sideエノルミータ
「最近遊べてなかったからめっちゃ楽しみ〜!」
「い、いいのかな……?一応ロードさんと戦ってるわけで…」
「ガチバトルってより長期戦の戦争みたいなもんだし、息抜きは必要ってもんよ。あんま戦いことばっか考えてると疲れるしね、って訳でそこのおっぱい揉んでいいよ」
「お前がだす許可はねぇ!でも、うてなちゃんならいくらでも揉んでいいよ!」
ロコムジカとルベルブルーメを撃破した4人。次にくるのは誰かと待ち構える一方で、緊張しすぎるのも良くないということで息抜きをしに来ていた。4人が他愛ない会話をして、久しぶりの平和を味わってた所で……うてなは不安げな顔をしていた。
「……うてなちゃんさぁ」
「へ…?」
「あんなババアの事ばっか考えてるとババアが移るよ!!な!ロケットおっぱい!!」
「その通り!うてなちゃんがババアになんのヤダ!!な、こりす!」
「……ん」
言葉の割に頷く速度はかなり早いこりす。3人の息のあった連携を見て、うてなは薬と笑みを浮かべていた。皆一様にうてなの事を心配しているのだ。それが伝わったのか、うてなは苦笑していた。
「━━━きゃあアアアアアア!!!」
だが、そんな平和も直ぐに打ち破られた。聞こえてきた悲鳴の方に視線を向けると、そこでは一般市民が謎の魔物に襲われていたのだ。まるでスライムの様なその体は、市民の抵抗による物理ダメージを一切気にしない体であった。
「ンだよあれ…!?魔物だよね!?」
「きっとロードの手下…!」
「やるっきゃないねぇ」
「ん……」
「「「「
4人は変身し、応戦していく。だが、10~20どころか100…いやそれさえも遥かに超える数が街を襲っていたのだ。それが今視界に見える範囲内だけの数であり、恐らくもっと多いだろうという事は容易に察しがつく。
「━━━ヴォワ・フォルテ!!」
「お、デカ痴女と薄痴女じゃん」
「ロコさん!ルベルさん!!」
「ったく…ボーッとしてんじゃねぇぞ!!」
そして、ロコムジカとルベルブルーメが参戦する……が2人は事情を知ってるようで、苦悶の表情を浮かべていた。
「この魔物はロードの!?」
「そうよ!ロードの能力で生み出された魔物!」
「ロードが創った!?それってベーゼちゃんみたいな…!?」
「そうよ!ロードの能力は魔物の創造!アイツいよいよ自分の軍隊を送り込んできた、ってことね!」
ロコは簡単に説明をするが、その説明にレオパルトもヴァスも面倒くさそうな態度を取っていた。何せ説明が遅すぎると感じていたからだ。
「ンだよそれ〜、早く説明しとけよ〜」
「しようとしたらベーゼに変な部屋に閉じ込められたのよ!!」
「てへっ!」
「てへっ、じゃないよベーゼちゃん」
「くっちゃべってる場合じゃねぇぞテメェら……奴さんらの狙い…やっぱりあたしらだぜ…!」
いつの間にか囲まれていた一同。そして、何の皮切りもなしに一斉に襲いかかる……が、全員のそれぞれの攻撃で包囲網はすぐさま穴だらけになっていく。
「どんだけいんだよ!!」
「でも私の物理攻撃一発で沈むし、雑魚過ぎて何の問題も……あごめん今のなし!何か嫌な予感する!フラグの返品を求めます!!」
ヴァスの直感は見事的中しており、倒したそばから魔物達はくっつきそして強力な個体となって現れる。まるで離れなくなったスライムのように。
「再生…いや合体してる!?」
「いや…違うね。そもそも倒せてすらいない」
「ヴェナさん…!」
「ロードの魔物は彼女の魔力から作られている。元を立たねば意味は無い…つまり、ロードエノルメ自身を倒さなければこの魔物達は消滅しないのさ」
「面倒すぎん?」
ヴェナからの進言、つまり今ここでどれだけ頑張ろうが無駄なのである。糠に釘とはよく言ったが、文字通り糠の様な存在に幾らダメージを与えようとしても、通らないのだ。
だが、今からゆっくりと対策を考える暇は無い。そして、ロードの方も与えるつもりもない。そう言わんばかりに魔物達は次々と合体していき、網目状に空を覆い尽くしていく。
「やべぇ!!」
「雑魚も使いようだな!!」
そうしてそのまま落下してきた魔物達に、ベーゼ達は全員取り込まれていた。そして、取り込まれた中でゆっくりと溶かされていくのが肌で実感出来ていた。
「っ…!」
「やっ、ば……せめてアリスだけでも…!」
「━━━させるわけないじゃん」
「お゙っ!?」
突如としてヴァスに突き刺さる水の槍。物理ダメージは彼女にはあまり通じないものの、それはそれとして余計に魔物に押し込まれてしまっていた。
「━━━万事休す、ですねぇヴェナリータさん」
