※この作品はR-18です。

学校で一番エッチなヤツのおねショタ歴程   作:ピーマン

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プロローグ
満月夕太という少年


 こんなこといいな。できたらいいな。

 ここは、科学の代わりに魔法文明が発達した魔法世界。

 あんな夢やこんな夢を叶えてくれる22世紀の猫型ロボットが存在しない世界。彼はおろか、共に様々な場所を冒険した少年少女達さえ存在しない。

 

 これは、そんな並行世界に住む、クラスどころか学校で一番エッチなヤツのお話。

 

 

 

 

 

「ふわあぁ」

 

 この大あくびをしている冴えない少年、満月夕太(ゆうた)。明月学園初等部5年生の10歳。

 涙でぼやけた視界を手で拭いながらも、目の前でショートカットの髪を風でなびかせている年上の少女から目を離さない。周りを過ぎ去る朝景色なんて見る価値もないとばかりに。

 

「夕くん、昨日夜更かしでもしてたの?」

「うん。ちょっとね」

 

 少女の言葉に答えながらも、前のめりになる形で後ろから彼女の背中に抱きつく夕太。

 

「ん~……美夜ちゃん、あったかくて良い匂いがする」

「はいはい。くっついてていいから、寝ぼけて落っこちないでね」

 

 彼女の名前は満月美夜子。記憶喪失で倒れていた夕太を拾ってくれた女の子で、明月学園中等部3年生の15歳。男の子にも女の子にも人気な美少女だ。

 小中高一貫校に通っている二人は毎日一緒にホウキに乗って登下校しており、今は満月邸から学校に向けて登校中である。

 

 女の子大好きなマセガキである夕太は中でも自分を拾ってくれた美夜子に首ったけで、かれこれ彼女とはもう5年の付き合いとなる。

 そろそろ恋人同士の関係になってもいいんじゃないかと息巻いているが、美夜子は夕太のことを弟として見ている節があり、その上まだ初等部である彼が何度アプローチしても本気にしてもらえなかった。

 

「お父様は渋ってたけど、何だかんだ言ってこっちの学校にして良かったかも。女学院はお堅いから、ホウキ登校は禁止だものね」

「ぼくが女学院に入学しても良かったんだけどなぁ」

「男の子が入れるわけないでしょ」

 

 美夜子は元々中学からは名門お嬢様学校である魔法女学院に通う予定だったが、夕太の存在もあって明月学園に在籍したままとなっている。

 その主な理由は、彼が魔法を使えないためによくいじめられているからだ。

 

 そう、夕太は魔法が使えない。魔力があることは検査で分かっているが、それにも関わらず基礎の基礎である物体浮遊術すら使えないのだ。今だって、自分のホウキでは飛ばずに美夜子のホウキに乗せてもらっている。

 生きずらいことこの上ないだろう。魔法文明が発達したこの世界では、迷信と謳われる科学文明が発達した世界と違って個人の能力がより重要視されるのだから。

 が、当の本人は全く気にした様子もない。虐めの現場を見つけては美夜子が助けに入るのだが……

 

「あいつら美夜ちゃんと一緒に暮らしているぼくが羨ましいんだ。そんでもって、将来美夜ちゃんと結婚するぼくが憎ったらしいんだよ」

 

 こんな感じで、むしろ優越感に浸っている図太い神経の彼に呆れてしまう始末である。もちろん夕太が勝手に言っているだけで、別に結婚すると約束したわけではない。

 

「そんなこと言って、大人になる頃には別の女の子を好きになってるかもしれないでしょ?」

「いいや。ぼくは美夜ちゃんと結婚するよ。それは間違いない」

「じゃあ、夕くんが大好きなアイドルの伊藤つばさちゃんから結婚してって言われたらどうするの?」

「その時はつばさちゃんとも結婚する!」

 

 興奮気味に答える夕太。そのおめでたい頭を美夜子はパシンッとひっぱたいた。

 

 しかし、そんなどうしようもない彼でも一つだけ使える魔法がある。

 夕太は半ズボンのポケットから伸縮式のマジックハンドを取り出すと、それを使ってすぐ後ろから美夜子の制服のスカートを掴み上げた。

 

「今日の美夜ちゃんのパンツはピンクか」

 

