ゆらゆらと、ゆらゆらと漂う私の身体。
周囲は青い光……ではなく、何故か不安になる青黒い光に満たされている。
それにとても苦しくて、吐いてしまいたい気分だ。
そんな私の前に浮かんでいる、翼や角を持つ藍色の存在。
夜のような、月のような存在は赤い瞳を悲しそうに揺らして私へ近づいてきた。
『ライコ……私達は失敗した……私達のせいで罪の無い子が……』
嘆きながら翼を伸ばしてくる存在だが、私の瞼が落ちると共に儚く消えてゆく。
(あなたは……だれ、なの……)
「……ルーア、ルーアっ!」
「ん……」
オーマに呼ばれ、私は身動ぎする。
「……良かった、大丈夫ですか? どこか痛むところとかないですか?」
「……」
傷むところは……ある。
―――心が痛い。
―――苦しくてたまらない。
―――インテレオンに、癒して欲しい。
「……」
「……ルーア?」
何も言わずに立ち上がった私を見上げ、オーマが困惑した表情を浮かべた。
―――インテレオンはどこ?
―――『スプリングタウン』に行けば会える?
―――私の中に溜まったこの苦しみを、全部吐き出させてくれる?
「どこ、ゲート……」
「え、ルーア。どうしたんですか……? やっぱりどこか具合が……」
『追放の遺跡』へ繋がるゲートを探すために歩き始めた私をオーマが止めようとしてくる。
―――だめ、吐き出したい……。
「……ウァァ!!」
「っ!?」
私が叫ぶと共に、オーマの足元にワナが生成される。即座に起動したワナは黒光りする機械を生み出してオーマを捕まえた。
「ルーア、何を……はううっ♡!?」
拘束されたオーマの股間に十個近くのバイブやローターが一斉に当てられ、彼女は悲鳴を上げる。
「あうっ♡! これっ止めて下しゃいルーアぁ……♡ ああっ♡!!」
懇願しながら早くも絶頂を迎えるオーマを尻目に私は、全く改善されない苦しさに耐えながら歩き出した。朽ちて動かなくなったエスカレーターを登り、屋上を目指す私。『追放の遺跡』では『無獣島』と繋がるゲートが屋上に生まれていたためもし同じであれば……。
「あ、やっぱりルーア!」
本来はポケモンバトルコートが設置されていた屋上には予測通りゲートが開かれており、その前ではゲートを通って来たらしいイヴが笑みを浮かべて手を振っていた。ゲートが二つ並んでいるが、おそらくそれぞれ『追放の遺跡』と『無獣島』に繋がっているのだろう。
「新しいゲートが出来てたからもしかしてと思ったけど、無事でいてくれた……」
「……」
彼女に頷きだけ返した私は重い足取りでゲートへ向かう。
「……ルーア、どうかした…?」
―――やめて、刺激しないで。
「なんか目の色が……青じゃなくて、紫になって……」
心配するような表情でイヴが私の肩に手を触れて来た。
―――我慢できない、出ちゃう……!
「……アゥゥ!!」
「わ、わわっ!?」
再び私が声を上げると共に、先程と同様にワナが出現。イヴに大量のガスが噴きつけられ、彼女はその場にへたり込む。
「ひ、ひぃぃぃん……♡ 身体、ムズムズするぅ……♡」
発情ガスを思い切り吸い込んだイヴは自らの乳首や股間を弄りながら恍惚とした表情となった。
「あっあっ♡ ルーア、一体、どうしたのぉ……♡?」
それでも私を心配してくるイヴを残して私はゲートに入る。
―――減らない。身体に溜まった嫌な力、全然減らない!!
ゲートを通り『追放の遺跡』へ飛んだ私は遭遇したトワもワナにかけ、一人で『スプリングタウン』への草原を進んでいた。
「……っ」
青い空、白い雲、緑豊かな草原と山々、視線の先には巨大な桜の木……懐かしい『スプリングタウン』だ。そしてあそこにインテレオンの家もある。彼と一緒に帰りたかった家がある。
―――インテレオン、インテレオン……!
必死に体内の苦しさを抑え込みながら、私は一心不乱に脚を動かす。脚を動かす度に股間が擦れて、何もしなくてもバイブで刺激されて、我慢しようとしてもインテレオンが欲しくて堪らなくて……!
