無限。その冷気は水も空気も凍てつかせ、遥かなる時を越えて尚不変とする。
夢幻。その寒気は生命を氷中に眠らせ、永き深い夢の樂土へと誘う。
時の流れに取り残されし地、『悠久氷穴』。
黒装モンスター達に襲撃された『ウィンターキャッスル』から逃げ出した私達はその北にあるダンジョンへと足を踏み入れた。
非常に寒冷な洞窟であり、床や壁は凍り付き天井からは無数の氷柱が垂れ下がっている。
「『テクスチャズ』から聞いたんだ。ポケモンを拒む地、『忘れられた都』はこの『悠久氷穴』を抜けた先にあるって」
「都?」
「なんでも遠目から見ると沢山の建築物が建ち並んだ場所みたいで、そう名付けられたらしい」
「……」
インテレオン達の会話を聞きながら私は視線を落とす。『追放の遺跡』などこれまで訪れた同様のダンジョンは、私やスールにゆかりのある場所をコピーしていた。ならば、『忘れられた都』も似たように私達の世界を模した空間で、そこに満ちる瘴気も幻覚でスケベな気分にさせてくるのでは。
「うっ……♡」
思わず私は身を捩らせる。『ウィンターキャッスル』に残ったマホイップ達の想いを託されている身でこんな事してたらいけないのに。
「ルーア、もしかして寒いのか? ほら温まれ」
性欲に耐えようと身体を震わせる私へ近寄って来るのはヒバニーだ。彼の全身からは熱が発せられており、この凍えるダンジョンでも立ち止まらずに済んでいるのはヒバニーがこうして低出力の『ニトロチャージ』を使ってくれているお陰だ。
いつの間にそんな技術を習得したのかと思っていたが、彼らの話によると『わかばのブーケ』を手に入れるため私達と別行動していた際、『エキサイト』のイルカマンから自身の力を制御するレクチャーを受けたらしい。
「『ナイトスター』も『エキサイト』も大丈夫かな……。ルーアがいないことに黒装モンスター達が気付いて撤退してるといいんだけど……」
「そう願いましょう。そして、そうなっているならテツノイワオ達は血眼になってルーアを探し始めてる筈……追い付かれないようにしなきゃ」
アシマリは不安気に、チコリータは警戒した様子で背後へ何度も目を向ける。
「……『ねらいうち』!」
「ッ!?」
その時、突如インテレオンが指先から水弾を発射し凍った岩を撃ち抜く。それに驚いて一匹のポケモンが転がり出てきた……大きな頭部と短い手足を持つ灰色のポケモン、セビエだ。
「……っ」
「ぐむむっ、気付かれたならしょうがない! 私達の住処を荒らす不埒者は成敗だ!」
表情を暗くするインテレオンの視線の先で凶暴化セビエは腹を括った様子でこちらへ駆け寄って来た!
「『スプリングタウン』近辺じゃ見ないポケモンだな……えーっと、岩っぽい色だしいわタイプか?」
「うーん……色で言うなら、はがねタイプって線もあるかも……?」
「違うわよ! セビエはこおりとドラゴンだから……」
「うりゃーっ!」
首を傾げるヒバニー達にチコリータが説明しようとする間に相手は動きが悪いインテレオンに肉薄する!
「『こおりのキバ』ーっ!!」
「!?」
セビエの凍てつく牙が襲い掛かる……!
インテレオンではなく、彼を庇ったスールに。
「ぐ……アシマリ! 『チャームボイス』お願いぃ……!」
目を丸くする一同の前で、スールは苦痛に表情を歪めながらも素早く指示を出した。
「わわっ、うん!」
「うぎょっ!?」
それに従いアシマリは音波を放ち、スールに噛みついていたセビエを吹っ飛ばす。ドラゴンタイプの相手にフェアリータイプの技は効果覿面……セビエは岩壁にぶつかると受け身も取れずに地面に落ちた。
「ふう……ありがとアシマリ」
スールは礼を言うと早々にセビエへ歩み寄りリライブを開始。赤い光と共にゆっくりとセビエの体内にある瘴気がスールに吸い込まれ、浄化されていく。
「礼を言うのはこっちよ。それにしてもすぐに弱点を突き止めるなんて……」
「ううん、私はポケモントレーナーだったから」
感謝されるスールだが、彼女はリライブに集中したまま首を横に振る。謙遜……なのだろうか?