 嬉しそうにニヤけながら、美夜子のパンツを舐めるようにして吟味する夕太。

 このパンツは美夜子が中等部に進学した年に買ったお気に入りだ。小さな猫の肉球マークがチャームポイントで、より成長した彼女のお尻にピッチリ食い込んでいる。

 当然美夜子は「キャッ!」と可愛らしい悲鳴を上げ、スカートをたくし上げているマジックハンドをはたき落とした。

 

「もうっ、夕くんのエッチ! また変な道具出して!」

「だって、今朝は見損ねちゃったから」

 

 美夜子に頼んで地面に降下してもらい、拾い上げたマジックハンドをポケットにしまい込む。明らかに入りきらないサイズにも関わらず。

 これが夕太が扱える唯一の魔法だ。自身が着ている衣服のポケットから、不思議な道具を取り出し、そして仕舞うことができる。彼はそれらの道具をひみつ道具と呼んでおり、手に持てば名前と使い方が頭に浮かんでくるのだという。

 このようなその人にしか使えない魔法のことを、固有魔法と呼ぶ。もっとも、大して役に立たない道具ばかりなのであってないような扱いを受けてばかりなのだが。夕太の場合、一切魔力を使わずに利用できるようなので、果たして本当に魔法なのかも疑わしい。

 

「大体、そんな道具使わなくたって直接めくればいいじゃない」

「めくっていいの?」

「バカ」

 

 ちなみに、先ほどのマジックハンドは『スカートめくり用マジックハンド』。

 射程は数メートルとそこまで長いわけではない上、美夜子の言う通り直接めくった方が早いので、はっきり言って存在価値があるのか分からない道具である。

 

「結構難しいんだよ。これ」

「まさか他の子で練習したりなんか……」

「美夜ちゃんのクローゼットから服を借りて、昨日の夜中に練習したんだ。安心してよ、美夜ちゃんのスカートしかめくらないから」

 

 それを聞いた美夜子は、スカートを庇いながらジト目で夕太のことを睨む。頬をほんのり赤く染めて。

 

「……絶対、他の子にはしないって約束する?」

「する! と言うわけで、もう一回!」

「今日はもうダメ! 罰として歩いて登校しなさい!」

 

 美夜子は再びホウキに跨り、一人で飛び立ってしまう。将来の夢がレーサーなだけあってその加速は目を見張るものがあり、あっという間に遠ざかっていく。

 

「ああっ! 待ってよ、美夜ちゃーん!」

 

 

 

 

 

 結局、美夜子は途中でバテた夕太を見かねてUターン。自分より頭一つ分小さい彼を拾い上げて登校を再会した。

 その道中、懲りずにお尻をさわさわと撫でてくる夕太。これ以上モタモタしていると遅刻してしまうため、気づかない振りをしてホウキを飛ばし、何とか始業前に学校へ辿り着く。

 

「美夜ちゃん。また放課後にね!」

「あら? 今日は一緒にお弁当食べないの?」

「うん。今日は別の子と一緒に食べるんだ。それじゃあね!」

「え?」

 

 そう言い残して、美夜子にブンブン手を振りながら自分の教室へと歩いていく夕太。美夜子は珍しいこともあるものだと思いつつ、少しモヤモヤした気分でそれを見送った。

 あの子と一緒に食べてくれる子なんているのだろうかと考えながら、竿の部分が少し濡れたホウキを収納魔法が込められたペンダントに仕舞い、中等部の教室がある校舎へ。途中、すれ違った後輩数名と挨拶を交わしながら教室に入る。

 

「おっはよ~う。美夜ちゃん!」

「美夜子、おはよう」

「おはよう。魔美、リーム」

 

 親友の佐倉魔美とリーム・ストリームに挨拶して、席に着く美夜子。

 

「み・て・た・わ・よ~」

「な、何? 魔美」

「しらばっくれちゃって。今日も仲良く二ケツして登校してたじゃない。窓からバッチリ見えてたんだから」

 

 魔美は美夜子の肩をツンツンつつきながら、そのニヤケ面を隠しもせずに冷やかす。毛先が極端に反り返った特徴的な髪型をしている彼女とは小さい頃からの仲で、つまり幼馴染である。明るくておっちょこちょいだが、おせっかい焼きで優しい子だ。

 "ケツ"という単語を耳に受けて、美夜子は頬を赤らめる。ついさっきまで夕太に撫でられていたお尻を椅子に擦りつけるようにして僅かにくねらせた。条件反射というやつだろうか。

 

