※この作品はR-18です。

裸の少女とポケモンだけが住む世界   作:Momyaka

62 / 86
Chapter55 ~舞うは銀杏と戦いの火花~

 

 その葉は染まる、光の黄色に。恵みの時期を知らせる光の下では数多の獣が餌を求めて奪い合う。

 戦を齎せし光はいずれ散り、大地に積もり、生誕の輪廻を導く道標となろう。

 生きる者、倒れる者、全てが光の葉に照らされる地、『銀杏山脈』。

 

 

 

「そろそろ時間だな」

 銀杏の実が漂わせる爽やかな香りに気が緩みそうになるが、私はエンペルトの言葉で我に返る。

「おほほほ。迅速に、目立たないように行動しましょう」

「まずはラウドボーンはん達を救助。そしてメロエッタはんの場所を特定した『ナイトスター』はんの合図があれば移動やな」

 私と共に『銀杏山脈』の南部で待機しているのは『ロイヤルズ』の面々だ。役割はキングラーが語った通りである。

「……ガブリアス達、大丈夫かな」

「信じよう。そして彼女らの勇気に応えるため、私達も必ずメロエッタのリライブを成し遂げるのだ」

 

 今頃『銀杏山脈』の西部ではガブリアス率いる『颶風の砂漠』のポケモン達が一斉に突入し凶暴化ポケモン達と戦闘を繰り広げている頃だろう。

 『銀杏山脈』軍団のポケモン達はその連携力で西部に集まるであろうがそれこそ私達の狙い。

 手薄になった北部や南部から少数部隊の私達がダンジョン内を一気に突き進み、大将であるメロエッタをリライブするのだ。

 

「よし。捜索部隊その壱、作戦開始!」

 エンペルトの号令に合わせて私達は『銀杏山脈』へ突入する!

 

 

 

「『シェルブレード』や!」

 迷路のように入り組んだ山道を進む中、立ち塞がったサッチムシをキングラーがその怪力で撃破。凶暴化ポケモン達が私達を襲いに来るものの、戦闘要員では無いらしく『ロイヤルズ』の進撃は止まらない。

「……」

 本当はリライブをしたい所だが、メロエッタの影響を受けている相手を目覚めさせたらもう一度倒す必要性が出て来てしまう。他の仲間達も動いている状況で足を止める訳には行かないのだ。

 

 カチリ。

 

「!」

 急いでいるにも拘らず、先頭を進んでいたエンペルトの足元に現れる『よびよせのワナ』……!

 

「ふんっ!!」

 しかしエンペルトは甘いガスが噴き出るより先に素早く翼を振るい、鋭いエッジでワナを切り裂いた!

 

「おほほほ、見事な『わなはずし』ですね」

 なんと『よびよせのワナ』は機構を切り裂かれた事で故障しており、作動する事はなかった。

 

 やはり『ロイヤルズ』はシルバーランク故に優秀な救助隊なのだ。私が今回彼女達と行動しているのも、突撃部隊となった『ナイトスター』の次に実力があるチームとなら高確率でメロエッタの下まで辿り着ける筈だからだ。

「この地帯にもラウドボーンはん達はおらんみたいやな。もっと奥行こか」

「そうですね……おや?」

 暫く探索を続けたものの目的のポケモン達が見つけられていない私達の下へと、何かが茂みを掻き分けながらやって来る。

 

 

 

「んんー、またあなた達ザマスか」

 現れたのは大きな尻尾と、よく目立つ前歯を持つ顔が特徴的なポケモン、ヨクバリスだ!

 

「『喰らう者』……だったか。何故ここが分かった?」

 『オータムビレッジ』で一度戦闘になったエンペルトは訝しげに尋ねる。確かに、西側でガブリアス達が暴れている筈なのにどういう事なのだろう。

 

「んんー、秘密ザマス! 『たくわえる』」

 ヨクバリスは叫ぶと同時に、自身へ力を収束させる!

