パラドックス達を止めるため、そしてルナアーラ達がいる『世界の狭間』を目指すため……『双獄の嶽』へ突入した私達。襲撃して来たテツノツツミを黒装から解放し、更に険しい雪山を登っていく。
「よっと……だいぶ登って来たな」
『まどわずフラッグ』を掲げたまま雪の積もった通路を進むルカリオが振り返る。私も真似して後ろに視線を向けると雪山に生成されたダンジョン……迷路のように入り組んだ地形が一望出来た。
「疲れはないでござるか皆々様」
「戦力が多い分戦闘での消耗は軽微だね。険しい雪山を登り続けるのは大変だけど休憩挟みながら進んでるから平気だよ」
ゲッコウガが確認を取るが、チルタリスはニコニコと答える。それにレジアイス達が松明を多めに準備してくれたお陰で雪山の極寒に苦しむこともない状態だ。
「ダンジョンを進む上で重要なのは焦らない事でちゅ。救助する側が無茶して疲弊したら共倒れでちゅよ」
「そっか……あの時僕が失敗した救助をルカリオ達が成功させられたのは……」
ピカチュウが続けて一同にアドバイスを伝えると、イルカマンが小声で呟いた。一人称や口調に違和感を覚えて視線を向けると、彼の隣にいるランクルスの柔和な笑みが見えた。『エキサイト』も過去に色々あったのかもしれない。
「おや、遂に到着したね。火口への道だよ」
そしてアマルルガが首で示す方向を見ると、固まった溶岩で作り上げられた通路があった。その先では黒色の噴煙がもうもうと上がっており、火山の熱気によるものか周辺の雪が溶けて山肌が露出している。
「あの中に『世界の狭間』への入り口……そしてパラドックス達の本拠地があるんだね」
「……出迎えでござるな」
インテレオンが呟くと同時に、ゲッコウガが構えを取って前方の噴煙を見上げる。
どういう事かと思っていたが、よく見ると噴煙の中を何かが飛び回っているのが見える。黒い煙に紛れる黒色の存在は私達の存在を認識すると挨拶代わりの『アシッドボム』を発射して来た!
「くっ!」
咄嗟にインテレオンが『ねらいうち』で『アシッドボム』を相殺し、辛うじて先制攻撃に晒される事は回避。
その直後、噴煙の中から襲撃者が飛び出して来た!
「ガガガガガガ……!」
黒装に覆われた漆黒の体、六枚の板のような刺々しい翅、眩く発光する紫色のライン。
「あれは……パラドックスの一体、テツノドクガです!」
ドータクンが叫ぶ先で、テツノドクガというパラドックスは宙に浮いたまま高速回転を始める。
踊るように回転を続けるテツノドクガの周囲を次第に黒い炎が渦巻き始め、舞が止むと同時に私達目掛けて炎が飛んでくる!
「『ハイドロポンプ』!」
「!?」
その炎を飲み込む勢いで迸るのは蒼水の激流。不意を突かれたのか、テツノドクガは黒炎を消火しながら向かって来る水流を避けられず、火口に向かう道の前に墜落。
「ありがとうねぇ、テツノツツミちゃん」
「慈悲に満ちたアナタ達の手助けを行い、いち早く仲間達を瘴気から解放すること……それがワタシが今出来る償いであり、夢のような未来を手に入れる為の一歩です」
「ルルガガガ……!」
救助隊の味方になる選択をしてくれたテツノツツミは、憤った様子の電子音を上げるテツノドクガへ砲口を向ける。
「さっきのは『ほのおのまい』だな。特殊な例外を除けばウルガモスしか使えない技の筈だが」
「ウルガモスって……『ウィンターキャッスル』で古本屋してたメラルバの母親だったよな。行方不明になってる……」
「あのテツノドクガと体を交換させるために、ゾロアーク達が攫ったのね。きっとこのダンジョンの奥にウルガモスも閉じ込められてるんだわ」
口元に手を当て思案するルカリオに続け、ヒバニー達が戦闘態勢を取ったまま頷く。
「……ガガッッッ!!」
テツノツツミが裏切り敵対していること、そして敵が多い事から不利を悟ったようでテツノドクガは再び上空へ飛翔!