「べ、別にいつものことじゃない」

「でも、ゆーくんってもう10歳でしょ? そろそろ色々意識しちゃう年頃だろうし、一緒に暮らしてるお姉ちゃんと一緒に登校なんて恥ずかしくって避けちゃうと思うけどなぁ。さっちゃんの弟がそうだもん」

「ふふ、よっぽど仲良しなのね。二人共」

 

 リームまで加勢して美夜子をからかい始める。綺麗なグリーンの瞳をした彼女はアメリカ人。家庭の事情で日本に引っ越したらしく、去年からこの学校に転校してきたのだ。日本に住んでいたことはないにも関わらず、日本語は完璧そのもの。

 あまりプライベートを話さない子なのだが、彼女と魔美が同じような赤毛をしていた──魔美はひいおばちゃんがフランス人でその隔世遺伝のため──ことがきっかけで話が弾み、仲良くなったのである。

 真面目な印象があるリームだが、これでなかなか抜けていることが多い。よく魔法薬や錬金術の授業で器具の手入れを怠って事故を起こしては教師に叱られている。そして、三人の中で一番スカートが短い。

 

 基本、学校ではこの三人組で行動していることが多い。三人揃って容姿が優れた美女なため、学内では注目の的になりがちだ。今だって、会話を盗み聞きしようとしている輩がチラホラ見受けられる。

 

「そんなこと言って、二人共夕くんが女の子大好きなこと知ってるくせに」

「清々しいぐらいに公言してるわよね。だけど、あれだけ好き好き言ってるのは、美夜子にだけでしょう?」

「私にだけじゃないわ。アイドルにもご執心なんだから」

「何言ってんの。男の子はみんなそうだってば」

 

 魔美のツッコミを受けて、美夜子は確かにそうだと思う。この学園に限った話ではないが、美夜子達の周りには女の子に対して積極的な男の子が多い。伊藤つばさや星野スミレを筆頭に、丸井マリ、川合可愛、旗本カンナといったアイドルや女優の非公式ファンクラブがあったりと、女の子への興味を包み隠さない輩が大勢いる。

 もっとも、逆もまた然りなのだから、一方的に悪く言える立場にはないはずなのだが。

 

「美夜ちゃんも美夜ちゃんでさ、この前隣のクラスの藻手杉さんから呼び出されたのにすっぽかしたじゃない。あれ、絶対告白だったわよ」

「だって、仕方ないじゃない。夕くんにバトルボールの流れ球が当たっちゃって、介抱しなくちゃならなかったんだから。それに私、藻手杉さんのこと良く知らないし」

「ほら、学園一のイケメンって言われてる人に対してもこれだもん。知ってる? そんなだから美夜ちゃん、彼を好きな子から"ショタコン"って言われてるのよ。ねえ、リーム」

「う~ん、アタシは初耳だけど……それより、今日お弁当忘れちゃったから、二人の分けてもらえない?」

「ええっ!? また忘れちゃったのぉ?」

「箱は持ってきたのよ。肝心の中身を入れ忘れちゃってて」

 

 二人の会話をよそに、美夜子は雷に打たれたかのようなショックを受ける。

 ショタコン。リームは知らなかったようだし、色々と思い込みが激しいところがある魔美のことだから勘違いの可能性もあるかもしれない。

 

 しかし、だ。今まで自分がどう見られているか意識したことはなかったが、なるほど確かに傍から見たらショタコンと呼ばれても仕方ないのかも、と思ってしまう。

 別に美夜子の恋愛対象は小さな男の子というわけではない。普通に年上男性をかっこいいと思うことだってある。夕太にしたって、一緒に暮らす家族だから大事にしているだけだ。やはり心外なことには変わりなかった。

 

 ちなみにバトルボールとは、ホウキに乗りながらボールを相手のゴールにシュートして得点を競うイギリス発祥の超エキサイティングなスポーツだ。

 美夜子も大の得意で、プロレーサーとバトルボール選手のどちらを目指そうか悩んだぐらいである。絨毯を操縦する方が好きなので、結果的にはプロレーサーを選んだわけだが。

 

「わ、私はそんなんじゃ──」

「おーい、席につけー」

「あ、先生来た」

 

 思わず立ち上がって抗議しようとしたタイミングで、独りでに扉が開いて担任の教師が教室に入ってきた。なんて間が悪いのだろうか。

 立ったまま行き場を失った美夜子は口をパクパクとさせた後、仕方なく椅子に座り直す。そんな姿を見ながらクスクス笑い声を零している二人に、美夜子は唇を引き結んでムスッとした顔を向けずにはいられないのであった。

