぉ……♡」

 Gスポットを始めとする膣壁の性感帯を掻き回されて、私は涎が止まらなくなってしまう。見ると目の前の少女も少し顔が紅潮させており、手マンを行いながら興奮しているようだ。

「……んっ、こんなのが、そんなに気持ちいいんですか?」

「うぅ……うん……♡」

 両手を膣液塗れにさせられながらも灰色のニンゲンは私への愛撫を継続する。

 

「……もう一度聞かせて下さい、これからどうします?」

「……っ」

 

 そしてこうやって私が心の痛みを忘れている状態でないと何も喋らないことを学習した彼女は再び問いかけて来た。

 

「わ、私はぁ……♡」

 

 

 

 もっと気持ちいいの欲しい。

 いっぱいいっぱい気持ちよくなって……辛い事を全部忘れたい。

 

 あの村のことなんてどうでもいい、と思ってしまったことも。

 自分で罠や黒装の欠片を生み出してしまったことも。

 作り出した『ものがえだま』でテラキオンを道具に変えてしまったことも。

 

 

 当然『オータムビレッジ』には戻れないし、戻りたくない。

 『スプリングタウン』や『サマーリゾート』にも私の悪行が伝わっているかもしれない……そうしたらヤレユータンやチェリム、『エキサイト』や『ロイヤルズ』達にも敵扱いされる……そんなの嫌だ、目の当たりにしたくない。

 

 それだけならまだしも……『ゆけゆけズ』や『ナイトスター』も私に騙されたと思って、裏切ったのかと詰問してくるかもしれない……。

 そしてインテレオンも私に愛想を尽かして……。

 

 じゃあ私、どこに逃げればいいの?

 全てのポケモンに否定されたら、居場所はどこに……。

 

 

 

 目の前にいる灰色肌の少女の姿を見て、ある存在を思い浮かべる。

 『追放の遺跡』にいるイヴ……。

 今も彼女はトワと共に、ポケモンが入る事の出来ない場所で平穏に過ごしている筈だ。

 

 ポケモンが怖いから、ポケモンと会わずに済む場所で……。

 

 

 

「あうっ……『追放の遺跡』……『無獣島』……んっ♡」

 

「……? それはどんな場所ですか……?」

 喘ぎと共に口を開いた私に対し、灰色のニンゲンが更に質問してくる。

「ポケモンが入って来れない……っ♡ あなたみたいなっ……灰色のニンゲンがぁ、暮らす場所ぉ……♡」

 ワナで多少酷い目に遭うことはあるが最低限の安全は保障されているし、ダンジョンが生成する道具のお陰で生活にもそれほど困らない。

 

 しかし……どちらもここからは結構な距離があるだろう。

 それに現在地とそれらのダンジョンの位置関係も把握できていないので、どうやって向かえばいいのか分からない。

「……あの連中に会わずに済むなら、私も賛成です。でも行き方が分からないのでは……」

「んぎゅうっ……あうっ……♡」

 クリトリスの先端をつつかれ私は悲鳴を上げる。もう間もなく絶頂を迎えてしまいそうだ。

 

(『追放の遺跡』は『スプリングタウン』から東に……『無獣島』は『サマーリゾート』の南にあった……もしかして)

 

 確か『オータムビレッジ』は『サマーリゾート』の北西に位置するとヒバニーが言っていた気がする。三つの都市が下向きの三角を描くように位置しているのなら『オータムビレッジ』は西の位置……。

 

「『オータムビレッジ』の……西……?」

 予想が正しければそこにもポケモンを拒むダンジョンがあるのではないだろうか。そして『追放の遺跡』と『無獣島』が繋がっていたように、そこもゲートで行き来が出来るのでは。

 

 

(そこに行けば、もう怖い思いも傷つく心配もせずに暮らせるのかな……)

 

 

「分かりました、ではそうしましょう」

 これからどうするかを確認出来て満足したのか、灰色のニンゲンは指を私の膣内へと勢いよく突き込んだ!