「逃げる!?」
「いや、あいつ……視線をルーアに向けてる。まだ諦めてない!」
目を丸くするイヴとは対照的に、インテレオンは飛び回るパラドックスに指先を向けたまま動きを読もうとしている。
「ガガルガルルルガモォォォォォォス!!!」
駆動音のような激しい鳴き声を上げ、テツノドクガは狂ったように『ほのおのまい』で高速回転しながら雪山に炎を降らせ始める。
「あいつ、何やってやがる……?」
その炎は私達の遠くを炎上させており、困惑しているデンチュラ達と同様に私もいまいち意図を計りかねている。
「……悲鳴を上げるハートが幾つも届いて来る。瘴気だけでなく、ヒートで狂わされそうだとパニックしている」
「……まさか、あいつ……」
険しい表情で麓側を見つめる『エキサイト』達。どういう意味かと思っていた私だが、すぐにその答えを知る事となる。
「ウアアアッッ!!」
火の手が上がる方向から聞こえてくる、苦しそうな声。続けて通路から雪を蹴り上げながら猛進して来たのは、体の所々を黒装に覆われたブルーであった。
「ヂヂヂ……ッ!」
「こっちの通路からも来る!」
ブルーだけではなく、マメバッタやヒノヤコマも私たちのいる広間に続々とやって来る。いずれも顔や体を黒装に蝕まれていて苦しそうだ。
「あのパラドックス……瘴気の苦痛で『双獄の嶽』を彷徨ってたポケモン達を利用するつもりなんだ……!」
今も上空を舞い山のあちこちに炎を降らせるテツノドクガを見上げてランクルスが苦々しげに呻く。
自分達が瘴気を流し込んだために苦しんでいるポケモン達を、自分達の為に更に利用する……あまりにも冷酷かつ効率的な選択である……。
「ウァァ!!」
「ララ〜……ぐっ!?」
「キュアァァ……!!」
ブルーの攻撃を躱し、反撃に入ろうとしたラウドボーンに襲い掛かる『シャドークロー』。そこには新手のミミッキュがおり、自分の黒装を剥がそうとラインを幾度も引っ掻いているが自力では破壊が出来ないようだ。
「あのミミッキュって……『スプリングタウン』で宿をやってた奴じゃねえか!?」
「町のポケモンも同じ目に遭わされてるのね……何とかしたいけど……!」
『ゆけゆけズ』はラウドボーンの救援に入ろうとしたが暴れ狂うマメバッタ達への応戦で手一杯らしい。
「ナァァァッ!!」「スィィィッ!!」「アァイィッ!!」
炎から逃れるようにやって来るポケモン達は増える一方で、その中にはナッシーやホシガリスなど見覚えのある姿も紛れていた。
「ルカリオを守るように陣形を組むでござるよ!」
「『まどわずフラッグ』を破壊されたら一網打尽にされまちゅからね!」
『みずしゅりけん』を乱射するゲッコウガと、覆面レスラーのような服を纏ったピカチュウが仲間達に注意を促す。彼らの言う通り、戦えば戦うほど黒装の欠片が周辺に散らばり辺りは黒い靄に覆われ始めている。
「あ、あれ? テツノドクガは?」
「あそこだよ。靄が発生したせいで肉眼での確認がし辛くなってるな……」
この事態を引き起こしたパラドックスを探す私に対し、瞬膜で目を覆ったインテレオンが上空を指差す。私は目を細めるが、彼の言う通り中々視認が出来ない。それどころか、黒い靄だけではなく白い雪まで視界を妨げ……。
……雪?
