かつてソルガレオやルナアーラと共にこの世界を襲う災いを払ったライコとの対話を終え、帰還のために祭壇の機構で光と浮遊感に包まれた私達。間もなく足に地面の感触が戻って来る……が。
「っ!?」
生命の危機を感じ、私は本能のままに屈みこんだ。
だが突然の敵襲があった訳ではないし、黒い靄などが出て来ている訳でもない。
「寒っ!?」
悲鳴を上げるチコリータ。
そう、彼女の言う通り遺跡から脱出した先は凍てついた空気に支配されており、辺りには雪まで積もっているのだ。
「どどど、どらみどど。『ねっとう』、使っててて……」
「ぼぼぼぼ、ボクもあたたたたまりたい……」
「あ、あたくしも寒いのは苦手なのよ……!」
寒さに弱いらしい『ナイトスター』のメンバー達もブルブル身体を震わせ始めており、マホイップは困った様子で仲間を眺めていた。
「ヒバニーくんの体、あったかい~」
「ア、アシマリ! これじゃ動けねえって!」
「どうやら『オータムビレッジ』と『ウィンターキャッスル』の間にある祭壇に出ちゃったみたいだね」
ランクルスがため息をつきながら背後にある石造りの祭壇を見上げる。『スプリングタウン』と『サマーリゾート』の間にあった物と似ているが、周囲の気候は正反対だ。
「ちょ、ちょっと二人共大丈夫かい!?」
「さささ、寒い寒い……!」
大慌てで私とスールに駆け寄るインテレオン。それもその筈……私達はポケモンのような体毛など生えていない人間なのだ。そして人間であれば服を着て寒さを凌ぐのだが、私達が纏っている衣類はサイハイソックスぐらいで身体の大部分が寒気に晒されているのだ。
「遺跡に戻った方がいいのかな」
「同意見だ。先程のルイン・ルームにあったもう一つの祭壇が『サマーリゾート』側に繋がっているようだからな」
『エキサイト』達も寒そうにしながらも最善の行動を分析し、寒がるポケモン達を背後の祭壇に運び始める。そして先程のようにインテレオンが私達を抱えて祭壇に飛び乗った……が。
「……あれ?」
「作動しないぞ!?」
どういう訳か私達が乗っても転移が起こらないのだ。これではライコの拠点に戻る事が出来ない。
「うーん? ルーア、スール。どっちかライコの声聞こえる?」
「……っ!」
ランクルスに尋ねられるが、歯をカタカタ鳴らしてまともに喋れない私は必死に首を振った。視線を動かすとスールも聞こえないらしく、どうやらソルガレオ達の疲労でライコは声をこちらに届けることが出来ない、というのは今も変わらないようだ。
「ライコが動けないと遺跡も作動しないのかな……それはともかく、このままじゃ寒さで皆倒れちゃうよ」
「テントで寒さを凌げると良いのだが……」
「でも『サマーリゾート』のテントは通気性を重視した作りだよ……?」
困ったように『エキサイト』達が話していたその時である。
「……オヤ? アナタ方は……!」
「……」
私の耳に届いたのは聞き覚えのある声。
雪化粧した樹木の陰から現れたのはピンク色と青色のポケモン……『オータムビレッジ』で活動している筈の救助隊『ちゃんこ』のメンバー、ベロリンガとマリルであった。
「いやあ、助かったよ!」
「感謝感激、雨あられ」
ベロリンガの用意した薪と『ほのおのパンチ』による焚火で暖を取るチルタリス達が笑顔で感謝を伝える。
「アナタ方、ワタシ達の恩ポケデース。何より救助隊同士、助け合いデース」
「本当にありがたいわ……それであなた達、どうしてこんな所に?」
「……」
ドラミドロが尋ねるとマリルは暗い顔をして俯いた。
「……ワタシ達のリーダー、ハリテヤマを探してマース」
そして同じように笑みを消して答えるベロリンガ。結局『銀杏山脈』にはハリテヤマもテツノカイナもおらず、彼女達は『オータムビレッジ』周辺を探し回っていたのだと語る。