 

 

「あうぅぅぅぅん♡♡♡!!!」

 

 

 勢いよく潮噴きする私。嫌な思い出が快楽に塗り潰されていき、思わず口端が上がってしまう。

「えへ、えへぇ♡」

「……」

 しかし目の前の少女は私の笑みを見ても心配げな表情のままだ。

 

 

 

 そんなに私の笑顔が歪んでいるのだろうか。

 口だけが笑っていて、虚ろな目から涙が零れているのだろうか。

 

 

 

 

 

 数時間後、灰色のニンゲンは私を連れて洞穴から外へ出る。

 ダンジョンである故に岩の壁で見晴らしが悪く、あちこちに水場があって簡単に先へ進むことは出来なさそうだ。

 

「りんりん♪ 楽しい音を、りんりんりん♪」

 

 そして早々に前方の通路から一匹のポケモン……コロボーシがステップを踏みながら歩いて来た。短い足で何度も転びそうになりながらも楽しそうに音を奏でていた彼女は私達に気付くと動きを止める。

「わわっ、侵入者!? やっつけ……ううっ!?」

 私がこれまで出会った凶暴化ポケモンのようにコロボーシは敵意を露わにして迫って来るが、途中で顔を青ざめさせて転がるように飛び退いた。

「うげえっ……む、無理ぃ!」

 黒い靄による苦しさと不快感は、凶暴化による敵対心を上回る。コロボーシは私達への攻撃を諦め、通って来た通路を引き返して行った。

 

「……これがあれば、あの連中と戦わずに済みそうですね」

「……」

 黒装の欠片を持つ少女はそう言って広間を見渡す。これが放つ黒い靄でポケモンの接近を防止できるお陰で洞穴にいる間も安全に過ごせたのだ。

 

 ……しかしダンジョンには罠が存在する以上、こちらから行動するとなると話は別だ。

 インテレオン達救助隊ポケモンならワナを見つける技術を習得しているらしいが、私には使えないために踏まないことを祈りながら進むしかないだろう。

「じゃあ西……こちらへ進めばいいんですね?」

「……」

 灰色のニンゲンの確認に私はゆっくり頷く。

 今の私はどうしても集中力が落ちてしまっているため、彼女に前を歩いてもらうしかない。

 

「……」

 

 視界に映るのは灰色肌をした少女の後ろ姿。ぼさぼさの黒い髪、私とあまり変わらない背格好、スラリとした背中、小ぶりなお尻……。サイハイソックスしか履いていない彼女はその身体の大部分を晒しているのだが、隠す事もせず青空の下を堂々と歩いている。

(灰色のニンゲンは皆同じような格好だけど……理由があるのかな)

 そんな事を漠然と考える私。本当なら周囲……特に背後の警戒をしなければならないのだが完全に集中力が散漫になってしまっている。

 

 だから気付くことが出来なかった。

 

 

 ドスッ!

 

「!?」

 背中に何かが突き刺さり、私は声も上げられず転倒!

「えっ?」

 灰色のニンゲンが振り返ってくる中、私は痛みで涙目になりながら視線を向ける。

 私に当たった勢いで折れてしまっているそれは『てつのハリ』……ダンジョンで生成される、投げてぶつける道具だ。

 更に私達の後ろ側……通って来た通路にいたのは先程のコロボーシであった。

 

「近付けないなら道具で攻撃だーっ!」

「うぐっ!?」

 コロボーシは二発目の『てつのハリ』を投げつけ、今度は灰色のニンゲンに命中させる!

「とうっ!」

「痛いですっ! やめて!」

 凶暴化している相手は容赦なく道具での遠距離攻撃を連発し、たまらず灰色のニンゲンは悲鳴を上げた。

「えいえいっ!」

「ぐうっ……もう怒りました!」

 しかしコロボーシは攻撃を止めず、ついに少女も堪忍袋の緒が切れたようで走り出す!

