『えっ?写真集出すんですか!?』
「ええ。企画は前から決まっていたのだけど大学が夏休みに入るのに合わせて撮影に行く事になったの」
夕食の時間に皆が集まったところで大きな仕事が決まった事を報告する。
『うわー!おめでとうございます!』
『おめでとー!ししょー!』
いつも明るい雰囲気のみかづき荘だが今日は一段と賑やかだ。
「ふふっ、ありがとう」
『やちよさん、撮影ってどこに行くの?』
ういちゃんも興味があるのが質問をしてきた。
「それが何とね、ヨーロッパに行く事になったの」
『ヨーロッパ…私も行ってみたいです』
『あれだろ?メシが上手いところなんだろ?』
驚きや憧れるような声が上がってくるがフェリシアの反応は予想できていた。
「ごめんなさいね。海外だから見学で連れて行く事も出来ないのよ』
『ま、まあ仕方ないですよ。お仕事なんですし』
さなが場をとりなしてくれたり、フェリシアも我儘を言わなくなった事に成長を感じる。
「お土産は期待していてちょうだい。みんなが好きそうなもの買ってくるから」
『オレ肉、肉がイイ!』
「はいはい。税関に引っかからないものを探してみるわ。ああ、そうだ鶴乃」
『ふん?何かな、やちよ?』
「半月ほど滞在する予定になっていてね。その間十七夜やみたまが泊まりに来る事になってるから心配は要らないだろうけど、時々で良いから様子を見に来てほしいのよ。お願いしてもいいかしら?」
『もちろん!お安い御用だよ!』
「ふふっ、頼りにしているわよ一番弟子」
最初は両親に頼むつもりだったのだが1ヶ月となると難しいとの事で、いろはとういちゃんのご両親に許可を取ったうえで十七夜とみたまにお願いすることにした。
2人の事は信頼しているし、快く引き受けてくれたので安心して撮影に望めると思った。まあ、みたまが料理をすると言い出さないかは心配なのだけど。
かくして私はマネージャーや監督などの撮影に関わる人と一緒に空港へと向かった。
撮影はドイツ、イタリア、フランスと3カ国を巡ることになっていて、それぞれの国に到着した翌日は1日休みで私も歳の近いスタッフさんと一緒にショッピングに行ったりして息抜きをしていたわ。
もっとも初めての水着や下着での撮影も控えていたから最終日まで食事は楽しめなかったわね。
ドイツでの撮影はメルヘン街道やノイシュバンシュタイン城をメインにしてドレスを着たり、ディアンドルを着てビールを地元の方に振る舞うところを撮影してもらったけど、居酒屋のお手伝いは初めてだから良い経験になったわ。
即興演奏の人たちもいて場を盛り上げてくれたのもあったしね。
あと印象が強く残っているのは宿泊先のホテルで下着姿や入浴中の撮影も経験した事ね。
カメラマンさんは男性だけど今まで何度もご一緒させていただいた事があって信用していたから恥ずかしさや緊張もなく、自分でも綺麗に撮ってもらえたと思っているわ。
ドイツでの撮影は1週間ほどで終えて次はイタリアへと向かったわ。
イタリアではアマルフィ海岸で水着撮影をしたり、本場のピッツァやパスタを食べているところを撮ることになり、どれも美味しすぎて撮影中なのを忘れそうになったけど、素の表情が出ているからとOKが出たのは良かったわ。
あとはそうね、美術の国でもあるから宗教画など中々お目に描かれない名画を観たり、遺跡の見学もしていたけど実際に異文化に触れるのは1人の人間として奥行きが広がった気がした。
翌日もホテルの室内で別の下着を身に付けての撮影だったわ。
2回目ともなると慣れてきて表情も笑顔だったり、アンニュイなものにしたりと余裕が出てきたわね。
個人的にはイタリアを離れるのは心惜しかったけど次に向かうフランスも美食の街なのでそれも楽しみだったわ。
(撮影が終われば食べ放題だしね)
フランスは南西部へ向かっての移動だったのでそれだけでもかなり日数がかかったわね。
到着した時は皆疲労困憊といった様子だったけど日本から同行してくれていた通訳さんが撮影交渉や現地に溶け込みやすいよう取り計らってくれたのには本当に感謝してもしきれなかったわ。