「ワタシ達では限界だと思ってネイティオを頼りマーシタ。そうしたら、『北の凍てつく焔』という手がかり貰ったデース」
「凍てつく焔? ネイティオの予言は万能じゃないとはネイティも言ってたけど、やっぱりよく分からないわね……」
「とにかく『北』というワードを手掛かりに、マリルと一緒に『ウィンターキャッスル』を目指す事にしたのデース。何か情報得られるかもと期待してマース」
確かに一理あると納得する私の隣ではインテレオンが硬い表情をしている。
「……一応聞くけれど、テラキオンとか……今も人間にいい印象を抱いていないポケモンが後から来る……なんてことはないよね?」
「インテレオン……」
そして彼は『ちゃんこ』のメンバーに対し、目を細めながら尋ねた。あまり余裕の無い表情にも見え、私やスールが万一にも危険に晒したくないという思いが見え隠れしている。
「それは……多分、来ないのデース。多分……」
「……」
それに対しベロリンガは歯切れ悪く伝える……が、マリルが黙ったまま彼女の尻尾をつついた。
「……そうデースね、ちゃんと話すべきデーシタ。順を追って説明すると……そもそもギルド長はまだ元に戻っていないデース」
「えっ、そうなの?」
「……私の言った方法じゃ駄目だった?」
御伽噺に載っていた方法では情報不足だったのだろうかと私は不安になりながら尋ねた。
「イイエ。『オータムビレッジ』の救助隊で力を合わせて、ルーアの言う通り『もうげきのタネ』を百個集めマシタ。そして元テラキオンの『もうげきのタネ』の周囲に並べた所、集めた『もうげきのタネ』が光と化して一点に収束し、とあるモノを生み出したのデース。その名は『ポケモンのワナ』」
「ワナ!?」
「ワナって悪いダンジョンエネルギーが生むのよね……失敗って事?」
「それもイイエ。居合わせたネイティオによれば、そのワナを勢いよく踏み抜けばテラキオンが元の姿に戻るとの事デーシタ」
「それで……踏んだんじゃないの?」
語るベロリンガに対し、アシマリが心配そうな表情で問いかける。
「突然の襲撃者に襲われ、踏めませんデシタ」
「襲撃者!?」
初めて聞かされた、『銀杏山脈』の問題が解決した筈の『オータムビレッジ』が再び襲撃されたという事実。
「黒装モンスターデース。テラキオンと非常に酷似したシルエットを持つ奴は折角生み出せた『ポケモンのワナ』を地面から剥がし、更に元テラキオンの『もうげきのタネ』まで奪って逃げて行ったのデース」
「……っ」
彼女の話を聞いて私は顔を青ざめさせる。黒装モンスターの目的はともかく、私がテラキオンを『ものがえだま』で道具に変えたりなどしなければこんな事には……!
「だから、ワタシ達だけではなくジャラランガや『メロエッタ劇団』……それに他の多くの救助隊たちも散らばってギルド長を攫った黒装モンスターを探していマース。だからごめんなさい……その内の全てがこの地域を訪れない……なんて保証は出来ないデース」
「……そうかい。キミ達もハリテヤマだけじゃなくてその黒装モンスターを探しているのか?」
「そういう指示はオーロットから受けてマース。けれどワタシ達の優先度としてはハリテヤマ救助の方が上デース。言い方に問題はありマスが、あの事件が起きたからこそテツノカイナという黒装モンスターが自分と似ているハリテヤマを攫った……という見方も出来るようになりマーシタ」
「『凍てつく焔』だけじゃなくて黒装モンスターという方面からも情報を集めるって事ね?」
チコリータからの確認にベロリンガは真面目な表情で頷く。本気で自分達のリーダーを助けたいからこそ、例えギルド長が攫われた事件であろうとそれを情報として利用するつもりなのだろう。
(でもテツノカイナは……私に悪いダンジョンエネルギーを流し込んだ後、動かなくなった筈じゃ……?)