「それはいいけどスール……あまり無理をしないでくれ。僕はトレーナーであるキミを守りたいんだ」
そして彼女のポケモンであるインテレオンが言い聞かせるように言葉を紡ぐ。先程スールに庇われたという事実に、自らの不甲斐なさを悔やんでいるような表情だ。
「……無理してるのはメーくんでしょ」
しかし、スールは彼へ顔を向けて口を開いた。
「『ハイドロカノン』なんて技を使ったせいで、本当はメーくんボロボロなんでしょ? そうじゃなかったら隠れてたセビエに『ねらいうち』を撃って外しちゃうなんて……」
「……それは、そうだけど……っ!」
インテレオンは自らのトレーナーから図星を突かれたのか、言い返す事が出来ないまま彼女から視線を逸らし拳を震わせる。
「ん、んん……」
やや空気が重い中、凶暴化から解放されたセビエが目を覚ます。ヒバニー達がこの地のダンジョン化および凶暴化について説明すると彼女は合点が言った様子で頷いた。
「つまり……凶暴化したポケモンみんな救ってくれる救い手様!?」
「……ごめんね、今はそれより急がないといけないことがあるのよ」
目を輝かせ始めるセビエを前に、チコリータがやや罪悪感に苛まれた様子で返答する。
「だからもし良かったら北へ出られる道を教えて欲しいんだ、お願いできないかな」
「困ってるみたい? じゃあ分かった、案内してあげるね」
「本当か、助かるぜ! いつか『リライブホール』が完成したらみんな凶暴化から解放できるから待っててくれよ」
続けてアシマリが頼み込むとセビエはこちらの必死さを察したのか、快く承諾してくれた。
「一応だけどゾロアークじゃないよね……?」
「特性『イリュージョン』は攻撃を一度でも受けると解除されるんだよ、この子は善意で言ってくれてる」
小声でスールに確認するが、彼女も小声で返してくる。
「そっか、『ウィンターキャッスル』でそんな事に……」
「あぁ、だからまず『忘れられた都』に行かないとなんだ」
道すがら、セビエに目的を話す『ゆけゆけズ』。
「黒装モンスター達はあたし達を探してこの氷穴にまで入って来るかもしれないわ。あなた達を巻き込みたくないし、急いで抜けたいのよ……」
「分かったけど……ダンジョン化してこの洞窟の形状が頻繁に変化しちゃう状態だから、そこは理解して欲しい……って、早速行き止まりだぁ」
そこで先頭を進んでいたセビエは氷壁を前に立ち止まり、ガックリと項垂れる。やはりダンジョン内で暮らすポケモンであってもダンジョンの構造変化には翻弄されてしまうのだ。
「引き返すんだね?」
「うん、ごめんね」
「気にしないで……ん?」
インテレオンとセビエが確認し合う横で私は前方の氷壁に何かがあるのを見つけて目を細めた。
鈍い青色をした奇妙な形状の物体……。
「……ドータクン?」
それを見てスールが驚いたように口を開く。ドータクンというと、元の世界だとシンオウ地方でよく見かけられるポケモンだっただろうか。
「なんで氷漬けに……?」
「えっ、アレってポケモンだったの!? 私が生まれるずっと前からあったって聞いてたんだけど……!」
スールの問いにセビエは目を白黒させて氷に閉じ込められたドータクンを見上げる。
「い、生きてんのか……?」
「あわわ……」
まさかポケモンの死体なのかとヒバニーとアシマリが狼狽し出した。
「……あたし達の世界だと二千年の間地面に埋まって休眠してた個体もいる……って聞いてるんだ。もしかしたらあのドータクンも眠ってるだけで生きてるかも」
「助けた方がいいのかしら? いくら急いでいるからって氷に閉じ込められたポケモンを見捨てるのも忍びないわね……」
「……」
スールの言葉に安堵の溜息をつきつつも悩み始めるチコリータの横を通り抜け、私は氷壁に近付いてドータクンの様子をもっとよく見てみる。近距離で確認してもドータクンは微動だにしておらず、本当に生きているかどうか分からない……。
そして、ドータクンの体から青い光が放たれた!