「いけません、早く撃破しないと!」

 少し体が膨らんだヨクバリスへとアマージョが焦った様子で『トロピカルキック』を撃ち込む。しかし結構な体格差があると言うのにヨクバリスは少し呻くだけで仰け反りすらしない。

「『たくわえる』ザマス」

「ああもう! 『シェルブレード』や!」

 再び力を集める相手にキングラーも攻撃を仕掛けるが、こちらもあまり効いていない様子だ。

 

「な、なんであんなに平気そうにしてるの……?」

「奴は防御力を向上させる技で難攻不落の城と化す。『オータムビレッジ』の時も同じ戦法を使われ、こちらの攻撃が通用しなくなった」

 硬い顔で語るエンペルトの視線の先ではヨクバリスが三度目の『たくわえる』を発動し、アマージョや私を上回る体高にまでなっていた。

 

「さぁ、前回は仕留め損ねましたが今回こそじっくり料理してあげるザマスよ!」

 彼女は大きく膨れ上がった体でジャンプすると近くにいたキングラーとアマージョに襲い掛かる!

「『ボディプレス』ザマァァス!!」

「ぐふぉ!?」

 アマージョはギリギリで回避に成功するが、そこまで素早くないキングラーは堅牢となったヨクバリスに潰されてしまった。

「くっ、『ラスターカノン』!」

「んんー、効かないザマスねぇ」

 エンペルトが金属光を収束させヨクバリスの顔面に放つが、耐久の上がった相手は余裕の笑みを浮かべた。

 

「……っ!」

 私も暴れるヨクバリスを止めるため、ランドセルから一つのタネを彼女へ向けて飛ばす。

「んんー」

「あっ……」

 しかし相手は尻尾を振るって私が飛ばした『じゃあくなタネ』を弾き落としてしまった。

「甘く見るんじゃないザマス。『喰らう者』としてタネの効能は熟知してるザマスよ」

 得意げに語るヨクバリスは再びジャンプして今度は私とエンペルト目掛けて落ちてくる!

「っ!」

「わっ」

 だが『ロイヤルズ』のリーダーは私を担ぐと『ボディプレス』の範囲から脱する。

 

「ゲホッゲホッ……」

「平気ですかキングラー。どう攻めたものか……」

「……慌てるな」

 困った様子の仲間達に対しエンペルトはレスキューバッグをまさぐりながら落ち着かせる。

「はっ!」

「あいたぁ!?」

 彼女は『ゴローンのいし』をヨクバリスにぶつけて手痛いダメージを与える事に成功した。

 

(そうだ、『いしのつぶて』や『ゴローンのいし』は相手の硬さに関係無くダメージを与えられるんだ!)

 そこで私はだいぶ前にキングラー達が"エンペルトは自分達二匹のコンビより強い"と語っていた事を思い出す。それは単純なバトルの腕前だけではなく、道具の知識やワナの対策など救助隊としての能力も加味しての発言だったのだ。

 

「や、やってくれたザマスね……!」

「……」

 痛みで苦悶の表情を浮かべるヨクバリスの前ではエンペルトが次の『ゴローンのいし』を取り出そうとしている。

 

「さっさとあなた方を倒して『描く者』達の救援に行きましょ……『ほおばる』ザマァァス!」

 そして相手は尻尾から大量のきのみを取り出すと、それらを一気に頬張った!

 『オレンのみ』を含むきのみの効果で、ヨクバリスは回復すると共に更に防御力を強化する。

「回復までするんかい!?」

「これではジリ貧です……!」

 アマージョの言う通り、回復され続けたらいずれ『ゴローンのいし』が尽きてしまうだろう。

 

「ふむ……」

 エンペルトは今いる広間を見渡すと、バッグの中に『ゴローンのいし』をしまう。何か作戦があるのだろうか?

 

「ふっ!」

「んんー?」

 彼女は相手を翻弄するかのように部屋の中を駆け回り、背後を取ると『アクアブレイク』で強く切り裂く!

「ヤケクソザマスか?」

「かはっ……!」

 しかし防御力の上がったヨクバリスには殆ど効いておらず『ボディプレス』で反撃されてしまった。

 

「あ、あかん!」

「大丈夫!?」

 吹っ飛ばされたエンペルトの下に慌てて駆け寄るが、相当なダメージを受けてしまったようで苦しそうである。

「……っ」

「えっ」

 彼女は何も言わずに『ゴローンのいし』を私に託してくる。しかし正直のところ、ポケモンに石をぶつけるなど……。

 

 

(……いや、皆は戦ってるのに私だけそんな甘えた事言ってられない……!)