「はあっ……はあっ……♡!!」
どれだけ腕を動かそうとしても手錠はそれを許してくれずオナニーなんて出来ない。ただでさえ苦しいのに、首輪で余計に息苦しい。全裸に靴下とブーツだけのいやらしい自分の姿が視界に入る度に発情してしまう、快楽が欲しくなってしまう。苦しくて欲しくておかしくなりそうなのに、何もせずただ存在しているだけで余計に苦しくて欲しくなる……! 抑えようとしてもどんどん強まって……!
―――壊れちゃう、壊れちゃうよ……! 助けてインテレオン!
巨大な桜の木がシンボルである、ポケモン達が集う町『スプリングタウン』。
「……ん?」
「え、ちょっと待ってー!」
その地へ足を踏み入れようとする私を呼び止めるのは門番を務める二匹のポケモン、カブルモとチョボマキだった。
「ルーアか? 無事だったのか!?」
「あなたが消えたってインテレオンさんが言ってて……」
心配と安堵が入り混じった顔で話しかけて来る二匹。
―――インテレオン……。
「ど、どこ……?」
「え? ここは『スプリングタウン』……」
「……ルーア、なんか様子が……。 ママンボウさんの所に行った方がいいんじゃー?」
インテレオンの居場所を探そうと私は歩みを進めるが、チョボマキが冷や汗を垂らしながら立ち塞がってくる。
―――邪魔……しないで……! もう、限界なの……!
「ク……アァ!!」
「どわぁ!?」
「ひゃあ!?」
突如周囲に漂い始めた黒と紫の靄。カブルモ達に苦痛を与える靄の発生源は……私だ。
―――力が勝手に出ちゃう……! 災厄を振りまいちゃう……! 靄を止めなきゃ……でも、折角外に出せた苦しみをまた取り込みたくない……!
私は身体の重さを我慢して、カブルモ達をその場に残して町中へと足を進めた。すぐに裏通りに入り、ポケモン達を避けながら目的地を目指す。
インテレオンと一緒に何度も通った閑散とした裏道。少し日当たりは悪いものの暖かい春風が吹き抜ける穏やかな場所。
しかし、今の私にはそれらの懐かしい世界が夢幻のようにしか感じられない。辛くて虚しくて、五感が鈍ってしまう。
「う、うぅ……!」
かつてよりも何倍も長く感じる道のりを進んだ後に私はようやくインテレオンの家に辿り着く。落ち着いた色調のレンガ造り二階建て家屋。家の前に広がる大きな池と水面に浮かぶ睡蓮。
しかし私にはそれらに意識を回す余裕もなく、飛び石を渡って扉の前へ。
―――インテレオン、インテレオン……!
ノックもせずに扉を開け、中に入る私。
そして出迎えるのは誰もいない空間。インテレオンの気配も感じず、まるで私が初めてこの家に迷い込んだ時のようだった。
「……ど、どこ? インテレオン、どこいるの……?」
ガタガタ身体を震わせ、涙や汗、膣液を撒き散らしながら私は家中を探し回る。
しかし私が求めている彼の姿は一階にも二階にも無い。チョボマキ達の話なら、私が姿を消した事はインテレオン自身が周りに伝えた筈なのに。最後に入った私の部屋にも彼はおらず、代わりに彼が運び込んだと思われる私のランドセルが置かれていた。
「ルーア」
「……」
その時名前を呼ばれるが、期待した彼の声ではない。何者かと警戒し視線を動かすと、窓の向こう……青空の下で羽ばたくポケモンの姿が見えた。
あれは『スプリングタウン』で活動している救助隊ポケモンを統括するギルド長、ファイヤーだ。
「カブルモ達から緊急報告があったよ。ルーア、どうしたの!?」
その背には補佐のチェリムもおり、窓から顔を出す私へ悲痛な表情で呼び掛けてくる。
「……インテレオン、どこ……!?」
依然として私から黒き靄が放たれているが、ファイヤー達は距離を取っており届いていないようだ。
「インテレオンは『ナイトスター』と一緒に、最近新しく生まれたダンジョン『崩れ谷』の調査に行ってるけど……それよりルーア自身が……」
―――マホイップ達と一緒に……? 私のことは、どうでもいいの?
「ここから離れた位置のダンジョンであるため、私達がインテレオン達に伝えましょう。ルーアの現状を伝えればすぐに戻って来る筈です。あなたを元に戻すためにも協力して……」
―――行かなきゃ、インテレオンを取り戻しに行かなきゃ……!
