いろは殿がマギアレコードに戻ってから数年後、学校を卒業した我は湯国市の実家を離れる事にした。ずっとマタギを続けて歳を重ねた祖父や両親の事は心配だったが改めて自分の人生を考えたいからだった。
『いってらっしゃい』
『熊だけは気を付けろよ』
旅立つ日、両親はいつも狩りに出る時と同じように送り出してくれた。
祖父は既に山に入ってしまったが、昨夜2人で酌み交わしたので寂しさはない。
『行ってくるであります!』
我はやはり自然に囲まれた場所の方が合っているので必然的に時女集落の空き家を借りる事となった。
リフォームなどはちか殿が手伝ってくれただけあって我の好みにピッタリでジビエ料理を作るためのキッチンも完備されている。
当然獲物が獲れなければその日は営業出来ないが、食材が揃っている時はジビエを目当てに来た方達で賑わっておりワインをお出ししている。そのうちにソムリエの勉強もしてみようと思っているが、そのような暮らし方が我にはやはり合っていた。
それに獲物が獲れずとも我には秘密の楽しみがあった。
まだ集落に来て間もない頃、探索の為に山に分け入った時に野温泉を発見したであります。
川の近くに湧き出ているので身を隠す事は出来ないが湯温が好みなので誘惑には逆らえなかった。
どうやら集落の人も知らないであろうその温泉は血抜きで汚れた時にもすぐ洗い流せるので重宝している。
最初は着替えやらタオルやらを持って浸かりに行っていたが次第にそれが面倒に感じるようになったので小さな脱衣所を設けてタオルを常備しておく事にし、家からは素肌の上に浴衣を纏って入浴に向かうようになっていたであります(ちか殿に知られたら怒られそうですなぁ)。
「はあ〜、極楽でありますなぁ」
猟と仕込み、それと接客を終えて溜まった疲れが溶けていくようで自然と声に出る。
傷だらけの身体のため共同浴場に行くのは躊躇われるのでこのような場所で人目を気にしなくていいのは開放感が感じられて心地よい。
普段ならしないのだが今日は満月であるので月見酒と洒落込もうとお酒を幾つか持ち込んでいる。
血筋によるものなのか、はたまた魔法少女だからなのかは分からないがどれだけ飲んでも酔わないので瓶ビールから手を付けていく。
「くぁ〜、一杯目はビールに限りますなぁ!」
お爺ちゃんと同じ台詞を口にしてしまい、元気にしているだろうかと思いを馳せる。
自作の干し肉を摘みながら月を眺めるが我ながら色気の無い行いをしていると思い若干落ち込む。
「…我が殿方と添い遂げる事はあるのだろうか」
灰谷や黒田の一件から恋愛についてだけは踏み出す事が出来ない。
「最も気になる殿方がいる訳ではないでありますが」
既に瓶は空になりワインに手を付けている。
我は渋みの強い赤ワインが好みだった。
湯国で流れた血を多く見てきたからだろうか、赤ワインはそれを想起させる。
こんな日は決まって身体が疼いてくる。
傷だらけの身体だが女性としての純潔だけは守り通していた。
あわやという事は何度もあったがフォークロアのメンバーと協力してそれだけは逃げ仰せていた。
…少し話が逸れましたな。
今は疼く身体を鎮めようと乳房に触れる。
裂傷の痕が残る肌を綺麗だと言われる事はないだろうがそれで良いのだ。
焦らすのは好きではない。
最も感じる乳首をつねり上げる。
少し痛いくらいが我には丁度いい。
野外でこのような事をするのは初めてだが誰もいないのだ、気に留める必要などない。
現に秘所も既に濡れている。
敏感な突起を弄りながら中に指を差し込む。
自分のものとは思えない女らしい声をあげながら指の動きを速めていく。
すぐに浅ましい絶頂を迎えて身体を震わせる。
ボヤけた頭に浮かぶのは時女一族の皆やフォークロアの面々だった。
失ったもの、奪われたもの、奪ってしまったものも多く彼女たちとの出会いがなければ自分でソウルジェムを砕いていたであろう。
「…さて、帰るでありますか」
来週にはまなか殿からジビエ料理について教えてほしいとお願いされているので久しぶりに魔法少女で集まって食事会をする予定にしている。
もちろん店は貸切にするつもりだ。
大人になりそれぞれの人生を歩んでいる彼女たちとお酒を酌み交わすのも悪くない。
湯国にいた頃は考えもしなかった幸福な今に我は満足している。
「いつか、いろは殿が戻ってきたら一緒に一杯やりたいでありますな」