後編は明日投稿なので、まとめて読みたい方は明日にでも。……とおもいましたが二話同時更新♪
最初の挨拶というのは大切なもの。
社会で生きていくうえで、内心は置いといて「私はあなたの敵ではありません」と示すための儀式みたいなもの。
だからこそ誰もがするし、ワタシもするし、姉さまは可愛いし、姉さまはつるペタでもえっちですし、……あぁ、しまった。姉さまのことを考えると妄想がとまあ無くなってしまう。
あの幼い体躯がこの腕の中で快楽に身をよじっている様子を思い返すだけでワタシの女としての部分は濡れてしまう。
それ自体は悪いことでもないけれど、今は真面目な話をするべき時。
そう、ワタシは百合で“キカイカン討伐部隊”本部の第二部隊の隊長という重要な役職に就いている。
今は第二部隊の新人たちを連れて他の隊員たちに紹介させている仕事中。
入隊したばかりの見習いたちに挨拶をさせるのは、別に触手部隊でなくてもするのでしょう。
その挨拶の場で、ワタシがマボ姉さまの妄想を切り止めてまで真面目モードで取り仕切っているお仕事の、開幕一番の挨拶で拒絶する新人がいるとは思いもしませんでしたね。
「あーし、そういうのキョーミないんで」
彼女――本日よりワタシの部隊に配属された“見習い”の井之頭マキちゃん。
そんなマキちゃんの挨拶はこれだけで、他に何も言うことなく他の見習いの子たちも困惑しちゃっています。こんな子もいるのですね。
まだ配属初日だというのに支給された隊服を着崩しているし、ギャルっぽいケバいメイクで人を拒絶して、まるで最初から仲良くする気は無さそう。
ワタシとしてはこういう子も可愛く思えるのですが、流石にこれには副隊長のツキノもご立腹。
「こらー! 新人!!
我々“キカイカン討伐戦闘部隊”は平手公爵家直轄の役職であり公務員でもあるのにその態度は何!?
しかもッ! ナモ隊長への態度がなっていないわ!!」
ふふふ、ツキノったら可愛いわね。貴女も昔は生意気なところもあったというのに♪
「だって、あーしは望んでここに来たんじゃないんだもん!
そこの、ナモたいちょーが来いっていうんだもん!」
「な!? ななな、なんて生意気な!?
我々が敬愛すべきナモ隊長に対する不敬! 万死に値するわ!!」
両手からも背中からも触手を生やして怒り心頭のツキノ。
ワタシのために怒ってくれるのは嬉しいけれど、これでは副隊長の威厳がまるでないわね。
でも、ツキノ以外は苦笑いしながら受け入れている。生意気な新人が入るとこの子ったらいつもこうだもの。あとはマボ姉さまが絡む時とか。
ツキノは背が高いし真面目だけど、“隊員”のみんなよりも後輩の“副隊長”ですものね。こういう年相応の素顔をみんなは先輩として可愛らしく思っているのでしょう。
そして、ワタシも含めた隊のみんなが可愛らしく思っているのは、新人のマキちゃんに対しても同じこと。
部隊のみんなはワタシを信頼してくれている。ツキノが怒って場をかき乱したとしても、慌てることなく成り行きを見守っているのだと思う。ツキノ以外。
「はいはい、ツキノ。そんなに慌てちゃダメよ。
この子――新人のマキちゃんですが、しばらくはワタシが直接指導します」
「!? で、でもナモ隊長!
この子こんなに失礼ですし、まずは副隊長の私が礼儀作法から教えますよ! “副隊長”の私がッ!」
ワタシが言ってもツキノは不満顔。まぁ、そういうところも可愛いのだけど困ったわね。
「う~ん、気持ちは嬉しいんだけれど、ちょっとツキノとマキちゃんは相性が悪いと思うし……」
周囲に視線を巡らせると、第二部隊の頼れる“お姉ちゃん”――イコル隊員が頼もし気にこちらを見て頷いた。
うん、決まりね。
「イコル、悪いけど暫くツキノのサポートを頼むわ。
ツキノったら新しく“見習い”が入ってくると、いつもこうなんだもの」
「了解した、隊長。
哨戒任務のシフトは、当面その子を要れずに作成しようか?」
「ええ、お願いするわ。
ツキノもよ。頭に血が上るのはいつものことだけれど、貴女は優秀なんだからイコルに手伝ってもらって頭を冷やしなさい」
「……はい」
ふふ、ツキノがカッとなった後に落ち込むのはいつものこと。可愛いわね♪
「一応言っておくけれど、今回はツキノが間違っている訳じゃないのよ?
相性が悪いだけ。だから元気を出しなさい。“ワタシの”副隊長さん♪」
せめて身長相応に威厳を持ってほしいのだけれど、イコルみたいな頼りがいはツキノには早いわね。
「た、隊長♪ 素敵すぎます!!
もう一度“ワタシの”を強調して言ってください♪」
「ふふっ、だ~め♪」
こんなツキノのダメダメな様子を見ていたんじゃ、新人のマキちゃんには副隊長の指導では納得できないでしょうし、やっぱり私がするべきね。
「さっ、それじゃ今日も人類の未来を守るべく、百合で触手なお仕事を始めましょう。
みんな、頑張りましょうね♪」
最後はワタシの笑顔で活を入れて新人紹介は終了。
意気消沈した副隊長のツキノはすでに回復しているので置いといて。他の見習いたちはすでにイコルの指揮下で動いているし問題は無さそうね。
それでは今一番の問題であるマキちゃんと話をしましょうか。
◆ ◆ ◆
後のことを有能な部下たちに任せ、ワタシはマキちゃんを一人連れて第二部隊の執務室へと移動する。
出張が多いからワタシよりもツキノが使うことが多いし、“ツキノと一緒に”使うことも多い部屋だけど片付けも掃除も完璧で落ち着けるのよね。
清掃係の“小間使い”の人たちにはお世話になるけれど、彼らも部屋を片付ける仕事は楽しんでいるみたい。色々と残るものね♪
「言っときますけど。
あーし、ナモたいちょーにも敬意なんて持ってませんから」
最初と同じ、視線を合わせることもなく服装も乱れたままのマキちゃんはそう言うだけだった。
「ええ、それでいいわ。
まだ出会ったばかりですもの。
それに部隊内ではおいおいとして、二人っきりの時にまで肩ひじ張る必要はないわ」
ふくれっ面で生意気な態度。でもワタシも百合だもの。こういう子も可愛く見えるのは悪い癖なのかしら?