「いきなり天気が変わってる……? さっきまであんなに晴れてたのに!」
ラウドボーンと協力してミミッキュを攻撃するメロエッタが困惑した様子で空を見上げる。
しかし遠くには青空が間違いなく見え、私達がいる近辺にだけ雪雲が集まっていた……何者かが雲を生み出したかの如く。
「ウオオオオオオオオオオ!!」
まるで雪崩が起きたかのように重々しく震える何者かの叫び声。それと共に雪は更に勢いを強め、まるで吹雪のように風も荒れ始める。
「……っ、ユキノオー……!」
「グオオオオオッッ!!」
レジアイスに名を呼ばれたのに応えるかのように、姿を現す樹氷のポケモン。顔の半分や左腕、背中や右足などが黒装に覆われたユキノオーは苦しげに叫び、激しい雪を巻き起こす。
「あいつは元々、この山を守るポケモンだったのさ。だけどあいつもパラドックスにやられちまったんだね……特性『ゆきふらし』を制御出来てない……!」
「あっ、松明の火が……!」
ウオチルドンが哀れむように呟く横で、プリンが声を上げる。暴走した『ゆきふらし』により発生した吹雪で松明の火がかき消されてしまったのだ。
「ひいっ、寒い!?」
暖を取ることが出来なくなり、ほぼ全裸の私は堪らず屈み込む。
「ガガガ!!」
そんな私の下へ飛来して来るのはテツノドクガ。雪山のあちこちを炎上させてポケモン達を誘導し、救助隊を襲わせる事に成功したパラドックスの目的はやはり私だったのだ……!
「くっ!」
咄嗟にインテレオンが私を抱いてテツノドクガの突撃を避けようとするが、靄と雪で接近に気付くのが遅れた彼の体を相手の鋭い翅が掠る。
「ガッ……!」
しかしインテレオンもただではやられず、すぐさま『ねらいうち』を繰り出しテツノドクガの翅に走るラインを撃ち抜く!
このまま痛み分けに終わる……と思いきや、テツノドクガはその場で高速回転し、『ほのおのまい』を飛ばしてきた!
「ぐあっ!」
「熱いっ!?」
その黒炎は吹雪の中でも散らされること無く、私とインテレオンに襲い掛かる。
溶けかけの雪の上に倒れ込む私へ素早く向かって来るテツノドクガ……ここで捕まったら、みんなの頑張りを無駄に……!
「うああああっっ!!」
「ッ!!」
私はランドセルから『ゴローンのいし』を乱射し、至近距離からテツノドクガへ命中させていく。黒装に守られている故かあまりダメージは与えられていないが、僅かに仰け反らせるぐらいは出来ている……。
このぐらいでいい……何故なら私には……。
「『ねっとう』!!」
「ガァァ!?」
信頼出来る仲間達がいるのだから。
「ルーア、無事!?」
呼び掛けてくるのはイヴだった。彼女の右腕は黒く触手のように揺れ、その先では黒い防護膜に身を包んだポケモンがテツノドクガを睨み付けていた。
「……覚えているかしら、『鬼火草原』の事」
「ルガガ……?」
パラドックスと相対するのはドラミドロ。先程黒色の『ねっとう』を吹き付けて私を救ってくれたのも彼女だろう。
「私達、あなたに負けた。けど、今回こそ、勝つ!」
その隣には同じくイヴの力で守られているアノホラグサの姿もあった。
どうやら以前『ナイトスター』を負かせた黒装モンスターというのは、テツノドクガの事だったようだ。今この場にマホイップはいないが、彼女らは私を守る為、そして自分達の誇りを取り戻す為に戦闘態勢に入る!
そんなドラミドロ達を目障りだと言わんばかりに、テツノドクガは『ほのおのまい』を繰り出して強烈な炎を迸らせる。
「あつつっ……!」
炎を浴びていないにも拘らず、私まで肌が焼かれるような熱波に襲われる。どういう訳か、テツノドクガは戦い続けても疲れるどころか技の威力がどんどん向上しているように見えた。
そして炎を浴びたドラミドロ達は……姿を消していた。
「えっ……!?」
困惑のあまり、私は声を上げる。彼女らをサポートしていたイヴもおらず、まさかあまりの火力に耐えられなかったのでは……。
「……ガッガッガッ」
邪魔者がいなくなり、テツノドクガは愉快そうな電子音を上げながら再び私へ接近して来る。まだ『ゴローンのいし』は残っていただろうかと不安に感じたその時。
テツノドクガの背後に影が出現。
「『ゴーストダイブ』!!」
「ガ!?」
影に潜んでいたアノホラグサが背後から急襲し、テツノドクガの黒装を大きく剥離させる!