 

 

 

 

 

 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ 

 

 

 

 

 

「おはよー!」

 

 ご機嫌な様子で教室に入り、大声で挨拶する夕太。いつものことなのか、教室にいる生徒達は特に気にした様子もなく「おはよ~」と返事をしている。

 夕太はそのまま鼻歌混じりに足を進め、自分の席へ。が、急に持ち上げた足が床を踏まずにふわりと空を描く。

 

「ぐべっ!」

 

 そのまま見事に回転し、夕太は弧を描いて床に顔面を強打してしまう。

 

「はは、何やってんだ夕太!」

「相変わらずドジなヤツだなぁ!」

 

 チビでキツネ顔が特徴の骨川スネまが指を差してはやし立てる。その隣には椅子に座ったまましたり顔のジャイタンこと剛田武二。大柄で横暴なクラスのガキ大将だ。

 

「あなた達、なんてことするの!?」

 

 近くの席の女子が慌てて立ち上がり、倒れたままの夕太に駆け寄る。

 

「ミズエちゃん、ぼく達何もしちゃいないよ。コイツが勝手に転んだんだ。ね? ジャイタン」

「そうそう。そんなヤツほっとけって」

「ひどい人達。浮遊術を使ったのは分かってるのよ! ……大丈夫? 夕太さん」

「へへ、大丈夫大丈夫。ぼく、丈夫が取り柄だから。ありがとうミズエちゃん。今日も可愛いね」

「え!? も、もう、夕太さんったら」

 

 この絹糸のように細くて綺麗な茶髪をした女の子は、神成ミズエ。みんながよく遊び場にしている空き地、その隣に住んでいる神成さんの親戚の子だ。

 学年一の美少女なため普段言われ慣れてるはずなのだが、不意打ち気味に言われたためか顔を赤らめている。ジャイタンとスネまが親の仇を見るような目で夕太のことを刺した。

 

「皆さん、席に着いてください。朝の会を始めますよ」

 

 そこへチャイムが鳴り、ちょうど良く担任の先生が教室に入ってくる。

 このクラスの担任は桃子先生。外国生まれらしく、フルネームは天堂・パラダピア・桃子というらしい。紺色の髪を後ろでまとめた女性で、おっとりとした印象が目立つ、常にニコニコ糸目な笑顔を絶やさない人だ。優しくて、宿題を忘れてもみんなの前で怒鳴ったり廊下に立たせたりしないため、生徒からの人気も高い。

 

「起立!」

 

 学級委員長の片割れである出木照(できてる)くんの号令でクラスの生徒達が席を立つ。続けて、礼の合図で「おはようございまーす!」と挨拶。一斉にお辞儀をする。

 

 

 ──カチッ

 

 

 が、全員が腰を曲げた瞬間、何かを押したような音が鳴り響いた。不自然に物音が途切れ、先生も生徒達もピタリと動きを止めてしまう。

 

「ニヒヒ」

 

 しかし、一人だけ例外がいた。夕太だ。彼だけは何事もなかったように上体を起こす。

 その手には時計のような物が握られていた。『タンマウォッチ』というひみつ道具で、スイッチを押した者以外の時間を停止させることができる代物である。

 夕太のポケットから出てくる道具は先述したように役に立たないものが目立つが、時折こうした大魔法級の道具が存在するのだ。

 

「さ~て、今日のみんなのパンツはどんな感じかな~♪」

 

 ニヤついた顔を浮かべながら席を離れ、教室の後ろの方へ移動する夕太。そこからは、クラスメイト達の後ろ姿が一望できる。特に女の子達はお辞儀でお尻を突き出すような姿勢になっているため、短いスカートを履いている子はパンツが丸見えになっていた。

 小学生とはいえ、高学年。動物やアニメキャラクターが描かれたような典型的な子供パンツを着た子は極少数なようだ。大体は白やピンクといった柄のないパンツに始まって、水玉やしまパン、中にはちょっと背伸びしたパンツを履いている子もいる。

 

「立花さん、今日も黄色か。聖子ちゃんはしまパン。乙梨さんは、く、黒パンツ……大人しい子なのにパンツはいつも大人しくないんだよね」

 

 この学園の初等部は私服登校が認められているが、なぜだか女の子達はスカートを履いている子ばかり。わざわざ脱がさなくても堪能できるので夕太としてはありがたい話である。

 美夜子と他の子のスカートはめくらないと約束したばかりだが、これはめくっているわけではないので約束を破ったことにはならないだろう。

 