「こんにちは」
「……?」
その時、何者かに声をかけられ一同は振り返った。
「!?」
そしてベロリンガとマリルが驚愕の表情を浮かべる。
なぜなら……そこにいたのはハリテヤマであったから。
「ハリテヤマ! 無事だったのデスカ!?」
「……? あぁ、はい。お陰様で元気ですよ」
慌ててベロリンガが詰め寄るが、ハリテヤマはにこやかに応対。彼は挨拶もほどほどに、といった様子で私に視線を向けてくる。
「……?」
「こんにちは、アナタのお陰でワタシはこうして元気です」
「……??」
『オータムビレッジ』の修練場で出会った時とは明らかに異なる様子でよく分からないことを話してくるハリテヤマに私は困惑するしかない。
「ワタシの仲間も元気にしてください。仲間はアナタを待ち望んでいます」
そして彼はにこやかなまま、私に大きな手を伸ばしてくる。
脳裏に浮かぶのは『銀杏山脈』で私を連れ去る為手を伸ばしてきたテツノカイナの姿。
「やめろ」
だが、ハリテヤマの前に立ち塞がったのはインテレオンだった。彼は目を黒い瞬膜で覆い、目の前にいるポケモンの生体情報を見通している。
「は、ハリテヤマ、どうかしたのデスカ? 喋りがおかしいデスヨ?」
「……!」
仲間と思しき相手に歩み寄ろうとしたベロリンガの尻尾を掴んで止めたのはマリルだ。
「アナタのご協力をよろしくお願いします。アナタが仲間を包んでいる瘴気を浄化することをワタシは望んでいます」
ハリテヤマはインテレオンに睨みつけられているにも関わらず、私へ更に手を伸ばしてきた。
「!!」
インテレオンは私を抱え上げて『とんぼがえり』で一気に距離を取る。
「瘴気って……」
先程ハリテヤマが語った言葉から感付いた様子のランクルスが身構えた。同時にオオタチやイルカマンも戦闘態勢に入り……。
「お前はまさか……『黒装モンスター』、テツノカイナか!?」
「その質問が"お前は元々瘴気に包まれていたテツノカイナだったのか"、という意図であればワタシはアナタに肯定を返す事が出来ます。逆に"お前は今もテツノカイナなのか"という意図の場合、今はこうして瘴気に侵されていないハリテヤマとして活動する事が出来ているためワタシはアナタに否定を返す事になります」
「……!」
にこやかな表情のまま淡々と答えるハリテヤマ……否、テツノカイナに対し一同は顔を強張らせる。
「先日、私の仲間であるテツノイワオがデータの交換先として相応しい、テラキオンを入手しました。そのためテツノイワオも元気にするため、早急にアナタのご協力が必要となります」
「……っ!」
それはまさか……私にまた夥しい量の悪いダンジョンエネルギー……瘴気を注入するという事だろうか?
テツノカイナは雪を散らしながらインテレオンに抱えられた私を捕らえようと迫ってくる!
「させないわよ! 『はっぱカッター』!!」
そこへ一直線に飛ぶ葉の刃。チコリータの攻撃がテツノカイナの体に命中するが、相手はあまり動じていない。
「敵性行為を確認しました。『銀杏山脈』で遭遇した敵個体、三体と一致」
テツノカイナは先程までのにこやかな表情から打って変わり、チコリータだけではなく隣にいるヒバニーとアシマリも睨みつける。
「……『マジカルシャイン』!」
「新たな敵性行為を確認しました」
しかし続けてマホイップも光を炸裂させ、テツノカイナを後退させた。
「平和的交渉は困難と判断しました、道具を使用します」
「あっ……!!」
相手は懐から『しばりだま』を取り出し、一同を硬直状態にしてしまう!
