キカイカンは強大な化け物ですが、普通の人間に殺せない訳ではないので、男性でも飛び抜けて強かったり装備や人数次第では勝てないこともありません。
“触手術”を学んだ少女たちが何倍もの戦果を挙げているだけです。
そんな世界における“キカイカン討伐戦闘部隊”の雑用担当――“小間使い”階級の男性職員たちのお話。サブタイに「えっち」が入っていないことからお分かりかもしれませんが、今回は「えっち回」ではありません♪
法律というものは、国ごとにその在り方は違っているものだ。
基本的なところは同じでも、国民性なり文化なりの差異からくるローカルルールや宗教的な理由にも関わる違いだってある。
とはいえ、“キカイカン討伐戦闘部隊”については例外だ。
支部が置かれている国ではニッポダイン帝国が部隊の少女たちをバックアップし、各国の王たちもそれを支援をしている。
それ故に拠点の敷地内では独自の決まり事があるのだ。
すなわち、女尊男卑! 男性は触手術を使えないという理由から“小間使い”の役職であり、なおかつそれに納得して働いている者たちばかりだ。
だからこそ触手部隊で働く男性職員は出世を夢見たりしない。触手少女たちとのラッキースケベだって期待しない。
ただ、少女たちの百合百合した日常を垣間見つつ、世界をキカイカンから救うための下働きをしているという使命感から働いている。
……とはいえ、それらに納得して働いているとしても、バカなのが男という、生き物なのであった。
◆ ◆ ◆
ニッポダイン帝国平手公爵領における“キカイカン討伐戦闘部隊”本部は、日頃から多くの“見習い”の触手少女たちが鍛錬の一環として哨戒任務に就いているため、急なキカイカンによる襲撃というのは少ない。
少女たちだけでなく、そのバックアップを行う“小間使い”の男性チーム――観測班が優秀なのもある。
しかし、人のすることに完璧などないのも事実だ。時折、哨戒班に気づかれず、また本部の観測班の目すらも逃れて動く“キカイカン”の出現というのもある訳だ。
観測班とは、出世を捨て、触手で百合な少女たちを最も側で見守る誇りある仕事。そのために暴走する漢というのが今回のお話である。
そう、例えば早速、ここ本部の観測班ではトラブルが発生したようだ……。
「大変です!
観測班の班員フルト、ジーニアス、ベイカーの三人が“キカイカン”の出現を探知できなかった不甲斐なさから適当な武器を作って突っ込んでいきました!」
それは突然かつ事後の報告であった。
「……な、何をやっているんだ、あの馬鹿共はァァァー!?」
報告を受けたのは観測班の班長をしているイザック。
男性であるため触手術を使えずに“小間使い”の階級ではあるが、百合の大国の公爵様である平手キフ長官から直々にスカウトされるほどの凄腕の男。
本職はエンジニアであるというのに、巧みな工具捌きで“触手術”を使えずとも戦闘力においては“隊員”級の実力を有していると目される男だ。
彼自身も小型種のキカイカンならば何匹か撃破したこともあり、平手キフ長官からの信頼も厚い漢。
そんな彼だからこそ、自身がまとめる観測班の部下たちの心情も理解できるのだ。
自分たちが支えるべき少女たちに要らぬ苦労を掛けるぐらいならば、自分が動くのが当然である。
だが、それと同様に班長であるイザックが先走った班員を救助に向かうのもまた当然のこと。
報告に来た部下の話を聞いた彼は、パワードスーツを身に纏うと先走った三人の部下を車で追いかける。
触手部隊の少女たちの送迎も兼ねる観測班のイザックは、当然のように車から宇宙船まで何でも乗りこなせる。
当然、徒歩で現場へと向かったバカな三人に追いつくのも早いというものだ。
ドリフトしながら先走る部下三人の前に回り込んで急停車。
「追い付いたぞ、馬鹿どもめ!」
「「「ゲェー! は、班長!?」」」
「お前たち! キカイカンを甘く見るな!
我々では連中の相手は厳しい。
せめて“隊員”以上の少女たちの到着を待つのだ」
至極真っ当な言葉なのだが、暴走した三人の班員たちもまた、百合を愛する紳士。
常に少女たちに任せっきりの状況に色々と思う所あっての今回の暴走なのだ。そう簡単には引き下がれない。
「でも班長! 俺、おねロリが大好きなんすけど、今日はマボ隊長が第一部隊の全員で乱交パーティするって言ってたんですよ!