「『ねっとう』!」
更に同じく影から現れたドラミドロが、相手が黒装を纏い直す前に追撃を仕掛けダメージを蓄積させた。
「び、ビックリした……」
その後ろでは尻餅をついているイヴの姿も。どうやらアノホラグサの『ゴーストダイブ』による、影に隠れる力がイヴやドラミドロにも効果を与えていたらしい。
「ふっ!!」
「てぇぇぇい!」
黒装が剥がれた部位へ苦手なタイプの技を浴び、流石に怯んだテツノドクガへ続けて命中する『ねらいうち』と『りゅうのはどう』。ドラミドロ達だけではなく、インテレオンとチルタリスもテツノドクガを瘴気から解放するため力を尽くしているのだ。
「……うっ」
どうにか体勢を立て直した私はインテレオンの後ろに移動しようとしたが、咄嗟に足を止める。
雪の上に落ちているのは黒装の欠片……誤って踏んでしまったらリライブで私の中に瘴気が入って来てしまうだろう。遠回りしてインテレオンの下に向かうべきか……と考えていたその時。
背後から襲い来る大量の雪!
「!?」
私は不意を突かれ、抵抗も出来ず雪に流されてしまう。その途中、視界の端に映ったのはユキノオーの姿……戦闘の余波が私のいる所にまで届いてしまったのだ。
雪の冷たさで感覚が鈍る中、何か硬い物が肩に触れる。
何だろうと思ったその時には、黒色の物体が青い光を放っており……手遅れを意味していた。
「!!??」
やって来る激しい違和感、我慢出来ない吐き気。
『ゆきなだれ』に流された事で黒装の欠片に触れてしまい……瘴気が私の中に入って来た……!
「う……うう、あっ……!」
目を見開いて、身を震わせる私。寒い筈なのに熱くて、吐きそうなのに吐けなくて。全身が筋肉痛のように悲鳴を上げ、頭痛も止まらない。
(このままじゃ、暴走しちゃう……!)
必死に抑えようとしても、体内で荒れ狂う瘴気に抗うことなど出来ない。もう、苦痛に身を任せることしか……!
「ウア、アァァ…………あぎゃっ♡!?」
しかしその苦しみは、股間を襲う刺激に塗り潰された。
「……っ」
いつの間にか私を雪の中から引き上げたインテレオンが、己の長い指を私の秘部に突っ込んでいたのだ。
皆が戦っている最中に何をするのか……など今の私では考えられなかった。
頭の中に浮かぶのは幸せ。
「ふひゅーっ♡ はひゅうっ♡」
寒さで息が絶え絶えのまま、私は本能に従い腰を揺らし始める。インテレオンの指が膣壁を擦り、甘美な刺激が冷え切った身体を火照らせていく。
「ガガガガガ!!」
「!」
だがそれを邪魔するように飛んでくるテツノドクガ。私はビクリと身を震わせ、それに呼応して膣もキュッと締まった。
「ひゅんっ♡」
それにより、インテレオンの指が更に密接に膣壁を擦り、私は涎を垂らしながら仰け反る。
「えいやっ」
「ガガ……ッ」
「んぐぐぐぅ♡」
アノホラグサの『こうそくスピン』でテツノドクガの突撃は逸らされ、私の至福の時間は中断されずに済むものの私の中を掻き回すインテレオンの指の動きはとても激しく、吹雪が荒れあちこちで戦闘音が響く中でもクチュクチュといういやらしい音が私の耳に届いていた。
(皆が戦ってる中で私、おマンコ苛められて喜んじゃってるぅ……! 淫乱過ぎるよぉ……!)
