sideエノルミータ
「Zzzz…………」
エノルミータの本拠地ナハトベース。そこの一室の会議室のテーブルのど真ん中でいびきをかく変身アイテムがあった。ヴァーステキン……変身解除している時の彼女は、変身アイテムそのものへと変貌してしまい身動きが取れなくなってしまう。
「君、寝るのかい?ご飯は食べないのに」
「………だって、変身解除している時ってやること出来ることないもん」
「変身解除しなければいいじゃないか」
「だって……ナハトベースなんも無いもん……やることがそもそもないもん……無駄に力を使うだけ…!」
「文句ばかりだね……まぁ、そんなことはさておき…君に後輩ができるよ……本名柊うてな…幹部としての名前はまだ決まってないよ」
その言葉に変身アイテムの雰囲気が変わ…ったような気がする。あまりにも見た目に変化が出ない為に、内心ヴェナリータは呆れてきた。
「何、拐かしたの?」
「言い方が酷いな…ただ、SNSで変身シーンをばらまくよって言ったら快く受け入れてくれたよ」
「ヴェーちゃんのフォロワー20万じゃん…やることエグイよ…でも見して、どんな子か見る…今チラ見えしたけど大丈夫?完全に『陰の子』だよ?」
「戦闘シーンも録ってあるから見てみるといい、彼女の本質の一端が垣間見えるからね」
「…わかった、このままだとあれだし…
そう言って、指のない手でスマホをポチポチ操作するヴェナリータ。そして、ナハトベースにおける新しい幹部…後にマジアベーゼと名乗る新幹部の初戦闘を見始めるのであった。
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sideトレスマジア
「魔法少女トレスマジア!ここに参上!」
「あわわわわ…!?」
「これはタイミングが悪いね」
場面は打って代わり、変身したての少女…柊うてなの前にトレスマジアの4人が現れる。ヴェナリータはタイミングが悪いと言っているが…それが本当かどうかは怪しいところだ。
「あ、あの!助けてください!私無理やり変身させられて…!」
「え!?そうなの!?」
「敵の言葉信用したらあきまへんで」
「先手必勝よ」
「そもそもそんな真っ黒なマスコットに声掛けられて怪しいと思わなかったの?しかも格好ヤバすぎ」
そうして突っ込んでくるトレスマジアの4人。明らかに覇気がない少女の相手をするのは楽だと感じたのか、一気にとどめ刺しに来ていた。
「し、信じて貰えないなんて…!?」
「これは残念だね」
「あわわわ…どうしたら…,」
すると、どこからともなくヴェナリータが謎の鞭のようなアイテムを取りだしていた。まるで、彼女に渡すかのように予め準備していたようである。
「これを使うといいよ……君専用の武器『
「こ、こんなのでどうしろと…!」
「さぁ、それで早くそこの花を打つんだ。早くしないとやられてしまうよ?」
「え、えーい!!」
彼女が花を叩くと……一気に花の姿が変わっていく。弦は大きく伸び、太くなっていく。そして花の部分は肥大化していき…真ん中がまるで生物の顔のように形成されていく。その姿はまるで、ファンタジーに出てくる花のモンスターの様。ついでのように、弦で出来た体は拘束具のような物を取り付けられていた。
「なにこれ……」
「上出来じゃないか…よくやったね。その鞭は君専用の魔物を生み出せるんだ。後は奴が君の手足となって、魔法少女を苦しめてくれるさ」
様子を伺う2人。対してトレスマジアの方は目の前で生まれた魔物に苦戦を強いられていた。初見殺しの様なものである、当然刺さらない時は刺さらないのだ。
「くっ…!?」
「きゃあ!?」
「マゼンタ!!わわっ!?」
「さ、サルファまで!?ひゃっ…!?やめ、どこ触って…!」
「アズール!!このっ…!止まれ!!」
マジアシュヴァルツの鞭の攻撃が、植物の魔物に襲いかかる。彼女の魔法ならば、この魔物の動きを完全に止めることが出来るだろう。しかし、折角の初バトル…この程度で終わらせるほどヴェナリータは甘くない。
「いいのかい?その鞭で攻撃したら……間接的に君の仲間も固まるかもよ、そうなるとどんな影響が出るだろうね…間接的、って言うのは意外とどんな影響が出るか分からないものだよ…制御、できなかったりして」
「っ!!」
「え、あ…いつの間に…?」
マジアシュヴァルツは、いつの間にか傍に移動していたヴェナリータのその言葉につい鞭を動かす手を止めてしまう。魔法を切ればいいだけなのだが、魔法を使って止めようとしていた彼女の動きは一瞬だけ止まってしまう。
「まだまだ未熟だね、マジアシュヴァルツ」
「うわっ!!」
不意を突かれたマジアシュヴァルツは念入りに拘束されてしまう。ほか3人よりも多く、そして強く拘束される。骨がミシミシと音を立てるほどに強く。
「う、ぐっ…!」
「や、やった………あ…?…は、はは………え、えへ……」
そして、何を思ったのか……一瞬戸惑った表情を見せた後にうてな恍惚とした表情を見せる。まるで、縛られた魔法少女を見て…興奮しているかのように。だがそれで終わりではないと言わんばかりに、いつの間にか再びうてなの傍に戻っているヴェナリータが進言していく。
「………………うてな」
「はっ…!?も、もうこれで満足ですよね!?この辺でやめに━━━」
「何を言ってるんだい?