「ううっ!?」
「ルーアッ!」
同時に私の体内に瘴気が流れ込んでくる感覚に私は呻き声を漏らして倒れそうになるが、インテレオンがすぐさま身体を支える。
「え、リライブ……そっか、ドータクンはずっと前からここで氷漬けになってたってことは、ダンジョン化の影響も受けてたんだ!」
「へ、平気かルーア?」
「はぁ……はぁ……う、うん」
心配して来る『ゆけゆけズ』に私はかろうじて返答する。幸い暴走には至らなかったが、一匹リライブするだけで私の身体にここまで影響が出る様になってしまっていたなんて。
ミシミシ……。
「えっ?」
すぐ近くから聞こえてくる、何かが割れるような音。一同が揃って視線を向けると、氷壁にヒビが生まれていた。
ビキビキ……。
音は鳴り止むどころかむしろ更に強まり、氷の破片が次々と散らばって来る。
「まずい! 離れるんだ!」
インテレオンが叫んで指示を出し、一同が避難した直後氷壁は激しい音を立てて砕け崩落した!
「大丈夫、みんな?」
「平気だよ、だけど一体何が……」
互いの無事を確認する私達。しかしその前では氷塵が舞い、氷霧に覆われる奥で砕けた氷の下から何かがゆっくりと身を起こす。
「……ふう、良い目覚めです」
緊迫する私達の前で、そうリラックスした様子で言うのは氷の中から目覚めたドータクンであった。ドータクンは一見模様のようにも見える赤い目で辺りを見渡し、私達を見つけると戦意もなく近づいて来る。
「もしかしてあなた方が私を起こしたのですか?」
「起こしたというか……青い光が出た途端いきなり氷が割れたというか……」
腕のようにも見える部位をストレッチの如く動かしながら尋ねてくるドータクンにセビエが困惑しながら答えた。
「青い光! それはまさかルナアーラ様の御業では……もしかして彼女は元に戻れたのですか!? ルナアーラ様はどこへ!?」
「え、え!?」
表情からは解り辛いがあからさまに興奮した様子になるドータクン。そんな相手を前にセビエは更に困っている様子だ。
「ルナアーラだって……? キミは会ったことがあるのかい?」
代わりに聞き返すのはインテレオンだ。ルナアーラと言えば遥か昔、ライコやソルガレオと共にこの世界を蝕む瘴気を浄化して回ったポケモン。ドータクンの口振りからするとおそらく……。
「はい、ルナアーラ様は瘴気に蝕まれていた私達の国を救って下さった月の化身なのです。それでルナアーラ様はどちらに?」
……ドータクンはルナアーラと実際に会ったことがあるのだ。
「ルナアーラはここにはいないわ、あなたをリライブしたのはルーアなの。瘴気とルナアーラの力を浴びて、瘴気を取り込む力を持ってるのよ」
「そうなのですか!? 言われてみればルナアーラ様の後ろに控えていたライコという者に似ていますね」
ドータクンは驚き私に視線を向けてくる。
「キミはドータクンで良いんだよね? キミに色々聞きたいことがあるんだ、僕達からもキミに伝えないといけないことがありそうだし、ついて来てくれないかな。少し急ぎなんだ」
「はい、ドータクンです。ルナアーラ様自身がいないことにも事情がありそうですし、承知しました」