「んっんっんっ……♡ ん……あぁっ!?♡♡」
自らの変態ぶりに更に興奮しながら腰を振っていた私だが、さらなる刺激がやって来る。
再びやって来たテツノドクガから離れる為、インテレオンが私を抱え上げて『とんぼがえり』で飛び退いたのだ。彼の指が私の膣内に突っ込まれたままなせいで、性感帯が激しく刺激され私は快楽の波に溺れてしまう。
「もっともっとぉ♡ インテレオン、もっとちょうだいぃぃ♡♡」
完全に発情し切った私は彼に抱えられたままおねだりを始める。絶頂を迎えたいと、子宮が悲鳴を上げているのだ。
「ガモォォォォス!!」
「しつこいな……『ねらいうち』!」
執拗に追跡して来るテツノドクガへ指先から高圧縮の水弾を撃ち込むインテレオン。
「きゅふぅぅぅぅん♡♡♡!!?」
「え? あ、ゴメンルーア!?」
しかし彼も焦っていたのだろう。私に突っ込んだ方の指からも水が噴射され、愛液でグショグショになっていた膣内が乱暴に洗い流される。子宮口や膣奥のバイブも水流に襲われ、私は達してしまうのであった。
「……暴走は止まった?」
「えっと、どうだいルーア?」
「はぁ、はぁ、あんっ……♡」
近寄って来ていたスールに問われるが、私は荒く呼吸しながらインテレオンの指が引き抜かれると同時にビクンと身を跳ねさせるだけだった。どうやら私がリライブしてしまったのに気付いて、瘴気を中和させるためにインテレオンが助けに来たのだろう……迷惑を掛けて申し訳無い気分だ。
「ガガ……ガッ……!」
彼らの視線の先ではテツノドクガが身を震わせていた。『ナイトスター』やインテレオンの攻撃を幾度も受け、黒装が再生する傍から剥がれ落ちていった為かラインの光が弱まっている。おそらくもうすぐ瘴気の底を突かせることが出来るはず……。
「ガーモーガーモースーーー!!」
しかし相手はテツノツツミの時と同じように、テラスタルを発動。テツノドクガの黒い体は宝石のように輝き始め、頭部に現れた不気味な形状の宝石も蠢き出す。
「ガーーーー」
テツノドクガは目の前に立ち塞がるドラミドロ達へ『ほのおのまい』を放つ。黒炎は彼女らを一気に飲み込み……。
「!!」
なんとドラミドロ達をサポートしていたイヴまで巻き込んでしまう。最初の時と比べ、明らかに炎が大きくなっている……!
「そうか……『ほのおのまい』は発動する毎に自らの能力を向上させる技だ。炎が巨大化したせいで避けられなかったのか……!」
インテレオンは呻きながら炎が上がる様を見つめる。ドラミドロ達を助けに入りたくとも、私を守る為に動きが取れないのだろう。
雪が溶け露出した地表のあちこちで残り火が揺らめく中、倒れていたのはドラミドロとイヴ。イヴが攻撃を浴びてしまった為にドラミドロ達の強化も解除されたのだ。
「よくも……うっ!?」
仲間を傷付けたテツノドクガへアノホラグサが『ゴーストダイブ』で襲い掛かるが、相手は宝石を刃の様に変形させ彼女を弾き返してしまった。
「……ガガーー」
当然、パラドックスが次に狙いを定める相手は私。
「……」
インテレオンは牽制するが如く指先を向けるが、テツノドクガは怯むことなく六枚の翅を駆動させ突撃してくる!
私をしっかり抱えたインテレオンは『とんぼがえり』で窮地を脱しようとする……が。
「ガーーガーーッ!!」
「うぐっ!?」
テツノドクガは突然『ほうでん』を繰り出して激しい電撃を浴びせて来る!
その攻撃でインテレオンは私を手放してしまい、雪の上を転がって行く。
「あ……うぁ……っ」
痺れた状態でテツノドクガの目の前に墜落した私は、起き上がる事も道具を使うことも出来ずに近寄って来る災厄を力無く見上げるばかり。
「はあっ!!」
散るは黒い宝石。
「ガ……ッ!?」
勝ち誇っていたテツノドクガは背後から熱湯を浴びて、状況の整理に手間取っているようだ。
そんなパラドックスの後ろに浮かんでいたのはドラミドロ。『ほのおのまい』を浴びて倒れていたのは演技であり、不意を突くチャンスを虎視眈々と狙っていたのだ。
そしてその演技を見破っていたポケモンが一匹。
「ふーーっ!」
かつて彼女と救助隊『エレガドラ』を組んでいたチルタリスが予めチャージしていた『りゅうのいぶき』を放つ。それに合わせてドラミドロは『たつまき』を繰り出した!