「……え…?い、いや…流石にそれは私…出来ないかなって……」
そう言ううてなに無言でスマホを見せるヴェナリータ。『従わなければSNSで拡散するぞ』と脅しているわけである。うてなは渋々拘束された魔法少女達に近寄り━━━
「あ、あの…」
「ど、どうしてこんな事をするの!?お願いだから離して……!」
「さっきみたいに助けを求めても無駄だよ」
マゼンタの叫ぶような声、そして即座に入るヴェナリータの注釈のような脅し。後がないうてなは、やるしかないのである。
「お……お尻…出してもらっていいですか……?」
「え?」
「は?」
素っ頓狂な声を出す魔法少女達。だが、その瞬間に鳴り響く空気が裂けるような音。ほんの一瞬あっけにとられる魔法少女達だが……直後に、激痛が襲ってくる。
「「「「い゙━━━━」」」」
「いったーい!!」
「何すんのよこのっ…!!」
各々叫ぶ魔法少女達。だが、それに対してうてなは鞭を振るう。振るって、振るって……段々とその表情は恍惚としたものとなっていく。魔法少女が、自分の振るう鞭で苦しむ。その様子が、堪らなくなってきているのだろう。だから、そのために振るう。振るう。何度でも何度でも…だが、それは今回が初戦闘である彼女にとって短い天下なのである。
「ん゙ぎ゙、ぎ゙ぃ゙…!!ぶん゙!!」
「っ!?」
マジアシュヴァルツが鞭を振るう。だが今回はただ振るっただけだ。しかし、骨が軋むほどの力で拘束されている彼女が無理矢理力を震えば、その分体に負担がかかる。だが、それでもやる事はやった。
「何を…」
「鞭を……斬るぐらいなら…って事よ……!」
「は…!?」
うてなは気づいた。他3人の拘束が解けていることに。そして、解けたと言うことは3人は攻撃に移れるという事であり━━━
「やあぁぁぁぁあ!!!」
「シュヴァルツ!!」
「あ…ありがとアズール…」
マゼンタとサルファはうてなの方に向かい、そして倒れているシュヴァルツに駆け寄るアズール。鞭を振るった腕を抑えながら、苦しいのを誤魔化す笑顔でシュヴァルツは応答する。アズールは氷を作り出しシュヴァルツの抑えてる腕を冷やす。だが、その手を抑えていた手でシュヴァルツは制止する。
「今は4人でトレスマジア……とりあえず、『これ』あげるから…あの乳丸出し変態女倒してきて…サルファとマゼンタもあんまりダメージ受けてないみたいだし…おしり以外」
「…分かったわ」
そう言って、ほんのり光ったシュヴァルツの手を握るアズール。その光はアズールに受け継がれる。そして、アズールはそのままサルファとマゼンタのところへと向かう。
「………アズールめっちゃいい匂いしたせいで凄いドキドキした…いたたたた…ドキドキしたらめっちゃ腕痛い……」
その一言は、アズールには届かない。
打って変わり、アズールが合流したトレスマジアの3人はトドメを刺そうと一気に距離を詰める。
「いくわよ…はっ!!」
「しまっ………あれ…?」
アズールは氷の刃を振るい、冷気を魔物とうてな両方にぶつける。しかし、それ以外は何も起こらずうてなはつい困惑してしまう。だが、初戦闘とはいえそれが命取りとなっていた。
「一体何……はっ…!?」
瞬間、うてなは理解した。まず足が凍らされてることに気づく。そしてその氷を対処しようとして、体が動かないことに気づく。口だけは辛うじて動かせる為に、ただ喋るだけの棒立ちと化していた。そしてそれは、自らが作り出した魔物も同じ。
「まさ、か…!!」
「気づいたようね…シュヴァルツの固める魔法…その魔法を私は受け取り、私の魔法に乗せて飛ばしたのよ。ついでに凍らせて…万が一動けたとしても氷で動きを阻害できるようにね」
「せやから…このまま……!」
「終わりだよ!!」