「くっ、やられた……!」
「動けないぃ……!」
『エキサイト』達が身体を震わせる前を悠々と素通りするテツノカイナは私とインテレオンの眼前で立ち止まった。
「アナタはワタシの仲間を救うことが出来ます。そしてワタシ達はアナタがその選択を取る事を強く望んでいます」
「ぐあっ!?」
「インテレオン!」
テツノカイナはインテレオンを殴り飛ばすと同時に私を持ち上げる。触れられたことで硬直状態は解除されたが、手錠を掛けられた少女である私では力自慢のポケモンに抵抗出来る訳もない。
(このままテツノカイナに連れ去られたら……その先でまた瘴気をたっぷり注入されて……二度と暴走から戻れなくなっちゃう……!!)
「うああああっ!!」
私は恐怖に飲み込まれそうになりながらも背負ったランドセルに念じ、一つのふしぎだまを発動した!
そして。
「『ジェットパンチ』!!」
真っ先に動いたイルカマンが水泡で出来たグローブを発射し、テツノカイナの手の甲に命中させる!
「うわっ……」
「任せて、『サイコショック』」
その衝撃で取り落とされた私であるが、ランクルスが素早くキャッチ。
「道具の再使用……」
「させないよー!!」
落ち着いて次の『しばりだま』を用意するテツノカイナだが、猛スピードで接近したオオタチが『みだれひっかき』で道具の使用を阻止する。
私が使用したのは仲間の行動速度を上げる『しゅんそくだま』……これで硬直状態を解除させたのだ。ライコの拠点へ向かう前に念のため『追放の遺跡』および『無獣島』に行ってランドセルのエネルギーを回復させたのは正解だったようだ。
「レンケイ行くよ、『みずでっぽう』!」
「おら『でんこうせっか』だ!」
「劣勢を確認しました」
更に勢いよく水のバルーンをぶつけられ、テツノカイナは表情を固くし布のようなものを身に纏う。
「あれは……『ごうりゅうマント』だわ!」
「逃げる!?」
ドラミドロ達が追撃しようとする最中、相手の体が浮かび上がった!
「ま、待つデース! ハリテヤマ!」
「……っ」
ベロリンガ達が手を伸ばすが相手は応える事なく去って行ってしまうのであった。
「……っ、はぁ、はぁ……」
ランクルスに降ろされた私は顔を青ざめさせたままその場にへたり込む。お尻が雪で冷たいが立ち上がる余裕すら残っていない。
「ごめんよ……平気かいルーア?」
「いや、メーくんこそ大丈夫?」
殴られた肩を押さえながらインテレオンがやって来るが、そんな彼を心配そうに見つめるのはスールだ。
「さっきの奴、ハリテヤマの体、奪った……?」
「そう見て間違いないですわね。方法は分かりませんけど、ダンジョンの力を使えば不可能でもなさそうですわ」
「で、では体を奪われたハリテヤマはどうなったデース!?」
「あくまで憶測だけど……テツノカイナの体を押し付けられたんじゃないかな」
ワナワナと体を震わせるベロリンガへランクルスが空を見上げたまま答える。
「……」
「そんな顔しないで。『ウィンターキャッスル』に行けばきっと元に戻す方法がある筈よ」
同様に暗い顔をするマリルを元気づけるドラミドロ。
「……なあ、俺達も『ウィンターキャッスル』に行かねぇか?」
「えっ!?」
その時、ヒバニーが真面目な表情で提案し、インテレオンが声を上げた。
「待ってくれ、僕達は『スプリングタウン』に帰るつもりで……」
「だけど祭壇はいつ動くようになるか分かんねえし、ここで待ってたらまたテツノカイナが来るんじゃねえか?」
「確かにそうね……ハリテヤマの体になって弱体化したあいつだけならまだしも、仲間の黒装モンスターを連れてきたらまずいわ。ルーアが攫われたりしたら……」