 夕太はそのまま廊下側から順番に女の子のパンツを覗いていく。このクラスの女の子はみんな一定水準を超えた容姿の女の子ばかりなので実に眺めが良い。無論、男の子はまるで盲点に入っているかのように視界に入っていない。

 そして、半分まで見たところで教壇に立つ桃子先生の傍へ。彼女は年中丈の長い服装をしており、イマイチ体型が把握できない。今日もロングカーディガンにロングシャツワンピース、下にはロングパンツが覗いていたりとロング尽くしである。

 

 おもむろに近づいた夕太は先生のワンピースに下から潜り込み、ロングパンツをズリ下ろした。

 

「うわぁ……桃子先生。相変わらずだなぁ」

 

 先生は黒のレースというセクシーなパンツを履いていた。しかも大事な部分以外はさほどが透けており、お尻なんてほぼ丸見えである。加えて肉付きが良いために食い込みが激しく、とても卑猥で教師としては実にまずい。もっと出せ。

 この人はいつもこういった男の劣情を誘うような下着を履いているのだ。それだけではない。服に隠された肉感的な体型、知っているのは恐らく夕太だけだろう。初対面の時に質問攻めにして、結婚してなければ恋人がいないことも確認済みである。

 

 夕太は基本年上好きなので、桃子先生ともお近づきになりたいなぁと考えている。でも、やっぱり美夜子が一番なのに変わりはない。

 股間を刺激する濃厚な香りも含めてしばらく堪能し、ごちそうさまとばかりに合掌。ロングパンツを持ち上げて元に戻し、ワンピースから出ようとする。

 

「ん?」

 

 その間際、先生の太ももに何やら器具がついたベルトが巻かれているのを見つけた。そこからピンクの紐が伸びており、その先は下着の下に繋がっている。

 こんな物はこれまでなかった。何だろう? と思いつつも、よく分からないのでひとまず見なかったことにする。暑くなった身体を冷ましつつ残りの女の子のパンツ巡りを再開した。

 

「あ……ミズエちゃん」

 

 最後の子は、先ほど転ばされた夕太を助け起こしてくれたミズエ。助けてもらった手前、さすがの夕太も彼女のパンツを覗くのは少々気が引けた。

 しかし、欲望に負けて結局覗くのがこの少年、夕太である。「ごめんね」と一言謝って後ろに回り、青いフレアスカートの中身を覗いた。

 

「わ~、真っ白で綺麗。さすがミズエちゃん、清楚ってヤツだね……あれ?」

 

 ぴったりサイズでお尻の形がそのままに現れているおパンツをまじまじと眺めていた夕太だったが、ふと気づいてしまう。

 

「ミズエちゃん……お股のところ、ちょっとシミが出来てる」

 

 シミ自体は、他の女の子のパンツにもチラホラあった。だが、そのどれもがおしっこの拭き損ないによる黄色いシミ。対して、ミズエのシミの見た目は水で濡れたかのようなそれであった。

 なんだろうと思い、ちょんっと指でその部分をつついてみる。感触としては、少し粘り気がある。指を離してみれば、たらりと透明な糸を引いた。

 

「どっちかって言うと、ぼくのちんぽから出てくるヤツに似てるなぁ」

 

 夕太もエッチな気分になると、ちんぽが硬くなって先っぽから透明な粘液が出てくることがある。ミズエのそれも、その粘液とよく似ていた。匂いも同じく無臭である。

 

「でも、ミズエちゃんは女の子だからちんぽなんてあるわけないし……違うよね。病気だったら大変だし、後でそれとなく聞いてみよう」

 

 ちんぽが生えたミズエを想像して、これはこれでいいなと思いつつ、指についた粘液を舐め取って席に戻る。そして、お辞儀の体勢になってタンマウォッチのスイッチを押し、今日の朝の日課を終えるのだった。

 止まった時が動き出した瞬間、ミズエは「んっ」と小さく声を漏らして不思議そうに周りを見回していた。

 

 

 

 

 

 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ 

 

 

 

 

 

 時間は経って、お昼休み。

 夕太はチャイムが鳴るや否や、お弁当片手に机から立ち上がる。

 

「おい夕太、今日も愛しの美夜子さんのトコへ行くのかぁ?」

「毎日懲りないヤツだなぁ」

 

 そんな彼の様子を目ざとく見つけたジャイタンとスネまが、意地悪い顔を向けながらからかい始めた。

 