そして1週間ほどかけてフランスでの撮影を終えて皆緊張から解放されて大きな仕事をやり遂げた喜びから団結力は更に強まった気がした。
座長と言うわけではないけど私から一言という事で感謝の言葉しかなかったので途中で涙が出てきて何言ってるか分からなくなったけど、協力してくれた方にはちゃんと伝わったようで拍手を頂けたのは嬉しかったわね。
撮影は順調に進んだので3日ほど滞在日数が残っていたのですぐに変えるよりも観光をしていく事となった(もちろん社長に許可をいただいてからではあるが)。
私はせっかくフランスに来たのだから異文化に触れたり、美味しいものを食べるつもりでいたのだが通訳さんが面白い場所があると教えてくれた。
そこは「キャプ・ダクト」というヌーディストが集まる場所でホテルやレストランからキャンプ場、スーパーマーケットまであるのだと言うから驚きだ。
ヌーディストビーチと聞くと仕事柄言っても良いのだろうか思ってしまったが同伴していたマネージャーは「日本人がいるとも思えないから大丈夫だろう」と言っていたがきっと彼女も興味はあったのだろう。
よって私とマネージャー、通訳さんとメイクさん、それと何かあった時のために離れたところで待機していてもらう為にカメラマンの5人で向かう事にした(カメラマンさんならわざわざ盗撮なんかしないだろうし、入場後は離れた場所で他の観光客と話をしていた。全裸で)
私たちも入場手続きを済ませて足を踏み入れる。
ビーチには一糸纏わぬ男女がいたが年配の方が多いようだ。
これならさほど気にせず過ごせるだろうと思っていたが場所が場所だけに脱衣場などはなく、そのままビーチで脱ぐ人も多かった。
それに習い私達も服を脱いでいく。
私は最初はトップレスでいたのだが日差しが強く、下着の形に日焼け痕が残りそうだったのでそれも脱いでしまう事にした。
(いろはたちはここには連れて来られないわね)
日本にいるいろはたちに思いを馳せながら開放感に身を委ねる。
慎ましい胸とその先端にある桜色の蕾、水着からはみ出さないようにケアしているアンダーヘアが露わになった。
マネージャーたちも一糸纏わぬ姿となっていて、ショッピングに行ってみることになった。
もちろん服は手提げなどに入れて持ち歩いているが建物の中を裸で歩くというのは不思議な感覚だ。
すれ違う異国の人も店員すらも全裸であり、恥ずかしさよりも困惑の感情が大きい。
それに歳が近そうな女性も僅かにいるがアンダーヘアがない人が多く、そういった事も日本の文化とは少し違うのだなと感心させられた。
せっかくだからとここでお土産を調達した後、ビーチに併設されたレストランで軽食をいただいた。
裸で食事をするというのもおかしな感じだが押し寄せる波とそれに反射する夕陽は美しく思い切って来て良かったと思えた。
思いっきり楽しんだ後は宿に戻ってスタッフ全員で乾杯をして盛り上がり二日酔いになった人もいるなか帰国を果たした。
「ただいまー」
半月ぶりにみかづき荘に帰ると既にみんな揃っていた。
「「おかえりなさーい!」」
『やちよ、肉!肉は!?』
「はいはい焦らないの。生ハム買ってきたわ。食べるの初めてでしょ?」
フェリシアは肉の塊を見てご満悦だ。
みんなにもお土産を渡していく。さなには童話集、ドイツ語だが一緒に翻訳すれば何とか読めるだろう。鶴乃には珍しい調味料のセット、みたまにはコスメセット、十七夜のは悩んだが実用的な物が良いだろうと考え家族で使えるお揃いのグラスセットにした。
そしてういちゃんには私が撮ったヨーロッパの街並みのアルバム、いろはにはレシピ本を渡した。
どうやらみんな喜んでくれたようで一安心したわ。
数ヶ月して写真集は無事発売となりサインと握手会に魔法少女が来てくれた時は嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な気持ちだったが、下着姿のページはいろは以下年少組には刺激が強いような気がするので年長者として動向には気をつけておこうと思う。