「わわっ」

 『てつのハリ』を使い切り逃げ出そうとするコロボーシだが、焦ったことと足が短いことですってんころりんと転んでしまった。

「よし、チャンスです!」

「……っ!」

 そんなコロボーシの元へ近寄る灰色のニンゲンの後ろ姿に、私は嫌な予感をして声を上げようとするが喉がつっかえてしまう……。

 

「な、何を……」

「ゲットします」

 

 灰色のニンゲンの右手に触れられたコロボーシは紫色の光と化しその腕の中へと取り込まれた。

「……」

「あまり強くは無さそうですが……何もないよりはマシでしょうか」

 絶句する私の前に戻って来ながら少女は自らの右腕を眺めつつ呟く。

 彼女の右腕は触手のように蠢き、その先端では真っ黒のコロボーシが操られていた。

 

「……っ」

「……どうしました」

 プルプル首を振る私を見て灰色のニンゲンは口をとがらせる。

「仕方ないではないですか、さっきみたいに襲われた時に抵抗する術がないとどうしようもありません。あの村の時みたいに捕まりたくないです」

(それは……そうだけど)

 コロボーシは凶暴化していただけで、ニンゲンを憎んでいる訳ではない筈。本当は最初にステップを踏んでいた時のように明るい性格ではないだろうか。

「……どうしてあなたは、酷い事をしてくる連中の肩を持とうとするんですか」

 

 それは……最初はいがみ合っていても、お互いの事を知れたら絆が生まれるから。

 インテレオンの身を案じたマホイップに決闘を申し込まれても、エンペルトとお互いの価値観がぶつかりあっても、最終的には分かり合う事が出来たから……。

 

 でもテラキオン達『オータムビレッジ』のポケモン達とは……。

 

「……」

「敵なんかの事よりも、自分の身を一番に考えて下さい」

 黙り込んだ私に対し、少女は右腕を元の姿に戻しながら警告するのであった。

 

 

 

 その後も湖畔のダンジョンを進んでいた私達は小部屋で休憩することに。

「……お腹空きました」

 そんなことを言いながら座り込んでいる少女を尻目に私は水際に立っていた。

 

「……」

 水面に映る私の顔。

 バイブやリングの影響か、僅かに赤みを帯びた頬。

 少し汗ばんだ額と、垂れ下がった眉。

 固く閉じられた口からは喜びの感情は感じ取れない。

 そして青い瞳からは光が失われており、とても虚ろだ。

(……酷い顔。元の世界で孤独に暮らしてた頃よりも生気が無い……)

 

 見るのが嫌になり、私はブーツを履いた足で水面に映る自分を踏みつける。

 バチャンと音が鳴って波紋が広がった。

 それでもすぐに波紋は収まり、再び私の虚ろな顔が水面に映る。

 まるで、どれだけ嫌なことから逃げ続けても自分自身からは逃げられないぞと突き付けられているようだ。

 

『元の世界と同じじゃん、私』

 水面の私を見ていると、頭の中にそんな声が聞こえてくる。

 

『元の世界でも喧嘩したポケモンに嫌がらせして一人ぼっちになったのに、この世界でも自分を責めて来たポケモンを道具に変えてインテレオン達の所に帰れなくなってるじゃん』

 水面に映る私の姿がぼやけ始めた。

 

『……価値観が違う相手とも絆は生まれるなんて綺麗ごと言ったって。追い詰められたら本性が出るんじゃん……私、本当は物凄く攻撃的で平然と酷い事するんじゃん……』

 目を開けていられず、私はしゃがみ込んで自分の脚に顔をうずめる。

 

 

 

「ひゃあああああっ!?」

「っ!?」

 そんな私の横を凄まじい勢いで通り過ぎる灰色のニンゲン。

 彼女はかなり遠くまで飛んで行ってしまい、水柱を上げて落水した。

 

「あの嫌な靄を出す奴はいなくなったぞ」

「侵入者を各個撃破よ!」

 声がする方向には二匹の凶暴化ポケモン……ビーダルとアメタマがいる。ビーダルの手には『ふきとばしのえだ』が握られており、灰色のニンゲンが吹っ飛んでいったのはそれによるものらしい。

 灰色のニンゲンは泳げるのか心配になるが、ランドセルも無い私では助ける手段がない。

 

 そして凶暴化ポケモン達に抵抗する手段も……!

「『でんこうせっか』行くわよ!」

「うっ!」

 地面を滑るように素早く迫って来たアメタマに突撃され、私は転ばされてしまう!