「ジャイタン、スネま」

「言っとくけどなぁ、美夜子さんはお前みたいな落ちこぼれになんか興味ないんだ! 弟だから仕方なく相手してやってるだけなんだからな!」

「ジャイタンの言う通り! それなのに調子に乗っちゃって、夕太のくせに生意気だぞ!」

 

 そうまくし立てる二人に、周りのクラスメイトはまた始まったと目線を送るが、例の如くいつものこととばかりにすぐそっぽを向いて誰も気にしなくなる。

 ジャイタンとスネま以外の男子も美人な美夜子と夕太の仲を羨んでいる者は数知れない。こうして突っかかってくる相手は日常茶飯事である。

 

「夕太さん、今日も美夜子さんと一緒にお弁当食べるの?」

 

 そんな彼らを気にせず、ミズエが夕太に話しかけてきた。その手にはお弁当の包み。

 ちなみに、例のシミの件については既に小休憩の時に聞いている。「もしかして体調悪かったりしない?」と。だが、特にそういうことはないそうだ。どうして? と聞き返されても困るので、それ以上は聞けず仕舞いである。

 これがもし女の子特有の生理現象によるシミだったら、夕太が大騒ぎしてひどいことになっていただろう。もっとも、このクラスではまだそれが始まっている子はいないようだが。

 

「ううん、今日は美夜ちゃんとは食べないんだ」

「え、そうなの? じゃ、じゃあ、わたしと──」

 

 もじもじと何事か言おうとしているミズエ。しかし、そこにスネまが割り込んできて会話は途切れてしまう。

 

「はは~ん、そうか。ジャイタン、コイツついに愛想尽かれたんだよ!」

「なるほど。それで一人寂しく便所飯ってところか」

「違うよ。ぼくの未来の奥さんと食べるのさ」

 

 夕太の言葉に、ジャイタンとスネまは「はぁ?」と揃って疑問符を頭に浮かべる。

 意味が分からず呆気に取られている二人を尻目に、夕太はニヒヒとニヤケた笑みを浮かべながら教室を出て行った。

 

「…………」

 

 ミズエが、少し残念そうな表情で見つめていたことも知らずに。

 

 

 

 

 

 足早に校舎の階段を登る夕太。人気のない屋上に出ると、塔屋の陰で弁当を広げる。

 

「今日も美夜ちゃんが作ってくれたお弁当は美味しそうだなぁ」

 

 満月家のお弁当は基本、美夜子が作っている。

 父親の満月博士は魔学者として大学の講師を勤めており、仕事以外でも古文書の解読だったりでわりと忙しいため、料理は彼女が担当しているのだ。

 

 夕太はおもむろにポケットへ手を突っ込むと、中からピンク色の薄型テレビを取り出した。例によって、ひみつ道具だ。

 

「『タイムテレビ』! これを使えば、過去や未来の映像を見ることができる。美夜ちゃんとくっついてたら、未来の奥さん──大人になった美夜ちゃんを久々に見たくなったんだ」

 

 誰に説明するわけでもないのに、そう口にしながらタイムテレビのダイヤルを操作し始める夕太。彼はこの道具を使って、将来自分が美夜子と結婚することを知ったようだ。

 タイムテレビはトラブルが起きることもなく、いたってまともな道具である。やってることは覗き以外の何物でもないが。

 

「え~っと、場所は満月邸。時代は10年後で……前見た日より何日かずらしてみようかな」

 

 前回見た時は美夜子がちょうど着替えをしているところを引き当てた。成長して身長はより高くなり、もっと美人になり、おっぱいもさらに大きくなった美夜子。直接触りに行けないのが残念でならない。未来の自分が羨ましくてしょうがなかった。

 自分自身を妬むのはさておき、今度はもっとすごい場面を見られるかもしれない。例えば、一緒にお風呂に入っている場面とか、エッチなことをしている場面とか、エッチなことをしている場面とか。

 

「ニヒヒ」

 

 夕太は期待に胸と股間を膨らませて、タイムテレビのボタンを押す。

 

「……あれ?」

 

 しかし、画面に映り出されたのは、その期待に応えたものとは言えなかった。

 美夜子は確かに映っている。だが、着替えをしている場面でも、お風呂に入っている場面でもなかった。水晶で占い事をしている、いたって普通の場面だ。

 

「な~んだ、外れか。でも、大人の美夜ちゃんを見てるだけでもぼくは満足なんだ」

 