おそらく過去に起こった事象を知っているであろうドータクンも同行させ、インテレオンは『忘れられた都』に向かうため、行き止まりから引き返そうとする。
「う、うぐ……♡」
そんな彼に擦り寄り、私は発情したうめき声を漏らす。身体が震えているのは寒さのせいだけではない。
「……っ、我慢は出来ないのかい……?」
インテレオンは私の様子を見て察しながらも、いつ黒装モンスターが追い付いてくるか分からない状況故にそう尋ねてくる。
「あ、う……♡」
私だってそれは分かっているのだが、瘴気を取り込んだ為に苦しくて気持ち良くなりたくておかしくなりそうだ。腰を振るのも脚で股間を擦ろうとするのも止められない。
「……メーくん、やったげて。我慢させたせいで限界を迎えて暴走……なんてイヤでしょ」
「……うん」
そこへ声を掛けたのはスールだった。彼女は内心不服そうに見えるが、インテレオンが私も守ろうとしているのを分かっている故の発言だろう。
「ん、ルーアを回復させるのか?」
「うん、あたし達はあっちの岩陰で待っとこう」
「じゃあその間に私達の持ってる情報をドータクンに伝えよっか」
「はっ、はっ……♡」
スールがヒバニー達と共に岩の向こうに行くのを見ると、私はすぐに両膝を地面に突いてお尻をインテレオンに突き出す。四つん這いになろうとしたが両腕が使えないため、代わりに顔も地面に突っ伏させ三つん這いの体勢となった。
「い、インテレオン……私のおマンコ……弄ってぇ♡」
自分からこんな変態な体勢になって腰を振り出している事に私は更に発情し、股間から膣液をどんどん垂らす。バイブやクリトリスリングにも意識が集中し、こんな寒いダンジョンでなければ興奮で身体が火照り今頃汗まみれだっただろう。
「……」
「あっ♡」
インテレオンは黙って私の膣内に指を入れ、その刺激で私は大きく身体を跳ねらせた。インテレオンが本調子でない為か指の動きが遅いので、私は逆に自分から腰を動かして膣壁を彼の指に押し付ける。
「んーっ♡ んんーっ♡!」
必死に腰を上下左右に振り前後に動かし、ひたすら快楽を求める私の姿はまるで交尾だけを目的として本能のまま生きる獣だ。獣らしく手や首を拘束されようとも、性欲を暴れさせるのを抑える事も出来ない。
「インテレオンも指、動かしてぇ♡ もっともっと気持ちよくなりたいよぉ♡」
涎と涙に塗れた顔を地面に乗せたまま、私は腰を更に持ち上げておねだりする。
「……ああ、ごめんよ」
「んきゅっ♡♡」
インテレオンは小さい声で応えると指先で私のGスポットを責め出し、私は歓喜の悲鳴を上げた。
(気持ちいいよぉ……身体の中の嫌な気分が中和されて、幸せだよぉ……。マホイップ達が大変な状況なのに、黒装モンスター達が追って来てるかもしれない状況なのにこんな事して、私本当にエッチだよぉ……)
罪悪感で惨めになった私は腰を更に突き出し、インテレオンの指先を更に性感帯に押し込ませて快感に酔いしれる。今日は朝から発情しながらも一度も絶頂出来ていなかったため、私は思い切り絶頂することを望んで一際強く腰を動かした!