「『ずつき』をお見舞いだぞ!」

「あぎっ」

 更にビーダルから追撃を受け、私まで水の中に落とされた。

 まだ浅瀬であり溺れる心配はなさそうだがこれ以上押し込まれたら危険だ。

「はあっ、はあっ……」

 急いで立ち上がった私はずぶ濡れのまま二匹のポケモン達から逃げ出そうとする。

 

 しかし激しい動きのせいでクリトリスリングが擦れてしまい、快楽が身体全体に走った!

「隙だらけだぞ、『かいりき』っ!」

「あひんっ……♡」

 ビーダルは怪力を発揮して私を後ろから捕まえてしまう。

(これじゃ逃げられない……!)

 身を捩るがビーダルの前足を振り解くことは出来ず、踵を彼に当てても離してくれない。

「いていて。アメタマちゃん、頼むぞ」

「任せなさいビーダル、『あまいかおり』」

「っ……?」

 アメタマの頭の突起から甘い匂いが漂いはじめ、私は怪訝に感じる……が。

 

(あ……あれぇ?)

 甘い匂いを吸い込んでいる間にとろんとした気分になり始め、力が入らなくなる。

 

「さて、問題はこいつをどうやって倒すかだぞ」

「そうね、『でんこうせっか』も全然効いてなかったわ」

 蕩けた表情になりビクビク身を震わせる私を観察しながらビーダルとアメタマが相談し出した。

「例えば物理技じゃ駄目だったりするのかしら。『みずでっぽう』!」

「ふああっ」

 アメタマから顔に冷たい水を掛けられ、私は必死に首を振る。

「うーん、ダメージが出ないわね……」

 彼女は困り顔をしながら『みずでっぽう』の照射先を顔から首へ、首から胸元へ移動させた。

 

 そしてお腹……おへそ。

 

「ふきゅっ♡!?」

 おへその奥に勢いよく水が当たり私は肩を跳ね上がらせる!

 

「お、さっきまでと反応が違うぞ?」

「ここが急所かしら。ビーダル、しっかり押さえといて」

 勘違いしているらしい二匹は私のおへそを責める方針に切り替えてしまう。

「ひゃうぅぅぅっ♡」

 感度が高いおへそを『みずでっぽう』から逃れさせようと身体を捩らせるが、ビーダルの『かいりき』で満足に動けない上にアメタマは逃げるおへそをしっかり捉えて水を当ててくる。

「んぐっ♡ ひゅうんっ♡」

 中腰ガニ股の体勢で必死にお腹を動かすが、その度にクリトリスリングが擦れる上に刺激を受ければ受ける程、膣内のバイブもだんだん無視できなくなってくる。

 

「いひ、いひひぃ♡」

「これ、ダメージになってるのかしら?」

「うーん、だんだん反応が激しくなってるぞ。もっと続ければ倒せるかもしれないぞ」

 快感で口端を緩める私に対し、アメタマ達は攻撃という名のへそ責めを継続。おへそを隅々まで洗い流され私はあまりの刺激に身体を痙攣させ始める。

(身体、ビリビリするぅ……。腰が勝手に動いちゃうぅ……)

 苦しいのか気持ちいいのか分からないまま、私はだらしなく舌を出して呼吸を荒くしていた。

 

「ああっ、もっと、もっとぉ……♡」

「あれ?」

「ん?」

 思わずそんな事を口走ると、ビーダルとアメタマが首を傾げる。

「どういうことかしら?」

「分からないぞ……急所じゃなかったのか?」

 『みずでっぽう』も止まってしまい、私を襲っていた刺激も収まってしまった。

(だ、だめぇ……完全に発情しちゃったぁ……)

 私は自らの性欲を抑えきれなくなりビーダルに捕まったまま腿で股間を擦ろうとする。

 

「ビーダル、後ろ!」

「!」

 だがアメタマの合図と共にビーダルは突然私を放り投げた!