 そう言って、大人の美夜子をおかずにお弁当をつつき始める夕太。特にエッチな場面でもないのに股間を大きくさせたままなのだから、筋金入りの美夜子好きである。

 が、彼が持っているエッチな知識と言えば、女の子のおっぱいやお尻を触ること、そして裸を見ることぐらいである。自分の股間だって、何か硬くなってるけど弄ったら気持ちいいなとしか感じていないのだ。

 初等部での保険の授業は男女の身体の仕組み止まりだし、そもそも夕太は授業で聞いたことをほぼ覚えていない。テストはいつも0点。特に歴史の授業なんて教科書の内容が間違っていると言い出して教師を困らせる始末である。

 

「んぅ?」

 

 一瞬、画面に美夜子以外の人物が映り込んだ。大人になった自分かと思ったが、どうも違う。

 ダイヤルを弄り、カメラのアングルを調整してみる。すると、ピンク色の長髪をした女性が画面に映った。外国人だろうか?

 それだけではない。アンダーポニーの赤い髪をした女性や、キッチンの方には何やらウサミミをつけた綺麗な青い長髪をした女の子の姿。

 

 夕太はもっとよく見たくて画面に顔を近づける。が、その瞬間──

 

「わっ!?」

 

 変わった白い髪を三つ編みおさげにした少女が、画面の下からぴょこんと顔を出してドアップで映り込んだのだ。驚いた夕太は座ったままひっくり返り、足でタイムテレビを蹴り飛ばしてしまう。ガシャンッ! と勢い良く床に倒れる音が響いた。

 

「あぁっ、しまった!」

 

 慌てて起き上がり、タイムテレビを起こす。しかし、先ほどの映像は打って変わり、砂嵐のようなノイズに塗れて耳障りな音を鳴らしている。

 

「こ、壊れちゃった。もう大人になった美夜ちゃんは見れないってことぉ? そんなぁ……」

 

 絶望にガクリと項垂れる夕太。留守番の日や美夜子が絨毯レース部の練習で遅くなる日は、いつもタイムテレビで暇を潰していたのだ。これから何で欲求を満たせばいいのか。

 

「……そういえば、誰だったんだろう? あの人達」

 

 皆が皆、美女に美少女と言って遜色ない顔立ちをしていた。あんな素敵な女性が集まったまさに極楽浄土と見紛うような空間が、画面の向こうに存在するのだ。

 しかし、夕太──つまり未来の自分の姿はどこにも見当たらなかった。

 

「も、もしかして……美夜ちゃん、女の子が好きになっちゃったとか!?」

 

 ありえなくはない。美夜子は男女問わず人望がある学園のアイドル的存在だ。毎年のように後輩の女の子からバレンタインデーにチョコレートをたくさん贈られてるし、その気になれば女の子を囲うことも訳ないだろう。

 一体いつ未来が変わってしまったのか。それは定かではないが、未来というものは一秒一秒変わっていくものである。バタフライエフェクトと言われるように、些細な切っ掛けで大きく未来が変わってしまうこともあるのかもしれない。

 

「あわわ……た、大変だ! それはそれで何だか興奮するけど、やっぱりぼくは美夜ちゃんと結婚したいんだ!」

 

 何とかしなければ。意中の人と結婚するため、ない頭をフル回転させてお弁当を掻っ込みながら対策を考え始める。

 その時、捻っていたその頭にポツリポツリと何かが落ちてくるのを感じた。雨だ。

 

「うわっ、今日は一日中晴れだって予報だったのに。天気占いは当てにならないなぁ……いや、そうだ! これだよ!」

 

 頭を伝う冷たい感触に当てられて、何やら閃いた様子の夕太。壊れたタイムテレビとお弁当をポケットに仕舞い、急いで教室に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ 

 

 

 

 

 

(……美夜ちゃん! 美夜ちゃん!)