日に焼けた肌と襟元から覗く地肌の白さが良い感じに性的な魅力を感じさせる。素晴らしく美味しそうな子ね♪
勿論、まだ表情に出したりはしない。まだ、ね。
「でもね、マキちゃん。
ワタシは貴女のご両親から頼まれている訳だし、半端なことは出来ないわ」
「それがウゼーってんですよ!
あーしのクソ親なんて知ったことじゃないわ!」
「もう、口が悪いと良い出会いの機会を無くしてしまいますよ」
ワタシが注意してもどこ吹く風。この子は本当に反抗心の塊ね。
さて……、何から話したものか。
まずはこの子を部隊に引き込んだ経緯でも話しましょうか。
ワタシがこの子と出会ったのは休みの日。街中をぶらついていたら路地裏に複数のチンピラに連れていかれる彼女を見かけたのが切っ掛けでしたね。
何でもギャルっぽい恰好からナンパされて、金だけ出させて股開かずってのに腹を立てた連中だったみたい。
何処にでも馬鹿はいるものね。母様の治めるこの街でそんな馬鹿の存在は、このワタシが許しません。
それで女性に性的行為の強要をする輩は速やかに排除したけれど、その時も感謝の言葉なんて無かったわね。
今みたいに生意気言って、何とか聞きだした住所から家まで送り届けたらワタシのことを知っていたご両親が「自分たちには手に負えないから」という理由で半ば捨てられるように触手部隊にやってきた彼女。
後で“小間使い”たちに探らせたところ、マキちゃんは母親の連れ子で父親は再婚相手だったみたいね。
その両親の間に妹が生まれたことでマキちゃんへ愛情が向かなくなった、と。
言っては何ですが、可哀そうな身の上なのは確かなのですよ。
愛されるのが当たり前のはずの年齢で孤独なのは辛いでしょうね。
「どーせ、ナモたいちょーだって余計な荷物が来たくらいにしか思ってないんでしょ!?
いーですよ、さっさと捨てちゃってくださいよ!
あーしなんて、その辺の男に股開いて妊娠して捨てられてヤク中にでもなって路上で死ぬのがお似合いなんですから!!」
これまた破滅的な思考。自殺志願者ともとれるわね。
でも、こんなに可愛いのに男性にあげるなんて、そんなのはワタシが嫌。
「言っておくけれど、マキちゃん?
ワタシは決して貴女を見捨てたりはしないわ。
貴女にとっては不本意かもしれないけれど、こうして触手部隊に所属することになったからには必ず守ってあげるし、愛してあげるから」
まずは、仲良くなるところから始めましょうか。
「それに、男に身体を売るというのが前提として間違っているわ。
貴女は女同士の快楽を知らないからそんなことが言えるのよ」
「はぁ!? ヤることが同じなら男とか女とか、こだわる必要なくないっすか?
あーしはお金になりそうだから男を誘っているんだし」
「でも、この前は本番無しでキレた男たちに強姦されかけていたわよね?
本当は、恐いんじゃないの?」
マキちゃんの肩が震えた。彼女、強気で悪ぶっているけれど、本当はそんなことが出来る程に強くはない。
だからこそ、ワタシは彼女を守ると出会ってすぐに決めたのよ。可愛いし。
そっと抱き寄せて、耳元で囁くように宣言する。
「マキちゃんの家庭の事情はさておき、ここは平手公爵家の屋敷だから貴女の敵はいないわ。
ゆっくりと、マキちゃんの進むべき道を探していきましょう。
道を知らないのなら幾らでもワタシが教えてあげるから」
抱き寄せただけでも気持ちは伝わる。最初と同じように、そっと手を離す。
あくまでも自然に。マキちゃんを愛しているのが当たり前だと思ってもらえるように。愛されるのが当たり前なように。
「あっ……」
物欲しそうな目で見てくるマキちゃんだけど、最初から押せ押せというのはワタシらしくないし、彼女には合わないものね。
これがマボ姉さまなら、もっとデリカシーに欠けながらも過激に愛して自分色に染めちゃうんでしょうけれど。
ワタシはワタシのやり方でこの子を救っていきたいのよ。そして愛したいの。
自分で助かろうとしない子は助けられない。だからこそ周りの差し伸べる手を掴める程度には成長してほしい。
部隊の戦力増強とか、可愛いからとか、理由を挙げれば幾らでも助ける理由は作れるけれど、
マキちゃん自身が望んで幸せを手にできる未来を作るためにワタシは……ワタシ達“キカイカン討伐戦闘部隊”はある。
これは母様の理想でもある、百合として上にいくための心構えみたいなもの。
今日の所は挨拶も一応すませたことですし、こんなものね。
指導日程として明日の時間割りを伝えて自室へと送って、彼女の仕事は今日はおしまい。
さて、今日の所はワタシも第二部隊――というよりツキノのサポートに回りましょうか。
可愛い“ワタシの”副隊長も助けてあげないと♪