sideエノルミータ
「やぁ、ヴァーステキン」
「ん?ヴェースキャンプ…どうかし………」
ある日、ヴァーステキンはいつも通り睡眠で暇を潰していると、ヴェナリータが話しかけてきた。どうせなにか厄介事だろうと、アイテム状態のままでそちらに意識を向ける。そこには、ヴェナリータと金髪の幼女がいた。というか、ヴェナリータは抱っこされていた。
「あらまぁ、誘拐?」
「どっちがどっちを、というのは聞かないでおくよ……彼女は杜乃こりす、僕らの新しい仲間さ」
「幼女を仲間はないんじゃないのかい」
「これでも君より強いよ」
「……え、マジで言ってる?挑発とかじゃなくて?」
「あぁ、眠っている才能は…凄まじいものだ…けれど、本格的な紹介はうてな達が来てからにしよう」
2人が会話している中、じっとヴァーステキンを見ているこりす。その視線に気づいたヴァーステキンは、彼女に自分の仮面を見せつけるように顔に近づける。
「なんだいなんだい、そんなに見つめられたら未開発の蕾と開いてないドアこじ開けてえっちなことしたくなっちゃ……what?」
どこから取りだしたのか、ボロボロのぬいぐるみを2つ取り出すこりす。人形とこりすを交互に見て、しばらくして口を開く。
「…もしや、お人形遊びしたい?」
「…ん」
「寡黙というか…静かだねぇ君」
こくりと頷くこりす。言葉を出さず、しかし態度と行動で示すこりすにヴァーステキンは少し考える。味方になるのであったら、ここで手を出しておいたらあとが怖い。というかうてなが面倒だと感じていた。
「……んじゃま、遊ぶか」
「ん……」
表情はあまり変わっていないはずなのに、妙に輝いて見える顔はヴァーステキンの心の何かを溶かすような感じがした。そして、彼女自身は仕方なくと思いながらうてな達が来るまで人形遊びして待つのであった。
.
sideエノルミータ
それから少しだけ時間が経過した。こりすの幹部としての実力を発揮させるために、全員変身してトレスマジアを誘き寄せようとしていた。
「……にしてもほんと可愛いねぇ、えっと…ネロアリスだっけ?名前」
「おいおい、テメーがちゃんと名前覚えるなんて珍しいじゃん」
「黙りんさいスカイエース」
「原型ねえじゃねぇか……」
「……にしても、人形ボロボロだねぇ」
こりす…否、ネロアリスが使っている人形はどれもボロボロであった。魔法で生み出したものではなく、人形は彼女自身の持ち物らしい。
「暇な時縫ってあげようか?」
「縫えるんですか?」
「今度裁縫の本持ってきてよ、ベーゼちゃん」
『珍しい』とベーゼとレオパルトは顔を見合わせる。最初は
「……って、そうこう遊んでる内に引っかかったみたいだ」
「あ、来ましたね」
「おー…なんか新鮮」
ネロアリスの目の前には人形用の家…ドールハウスが置かれていた。そして、その中には動くトレスマジアの4人が……人形ではない。
.