私は自室に置いてあった水色のランドセルに触れて背負うと、『崩れ谷』へ向かうために家から飛び出す。
「ちょ、ちょっとルーア!?」
「聞いていますかルーア、あなたはここで待っていればそれで……」
上方から聞こえる二匹のポケモンの声。
―――待てない、待てない、待てない!!
「ハゥゥ!!」
「っ!!」
私のランドセルから飛び出した『こんらんのえだ』。その道具はたちまち黒き闇に包まれ、四方八方に闇弾を乱射する。辛うじてその全てを回避するファイヤーだったが、私に対する警戒を強めたのか距離を更に広げた。
「……あ」
誰にも命中しなかった闇弾は軌道を変化させると、道具を使った私にまっすぐ戻って来る。
私は逃げる事も出来ず大量の闇弾に肉薄され……そして闇は青い光を放って消えた。
「かっ……ああっ……!!」
―――苦しいぃ……! また違和感が身体の中に入って来て……!!
「ルーア……!」
身体を震わせ蹲る私を見てチェリムが声をかけてくるが、私は今も黒い靄を放っているため迂闊に近寄れない様子だ。
―――苦しいの消したいのに、消せない! 無理に外へ出しても戻って来ちゃう……!!
「はぁ、はぁ、はぁ……♡!」
腰を揺らしながら立ち上がる私はランドセルを揺すって次の道具、『せいなるタネ』を取り出す。
「お待ちなさいルーア!」
「まさか……!」
目を見開いて叫ぶファイヤー達へ返事をする余裕もないまま、私はランドセルの力で闇に包まれたタネを躊躇いつつも口に含む!
―――食べたくない! 闇をこれ以上取り込みたくない……けど、インテレオンに早く会うための、一時の我慢だから……!
とても自然に生まれたとは思えない形状のタネを咀嚼し飲みこむ私。体内の重々しい気分が強まると同時に私の身体が白い光に包まれて浮き上がる。
『せいなるタネ』は食べる事で目指す先……例えばダンジョンの奥へ続く階段の近くなど、目的地へ飛ばしてくれる強力な道具だ。そして私が食べたのは闇に包み込んで強化させた『せいなるタネ』……。
口の如く開く谷。深く暗きその底を知りたばその身を贄として落とす他無し。
その口は雨で崩れる岩を喰らい、底無き腹を満たさんと風の唸り声を上げる。
潤わぬ渇望が更にその口を裂かせ、大地を喰らい続ける地、『崩れ谷』。
「あうっ……!」
テレポートの勢いが強すぎたためか、地面に勢いよく叩きつけられる私。咳き込みながら目を開けると、すぐ傍に切り立った崖があるのに気付く。もう少し座標がズレていたら谷の底へ真っ逆さまだっただろう。
「……っ」
崖際に立って覗き込んでみるが、あまりに深いためか谷底がどうなっているかも分からない。谷を吹き抜ける風の音がまるで凶暴なポケモンの叫び声のように聞こえる。
「んっ……♡」
バイブによりまた感度の波に襲われた私が思わず足を動かすと、蹴られた石が切り立った崖にぶつかりながらどこまでも転げ落ちていった。もしあれが石ではなく私自身だったらと思うと身体が震えあがってしまう。
―――行かなきゃ、インテレオンを取り返さなきゃ……。
私はビクンビクンと身体を跳ねらせながらダンジョンの入口……谷底へ向かう坂を降り始めた。
ポタリ、ポタリ。
「あっ……はあっ♡」
クチュ、クチュ。
「ん……んんっ♡」
ブブブブブ……。
「ふ……あうっ♡」
いやらしい喘ぎ声を上げながらダンジョン内を一人で進んでいた私だったが、性欲があまりにも強まり過ぎて脚を動かす気力も失われてしまう。
―――犯されたい! インテレオンにレイプされたい! おマンコにチンコ突っ込んで欲しい……!!
子宮と膣が彼の陰茎を欲しがってキュンキュン疼き、口からも涎が垂れ落ちていた。少しでも快楽を得て苦しさを取り除くためにオナニーをしようかと考える私だが、足を止めていたらインテレオンに追いつくのが遅くなるのではという懸念も抱く。
「ふ、ふあぁ……♡」
私の本能が我慢できなくなったのか、身体が勝手にダンジョンの壁に寄りかかり腿で股間を擦り始めた。
(気持ちいい……気持ちいい、けど……)
―――欲しい、欲しいよ! 心の底から気持ちよくなれるインテレオンが欲しいよぉ!