「んっ……はあっっ♡♡ ああっ……い、イッたよ……♡♡」
ビクンビクンと身体を跳ねらせ、私はぐったりと横になる。
(……でも、本当は犯して欲しい……レイプして欲しいよぉ……)
インテレオンの体調が芳しくないのは分かっているのだが、それでも指だけでは物足りない。今絶頂したばかりなのに早くも次の性的欲求が生まれており、太腿が勝手に股間を擦りだしていた。『あかいビードロ』をデリバードに化けたゾロアークに奪われたために無理矢理性欲を消散させることも出来ないのだ。
「そっか……じゃあ先を急ごう」
しかし彼は今も性欲に支配されている私を起こすとスール達の下に向かっていく。
「ま、待ってぇ……♡」
私はランドセルから取り出した大人の玩具で必死に自分に刺激を与えながらヨロヨロと後を追うしかなかった。
(もっとインテレオンに愛されたいのに……なんだか冷たいよぉ……)
再び先導するセビエ、そして新しく同行するドータクンと共に『悠久氷穴』を進む私達。
「ヒバニーさん達から話は聞きました。私は遥かなる年月を氷の中で眠って過ごしていたことや、瘴気が再びこの世界に現れていること、ルナアーラ様たちが『世界の狭間』なる場所にいること」
ドータクンは重そうな体に反して宙を身軽に浮遊して進みながらインテレオンと私に言う。
「……一応聞くけど、当時の仲間はもういない事に寂しさを感じないのかい?」
「寂しさはあります。ですがこれが私達ドータクンという種族ですから」
七年もの間、スールと切り離された経験を持つインテレオンが心配げに尋ねるが、ドータクンは気にするなと言いたげに答えた。むしろ深堀りした方が余計に傷付けるのではとインテレオンも判断したのかそれ以上の追究は行わない。
「ルナアーラ様達を救う事が出来るのならば協力は惜しみません。それでかつての私達の罪が全て償えるとは思っていませんが、少しでも彼女達の助けになりたいのです」
「罪……?」
ドータクンの言葉にアシマリが眉間にしわを寄せてオウム返しする。
「……道すがら、昔話でもしましょうか」
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ドータクンはかつて、とある地に住んでいた。
その時の暮らしは毎日のようにポケモン同士で縄張り争いを繰り広げ、食料の奪い合いも日常茶飯事。
ある日、空に大きな穴……『ウルトラホール』が空き、そこから黒の靄……瘴気が流れ込んで来た。瘴気はポケモン達を苦しませ、更に穴から漆黒の存在が次々と出現し逃げ惑うポケモン達を冷徹かつ冷酷に蹂躙し始めたのだ。
どのポケモン達の心も絶望の黒一色に染められかけたその時、黒ばかりを流し込んで来ていた穴から陽光と月光が差し込んだ。
それがソルガレオとルナアーラ。ニンゲンのライコと共に現れた二匹のポケモンは瘴気を光と共に消しながら漆黒の存在を穴に追い返していき、更には穴も閉じてくれた。彼女らの尽力で絶望に落ちかけたこの地とポケモン達は救われたのだ。
早々に立ち去ろうとするルナアーラ達を引き止めてお礼をしようと力を合わせるポケモン達。普段の諍いを辞めてまで感謝を伝えようとする彼らの姿に胸を打たれ、ルナアーラ達もそれまではこの地に滞在する事を決定。
そしてポケモン達が協力して準備した宴がいざ始まる……という時に再び空に『ウルトラホール』が顕現。流れ込んでくる瘴気を前にポケモン達はルナアーラ達に助けを求め、彼女達もそれに応じて対処した。
二度目の災厄も静まったとはいえ、これからも同様の事態が起き続けるのではとポケモン達の間で不安が広がった。
その時、前に出たのが一匹のポケモン……ディンルー。彼はルナアーラ達に対し、共に瘴気へ立ち向かいたい、自分に出来ることは何でもやるから協力関係を築いて欲しいと頼み込んだ。
それに対し承諾したのがルナアーラ。ソルガレオとライコはまだ各地で『ウルトラホール』は発生しているためその対処でこの地を離れ、その間残った彼女がポケモン達を瘴気から守ってくれた。
それだけではなく、ルナアーラはライコから教わったという道具の扱いについてもポケモン達に教えてくれ、そのおかげで生活の質も大きく改善されポケモン同士の縄張り争いも起こらなくなったのだ。
町やお金といった文化も生まれ、月の加護の元で幸せに暮らしていたポケモン達。しかし幸福は永くは続かなかった。
ずっと瘴気を浄化し続けていたルナアーラが苦しみ出し、そして瘴気を撒き散らしながら暴走したのだ。
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「私達は築いた国から散らばるように逃げ出したので、その後どうなったのかは分かりません……」