sideトレスマジア
「閉じ込められた!?」
「せやから気をつけ言うたやろ…!!」
「…魔法で固められてる…けど、私みたいな魔法じゃなさそう…どっちかと言うと…サルファとかが使う結界の方が近いかも」
「つまり…この家みたいな空間丸ごと、敵の能力?」
「多分……出来そうなのはあの乳首バツ2女だけど…」
そしてこちらはネロアリスの力によって閉じ込められたトレスマジアの4人。マゼンタが謎の人形を追いかけてしまい、追いかけた先での監禁ということになる。
「にしたっけおかしいな、あいつの能力は魔物作ることやろ?」
「これ自体が大きなモンスター…って可能性はあるけど…私達を分散させるならまだしも1箇所に固めたら、突破されると思うんだけどな……ん?」
シュヴァルツが何かの音を聞く。それにつられて、シュヴァルツが見た方向と同じ方向をトレスマジア達は見る。そこに居たのは…通路にギチギチに詰まっているレベルで大きい…ボロボロの猫のぬいぐるみであった。
「ン゙ナ゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙!!!!」
「なにぃいいいいいいい!?」
マゼンタが心の底から叫んだ。アズールがドン引きした。サルファは『面倒』とだけ思った。シュヴァルツは3人を離れさせるために攻撃を行った。
「固まれ!!」
鞭は振るわれ、目の部分に当たるであろうボタンに当たる。それで固めてしまえば、一旦は終わり……と思っていたが、その瞬間に
「え゙ッ」
固まったのはボタンのみ、人形は固まらずシュヴァルツに攻撃を仕掛ける。もう一度振ればよかったのだが、如何せん近づかれるとさすがに恐怖が勝る。
「ゔわ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!?」
「もう一撃与えたらええやろ!!」
「む、無理!!流石に近すぎだしアレ近距離正面から見ちゃったから無理!!ちびる!!!!!」
「何やねんな!!やるしかないやろ!!」
「生きたタコぶん投げるよ!?」
「やめーや!!」
そう言いながら逃げ惑うトレスマジア達。だが逃げてもここが閉鎖空間なことには変わらず、いずれ追いつかれるのは目に見えているだろう。故に、何とかしないといけないのだが……
「何アレ何アレ!?ここ入る前に見たぬいぐるみ!?」
「知らへんわそんなん!!」
「どーしよどーぶべっ!!いたたた━━━━」
マゼンタが何かにぶつかり、尻もちを着く。何かにぶつかったようだが……4人は嫌な予感がしながらもマゼンタがぶつかったであろう『何か』を見上げる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!」
そこにいたのは…多種多様なボロボロのになった巨大な人形だった。余りの事にマゼンタは再び悲鳴をあげてしまう。流石にさっきぬいぐるみを見てしまったシュヴァルツは、ドン引きしていた。
「このっ……やああ!!!」
アズールが、剣を振るってダメージを与えようとするが……全く攻撃がきいていなかった。となれば、後はもうシュヴァルツの魔法しかない。
「ち、ちくしょう!!やってやるぅ!!!みんな逃げてぇ!!うわぁぁぁああああああ!!!今日寝れなくなるー!!アズールゥ!!今日一緒に寝てぇぇぇええええ!!!」
半狂乱になりながら、自らも何を言ってるのか分からないままに鞭を振るうシュヴァルツ。しかし、ぶつかって固まるのはいたがそれ以上に人形の数が多かったため━━━
「あ゙ーッ!!!!鞭取られだァ゙ー!!!!」
そして結局シュヴァルツも逃げる羽目になった。振るっていた鞭を掴み返され、取られてしまったのだ。そして半狂乱になっている以上最早ダメだと逃げることになった。
しばらく逃げ続け……4人は見えづらい部屋の隅に寄ることに成功した。
「な、なんなのよ…あいつら攻撃が通じないじゃない…!一体何が……」
「分からない……
肩に手を置かれ、振り向くアズール。声はマゼンタそのものだったが…そのマゼンタ自身が謎に男装をしており、スーツ姿に身を包んでいた。
「………マゼンタ、その格好は…」
「ハニー…君は今日も可愛いね…さぁ、甘い口付けを…」
「ちょちょちょちょ!?サルファ!シュヴァルツ!!助けて!マゼンタがおかしいの!!」
アズールの顎を持ち、唇を近づけていくマゼンタ。流石に驚いたアズールだったが、残り二人に助けを求める。しかし……残り二人の返事が返ってこない。不審に思ったアズールはふたりのいる方をよく見てみると……