「シスタ…ギガント…!?」
「デカすぎんだろ…!?」
そして、直後に現れたのはビルよりも大きくなったシスタギガント…そしてその肩に乗っているアコティニウムであった。
「……悲しいですねぇエノルミータ…ロード様のお力の前には貴方達もこの通りですぅ……こうしてじわじわとぉ…溶かされていくのもぉ…哀れなことですぅ……せめて一思いにぃ…私の手で叩き潰してあげましょお……」
そうして振り上げた拳を、シスタは振り下ろす。ビルよりも大きな巨体から放たれる一撃は、恐らくベーゼ達の体を霧状にしてしまうほど強烈なものとなるだろう。
「「━━━舐めんじゃねぇぞてめぇ」」
瞬間起こる爆発。そしてその爆風でシスタの腕が上へと持ち上がる。その反動により、ベーゼ達を取り込んでいた魔物は爆発四散してしまっていた。
「再生…しない?なんでかな」
「私がこいつらの容量2Bのクソザコ脳味噌から、自分の正体を『隠した』んだよ。それで何者かすら分からんくなったヤツらは繋がれねぇって訳」
「そいつをアタシがぶっ飛ばした…シスタの腕ごとな」
多少溶かされてしまったせいか、衣装はボロボロになり体は火傷の跡が残っているが……無事なまま全員が立ち上がる。だが、このまま全員で相手するには…些か問題があった。
「…2人と━━━」
「あー、ベーゼちゃん先行って?ここはあたしらが何とかするから」
「そーそー、ロード戦に体力とか残しときなよ。雑兵はやっとくから」
「……シスタはあたしがやる」
「レオちゃ……」
「偶にはさ〜…あたしもいいとこ見せたいんだよね」
レオの顔に、覚悟を感じたベーゼ。事実、ここでベーゼも纏まって戦ってしまえばジリ貧でロード戦に挑むことになるだろう。それだけは避けなければならないのだ。
「……あ、そうだ。この戦いが終わったら、ホテル行こーね」
「……わかった…!」
「……?」
「はよいけや……な、アリス」
「はー……」
そうして、謎の約束をしてベーゼはロードのいる場へと向かい…この場には残りのエノルミータとロード団の2人が、向かい合うのであった。
「っしゃ、じゃあバカップル2人で雑魚頼むわ」
「私はキチガイ水色、レオは巨峰シスターだかんね」
「ちょっ…!?あんたら自分の力量と相手との実力差分かってんでしょ!?死ぬわよ!?」
ロコは怒りながらも、2人がやろうとしていることに心配の方が大きかった。彼女の知識では、もはや天と地ほどの差がある相手に2人は挑もうとしているのだから当たり前である。
「…」
「お、私らの袖掴んで可愛いねぇアリスは……大丈夫だっての…な?」
「おうよ…考え無しはもうやめだってな……オラァ!!!」
そして、レオの発砲により…お互いの戦いは始まったのであった。
,
「……うーん、レオパルトと戦いたかったんだけどな…まぁ後ででいいか」
「ちょいなちょいな!あんた、味方のシスタが負けるって言いたいわけ?」
「うん、シスタは相手舐めてるからねぇ……レオパルトの実力も考えると、勝てると思うよ」
少し離れた場所に移動し、アコとヴァスは対峙していた。しかし、アコの意識はレオパルトの方に向いており、ヴァス本人の事はオマケ未満の扱いも同然であった。
「へぇ…まぁ仮にレオがあんたと戦う事になったとしてもね…勝つよ、レオは」
「へえ……根拠は?」
「お前よりあいつの方がおっぱい倍以上でかいからに決まってんだろうが!」
ケラケラと笑うヴァスに、アコは表情も態度も崩さない。代わりに怒りのオーラが…ということも無く、ただじっとヴァスを見ているだけであった。
「………おもんね、今の煽りちょっとでも受けてくれたら良かったのに」
「まぁ分かりきってるからね、煽りって」
「だからって微塵も態度崩さないってのはどうかと思うんですよ、私」
「そう?煽りに乗ったフリでもして…ズタズタに切り裂いたら良かった?」
そして、互いが無言になる。はっきり言えば、ヴァスが勝てる可能性は万に一つもない。ローブをズタズタに切り裂き仮面を破壊する…それでヴァスは死んでしまうのだ。それをわかっていても……足止めの為に戦う。それだけである。
「━━━━じゃあ、まずはご挨拶といこうか」
「あぶなっ!!」
そして、不意にアコが自前の武器である水鉄砲から高圧の水流を放つ。凄まじい速度で放たれたそれを、すんでの所で避けたヴァスだが…避けた後ろにあったビルが、貫かれ大きな穴を開けていた。
「ひぇー…こっわ、それで処女ぶち破る気なの?私激しいの嫌だわ、優しくして欲しいのだわ」