ルナアーラに頼り過ぎたせいで彼女を暴走させてしまったという、かつての罪を吐露したドータクン。表情からは読み取れないが、言葉の端々から後悔の念が滲んでいた。
「……かつてキミ達がやってしまった所業と同じ事を、僕達もやっているという事か」
ドータクンの話を聞いたインテレオンや『ゆけゆけズ』は暗い顔を浮かべており、私にチラリと視線を向けてくる。
「だからこそ、この時代に目覚めた私が出来ることをやりたい、ルナアーラ様達の為に」
ドータクンは辛そうにしながらも、後悔を後悔のまま終わらせない為に本来したかったであろう話に戻る。
「ルーアを追っているという漆黒の存在……あなた方が『黒装モンスター』と呼ぶそれを、ライコ達は『パラドックス』と呼んでいました」
「初めて聞くな……インテレオンは?」
「僕も初耳だ、『ウルトラホール』をくぐってやって来るあいつらは何者なんだい?」
インテレオンに尋ねられ、ドータクンは話を続ける。
「あなた達はライコから、瘴気はニンゲンとポケモンが争い合う世界で生まれた事は聞いていますね? ライコによれば『パラドックス』は争いの果てに瘴気を生み出した世界に住んでいたポケモンの生き残りらしいのです」
「えっ!?」
「そういえばライコ……瘴気でポケモンが"ほとんど"いなくなったって言ってたわね……」
「それ故に『パラドックス』達は膨大な量の瘴気を身に宿していて、瘴気を押し付ける相手を探して元いた世界を飛び出し、遥か昔にこの世界へと入り込んだのです。その時はルナアーラ様達が世界の狭間へ追い返して下さりましたが、奴らはまたこの世界に飛び込む機会を虎視眈々と狙っていたようですね……」
「七年前にソルガレオ達が限界を迎えて、また『ウルトラホール』が発生したのに乗じて乗り込んで来たって事かしらね」
「……いや、この時代に黒装モンスター……『パラドックス』が現れ出したのは最近だ。もしやあいつらはルーアを追いかけて……?」
インテレオンはそこまで言いかけて咄嗟に口を閉じる。
「ねえ、あいつらの能力について聞きたい事があるのよ。あいつらの内、『テツノカイナ』って奴がハリテヤマの体を奪う事態が起きているのよ。『パラドックス』は昔にもそういう事をして来たの?」
「はい。ルナアーラ様達が最初にこの世界にやって来た時、一度だけ『パラドックス』……テツノイバラを黒装から解放しようとしたことがあったのです。あまりの瘴気の量に苦しんでいましたが、彼女らの尽力で解放できる……という寸前に、他の『パラドックス』が突然私達の仲間だったバンギラスを捕まえ、テツノイバラにぶつけたのです。黒い光が迸ると同時に、バンギラスが『パラドックス』達の味方をするようになりました」
チコリータが次の質問を出し、かつて同じことが起きたとドータクンが回答を返す。
「バンギラスは元に戻れたの?」
「ルナアーラ様から色々情報を貰いながら試行錯誤し、どうにか。テツノイバラの体を押し付けられたバンギラスから黒装を剥がし、全て取り除いたと同時に再び光が放たれ、テツノイバラとバンギラスはそれぞれ元の体に戻ったのです。あいにく、テツノイバラ自身は黒装を取り除かれても『パラドックス』の味方をするままでしたが……」
ハリテヤマを元に戻す手段を伝えられ、アシマリ達は少し表情を明るくした。この情報を伝えればベロリンガとマリルも喜ぶことだろう。とはいえ彼女達は『双獄の嶽』で行方知れずの状態なので、それ以前に救助の必要もあるが。
「なるほどね……じゃあワナを生成して来たり、紫の波紋を広げて一度でも凶暴化した事のあるポケモンを支配下に置いたりとかの行動も?」
「はい、記憶にあります。どうやら『パラドックス』達の脅威はこの時代でも変わっていないようですね」
ドータクンは話しながら、苦々しそうに言う。
「なあドータクン。さっきの話でソルガレオ達は黒装モンスター……じゃなくて『パラドックス』を穴に追い返したって言ってたよな。ソルガレオ達の力を借りても、あいつらは追い返すしか出来ねえのか? あいつらも黒装から滲み出る瘴気で苦しんでるんだろ……」
「少なくとも私は『パラドックス』が落ち着くという事例を見た事はないですね。ですがルナアーラ様は申し訳なさそうに『パラドックス』達を『ウルトラホール』に返していたので、彼女も苦しんでいるあの者達をどうにかしたいと考えているのではと私は思っています」
表情を曇らせたままのヒバニーの質問に対し、ドータクンも重い口調で返す。自分達のために敵対して来る『パラドックス』達を落ち着かせる手段をライコ達も持っていないのであれば、例え彼女達を救い出して『パラドックス』達を『世界の狭間』に追い返してもまたいつか戻って来るのではないだろうか……?