「ガーーッ!」
レンケイによるドラゴンエネルギーの奔流に飲み込まれ、テツノドクガはアラートのような悲鳴を上げる。
「……テツノドクガ。アナタの暴走が収まることは、素晴らしい体験を得ることに直結します!」
そこへ追撃するのはテツノツツミだ。襲い来るポケモン達を撃破し、ようやく手が空いたようで『ハイドロポンプ』の激流が巨大な『たつまき』へ向かって行く。
「ガガガガァァァア!?」
雪に覆われた地を燃やし続けていた黒く輝く太陽は、龍の如く登る水の竜巻で打ち上げられるのであった。
「さあ見ておくれ、『アクロバット』!」
『ステップフォルム』となったメロエッタがユキノオーを倒し、遂にテツノドクガが生み出した混乱は終焉を迎える。
「はぁ、はぁ。キツかったな……」
「そうね、黒装に蝕まれて苦しんでるポケモンを利用するなんて。相手も手段を選ばなくなってるみたい」
くたびれた様子で戦闘態勢を解くヒバニー達。私もリライブしてしまったり技を浴びたりと、今回はかなり痛い目に遭った。
「こんなに黒装の欠片が沢山……」
「退けとこうぜ、スールに全部リライブさせてたら何日も足止めされちまう」
戦いで剥がれ落ちた夥しい量の黒装の欠片をオーマとトワが壁際に運ぶ。いくら『まどわずフラッグ』があるとは言っても、流石にポケモンが直接黒装に触るのは危険かもしれないため彼女らに任せるしかない。
「じゃあまた私がメガシンカして黒装を砕こう」
動かなくなったテツノドクガの傍で『かくせいのタネ』を取り出すルカリオ。
「待つでござるよ、テツノツツミ殿の時と同じように最初はルーア殿を狙って来る筈。一度落ち着いてからの方が良い……ッ」
そんなリーダーへ忠告していたゲッコウガだが、何かに気付いたように火口の方向へ視線を向ける。
「……!」
噴煙から飛び出してくる人型の影。黒き体に紫のラインを走らせたその存在は驚愕する私達の前に着地すると両腕から伸びていた刃を取り外し、なんと両刀の如く合体させて戦闘態勢を取る。
「あれはテツノブジンです……! ここでの騒ぎを聞きつけてやって来たものと考える事が可能です!」
「あいつだけじゃない……!」
新たなパラドックスが来たことを告げるテツノツツミの横でインテレオンが火口から出る噴煙へ注意を促した。
「デデデデーーーー」
「ガガガーーガガー」
なんと続けて噴煙の中から現れたのは黒装を纏ったテツノツツミとテツノドクガ。どういう事なのかと私は混乱する。
「あのパラドックス達はワタシ達とは別個体です。アナタ達と同じで、パラドックスにも同じ種族の仲間というものがあります」
「ま、まずいじゃないですか! パラドックスは一匹相手でも苦労するのに、三匹一斉に……!」
仲間のテツノツツミの言葉に顔を蒼白にするオーマ。
「…………ッ!!」
だが、三匹だけではない。追い打ちをかける様に、テツノブジンの二匹目までもが姿を現してくる。
「この調子じゃ、どんどん増えてきてもおかしくない……!」
冷や汗をかくイヴの後ろで、私もどうすればよいのかと必死に考えるが何も手立てが浮かばない……!
「間に合ったね」
迸る電撃が敵のテツノツツミを撃ち抜く。
振り返るとそこには、思いがけないポケモンが浮かんでいた。
「やあ皆、話は聞いたよ!」
黒とオレンジの体を持つ、小柄だがその身に強力な力を秘めた伝説のポケモン……カプ・コケコ。『サマーリゾート』にて救助隊たちを取り仕切っている筈のギルド長が何故ここに……?