 自分だけ攻撃しないなんて我儘したせいで『銀杏山脈』軍団を止められず不幸になるポケモンを増やすなんて望んでない。

 

「……、いけーっ!!」

「ぶぶぶっ!?」

 ランドセルから『ゴローンのいし』がマシンガンの如く高速で発射されヨクバリスに命中していく。

(ごめん……でもっ!)

 ポケモンに対する暴力行為にも思えて胸が苦しくなるが、これ以上『銀杏山脈』と『オータムビレッジ』の溝を広げないためにも、私だって行動しなければならないのだ!

 

「ぐううっ、いい加減にするザマス!」

「うぎゅっ!」

 怒り心頭のヨクバリスは私を殴り倒すと苦しそうに呼吸する。大量に『ゴローンのいし』をぶつけられてかなり体力が減っているのだ。

「はぁ、はぁ……やっと黙ったザマスね。では『ほおばる』ザマス!」

 攻撃が止んだのを確認すると、ヨクバリスは尻尾から再び沢山の食べ物を出して確認もせずに一気に頬張る……。

 

 

 

「……ん、ん……おげぇぇ!?」

 しかし彼女は顔を真っ青にしながら食べた物を吐き出した! 咀嚼途中のきのみに混じって地面に落ちるのは『じゃあくなタネ』だ。

(さっきエンペルトが『アクアブレイク』をしたのは攻撃の為じゃなくて、『じゃあくなタネ』をヨクバリスの尻尾に仕込む為だったんだ……!)

 『たくわえる』で溜め込んだ力まで吐き出し、元のサイズに戻っていくヨクバリス。そして『じゃあくなタネ』の効果で耐久力も極限まで落ちている……!

 

「『シェルブレード』やっ!!」

「おっほっほ! 『トロピカルキック』!!」

 そしてキングラーとアマージョの同時攻撃を浴び、要塞のようだった『喰らう者』ヨクバリスは陥落するのであった。

 

 

 

 苦戦しながらもヨクバリスを退けた私達は更にダンジョンの探索を継続する。

「しかし……なしてあのヨクバリス、ワテらの位置が分かったんやろ?」

「『たんちのたま』でも使ったんでしょうか? ですがあれの効果範囲はダンジョン全体には程遠い筈……」

 通路を進みながらキングラー達は不思議そうに語る。折角奇襲を仕掛けようとしたのに位置がバレているのであれば台無しである。

「理由は分からないが『ゆけゆけズ』やジャラランガ達も同様に妨害を受けているかもしれない。合流出来ない可能性もあるという事も考えておけ」

 エンペルトは自分達の役目を果たす為、立ち止まることなくどんどん先を目指していく。

 

 そう、南部から突入した私達と同様に北部から奇襲部隊その弐であるジャラランガ達、南西部から奇襲部隊その参の『ゆけゆけズ』も『銀杏山脈』へと飛び込んでいるのだ。

 何処にラウドボーン達が囚われているのか分からないため、三組で手分けして探している段階である。

 そして……。

 

「あっ!」

 アマージョが声を上げて空を指差す。

 釣られて私も見上げてみると、青い空の中に光り輝く光の柱が屹立しているのが見えた。

「『ひかりのたま』を使った合図。どうやら『ナイトスター』がメロエッタを見つけたようだ」

「せやけどワテらも他の部隊もまだラウドボーンはん達を見つけられてへん。はよせんと!」

 メロエッタが逃げないようにマホイップ達は戦闘を開始しているだろうが、相手は凶暴化で強くなった幻のポケモン。ゴールドランクといえどいつまでも放置していたら敗北してしまう可能性が高い。

 

 

「喝……!」

 

 

「! 今の声はジャラランガ……」

 私は遠くから聞こえて来た声に振り向く。彼が『ばくおんぱ』を放つときによく発していた言葉だ……攻撃技を使ったという事は戦闘をしているということだろう。

「こちらから聞こえたな、行くぞ!」

 真っ先に飛び出すエンペルトに続いて広間から通路に入ると、複雑に入り組んだ分かれ道や十字路を音を頼りに進んでいく。

 

 そして辿り着いたのは数多くの銀杏の木が生えた、あちこちに池がある大きな広間だ。

 