「まま……お腹減った……」
「お゙ね゙ぇ゙ぢゃ゙あ゙ん゙……!ごわ゙い゙よ゙ぉ゙……!!」
「━━━━━━」
そこにいるのはゴスロリに身を包み幼子のような表情を浮かべているサルファと、幼子が着るようなデザインのドレスを身にまとってボロボロ涙を零しているシュヴァルツだった。
「ばああぁぁぁっぁぁあああああああっぁぁぁぁぁぁぁあああっあああああッッッ!!!!!?!?!!!?!」
ついに驚きの声をあげてしまうアズール。もはや彼女の頭では、処理できないことが起こってしまっていた。だが、混乱している彼女を他所に、様子がおかしくなってしまっているサルファとシュヴァルツが彼女に近づいていく。
「ちょっ…!?サルファ!?シュヴァルツ!?!」
「ままぁ…おっぱい…」
「お姉ちゃん…ちゅーしてぇ…」
「ちょ、何をんむぅ!?」
シュヴァルツはアズールの唇を奪い、サルファはアズールの胸を掴みそして吸い始める。アズールは困惑したままに舌を絡められ、乳首を吸い上げられる。本来止めるはずのマゼンタは、あっけらかんと笑いながらアズールに近づき……空いている胸を吸い上げ、手でアズールの股間をまさぐっていく。
「ふぅ…っ!んむ、ぢゅる……んぶっ、むっ…!」
彼女はこの状況下で、最早何が正しくて何が間違っているかの正当な判断がくだせなくなりつつあった。サルファの言う通りママであり、シュヴァルツの言う通り姉であり、マゼンタの言う通りハニーなのかもしれない……そう思い始めていた。そして、そう思い始めたが最後彼女は一切抵抗できないままに体をまさぐられていき━━━
.
sideエノルミータ
「ドールハウスを使って結界を作り、それで認知操作を行う…ですか」
「あぁ…玩具を意のままに操る…それが彼女、杜乃こりす…いやネロアリスの能力さ。」
ドールハウスのなかでのいざこざを見学しながら、警戒する必要は無いとネロアリス以外変身を解除したエノルミータ達はネロアリスの能力を再認識していた。ドールハウスに誘き寄せ、そして中に入ったが最後彼女のしたいことやりたいことの道具にされてしまうのだ。
「よく分かんねぇけどヤバそうな能力だな〜…」
「やばいなんてもんじゃないってこれ……今回こうやってされてるけど…やりようによっては普通に同士討ちとかさせられるし、私らの仕事半分以下だよ」
「その通り…とても強力で頼もしいねこのドールハウスの中では、全てが彼女のおもちゃなのさ……だが━━━」
突如として、ネロアリスの変身が解除される。そしてその瞬間、ドールハウスの中に囚われていたトレスマジアの4人は外へと飛び出していた。
「━━━━何をさせてくれとんねやあいつらァ!!」
「わぁ…」
「ざまぁみろし〜」
「こりすの力は強力だけどね……彼女はまだ幼いのさ」
「ありゃ、おねむだ」
ネロアリス…こりすは寝てしまっていた。変身は解除され、そのままの体勢でウトウトとしている彼女をうてなが抱える。一応まだ起きてはいるが、最早自らの変身が保てないほどに意識が朦朧としていた。
「家まで送るのを手伝ってくれるかい?」
「は、はい……」
「……ねー、うてなちゃん」
「な、なんですか?」
「……こりす、えぐくね」
変身を解除し、アイテムとなったヴァーステキン。ヴェナリータが彼女を持ち上げ、そしてうてながこりすをおんぶする。その中でヴァーステキンに言われたことに対して、彼女は一切の意見を言わなかった。だが、内心肯定していた。ネロアリスの能力は…凄まじい物なのと、今回の能力の使い方を見て1番『えげつない』ことを察してしまっているのであった。
「……それにしても」
「なんだよヴェネツィアータ」
「君、こりすに惚れたのかい?」
「…………………………………なんで…?」
ヴェナリータの言葉に困惑するヴァーステキン。このマスコットが言っていることが、本気で理解できなかったからである。勿論、ヴァーステキンがこりすに惚れている…などということは無い。
「君にしては甘いのと、珍しく名前を覚えているからね」
「気分だよきーぶーん」
「そうかい…まぁ、仲違いまでいかなければいいよ」
そう言ってゲートを開き戻っていく2人。ヴェナリータからも、ヴァーステキンからも表情は読み取れない。しかし、新しい仲間…杜乃こりすによってヴァーステキンは早くも変わっている…とヴェナリータは確信しながら内心ほくそ笑むのであった。