目先の快楽に惑わされてないで早く足を進めなければと理性が叫んでくる。しかし本能もこれ以上は無理だと譲らない。
「あ、あー……♡ ああー……♡」
結局私は股間を擦るように脚を進ませ、先へ進む事と快楽を得る事を両立させる体勢になる。しかし両立というよりはどっちつかずの状態であり、進むスピードは格段に落ちているし快楽も微妙で性欲は収まるどころか増々膨れ上がるばかりだ。
カチリ。
「……あうっ!?」
歩いていた私の足元で隠れていた『ころばせのワナ』が作動し、私は思い切り転倒してしまう。背負っていたランドセルが外れてすぐ傍に落ちてしまうがそれよりも……。
「う……ううっ……ぐすっ」
苦しくて切なくて辛い状況なのに、更に痛い目にまで遭わせられて私は泣くのを我慢できなくなっていた。
―――出したい! 溜まったモノ、出したい!!
「……ケ、ケホッケホッ!!」
私が吐き出すような勢いで激しく咳き込むと、今度は濃密な黒き物体が出現する。それは『未踏摩天楼』などを満たしていた闇そっくり……否、それそのものとしか言えない存在だった。
(こ、これは……もしかして私が……?)
「オラオラ、誰かいやがんのか!?」
「俺っち達の谷を荒らす不届きものかァ!?」
その時、騒がしい声と石と石がぶつかり合うような物音がダンジョンの先から聞こえてくる。先程激しい咳をしてしまったせいで気付かれたのだ!
そして間もなく曲がり角の先から姿を現したのは石に腕と顔が付いたポケモン、イシツブテ達だ。凶暴化に囚われた彼らは私を見つけると互いにぶつかり合いながら接近してくる……が。
「……んなっ!?」
「ぐええっ!」
「う、動けねえ、どうなってんでい!?」
どのイシツブテも私が放つ靄を浴びた矢先に次々と倒れ込んでいった。彼らはダンジョンの外から来た存在である私を排除するため、必死に動こうとするが手を使って這いずるのがやっとらしい。
そして、そんなイシツブテ達に近付いていくのは先程私が放出した濃密な闇。
「な、なんでいこりゃあ……」
闇の塊は先頭のイシツブテへ近づいて行き、その形を歪ませ触手のようになり……。
脳裏によぎる、スピアーやチルタリスの『虚空に現れた謎の闇に取り込まれた』という証言。
あれはもしかして……黒い繭を生み、ダンジョン巨大化を発生させる存在なのでは?
「だ、ダメェェ!!!」
私は力を振り絞って起き上がると、イシツブテに触れる寸前の闇に足を当てる!
すると黒装の欠片や黒い繭のように目の前の黒い塊は青い光を放ちながら消えていった。
「……あ……が……!」
しかし同時に私の中に再び苦しみが蓄積される。まるで自分の嘔吐物を再び飲みこんだような、そんな苦痛に私は全身を小刻みに震わせ出した。
―――折角出したのに! このままじゃ壊れちゃう! パンクしちゃう!!
私はランドセルを背負い直すと、震えが止まらない身体を無理矢理動かして歩き出す。しかし涙で視界がぼやけて、どちらが来た道なのかも分からない。
「い、インテレオン……たすけ、助けてっ……」
「……お、おい!」
「待ちねい、そっちは……!」
凶暴化しているイシツブテ達が目を丸くして呼び止めてくるが、それを聞く余裕は残っておらず。
下ろした脚が地面に触れず私はバランスを崩し、即座に全身を浮遊感が包んだ。
「あうっ!?」
急斜面にぶつかって全身に激痛が走り、再び浮遊感。
私は崖から落ち、深い深い谷底へ落下して行くのだった。
『崩れ谷』の崖から落ち、重力に引かれ谷底へ向かっていく私。
(私……このまま地面にぶつかって……)
インテレオンに会えないまま終わってしまうのだろうかと、私はギュッと目を瞑る。
―――やだ……!
開くランドセル。中から飛び出す『あかいいと』。闇を纏い黒い糸となったその道具は私の身体に絡みつき…。
「うぎゅっ……!?」
落下の勢いに反抗するように、糸は私を上方へ引っ張り始める。糸が食い込み悲鳴を上げる私だが、落下速度は少しずつ緩和されていた。
「ぎゃう!!」
そして全身に衝撃。遂に谷底へ激突した私は苦悶のうめき声を漏らす。勢いが事前に分散されたため幸い重篤なダメージとはならなかったが激痛が私を襲い、意識が朦朧とする。
更に追い討ちをかけるように、『あかいいと』がランドセルの中に戻ると同時に闇が青い光と共に消滅し……私の胸の奥にズシンと何かが蓄積される感覚が現れる。
―――また……苦しく……!