「……む、ルーアに『ロイヤルズ』か!」

「もしかして救援に!?」

 ジャラランガとテールナーが驚きながらも安心したような顔を一瞬だけ向けて来るが、こちらの返事を待たずに戦闘態勢に戻ってしまう。二匹の前には同じく、二匹のポケモンが独特な構えを取っていた。

 

 

「見やがれ兄者! 新手共のお越しだぜ!?」

「おいおいおい! こりゃまた逆境、燃えるじゃねえかい!」

 片方は赤い肌をした寸胴なポケモン、もう片方は青い肌をした細身のポケモン。そしてどちらも白色の服のようなものを着ており、ほぼ裸の私とは大違いだ。

 

 

「『オータムビレッジ』への襲撃時には情報が無かったポケモン達ですね」

「あん時も『銀杏山脈』におった感じやろか」

「それなら名乗らにゃならねえなぁ!」

 ジャラランガ達に加勢しようとするアマージョ達に対して相手は声高に自己紹介を始める。

 

 

「おれたちゃ歌姫様より『競う者』の名を得し義兄弟!」

「兄者はダゲキ! こっちはナゲキ! さぁさ、覚えて貰おうかい!」

 そんな事を言いながら『ビルドアップ』で自己強化を行う凶暴化ポケモン達。

 

 

「破ァ!」

「いい加減にしなさい!」

 喧しく名乗りを上げる相手に対しジャラランガとテールナーは『ばくおんぱ』と『サイケこうせん』を当てるが、『競う者』コンビは『ファストガード』で遠距離攻撃を、『ワイドガード』で広範囲攻撃を完全に防いでしまった。

「ははぁん、真正面からの殴り合いが御所望なんやな、ならお望みどおりにやったるで!」

 それを見てキングラーは横歩きでダッシュし、巨大な鋏で『シェルブレード』を放つ!

 

「いかん!」

「一名様のぉ、ご案内ぃ!」

「あいさあっ!」

「ほげえっ!?」

 ジャラランガが彼を止めようとするが、ナゲキが『シェルブレード』を受け止めると同時にダゲキが『かわらわり』をキングラーの脳天に決める。

 

 更にナゲキは動きが止まったキングラーを太い両腕で持ち上げた!

「な、なっ、なにすんねん!?」

「よいよいよい、『ともえなげ』ぇぇぇ!」

 ナゲキは溢れるパワーで狼狽するキングラーを大きく放り投げてしまう。そしてその先には……!

 

 

「んなアホなぁぁぁ!?」

 なんとワナの一種である『落とし穴』があり、キングラーは悲鳴を上げながら暗い穴の中へ落ちてしまうのであった。

 

 

「キングラー!?」

「あいつは何をしているんだ……!」

 チームメンバーが落ちて行ったのを見て、目を丸くするアマージョと頭を抱えるエンペルト。

「あれのせいで迂闊に近付けないのよ……チャオブーとオーロットも落とされてしまったの」

「そっか……あれ、でもオーロットはゴーストタイプなんじゃ……?」

 苦々しい顔をしながらテールナーが語るが、私は矛盾しているのではと首を傾げる。オーロットにかくとうタイプの技は通用しない筈だ。

 

「ゴーストなんぞ、恐るるに足らずぅ!」

「おれたちゃ『ごりおし』の技能持ちぃ!」

「ご、『ごりおし』?」

「苦手なタイプを無視して攻撃を与えられる厄介な技能だ。ベクトルは違うが私の『わなはずし』と近い能力と思ってくれ」

 元の世界では知らない能力を言われて混乱する私にエンペルトが説明を入れてくれる。

 しかしそうなると接近戦を仕掛けると『落とし穴』に落とされ、遠くから攻撃しようにも防御技で防がれてしまう……ヨクバリスの時と同じで攻め手に欠けている状態だ。

 

「……場所を変えようとしたが、彼奴等はこの部屋から離れようとしない。もしやするとあの穴がラウドボーン達が捕らえられている空間に繋がっておるやもしれぬのだ」

 ジャラランガの言葉に私はダゲキとナゲキの様子を再度窺う。彼らは構えこそ取っているものの向こうから攻めて来ようとはしていない……まるで彼らの後ろにある通路を通行止めするかのように。