反論するインテレオンであるが、ヒバニーに続いてチコリータも『ウィンターキャッスル』へ向かう事に賛成する。
「……私はインテレオンさんに賛成ですわ」
しかし逆に反対の意思を示したのはマホイップだ。
「ここからでも歩いて『スプリングタウン』に戻る事は可能ですし、何よりテツノカイナは『ごうりゅうマント』で北に飛んで行きましたわ。あの道具の効果についてご存知でして?」
「え、え〜っと……」
彼女の問いにアシマリは言い淀む。
「『ごうりゅうマント』は仲間とはぐれた時に、その仲間がいる場所へ飛んでいく道具。つまり北側にテツノカイナの仲間……黒装モンスター達がいるという事ですわ。『ウィンターキャッスル』に行く事はルーアを彼らに奪いやすくする行為でしょう」
マホイップは告げると『ゆけゆけズ』は反論出来なくなったのか黙り込んだ。
「その……マホイップ」
「……なんでしょう、あなた達も『ウィンターキャッスル』に行きたくて?」
そこへおずおずと口を挟んだのはドラミドロであり、『ナイトスター』リーダーは少し苛立ち気味に尋ねる。
「い、いえ。帰ることには反論しないわ。だけどあたくし達、寒いのは苦手なのよ」
「防寒道具、持ってきてない!」
「ボク達凍えちゃうから、『ウィンターキャッスル』で道具の準備がしたいよ!」
「……」
次々に言うメンバー達の姿にマホイップは呆れたような視線を向けると大きな溜め息をつきながら項垂れる。
「分かりましたわ。けどさっさと準備を終えたらさっさと出発するという事でよろしくて? インテレオンさんも」
「……そうだね、スールもルーアもこの寒さは辛いだろうし」
問われたインテレオンもまた私達を気遣うような視線を向けた後、同意した。
「プランは決まったか」
「じゃあベロリンガちゃん、マリルちゃん。『ウィンターキャッスル』まで同行させて貰えないかなっ?」
「ハーイ、むしろ歓迎デース。よろしくお願いしマース」
「……♪」
そして頷く『エキサイト』達と嬉しそうに笑顔を浮かべるベロリンガ達。
そんな彼女らとは対照的にインテレオンとマホイップは暗い顔をしているのであった。
立ち塞がるは風雪をものともしないレンガの城壁。その奥に見えるのは幾つもの尖塔、そして中心には雪と装飾で彩られた巨大なモミの木があった。
あれがこの大陸にある四大都市の一つ……『ウィンターキャッスル』のようだ。
「どなた?」
「どなた?」
「うわっ!?」
私達の姿を見つけるや否や、城壁の上から氷の結晶のような姿をしたポケモン、フリージオ達が降下してくる。
「『オータムビレッジ』から来た救助隊『ちゃんこ』デース。ペリッパー便でお手紙、来てマセンカ?」
「確認する」
「待ってて」
ベロリンガに名乗られると、片方のフリージオが城壁の上に浮かび上がって行く。
「この町はセキュリティがハードなのだな。『サマーリゾート』がフリーというのもあるが」
「『スプリングタウン』にも門番はいるけれど、こんな立派な城壁までは築いていないわね」
イルカマン達が感嘆した様子で見上げている間に先程のフリージオが降りて来た。
「案内する」
「門はこっち」
フリージオ達は歓迎の意思を見せると入り口へ向かい始める。
(ゲームでこういう防壁に守られた町はよく見たなぁ。あっちに大きな門があるのかな?)
そんな事を考えていた私だが、フリージオ達が停止した場所の城壁には門らしきものは見つからない。
「どうやって入るデース?」
「ここ」
フリージオ達は壁のすぐ傍にある地面を示す。
「ん……? 雪が積もってて何も見えねぇけ、どぉぉぉおお!!??」
そしてその地点へ歩み寄ったヒバニーが雪に沈んでいってしまった!