「『エキサイト』よ、『カプ・コケコのギルド』からの先遣隊として力を尽くしてくれた事感謝する。ここからは私達も参戦しよう」
その隣にいるのはギルド長補佐であり『ロイヤルズ』のリーダーでもあるエンペルトだった。当然のようにキングラーとアマージョも傍におり頼もしい笑顔を見せていた。
更には『ダマシチャウ』や『ダンシング』、『げんきズ』などの救助隊ポケモン達やラプラスの姿も。
「ガガーーー……ガガッ!?」
「僕の『うずしお』、効いてるね?」
私達の気が逸れた隙に攻撃を仕掛けようとしたテツノドクガを水の渦で捕らえるのはなんとマナフィである。『海底の地割れ』で彼に付き従っていたハンテールやホエルオー達も戦闘態勢を取っていた。
「ど、どういう事だ!?」
「『ウィンターキャッスル』は『サマーリゾート』の真反対にあるのにこんな短期間で来るなんて……」
「そもそもいつ知ったの!?」
故郷から救援が来たという事実に、流石に困惑を隠せていない『エキサイト』達。
「順番に説明したいですが、あなた達はここで足を止めていてはいけません」
「えっ!?」
頭上から聞こえてくる声に今度は『ゆけゆけズ』や『ナイトスター』が大きく反応する。大空を悠然と舞っていたのはなんと『スプリングタウン』にいる筈のファイヤーだったのだ。
ファイヤーが『あつまれだま』を発動すると、私達の周囲に『ファイヤーのギルド』に所属する救助隊達……『リュウマ』、『ヨアソビ』、『アースアーム』、『パピルピ』、『スピアーズ』といった懐かしくもある面々が次々と着地して来る。
「皆で協力してハッピーハッピー! な未来を掴んじゃおう!」
同じくこの場にやって来たギルド長補佐のチェリムが『にほんばれ』および特性の『フラワーギフト』で仲間達を鼓舞し始めた。
「……ファイヤー、カプ・コケコ。要請に応じてくれた事、感謝するのだよ」
「当然だよ、救助隊連盟を引っ張る者としてね!」
「今こそ荒ぶる災禍を止め、根源となっているソルガレオ達を救う時です」
レジアイスの感謝の言葉に、同じギルド長という立場である二匹は頷く。もしかしてレジアイスがファイヤー達を呼んだのだろうか……パラドックス達が一斉に襲って来る事態を見越して……。
「……!!」
敵が増えたのを鬱陶しく感じたのか、テツノブジンが紫の波紋を広げて凶暴化した事のあるポケモンを味方に付けようとする……が。
「パラドックスと言いましたね、私達を甘く見ない事です」
ファイヤーが先んじて『しんぴのまもり』を展開し、ヒバニー達の体内にある瘴気の残滓が増幅されるのを防いでみせる。伝説のポケモンとしての強大な力があればパラドックスの術にも対抗出来るのだ!
「この世界が瘴気で覆われちゃう……そんな悲しい結末は変えなきゃ!」
テツノブジンへ高速接近して勢いよく突撃するのは『颶風の砂漠』にいたガブリアスである。彼女もファイヤーに倣って『あつまれだま』を使うとサンドやジオヅム達を呼びよせる。
「うんむ、そして瘴気で苦しむパラドックス達にも新しい道を示さねば!」
更にこの場へ現れたのは『オータムビレッジ』で道場主を務めるジャラランガだ。彼の後ろにはテールナーやチャオブー、『きんにく』や『ヒートソウル』といった『テラキオンのギルド』に属する救助隊達もいる。
「来てくれたんだね、皆……!」
「ええ、共にテラキオン様や『ちゃんこ』、それに攫われたポケモン達を救いましょうぞ」
嬉しそうに言うメロエッタに頷くギルド長補佐のオーロット。
四大都市の救助隊達や、輝かしい未来を掴もうとするポケモン達が今ここに集結したのだ。
「……ッッ!」
しかし最初に現れたテツノブジンが両刀を掲げると火口の中から更にパラドックス達がやってくる。全面的に正面衝突するつもりだ!