絶対にその聖域を緊急出動なんかで邪魔したくないんス!」
「第二部隊だって、イコルさんが“見習いの妹”たちを愛でる、『姉妹のお茶会(セックス有り)』を開いてます!
ナモ隊長はツキノ副隊長とベッドにいるはずですし!」
「そして我らがキフ長官も街に女の子漁りに出ているんですよ!
あの人のことだから絶対にスカウトだけで終わらず、可愛い子と身体を重ねるまでイっちゃってますって!」
三人の部下の言葉に悩んでしまうイザック班長。彼も分かってしまうのだ。
「む~、確かに揃って本部の少女たちが性的に忙しい状況で出動要請を出すのは忍びないな。
よし分かった!
俺が付いていくから、こっそり対象を始末して何事もなかったかのように帰還することにしよう!」
必ず生きて帰ることを条件に、本来止めるべき立場のイザック班長は“キカイカン”にこの四人で挑むことを決意する。
三人の部下がアホなように、班長であるイザックもまたアホなのであった。アホのように強くもあるからこの場合は厄介なのだが。
キカイカンがどれほど凶悪な存在なのかは、戦闘経験のあるイザック班長は分かっている。それでも敬愛する少女たちの百合の園を守るためなら命だって惜しくない。
それが、彼ら“小間使い”たる男性職員の誇りなのだ!!
こうしてイザック班長率いる観測班(臨時の討伐班)は車を駆って木々をなぎ倒しながら目標地点へと到達。
幸いにも大型種ではない。せいぜいが中型種。それも小さめだ。
こちらは人数も四人。装備に不備はない。
「ターゲットを確認。
キカイカンへの物理的な攻撃は通りにくいが、『我々四人が揃えば物量で何とかなると思いたい作戦』を決行する!」
「「「はい!」」」
作戦は実にシンプル。彼ら四人がそれぞれの武器で散開して突撃して十字砲火によって倒す。それだけだが、決まれば強力かつ簡単な作戦だ。
イザック班長は触手力も百合力も持たない平凡なエンジニアに過ぎないが、百合を愛する心は誰にも負けていない。
故に、百合愛を神秘の力に変換することで生じるプラズマを銃に込めて打ちだす。名付けて“百合愛銃”。
放たれた銃弾が“キカイカン”の右目を撃ち抜いた。ちょろいもんだぜ!
続いてフルト班員の百合愛が作り出したチェーンソーめいた百合愛の刃がキカイカンを襲う。抜群の破壊力で眩暈を起こす!
ジーニアス班員はショットガンに水銀と血液を混ぜて作った弾丸を撃ちまくる。男は黙ってショットガン!
ベイカー班員は……、よく分からないが百合愛により自立行動をするぬいぐるみを突撃させている。何だか分からんが良し!
『うぉぉぉぉぉーーーッ!!』
四人は必死に戦った。戦って、戦って……。
イザック班長が「やったか!?」と言って。そうして、負けた。
大型でこそないがこのキカイカン、中型ではある。実際強い。
「くっ、せめて前の戦いのときに膝にキカイカンを受けていなければ!」
イザック班長はかつてその膝にキカイカンを受けて長期戦に向かない身体にされていた。それが敗因だろう。
他の三人の班員も懸命に戦ったが、それでも力の差は歴然。所詮は百合力でも触手力でもない、それらを愛する心。
神秘性では少女たちには敵わないのだ。
「班長! どうか逃げてください!」
「こうなれば我々三人が力を合わせて自らの命を爆弾に変えて自爆してみせます!」
「俺たちは百合少女たちと、彼女たちの未来の後輩のためにここで潔く散ってでも百合セックスの聖域を守って見せる!」
すでに三人も瀕死の重傷だ。それでも心に秘めた百合を愛する心の炎は決して揺らがない。
「やめるんだ、お前たち!
俺たちは班長と班員である前に、百合紳士の同志じゃないか!
俺だけ置いて死ぬことは許さんぞ!!」
イザック班長も止めようとするが、すでに班長も弱り切っている。止めようにも足に力が入らない。
その間にも三人の部下たちは、治癒力に回すべき百合愛の力をすでに爆発エネルギーへと変換を始めている。
もはや三人の班員の命はここまでか!? とイザックが思った時だ!
「だーっ! くそっ! うるせぇ“キカイカン”が来やがって!
ってか、何で観測班が出張ってんだよ!?
呼べよ! アタシらを!!」
救いの手が……、間に合った。
「確かにマボ隊長の言う通りですね!