 

「あいつらをどうにかしてあの通路を進めば、地下へ続く階段があるかもしれないの。ラウドボーン達だけじゃなくてチャオブー達やキングラーとも合流出来るかもしれないわ」

「いよっ、ご名答!」

「しかしおれたちゃ無敵の義兄弟! 通るは不可能と胸にしかと刻みねえ!」

 自分達の役割を看破されたにも拘わらず、『競う者』コンビは余裕綽々と言わんばかりに答える。

 

「ううっ……!」

 私は身体を揺すってランドセルから『すいみんのえだ』を取り出し、ナゲキ目掛けて光弾を発射するがダゲキが『ファストガード』を発動して四散させてしまった。適当に道具を使ってもこちらが消耗するだけで決定打にならないようだ。

「……もしかしたらいけるかも」

「え?」

 何の効果も出せなかったにも拘わらず、テールナーは何か思いついた様子で木の枝を構える。

 

 

 

「ルーア、あたしと交互にえだを振って!」

「えっ、えっ!?」

 テールナーは一方的に言うと再び『サイケこうせん』を発射!

「あいよっ!」

 しかしダゲキは難なくそれをガードした。

「……、えいっ!」

「無駄な真似はよしなって!」

 私はとにかくテールナーを信じる事にして再び『すいみんのえだ』を振るい光弾を飛ばすが、こちらも『ファストガード』で対処されてしまう。

 

「次行くわよ!」

「ほいさ!」

「や、やあっ!」

「いい加減学習しなすって!」

 それを何度も繰り返すがダゲキは全部防ぎきってしまう。テールナーの狙いは一体……?

 

「なるほど、『ラスターカノン』!」

 しかしエンペルトも何かを察したようで金属の光を収束させた光線を一直線に飛ばした!

「……揃いも揃ってうつけ者とは、悲しいねえ!」

 これもダゲキは防いでしまうが、よく見ると言葉とは裏腹に表情から余裕が無くなっている。

 

 

「あ、兄者……まさか!」

 義兄のピンチを察したナゲキが『ピーピーリカバー』を懐から取り出すが、それを妨害すべくジャラランガが動き出す。

 

「『ばくおんぱ』ッ!!」

「っ!」

 唐突な攻撃を前にナゲキは咄嗟に『ワイドガード』で防ぐが、それにより道具をダゲキに渡すことが出来なくなった。

 

 

「はあっ!」

 そしてテールナーの渾身の『サイケこうせん』がダゲキに向かって飛ぶ!

 

「お、お、おおおおおっ!!??」

 ダゲキは『ファストガード』で身を守ろうとしたが幾度も発動したためにわざのパワーが尽きており失敗……弱点であるエスパータイプ技を真正面から浴びるという結果に終わった。

 

「兄者ぁぁ!?」

 ナゲキが吹っ飛んでいく義兄を思わず目で追いかけ、その隙に私は『すいみんのえだ』の光弾を彼へ飛ばす。

「う、うう……むにゃ」

「ぐぐっ、起きねいナゲキ……!」

 『サイケこうせん』を特性『がんじょう』で耐えたダゲキは苦しそうに上体を起こすが、そこに猛スピードで迫るのはアマージョだ!

 

 

 

「『トロピカルキック』!」

「がはっ!」

 彼女が放ったとどめの蹴りにて、一行はどうにか『競う者』であるダゲキとナゲキを相手に勝利を収める事が出来たのであった。

 

 

 

 『銀杏山脈』の地下に生まれた暗い洞窟。地上の清涼さが嘘のように空気が淀み土臭い。

「この扉か……?」

 ジャラランガはダゲキが落とした『あかいカギ』を、洞窟を塞ぐ扉の穴へと差し込む。

 

「開いたぞぉ!」

「ジャラランガ、助かりましたぞ……!」

「ほんま感謝やわアマージョ、エンペルト!」

 その先の小部屋、扉の真正面にいたチャオブー、オーロット、キングラーが歓喜の表情で次々と部屋から飛び出してくる。

 

 そして……。

 