「エンペルト、ギルド長補佐代表としてアンタに任せるよ!」
「ルーア達と協力して、思う存分やって来てね!」
「この世界の事、頼みましたぞ!」
「……ああ、承知した。力を貸してくれキングラー、アマージョ!」
ウオチルドン、チェリム、オーロットから激励されたエンペルトは仲間達と頷き合った後、私達の下へやって来る。
「目的地は『双獄の獄』の内部なのだろう。私達『ロイヤルズ』も同行する!」
「え、ちょっと待って? もしかしてカプ・コケコ達をここに残すって事?」
エンペルトの言葉を受け、チルタリスは目を丸くして尋ねる。
「そうだ。この場にパラドックス達に戦力を集中させざるを得なくさせ、その隙をついて我々が『双獄の嶽』の奥を目指す……それが作戦だ」
それに答えるのはルカリオ。この山に突入する前夜、レジアイスたちと作戦会議して導き出した結果がこれだと彼女は言う。
「安心して欲しいのだよ、伊達にギルド長はやっていないのだよね」
転倒したテツノドクガへ乗っかり、『れいとうビーム』を顔面に乱射しながらレジアイスが早く火口へ入るように促してくる。
「やるしかないようだね」
「ルーア、スール、インテレオン。まずはお前達がいる事が前提の作戦だ、いいか?」
「うん」
火口への道を見つめるインテレオンに寄り添っていたスールはルカリオの確認に力強く頷いた。
「イヴ、トワ、オーマ。灰色のニンゲンであるお前たちの力も借りられないだろうか。ポケモンの問題に巻き込むことになっているのは重々承知の上だが……」
「やるよ、ルーアが頑張ってるのにここで帰るつもりはないから」
イヴは握り拳を作りながら私を見つめ、トワとオーマも引き続き同行するようだ。
「『ナイトスター』、『エキサイト』。精鋭であるお前達にも引き続き同行を頼みたい」
「勿論よ、マホイップもこの先にいる筈だもの」
「オフコース! 皆のファイトに応えよう!」
同じくドラミドロとイルカマンも要求を受け入れる。
「……メロエッタ。劇団はこの場に残ってオーロット達の援護を頼めぬか。ルーア達のサポートは吾輩が行おう」
「……、分かったわ。ギルド長達がいると言っても、ゴールドランクもダイヤランクもいなくなるなら、プラチナランクが残った方がルーア達も安心だものね」
ジャラランガの要望を受け、メロエッタは『ボイスフォルム』に戻って応じた。『オータムビレッジ』からのメンバーはジャラランガが担ってくれるようだ。
「感謝するぞ。テールナー、チャオブー、共に『双獄の嶽』内部への突入を頼むぞ!」
「任せて!」
「オイラ、やるぞ……!」
道場主に呼ばれた二匹もまた駆け寄って来る。チャオブーの後ろ姿を見つめ、『ヒートソウル』のワカシャモとモウカザルは応援するように手を振っていた。
「ドータクン、戦いは不慣れと聞いているが来て貰えないか。太古の知識が役に立つ可能性は高い」
「はい、受け入れましょう。ルナアーラ様達を救えるならばどんな危険な場所にだって赴く所存です」
『悠久氷穴』で目を覚ましてからここまで来たドータクンも、かつての贖罪のためやれる事をやろうと意気込んでいる。
「そして『ゆけゆけズ』、お前達も共に来てくれ」
「!?」
最後にルカリオはヒバニー達へ告げる。まだ結成してから数ヶ月しか経っていない自分達が重要な任務に就くことに驚いている様子だ。
「ランクや経験は浅いかもしれないが、私はお前達の事を立派な救助隊だと思っている。引き受けてくれないか?」
「……」
ヒバニー、チコリータ、アシマリはお互い以心伝心の如く頷き合い、オーマも真剣に彼らを見守っていた。
「……やらせてくれ!」
「あたし達、救助隊として力を尽くして見せるわ!」
「友達のためにも、この世界のためにも、ねっ!」
「……そうか、ありがとな。若き子たちよ」
『ゆけゆけズ』の答えを受け、満足した様子のルカリオはゲッコウガとピカチュウを手招きする。
「……ゆこう! 世界を救助しに!!」
唯一のダイヤランクである『L・G・P』のリーダー……つまり救助隊の最高位に立つルカリオは旗を振り、勇敢に火口を指さす。そして今も戦い続けるファイヤー達を信頼し、先頭を走り出すのであった。