「ヒバニー!?」
目を白黒させてチコリータが叫ぶが返事は返ってこない。
「ここ入り口」
「あるポケモンの幻影」
「穴が雪に見える仕組み」
「つまり、入り口、隠してる?」
「凄い護りだねっ! レッツゴー!」
「あ゛っ」
フリージオの説明を受け恐る恐る覗き込んでいたアノホラグサだが、後ろからオオタチに突撃され諸共落ちて行った。
「ここまで徹底して守りを固めていたんだね」
「凶暴化ポケモンとの戦闘回避」
「ギルド長の指示で壁作った」
感心するランクルスに対しても律儀に説明するフリージオだが、早く入って欲しそうにユラユラ揺れている。
「侵入者避けであるのにここでストップしていては、その侵入者にアンダースタンされてしまうだろうな。ゴー!」
イルカマンは納得したように飛び込み、続いてアシマリやベロリンガといった仲間達も意を決して落ちて行った。
「本当に大丈夫でして?」
「フフ、貴女は心配性ね。あたくしに乗りなさいな」
警戒するマホイップを背に乗せ、ドラミドロは宙を泳ぎながらゆっくりと穴から降下する。
「……っ」
残るは私とインテレオン、スールだけだがマホイップ達の後を追おうにも足が竦んでしまう。
「……僕なら壁に張り付ける。それでゆっくり降りよう」
「わっ、ありがとメーくん」
インテレオンはそう言うと私を肩車し、スールを脇に抱えた。そのまま彼は穴の壁に足裏と片手を付けながら、まるで梯子を降りるようにスルスル降り始める。
「メーくん、元の世界でも頼もしかったけど見ない間にもっと凄くなったね」
「……救助隊として活動する内に経験も積めたからね。スールがそう思ってくれるのなら、感無量だよ」
幻影の雪を通過した先の縦穴はレンガ造りとなっており、私は身体をピクピク震わせながら必死に気を紛らわせようとしていた。
「下に何か敷き詰められてる……雪?」
「いや……あれはウールーから刈った毛じゃないかな。クッションの役割をしてるみたいだね」
「……っ♡」
インテレオン達の話が頭に入ってこないまま、私は顔を紅潮させて喘ぎ声を我慢する。
なぜこんな時に発情しているのか……それは彼の後頭部まで伸びているトサカのような部位が私の割れ目をなぞっているからだ。下手に嬌声を上げたらインテレオンが驚いて落ちてしまうかもしれず耐えるしかないのだが……。
「メーくん、そいつ重くない?」
「平気さ。心配してくれてありがとうスール」
「ん……んんっ♡」
壁に張り付いたインテレオンが体を動かして降りていく度に、トサカみたいなヒレみたいな部位が肩車されている私の大事な部分を擦り続けて快感が襲って来るのだ。
「ん……あぁ♡」
「おっと……!」
「メーくんがバランス崩したらどうすんの! 暴れないでよ!」
もっと刺激が欲しくなった私は思わず自分から腰を上下させてしまい、衝撃でインテレオンの体が揺れる。
「どうかしたのかいルーア……ん、何だか首元が濡れて……?」
「あぅぅぅ♡」
更に今度は股間から愛液が垂れてしまい、肩車している彼の体にまで垂れている。
「ルーア……ちょ、まさかキミ……」
「や、やだぁばっちい! あたしにまで垂れてくる!」
「あ、あ、あ♡ 私のエッチエキス、止まらないよぉ♡♡」
私はますます興奮し彼の後頭部に強く割れ目を擦り付け……。
「うわあっ!」
遂にインテレオンがバランスを崩して私やスールと一緒に落ちてゆく。
そして私の身を包むのはとても柔らかい感触。
「わっ♡?」
ぽふん、ぽふんと跳ねながら私達は痛い思いをすることも無く床に落ちた。これがウールーの毛の効果か。