サルファが魔物に距離を詰め、一撃で決める。その一撃はあまりにも一瞬だった為に、何が起こったのかはその時点ではうてなは理解できなかった。
「しまっ━━━━━」
「はぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
そして、マゼンタの一撃をうてなはまともに受けてしまう。その瞬間シュヴァルツとアズールの魔法が解けて、一気に吹き飛ばされてしまう。
『これで、よく分からない女を倒せた』そう思った矢先、黒いゲートが開く。そして吹き飛ばされたそのままにうてなはゲートに入り込み、無事に逃げおおせたのであった。
「くっ…逃げられてしまったわね…」
「でも何とか無事に……いたたたた!!!おしり…いたい…!」
「あの変態女…次会うたら許さへんでほんま…」
「3人ともぉ…大丈夫〜…?」
逃げたのを確認してから、シュヴァルツは3人に駆け寄る。お尻と腕をかばいながらなので、かなり変な動きになっているが。
「シュヴァルツ!!大丈夫なの!?」
「アズ〜ル〜…い゙だぃ゙〜……」
「わ、私達もお尻痛いのよね……」
そして、ここで映像は止められる。うてなが退却してから少しの間隠れて写してはいたが、放置するわけにもいかないとこの時のヴェナリータが判断したのだろう。
.
.sideエノルミータ
「……という訳なんだ」
スマホをしまい、ヴァーステキンに向き直るヴェナリータ。表情に出ないためか腕を顔の部分に当てたり、首を傾げたりしながらの動きをしながら、ヴァーステキンは色々と喋っていく。
「鞭を振るい、当てた物を魔物化する……能力としてはいい能力というか、強い能力の部類だけどさ…ヴェっさんが脅してまでやる程かな?あの子」
「まだまだ覚醒しきっていないからね…彼女の本質は魔法少女を痛め付けることで得られる快感…」
「ドSじゃん」
「そうだよ?」
「身も蓋もねぇなこのゼットンカラーのマスコット………ん、という事は私と同じか」
袖同士をまるで手を合わせるようにくっつけて、少し声音を上げるヴァーステキン。同じ性癖の仲間が見つかった!と言いたげなその仕草にヴェナリータはただ視線を向ける。
「さてね、そこは話し合えばいいんじゃないかな…もう少し彼女を覚醒させつつ…新しい仲間を探していくことにするよ」
「また幹部候補?」
「そうだね、ロードが帰ってくる前に揃えとかないと」
「ロード…あ、ロードエノルメだっけ…一応総帥の」
「君がエノルミータになった直前だからね、魔法少女狩りに行ったのって」
「魔法少女狩り…ねぇ……?」
思うところがあるようで、不思議そうな声音を出すヴァーステキン。その様子が気になったのか、ヴェナリータは彼女の前までふよふよと飛んでいき仮面しかない顔を見上げる。
「どうしたんだい?前言ってたみたいに、捕まえたいとか?」
「それはある。ちっちゃい魔法少女でもおっきい魔法少女でも嬲りたいよね……とは思うけどそれはそれ、今回は別」
「欲望中心だと思ってたけど君存外頭回るよね……で?何が気になってるの?」
「魔法少女側についてるあの2Pカラーヴェっさん」
「ヴァーツかな」
「そいつそいつ……魔法少女狩りって、
「さてね、ヴァーツが何を考えてるかは分からないけど……なんだい?その仮面をこっちに向けて」
見上げていたヴェナリータに視線を合わせるかのように、ヴァーステキンは顔の部分を下げる。そして、顔を横向きにしたまま存在しないはずの眼をヴェナリータに向ける。
「何を考えているか分からないのは、あんたも同じだよ
「……驚いた、君…人の名前覚えられるんだね」
「はぐらかすねぇ?わざわざ魔法少女狩りについて行かず、こっちにいるのは仲間集めって訳じゃないでしょ…私女の子虐めたいが中心だけど馬鹿じゃない自覚はあるよ。