「ソルガレオ達をリライブしても時間稼ぎにしかならない、か……」
「例え時間稼ぎであっても、やろうよメーくん。あたしはマホイップ達を助けたいし、メーくんもそうだよね?」
「……ああ、そうだった。今はやれる事をやらないとだね」
それを聞いて俯いていたインテレオンだったが、トレーナーであるスールに励まされて笑みを浮かべた。
「それにランクルス達が『リライブホール』を完成させたら、もしかしたら『パラドックス』達も全員リライブできるかもしれないわ。スールの言う通り、今は『忘れられた都』へ……きゃっ?」
振り返りながら笑顔で応じていたチコリータだが、前を歩いていたセビエとぶつかり驚きの声を上げる。
「す、進めない。なんか押し返されるような変な感じが……」
そう言ってセビエはダンジョンの出口で足踏みしていた。ついに『悠久氷穴』の終わりなのだが、彼女は眼前にある外に出ようにも出られない様子だ。
「ホントだ、なにこれ!?」
アシマリも試してみるが障害物など何もない様に見える出口を通ろうとしても、すぐに押し戻されている。
「ポケモンを拒む地の一つ、『忘れられた都』だね。ここからは人間しか入れないんだ……」
かつて『無獣島』で押し戻された経験があるインテレオンは目を細めてスールを見つめた。その目はとても心配気であり、スールを行かせたくないようにも見える。先程私に対して素っ気ない態度を取っていたように見えたインテレオンであったが、実際はスールの事が気がかりで余裕が無かったために出た反応だったのだ。
「……スール、本当に行くのかい? 嫌なら嫌と言ってくれたら、他に手段が無いか探す事だって出来る……。僕もキミを危険な場所に送るのはやっぱり怖いんだ……」
彼の懸念も当然だろう。ポケモンを拒む地には濃密な闇が充満しており、私よりリライブに時間のかかるスールがあそこに行ったら、リライブし切れるまでどれだけの月日が必要になるか分かったものではない。
「……メーくん、心配してくれてありがとう。でもあたしはあなたのトレーナー……寂しい思いさせないように、ちゃんと戻るから。約束するね」
「……っ。うん、僕も待ってる……から」
スールに笑顔で言われ、インテレオンは泣きそうになりながらも彼女の気持ちを尊重し、道を譲る。
ポケモン達に見送られる中、スールはセビエ達が押し戻された地点まで足を踏み入れた。
「!!」
そして彼女の身体が強い力で引っ張られたかのように、高速で氷穴の出口の先……辛うじて建築物が点在しているのが見える雪原まで飛んでいくのであった。
「……っ」
インテレオンは目元を手で隠し、私達に背中を向ける。スールの前では泣くのを我慢していたようだが、限界を迎えたのだろう。
「インテレオンくん、スールを信じよ?」
「ああ、戻るって言ってたしな」
そんな彼にアシマリ達が優しく声をかける。格好悪い姿を見せ続ける訳にはいかなかったのか、インテレオンは頷きながら涙を拭い始めた。
「デデデデーーーー」
「!?」
耳に残る電子音のような声。
咄嗟に振り返ると、私達が通って来た通路の奥から黒い体表と紫のラインを持つ存在が現れた。
小柄だが、尻尾から伸びる大きな袋のような部位を持つその存在には見覚えがある。『ウィンターキャッスル』で見かけたデリバードだ……厳密にはゾロアークが化けた姿だが。しかしあれはデリバードそのものではないらしく、私を見つけると同時にまるでビックリ箱の如くバネのように首を飛び出させた!