 

「うぐっ!」

「あがっ!」

 一秒足らずの浮遊感の後、私は何かにぶつかって悲鳴を上げる。

 

 何にぶつかったのかと涙目で見るとそれは灰色のニンゲンだった。私がへそ責めされている間に自力で泳いで戻って来たらしい。

「いたたたた……」

 しかし彼女は私をぶつけられた痛みで身を震わせている。イヴやトワもそうだったが、彼女らは痛みに非常に弱いらしい。

 

 そんな事を考えながら起き上がろうと身動ぎすると脚が何かにぶつかる。何だろうと思考する間もなく青色の光が放たれ、視線を向けた時には『それ』は無くなってしまっていた。

 

「……? よく分からないけれど、黒い靄を出す変な黒いのが無くなったわ!」

「これで気兼ねなく近付けるぞ!」

「……!」

 凶暴化ポケモン達の嬉しそうな言葉で私は理解する。

 

 さっき脚に当たったのは黒装の欠片。『つめとぎ山』や『蒼海晶洞穴』でやったように、黒い靄を発生させる黒装の欠片を誤って消してしまったのだ……!

 

 顔を青ざめさせる私へと向かってくるビーダル達。

(このままじゃ……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

「『リフレクター』!」

 

 

 眼前に半透明の壁が現れ、ビーダルとアメタマが弾き返される!

 そして壁の手前には私達を守るように立ち塞がるポケモンがいた。

 

「ルーア、無事!?」

 

(チコリータ……!?)

 どうして彼女がここにいるのかと私は困惑。

「おらあっ『ニトロチャージ』!」

「あうっ!」

 続けて炎を纏ってアメタマに突撃しながら現れたのはヒバニーである。

「アメタマちゃん……ぐわっ!?」

「『チャームボイス』だよっ!」

 思わず視線を逸らしたビーダルを魅惑の鳴き声で攻撃するのはアシマリ。

 

「だ、誰なんだぞ!?」

「自己紹介してやるぜ、俺達は救助隊『ゆけゆけズ』だ!」

 戸惑うビーダルの問いにヒバニーが腰に手を当てて力強く回答する。

 

 そう、『メロエッタ劇団』の巻き添えの形で『黒装モンスター』に襲われていた筈の『ゆけゆけズ』がどういう訳かこの場に現れたのだ。

 

「なんで私達を守って……?」

 ようやく立ち直った灰色のニンゲンは凶暴化ポケモンと相対するヒバニー達を見て困惑していた。

「侵入者は全員分からせてやるわよ、『みずでっぽう』!」

「おっと……」

 アメタマは怒りを増幅させて水を放射するがヒバニーは身体を捻らせて回避!

「隙アリだぞ、『アクアジェット』……ぶっ!?」

「させないわよ」

 そこへビーダルが水を纏って高速突進するがチコリータの『リフレクター』がそれを阻止する。

「行くぜ『にどげり』!」

「ぐっごっ!?」

 反撃としてヒバニーが連続蹴りをビーダルに見舞った。

 

「よーしチコリータ! 『レンケイ』いくよっ!」

「いいわよ、『どくのこな』!」

 アシマリの合図を受け、チコリータが毒素を含む粉を撒き散らす。

「そんな所で撒いたって届かない……」

 アメタマはそれを見て嗤うが、即座にアシマリが動き出した!

 

「『こごえるかぜ』ーっ!」

 

 アシマリは冷気の風を起こし、『どくのこな』を乗せてアメタマ達にぶつける!

「ひいいっ!?」

「さ、寒いぞぉ! お腹が痛いぞぉ! 動けないぞぉ!」

 チコリータとアシマリの『レンケイ』を浴びた凶暴化ポケモン達は寒さと毒の相乗効果で身体を震わせ、全く動けなくなった。

「よーし、総攻撃だ!」

「おーっ!!」

 そして『ニトロチャージ』、『はっぱカッター』、『チャームボイス』が炸裂し、ビーダルとアメタマは目を回して倒れ伏すのであった。

 

「……」

 

 ただ黙ってそれを見ていた私へと『ゆけゆけズ』が振り返ってくる。

 

 ……笑顔で。

 

「ルーア、無事で良かったぜ」

「大丈夫だった? 痛い所とかは?」

「……ルーア?」

 三匹に尋ねられるが、私は何も答えられない。

 

 苦しい。

 そんなキラキラした姿を、見せないで。

 とんでもない罪を犯した私なんかに、近づかないで……!