「おぉ〜、感謝しよう〜……」

「プラチナランクが救助されるなんて面目ないぜ……」

 救助隊『メロエッタ劇団』のラウドボーンやデンチュラ達もここに閉じ込められていたようだが、流石に疲弊を隠せていない様子だ。

「話はオーロット達から聞いておる、凶暴化した団長を元に戻したいのじゃな?」

「うんむ、本来であれば『オータムビレッジ』に戻って休息して欲しい所ではあるが……」

「一刻を争う事態なんだよね、勿論アタイ達も協力するさ」

 ベラカスやコジョフーは凛々しい顔で私達への助力を申し出てくれる。メロエッタの事をよく知る彼らの力があれば作戦成功に大きく近付く筈だ。

 

「おう、ルーアだったか? お前も来たんだな」

「うん」

 離れた場所に立っていた私を見つけたデンチュラは友好的な態度で歩み寄ってくる。『サマーリゾート』では人間である私を監視していた彼であるが、今となっては苦しむポケモンを救う同志として見てくれているのだ。

 

「団長を救う為に力を貸してくれること、感謝するぜ。んで、どうしてそんな離れてんだ?」

「えっと……ダイマックスが起きちゃうから……」

「ん? あ、そっか」

 そこでチャオブーが自分のレスキューバッグに目を向ける。彼は『ねがいのかたまり』を運搬する役目も担っており、彼に近付いたら意図せずダイマックスが起きてしまうのだ。

 

「では話も程々に、メロエッタの下へ向かおうぞ」

 ジャラランガの言葉にポケモン達が地上に向け洞窟を戻り始める最中、二匹のポケモンが私を見つめて足を止めた。

 

 

 

「ルーア、ワタシ達もオーロットから話聞きまシータ」

「……」

 それはベロリンガとマリル……救助隊『ちゃんこ』に所属するポケモン達だ。

 

「アナタはポケモンが嫌いで、だけど一緒に鍛錬すればフレンドなれる思ってマーシタ。ワタシ達が決めつけたせいでアナタを傷つけたこと、謝らせてクダサーイ」

「……」

 彼女達に謝罪されるが、私は気にしないで欲しいと首を振る。こうして理解を示してくれただけでもありがたいし、今は先にメロエッタの事を止めなければならない。

 

「……あれ、そういえばハリテヤマは?」

「……実は行方不明デース。アナタ達が村を去った後、ハリテヤマも姿を消したのデース……」

 ジャラランガ達の後を追う途中で私はふと気になり質問すると、返ってくるのは思いがけない回答であった。

「もしかしたらこのダンジョンにいるんじゃないかとマリルと一緒に来まシタが、凶暴化ポケモン達に捕まって閉じ込められたのデース……」

 何故彼女達までここにいたのか疑問だったが、そんな理由があったなんて。

 

「それって私が『黒装モンスターとハリテヤマが似てる』なんて言ったから……?」

「……っ。ゴメンナサイ、その通りデース。ワタシ達のリーダーは悪者を許さない性格デスから、自分が黒装モンスターと繋がっているなど言われたら身の潔白を証明しようと行動すると思いマース」

 恐る恐る尋ねると、ベロリンガは申し訳無さそうにしながら正直に答える。以前『颶風の砂漠』でジャラランガが『テツノカイナ』の単語を聞いた時に意味深な反応を見せていたのはそれが理由だったらしい。

 

「……」

「落ち込まないでくだサイ、先に黒装モンスターとの関連を疑ったのはこちらデース。身に覚えのない罪を着せられてルーアが苛立つのは当然デース」

 沈黙する私にフォローを入れるベロリンガだが、やはりハリテヤマの行方が気になるのか表情は固い。

 

「……」

「イエス、マリルとワタシもメロエッタリライブ作戦に協力させて下サーイ。もしかしたらハリテヤマの行方も分かるかもしれまセーン」

 無言のマリルと頷き合った彼女は助力させて欲しいと願い出る。

 

「……うん、分かった」

 もしかしたらハリテヤマはワカシャモ達のように、今も私の存在を認めようとしないかもしれない。再度彼と顔を合わせるのは気が進まないけれど、彼を行方不明のままにすればベロリンガ達だって悲しむだろう。

 

 

 

 ラウドボーン達だけではなく、ベロリンガ達も仲間に加え一行はいよいよ決戦に向かうのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。