「あれは『パラドックス』、テツノツツミ!!」
ドータクンが身構える前で黒いポケモンは袋のような部位の先をこちらに向けてくる。黒装で覆われているのもありまるで大砲のようにも見える。
「デデデーーー」
「攻撃が来ます! 横に避けて下さい!」
テツノツツミの袋に走るラインが輝き始めたのを見てドータクンが回避を促した。
「ん……ひゅう……♡」
「ルーア!」
しかし、ここまで来る間ずっと発情していた私はまともに動けなかった。そして本調子ではないインテレオンも私の救出が間に合わなかった。
「デーーー」
発射された極太の『れいとうビーム』が隙だらけの私を吹っ飛ばす。激しい冷気と痛みに苦悶しながら私は宙を舞い……。
「ルーア……!!」
私を助けようとして『れいとうビーム』が掠ったインテレオンは驚愕の表情で見上げてくる。
吹き飛ばされた私が向かう方向はダンジョンの出口……『忘れられた都』の領域だったから。
「や、やべえっ!」
「デーー?」
ヒバニーが叫び、テツノツツミも困惑げに動きを止めた瞬間、放物線を描く様に飛んでいた私の移動ベクトルが不自然に変化。
「あ、あっ、ああぁぁ!!」
先程のスールと同様に、私も『忘れられた都』に引き寄せられているのだ。一気に『悠久氷穴』を飛び出し、雪原の上を飛び、間もなく乱暴に雪の上を転がされる私。
「うえっ、ゲホッ……」
寒さと痛みに苛まされ、身体を震わせ咳き込みながら立ち上がる私。
まず後ろを振り返るが、『追放の遺跡』などに引き寄せられた時と同様に周囲が濃密な闇に包まれており『悠久氷穴』はおろか、雪原も満足に見れない。
外から見たら瘴気など全く漂っていなかったが、実際はこの通り『忘れられた都』も瘴気が満ちる地だったのだ。
「うう、あ、くう……っ♡」
今回はスールに任せろとインテレオン達から口を酸っぱくして言われていたが、まさか黒装モンスターの攻撃で入ってしまうなんて。
「……」
そして目の前には『忘れられた都』と呼ばれるに相応しい、朽ちた町が存在していた。当然ではあるが人やポケモンの姿は見えず、嫌な静寂に包まれている。
スールの姿は見えず、おそらく既に町の中に入って行ったのだろう。
(待つべき、なんだろうな……)
もし私が奥へ行こうものなら、夥しい量の瘴気が私に一気に入り込み暴走する羽目になるだろう。インテレオン達は今もテツノツツミと戦っている真っ最中なのに問題を増やしたくない。
ブブブ……。
「はぁんっ……♡!」
欲求不満状態の私は身を捩らせ始める。夜の雪原はとても寒いのに膣内はインテレオンの陰茎を求めて熱がこもっている。"温かいから入って来て"とでも言いたげに。
しかしここに彼はいない……どれだけ媚びても喘いでも気持ち良くなどして貰えない。
「う、う……っ♡」
勃起した乳首とクリトリスを見下ろし、私はランドセルを揺する。こうなったら大人の玩具で思い切り性欲解消したい。
そんな状態の私では気付けなかった。
『無獣島』の時と同じ、闇を凝縮したような玉が背後から迫って来ていた事に。
「!!?」
瘴気の塊が体内に飛び込み、私は意識を失うのであった。