 

「ん、後ろにいるのって……?」

 その時ヒバニーが灰色のニンゲンに気付いて覗き込んでくる。

 

「……っ!」

 そして、反射的なものなのか灰色のニンゲンが恐怖に顔をゆがめ、彼に左手を伸ばした!

 

 

 

「駄目ッ!!」

 

 

 

「……っ!」

 私は灰色のニンゲンの胸元に飛び込んで前に進めなくする。

 それにより彼女の左手はヒバニーの鼻先で止まり、触れる事は無かった。

「お願い……争わないで……」

「……で、でも」

 物凄く苦しいけれど、必死に声を絞り出して少女を押し留める。

「もしかして、お前が『灰色のニンゲン』?」

 ヒバニーに問われ、少女はビクリと身体を震わせた。

「まさかあなた、ルーアの仲間なの?」

「それじゃ敵じゃないんだね!」

「……?」

 続けられるチコリータ達の言葉に灰色のニンゲンは紫の瞳を揺らす。

 彼女にとってポケモンは理不尽に自らを害してくる敵でしかなかったのに、その前提を揺るがす存在が現れたことで混乱しているのだろうか。

 

「あなた達は……私の事、襲わないんですか」

 恐る恐る、といった様子で『ゆけゆけズ』に問いかける灰色のニンゲン。

「場合にはよるけど……お前を攻撃する理由は今の所ないしな」

「あなた達がポケモンを敵視するのは、この世界に来た直後に凶暴化ポケモンに襲われたからって聞いてるの。最初にそれを聞いた時は半信半疑だったけれど、こうして実際に話すとそれは本当だったって思うわ」

「ルーアの友達なんだよね? 安心してっ、私達もルーアの友達なんだ!」

 

(とも、だち……)

 

 私が『ゆけゆけズ』に背を向けたまま目を見開く中、灰色のニンゲンは俯いて自らの右手を見つめる。

「それじゃあ自己紹介するね、私はアシマリ! 『ゆけゆけズ』の新メンバーでスーパーアイドルを目指してるよ!」

「俺はヒバニー! 伝説のダイヤランクを目指す救助隊員だぜ!」

「あたしはチコリータよ。よろしくね」

「……」

 次々に名乗られ、灰色のニンゲンは更に訳が分からないと言った顔になる。

 

 

 けれど……何かを感じたのだろう。

 

「っ!」

 灰色肌の少女は右腕を勢いよく振るい、取り込んでいたコロボーシを解放した。

「えっ!?」

 『ゆけゆけズ』は目を回した状態のコロボーシを数秒見つめた後、揃ってこちらに向き直る。

「……本当に、襲わないんですか?」

 自ら抵抗手段を手放した少女が、物凄く不安そうな顔で再び問いかける。

「あのコロボーシを取り込んでたのね……でも自分から解放して……」

「それはつまり……私達を信じてくれたって事!?」

 目をキラキラさせたアシマリに詰め寄られ、少女は慌てて目を逸らす。

「信じたというか……その、えっと……」

「へへっ、その様子を見ただけで悪い奴じゃないって何となく分かるぜ」

 言い淀む灰色のニンゲンに対し、ヒバニーは笑顔で言った。

 

「……っ」

 彼女は息が詰まったかのような声を立て、目を見開く。

 そして、少女は彼らに背を向けると何度も目元をゴシゴシ拭い始めるのだった。

 

 

 

「……それで、ルーア」

 今度は私に話しかけてくるチコリータ。

「どうしてずっと後ろ向いたままなの? それにさっき……物凄く悲しそうな顔してなかった?」

「……っ!」

 彼女に問われ、私はビクリと肩を震わせた。

「どうかしたのかよ?」

「悩みなら聞くよ! 友達だからねっ!」

 

 ともだち……っ。

 

 でも、テラキオンを道具に変えてしまったなんて言ったら軽蔑される……!

 折角友達だと言ってくれたアシマリ達から、嫌われる……!