「大丈夫? 皆はもう先に行ってしまったみたいよ」
「あ……うう♡」
上から覗き込んでくるドラミドロと目が合うものの、私は蕩けた表情で腰を揺らす。
「ぶふうっ、ちょっと……ルーア……!」
私の腰の下にはインテレオンの顔があり、彼は焦った様子で藻掻いていた。突き出た彼の口が私の割れ目をなぞり、どんどん気持ち良くなる。
「インテレオンさん、ご無事でして?」
「う、うう。助かったよ」
「ふぎゅっ」
しかしマホイップに無理矢理どかされたことで、欲しくてたまらない快楽が薄れてしまった。
「ぷ、ぷぴー……っ」
他の仲間達が向かったらしい通路の先へ進むインテレオン達を私も『あかいビードロ』を吹きながら追う。
(この道具のお陰で淫乱な気持ちは収まるけど……あくまで押さえつけてるだけ。どこかの機会でインテレオンとセックスしたい……)
階段を上がった先に待っていたのは広大な屋内空間であった。私が元いた世界の大型施設にも引けを取らないが、この世界で比類する規模の建物は初めてだ。
「公衆浴場、寄って行かれませんか~? ぽかぽか温まりますよ~」
「地下温室で育った『ナナシのみ』は如何かね? 凍えた身体によく効くよ」
「ゴールにシュッ! 『ツンベアーホッケー』! さあさあ、是非遊んで行ってください!」
「ふー、寒かったぜ」
「お疲れさま、こんなに薪拾ってくれたんだね」
外から見た時はあまりポケモンの気配はしなかったが、こうして中に入ってみると四大都市の一つらしく多くのポケモンが建物……城の中を行き交っていた。
「へえ、この都市は一つの大きな建物の中にポケモン達が暮らしているのね」
「見て見て、建物の中に橋があるよ! しかも橋の下にもお店が!」
「すっげえ、『ウィンターキャッスル』ってこんな場所だったんだな!」
「お待ちくださいまし!」
興奮したように目を輝かせる『ゆけゆけズ』が駆け出そうとするがすぐにマホイップが呼び止める。
「私達は物資補給に来たんですのよ。誰が何を買って来るかしっかり決めないと」
厳しい口調で言うマホイップ。
「……」
「マホイップ、気張り過ぎ、リラックス」
しかし、ドラミドロは彼女を思いつめた表情で見つめ、アノホラグサが小さな肩を自らの枝で撫でる。それを受けてマホイップは一瞬ハッとなるが、すぐに視線を落とした。
「おやおや、見かけないポケモン達だね」
「行商ポケモンさんかのう?」
そんな時、一同へ何者かが話しかけてくる。振り向くとそこには長い首を持つポケモンと茶色の毛に覆われたポケモンがいた。どちらもかなり大柄であり思わず圧倒されてしまう。
「『オータムビレッジ』から来た救助隊『ちゃんこ』のベロリンガとマリルデース。こちらはここまで同行してくれた仲間デース」
「おやそうだったのかい、あたし達もこう見えて救助隊でね。アイアンランクのチーム『グランアイス』を組んでるアマルルガ、そしてこっちはマンムーだよ」
「よろしく頼むぞい。しかしこの城は入り組んでおるからのぉ、ワシらは今日の仕事を終えた所じゃしもし行きたい場所があるなら案内するぞ」
穏やかな笑顔を見せる二匹は優しく助力を申し出る。
「……どうします?」
「他の都市と違って見通しも悪いし、土地勘が無いと迷いそうだな。頼った方がいいかもしれない」
小声でマホイップとインテレオンが話し合い、頷き合った。
「それでは私達、帰る為の準備を……」
「ピーポペポパポピー!!」
その時、突如謎の奇声が響くのであった。