……
何かが面白くなって笑いを堪えているのか、それともテンションと共に上擦ってしまっているのか、高めの声でヴァーステキンは尋ねる。ヴェナリータはじっと彼女を見返す。その黄色い瞳は、何を考えているのか見当もつかない。
「━━━━根拠は?」
「今見せてくれた子の存在…それだけの逸材なんだ、覚醒させるにしても急ピッチがいいはず…何せ魔法少女が更なる力をつけてしまったら問題だ……けど、えらくまたゆっくりだ。
きっと、本命は柊うてな…ロードエノルメは彼女という存在が見つかり、そして覚醒するまでのつなぎだ…まぁ、柊うてなで何をするのかまでは知らないけどさ」
「━━━いい推理だね、答えはいずれ分かると思うよ」
「否定しないんだねぇ…まぁ、わかってると思うけど私その辺はどーでもいいからさぁ。もしヴェルディっさんの方が欲望を叶えやすいって思ったら……そっちに付くよ」
「……そうかい、そしたら僕は一旦うてなのところに行ってくるよ」
「はいよぉ、行ってランチャーい」
謎の挨拶をしながら去っていく、ヴェナリータに手を振っていくヴァーステキン。彼がゲートを抜けていなくなったことを確認すると、抑えきれなくなったのか大きく笑い始める。
「さーて…よーやく楽しめるよォ……柊うてな……おっぱいはちっちゃいけど…可愛がってあげようかなぁ…」
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.sideトレスマジア
「病院!?」
マジアアズール…小夜が声をあげる。彼女が声を上げた所は現在マジアシュヴァルツ…双葉ユズリハの自宅だった。当然、仲間の薫子とはるかの2人もいた。
「ヒビとかは無いけどォ…暫く出れないよォ…」
「仕方ありませんよ…縛られてる中で無理矢理動いたんですから」
「あ、ヴァー……」
ユズリハと小夜の間に出てくるヴァーツ。名前を呼んだユズリハが途中でその名前を呼ぶのを辞める。どうしたとヴァーツも小夜もはるかも薫子も視線を向ける中で真顔だったユズリハが若干しかめっ面をする。
「ちょっと前に戦ったあの幹部を急に思い出した」
「あぁ…何言いはってたっけ名前…」
「ヴァーステキン!!」
「そう、そいつそいつ……なんか、イラッとくるんだよねあいつ…あと名前被っててつい思い出しそうだからヴァーツ今から名前変えて」
「無理ですよ!?」
急な無茶振りを入れてくるユズリハにツッコミを入れるヴァーツ。ユズリハもその無茶振りが叶うとは思ってなかったのか、ため息を吐き、3人に向き直る。
「……とまぁ、今こうやって冗談言うくらいが限界」
「そう……ごめんなさい、私達が足引っ張っちゃったみたいで…」
「あの能力初見殺しだったし仕方ないって…ただ直ぐに復帰するつもりだからぁー……あー、でも小夜かはるかがヨシヨシしてくれたら治るかもね〜!……なんて」
「それくらいでいいなら幾らでも…」
「あかんではるか、甘やかしたら付け上がってまうから」
ユズリハの冗談を真に受けてしまい、本当にヨシヨシしてしまいそうになるはるか。しかしそれを止める薫子。『ちぇー』と残念そうにするユズリハに対して、小夜は苦笑いしかできなかった。
「ま、治るまでの間街の平和よろしく」
「「「勿論」」」
ユズリハの言葉に頷く3人。性格や戦い方は違えど、それぞれが平和を守ろうとする魔法少女なのだ。故に、仲間の為に本当に頑張るであろう。
問題は…これから相手するのが…まともに戦ってくれる人物ではない、というのが問題なのだが……彼女たちには知る由もないのであった。
因みにシュヴァルツ、もといユズリハは胸がないです。贔屓目に見てもないです。でも別に乳首は黒くないです。