私たちだって百合ですし、救助対象が“小間使い”の男性連中だとしても、見捨てるほど狭量ではないもの。
この第一部隊副隊長ミヤビ、推して参ります」
フルト、ジーニアス、ベイカーが百合愛を変換して作った爆発エネルギーは、第一部隊のマボ隊長とミヤビ副隊長の生み出した触手によって霧散させられていた。驚くべき百合力!
そして、その後方には同じく第一部隊のイスタ隊員とワーディ隊員も控えている。
第一部隊勢ぞろいでの臨戦態勢だが、救援は彼女たちだけではない。
「勝手な行動には思うところもありますが、ワタシも百合少女に対して信仰心を抱いている彼らに死んでほしくありませんからね」
「ナモ隊長の言う通りです!
男だからって、世界の平和と百合の未来を守る“キカイカン討伐戦闘部隊”に所属する者たちが簡単に死んでは駄目です!」
両腕から伸ばした触手で、観測班の四人が苦戦していたキカイカンを縛り上げているのは第二部隊のナモ隊長とツキノ副隊長。
こちらは第一部隊と違って、この二人だけのようだ。
「なぁ、ナモ。
お前んとこの他の隊員はどうしたんだ?」
「あぁ、マボ姉さま。
彼女たちでしたら乱交パーティ真っ最中でしたし、『“妹”たちを可愛がりなさい』と言って置いてきました。
過剰戦力は事後処理も面倒になりますし、イコルは隊員の中でも人一倍、頑張り屋さんですから休みは必要でしょう」
「そっか」
これも部下(妹分)へのサービスです、と言ってナモ隊長は微笑んだ。
観測班の男性四人はその光景に目を奪われ、そのまま少女たちはあっさりとキカイカンを討伐して戦闘は終了。
これにて一件落着、とっぴんぱらりのぷぅ。……と、なるのだが。
◆ ◆ ◆
「おいおい、見たかよマボ隊長たちのお姿を!」
「見た見た! レズセックスの最中の緊急出動だったからって、裸に隊服のコート羽織っただけとか神々しかったよな!」
「オレら男を意識していないのか、信頼しているのか。
どちらにせよ、オレらには信仰の対象だもんな!」
そう、救助に来てくれた第一部隊、第二部隊はともに裸コートの出で立ちであった。
ここが平手公爵領で近場だったのもあるのだろうが、流石の行動力と言えるのかもしれない。
そして各々に興奮冷めやらぬ観測班の三人にイザック班長が一言。
「お前ら……、百合愛を高めるのもいいが、帰ったら始末書を忘れずに出しとけよ」
「「「はい!」」」
「それと、妄想は好きにするといい♪」
「「「はいッ!!!」」」
疲れ切った状態での始末書を、三人は頑張って仕上げたそうな。
ちなみに彼らの怪我は、目の前で百合少女たちが裸コートで抱き合ってキスをする様子を見たことで治った。
これほど濃密な百合シーンを彼らのような紳士が目の当たりにすれば、百合愛を治癒力に回して治るのも当然である。
今日も“小間使い”の男性職員たちも平和だった。
~キャラ紹介~
観測班:イザック・リーベ班長。40歳。
過去は語らないが平手キフ公爵に大恩があり、自分の恋愛を追い求めるよりも百合少女たちの百合恋愛を応援する方が自分に合っていると悟っている。
観測班は各国の支部にもあるが、男性しかいないために戦力とはみなされていない。
消耗品の補充や便利グッズの作成、キカイカンの索敵、戦場へ少女たちを派遣する足代わりというのが主な仕事。
支部にもよりますが、本部の観測班の連中はキフ長官が「男だけど面白そうだから♪」という理由だけで集めた個性派揃い。
名前から元ネタは分かりそうですが、イザック班長のイメージとしては『ファンタシースター』のフルエン・カーツっぽいキャラを書きたいけれど、百合と触手の作品にどうやって混ぜよう? と考えていたらエンジニア要素が強くなって出来たキャラだったりします。
観測班班員:フルト、ジーニアス、ベイカー。
ぶっちゃけ雑魚。百合を愛する紳士ではあるものの、この世界では銃や剣などの神秘性の無い武器はキカイカン相手に効果が薄いのであっさりと敗北。
そのため名前の元ネタもエロ漫画家さんではなく、ちょうど目についたゲームの主人公からですが扱いが雑になった気がします。
今作はキャラ名を「エロ漫画家さんの名前」を元ネタにしたもので統一しているので、そうでないキャラは総じてモブなのです。
銃でwwwキカイカンにwww挑むwwwなどとwww