「ごめんねぇ?君基準での優しくは無理かな、弱すぎるからねぇ、君」
「言ってくれんじゃないのよ」
「だってそうでしょ、レオパルトは本来は星3の実力があるけど……君は…紛うことなき星なしだ」
「……」
アコの言い分に黙るヴァス。レオが星3という話は驚くべきことではあるのだが、今はそれどころではないのだ。最早勝つことは考えていない。時間稼ぎでいいと考えているが、それさえも叶うかどうか分からないほどには差があるのは事実なのだ。故に、どうやって時間を稼ぐかに注視して頭を回していた。
「あれ?ダンマリ?というか君中身ないのにどうやって喋ってんの?」
「今更?」
「まぁ星なしなのも当たり前か、中身がない空っぽの存在…魔法はただあらゆるものを認識できなくする魔法。けど、触れなければ問題は無い。だから手抜きで武器使ってるんだし」
「本気だすなら武器必要ないって言いたげだねぇ?」
「事実そうだからね……武器を使わないなら、こうなるし」
「ッ…!?」
そう言って指を鳴らすアコ。その瞬間ヴァスの体…つまるところローブの部分がズタズタに引き裂かれる。何も見えず、何も聞こえず…突然にヴァスのローブがズタズタとなったのだ。辛うじて腕部分は残されているが、大半が吹き飛んでしまいヴァスは驚きを隠し切れなかった。
「うっそ…!?流石に、不可視はやりすぎでしょ……」
「不可視…?違う違う、そんなんじゃないよ」
「じゃあ何だって、私の体がいきなり破廉恥なことになってんだい」
軽口を叩くが、アコはニコニコと笑みを浮かべるだけであった。重要なことは明かさず、不必要にヒントだけを投げる。魔法の正体を考えさせるための策なのかもしれないが、ヴァスに取ってはただただ鬱陶しく感じるだけであった。
「……」
「んー?どうしたのかなぁ?」
『とは言ってもなぁ』と内心でどうすればいいか悩んでいるヴァス。鬱陶しいのは兎も角としても、相手が強いのは事実。今は弄ばれているだけ。自分が弱いのは事実。その差は明確であり歴然である。勝てる要素など全くない。
「……ま、やるだけやるしかないか」
「どうやって勝つ…いや、時間稼ぎするつもり?」
「さてねぇ?こうやってお話してれば」
両腕が吹き飛び、ついでに肩まで吹き飛ぶ。最早頭しか残っていない。ここまでボロボロにされたのも初めてである。元から無いのだが、ここまで手も足も出ないのを改めて認識させられる。
「……浮いてるってことはまだ生きてるんだ、それで?」
「生きてるって言っていいのかねぇ?」
「ほんと、中身空っぽだね…いや精神面の話じゃないよ?物理的な話。君の本体ってどこになるの?仮面?」
「じゃない?試してみる?」
と言った瞬間、最後のローブが消し飛ばされ…仮面だけが残る。そそて、遂に浮くことさえも出来なくなったのか…乾いた音を立てながら、仮面は地面へと落下していた。
「……おぉ、ローブだったの?落ちたってことは…いや、それにしては仮面の方が丈夫だし…仮面が本体だけど、あんまりダメージが嵩むとダメってことかな?」
「ぐ……」
「まだ生きてるんだ、まぁ虫の息っぽいけど」
そう言いながら、マコはヴァスの残った仮面部分を踏みつける。ゆっくり…ゆっくりと力を込めて仮面に力をかけていく。目線だけはヴァスの仮面に向いているが、その実、意識はヴァスには微塵も向けられていない。
「ぐ、ぐぐっ…こんな、か弱い子を…足蹴にする、なんて……」
「ごめんねぇ?これもう戦いじゃなくて1種の戦争なんだよね」
次第に、ヴァスの仮面が歪んでいく。そして、ついに負荷に耐えきれなくなったのか、一際かわいた音が響く。そう、ヴァスの仮面にヒビが入ったのだ。
「あぐっ…!!」
「痛みある?それとも単に苦しいだけ?ま、それもすぐ終わるだろうけど………ん?」
そしてふと、足に力を込めるのを止めるアコ。そして目線をある1点へと移す。ヴァスは何事かと思うが、そちらへと視線は動かせない。だが、音を聞く事は出来る。
「……あれ、いたんだ?全然会わないから死んだか逃げたかと思ってたよ」
「貴方とは初めて会うね」
「にしても…仲違いして街に迷惑かけるなんて…流石悪の組織って所かしら」
「ま、さっさと〆ればいいんとちゃいますか」
「そうだね…さっさと倒さないと」
そこには聞きなれた4人の声…ヴァスからは見えないが、そこには3人の『魔法少女』がいた。エノルミータと敵対している組織、魔法少女トレスマジアの4人が。
「いいねぇ…4人同時でもいいよ、強い人と戦いたいし」
「ぐ……」
ここに、アコとトレスマジア達の対決が今始まろうとしているのであった。