朦朧としていた筈の意識が嫌な感覚によって無理矢理覚醒され、鮮烈な痛みと苦しみが私の中で暴れ回った。
「う……うぅぅぅ……!」
「狙われてますわ、チルタリス!」
「『ロックブラスト』!」
「うわっと……」
どこからか聞こえてくる激しい物音。
「『ねっとう』!」
「ナイス、ドラミドロ」
「ぐぐぐ……もう許さん……『いかりのこうら』発動!」
方向は……前方。この暗い『崩れ谷』の谷底の更に先。
「きゃっ!!」
「マホイップ!」
「耐久力を犠牲にして火力と速度を上げる特性だ……! どうにかして動きを止めないと……」
―――今の声……。
私は立ち上がると、戦いの音が鳴り止まぬ通路の先を目指し重い足取りで歩いていく。"彼の声"が耳に届く度に膣がキュンと締まり、乳首やクリトリスも勃起した。
―――ああ、早く…早く会いたい! 早く私をグチュグチュに犯して欲しい!
「覚悟…『じたばた』!」
「私が、守る!」
「ありがとアノホラグサ! 『りゅうのはどう』!」
苦しくてたまらないけれど、あと少し…あとほんの少しだけ頑張れば楽になれる。この苦しさから解放される……!
「あんっ♡ あ、あぁ♡」
―――私の幸せが……もうすぐそこ……!
「スールを離すんだ……『ねらいうち』っ!!」
―――スール?
インテレオンの指先から放たれた超高圧縮の水弾がガケガニの甲羅……『いかりのこうら』で軟化した箇所を的確に撃ち抜いた。
「がふっ……」
ダメージが限界に達し、ガケガニは仰向けに倒れてゆく。そして彼のハサミに捕らえられていた者が宙へ放り出されるがチルタリスが素早く飛び込みキャッチ。
「…………」
その光景をただ眺めていた私。近付きたいのに、ガケガニが邪魔で近づけない。別に道を塞がれている訳ではないが、これ以上近付けば彼をリライブしてしまい更に私へ苦しみが溜まってしまう……!
「ニンゲン……ですの?」
「ルーアとそっくりね……」
『ナイトスター』が覗き込む先には金髪の少女がいた。イヴ達灰色のニンゲンとは異なり、私と近い肌の色だ。彼女には首輪と手錠が掛けられており、ローファーとサイハイソックス以外は何も纏っていない。
「……」
赤色の瞳を揺らして少女は自らを支えるチルタリス、覗き込んでくるマホイップ達を順に見つめ、最後にインテレオンと目を合わせた。
「……」
緊張したような顔をしていたインテレオンだが、自分の手を見てハッと目を見開く。そして寂しそうな顔をしつつ彼女に背を向け……。
「……メーくん?」
「!!!」
―――…………。
「メーくん、だよね?」
「……っ」
金髪の少女に問いかけられたインテレオンが身体を震わせる。
「め、メエクン?」
「ええと、ポケ違いではありませんの?」
「彼、インテレオン」
「失礼だけどあなたはニンゲンなのかしら? ルーアの知り合いではなくて?」
困惑した様子で『ナイトスター』が応対するが、少女はインテレオンから目を離そうとしない。
―――やめて。
「姿は変わっちゃったけど……あたし、分かるよ……メーくんでしょ? そうだよね?」
チルタリスに降ろされた彼女はヨタヨタとインテレオンに近寄る。縋るような笑みを浮かべているが、今にも泣き出しそうな目をしていた。
―――こんなの……嫌だ。
そしてインテレオンも泣く寸前の顔で振り向く。近付いて来る金髪の少女から離れる事なく、その姿を視界にしっかり収める。まるで、幻や夢では無いことを確かめるように。
―――お願い、私を……。
「スール……ッ」
「……っ、メーくん! メーくん……っ! うわぁぁぁん!!」
遂に我慢出来なくなった彼が絞り出すように漏らすと同時に少女が彼の胸元へ飛び込んだ!
泣き始めるスールを優しく抱いたインテレオンの目元からも一筋の雫が零れ落ちる。
―――……。
―――……裏切り者。