 

「……泣いてるのか?」

 私の前に回り込んでいたヒバニーが心配するような顔で見上げて来ていた。

「……っ」

 灰色のニンゲンみたいに涙を拭いたいのに、手錠がカチャカチャ鳴るだけでどんどん涙が頬を濡らす。

「ルーア、あたし達に話すのは難しい? インテレオンにしか知られたくない事?」

「……もしそうなら、インテレオンくんと会えるまで私達が傍にいるよ」

 そんな事を言われる度に、私は胸が締め付けられるような感覚に襲われる……。

 

 

 

 

 

(こんなに罪深い私が、こんなに立派な子達と友達なんて、いけない)

 初めての友達、失いたくない……!

 

(だってポケモン達の『敵』に堕ちた私と、ポケモン達の『味方』であるこの子達は真逆だから)

 『ゆけゆけズ』の敵になんか、なりたくない……!

 

(それにポケモンといたら、傷付けられる未来に怯えたまま生きる事になる)

 独りぼっちで、この傷だらけの心を歪んだ幸せで塗り潰しながら生きるなんて、辛い……!

 

(嫌な思いしたら、カッとなって攻撃的な本性を晒しちゃう。災いを振り撒いちゃう)

 『オータムビレッジ』のポケモンに追われてる私を、守って欲しい……!

 

(双方のためにも、私なんかいなくなった方が良い。消えた方が良い)

 心が痛くて苦しい、救って欲しい、救助して欲しい……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ……ヒバニー、チコリータ、アシマリ……。お願い、助けて……!」

 その場にへたり込み、私は懇願する。

 

「私……『オータムビレッジ』で捕まって……。『歪みの穴』現象を起こしてる元凶が私じゃないかって疑われて……ううっ……。それでカッとなって、テラキオンを道具に変えちゃった……!」

 己がやってしまった事を、正直に打ち明ける。

 

「戻し方も分かんないし、ポケモン達にもきっと恨まれてるし……! ひぐっ、私だけじゃどう挽回すればいいのか、どうすれば許して貰えるのかも分かんないよぉ……!」

 情けないけれど、みっともないけれど。

 

「う……うわあああん……!! お願い助けてぇぇ……!!」

 私一人ではもうダメなのだと、泣き喚いた。

 

 

 

 

 

「任せとけー!」

 

「任せなさい!」

 

「任せてよっ!」

 

 三匹の声が重なる。

 

「苦しくて辛い事、話してくれてありがとなルーア」

「本当に、本当に大変だったわね……でももう大丈夫」

「私達、絶対にルーアを助けてみせるよ!」

 『ゆけゆけズ』が笑顔を私に向け、躊躇いなく言った。

 

「……っ、ぐすっ……」

 それを見ると、それを聞くと……涙が余計に止まらなくなる。

 迷惑かけることを謝りたいのに、それでも助けてくれることに感謝したいのに。

「ひぐうっ……うああっ……!」

 嗚咽ばかりが出て、彼らに何も言えない。笑顔を返す事すら出来ない。

 

 それでも必死に頷く。

 私を助けてくれるポケモン達が確かにいる。

 まだ絆は断たれていないという事実を噛み締めた。

 

「それじゃあ……色々募る話はあるけど、一旦外に出ましょうか」

「外……ですか?」

 レスキューバッグから『あなぬけのたま』を出すチコリータに灰色のニンゲンが不安そうな顔をした。

「安心して、意地悪するポケモンはいないから!」

 それにアシマリが答えるのを聞きながら、私はあることを思い出す。

 

 視線を向けた先には目を回して倒れているコロボーシ、ビーダル、アメタマの姿があった。

 ダンジョンから出るのであればリライブしておいた方が良いだろうかと、私は重い腰を持ち上げて彼女らへと近寄る。

「ん……あ、リライブするんだな」

「自分も辛い状態なのに、ありがとねルーア」

 ヒバニー達の言葉を背に受け、私は三匹の凶暴化ポケモンを青い光で包み込んだ。

「ん、んん……?」

 無事にリライブは完了しコロボーシたちが目を覚ます……が。

 

(……?)

 それと同時に少し、私は自らの身体の中に違和感を覚えた。

 

 

 

 ……あんまり心の状態が良くない……から?

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