 

 午後の授業が終わって、放課後。

 夕太はいつものように美夜子と一緒に帰るため、昇降口から渡り廊下を通って中等部の校舎へ足早に向かおうとしていた。その手には登校時には持っていなかった傘がある。ピンク色で古めかしいデザインの傘だ。

 

「おい、夕太!」

 

 そんな彼を呼び留める声が昇降口に響き渡る。ジャイタンとスネまの二人だ。

 

「夕太のくせに用意がいいじゃないか。そうか、ポケットに入れっぱなしにしてたんだな」

「ちょうど良かったぜ。その傘、オレ達に貸せよ」

 

 夕太の返事も聞かずに、その手から傘を奪い取ろうとするジャイタン。今日は晴れの予報だったため、大体の生徒は傘を持ってきていなかった。

 もちろん、魔法で雨を遮ることも可能だ。実際、人々が移動に使っている絨毯にはその魔法がかけられている。しかし、それは大気中の魔素を魔力に変換するコンバーターが備えつけられているからこそ成り立っているのだ。

 自前の魔力でそれを再現することはできるが、家に着くまでそれを維持するだけの魔力を使い続けるのは普通に疲れるし、魔力の絶対量が少ない人は途中で魔力切れを起こす。そのため、魔法世界でも傘は必需品である。

 

「あ、待ってよ。この傘は──」

「いいから貸せよ!」

 

 抵抗虚しく、傘をふんだくられてしまう。ジャイタンに貸すということは、プレゼントするということと同義である。

 

「よし、これで濡れずに帰れるぜ。おい、お前持てよな」

「わ、分かったよぉ……ちぇ、古臭いし、ピンクなんて少女趣味だなぁ。それもジャイタンと相合傘なんて。まあ、濡れるよりマシか」

 

 二人はそのまま傘を差し、昇降口から出て雨が降る中を下校し始める。ジャイタンが向かって左側、スネまが右側に立つ形で。

 

「ああ、待って──へぶっ!」

 

 急いで追いかけようとする夕太だったが、コケてしまって顔面から水溜まりにダイブ。

 負けじと泥水だらけなのにも構わず立ち上がって再び走り出すが、校門前で低空飛行していた輸送絨毯に水をかけられてしまい、立て続けの災難に呆然と立ち尽くす。

 

「うぅ……でも、こうしちゃいられない。あの傘で相合傘して5分経過しちゃったら、とんでもないことになっちゃうぞ」

 

 ブルブルと身を振るわせて水滴を飛ばし、雨に降られる中で夕太は二人を追いかけた。それから少しして、中等部の校舎から渡り廊下を渡って美夜子がやってくる。

 

「夕くんったら、いつもなら放課後はすぐに迎えに来てくれるのに……」

 

 溜息混じりにそう独りごちる美夜子。初等部の昇降口にも目当ての少年は見当たらない。

 先に帰っちゃったのかしら? 美夜子は珍しいこともあるものだと思いながら少し寂しく感じる。

 

 考えようによっては、これは良い機会だ。今日は何やら別の子とお弁当を食べたようだし、多分自分以外の女の子と仲良くなったのだろう。このまま勝手に姉離れしてくれるなら、ショタコン呼ばわりされることもなくなるはず。

 美夜子は夕太を探すのを止めて、このまま帰ることにする。そんな彼女の胸のうちは、モヤモヤとした複雑な気持ちで埋め尽くされていた。

 

 

 

 

 

(ったく、夕太のヤツ。もう一本ぐらい傘持ってろよな)

 

 帰宅路をジャイタンと並びながら、スネまは夕太に対し心の中で理不尽な文句をぶつける。傘を魔法で浮かばせている彼は、男との相合傘という様にならない状態に居心地の悪さを感じていた。

 

「おい、スネま。新しく買ったって言ってた漫画、お前んちに着いたら貸してくれよな」

「ええ!? まだ読み終わってないんだけど……」

「何か言ったか?」

「うっ……な、何でもないよ」

 

 ジャイタンから視線を逸らして溜息を吐くスネま。自身の自慢癖を後悔するが、自慢せずにはいられないのが卑しい金持ちの性だ。

 そして、彼が腕に巻いているおフランス土産の時計の秒針が音を立て、学園から出てちょうど5分が経つ。

 

「……あれ、ジャイタン?」

 

 急に立ち止まったジャイタン。数歩歩いた先でそれに気づいて振り返ったスネまは、傘から出て雨に降られている彼を怪訝そうに見やる。

 様子がおかしいジャイタンの表情は俯いていて伺えない。どうしたのかとスネまは下から彼の顔を覗こうとした、その時──

 

 

「 スネちゃんッ! 」

 

 

 突然両肩をガシッと捕まれ、驚いたスネまは思わず傘を取り落としてしまう。彼を見下ろすジャイタンの顔。頬が赤く染まって鼻の穴は大きく開き、非常に興奮している様子が見て取れた。

 

「ああ、スネちゃん! 小さい頃からずっと一緒にいたのに、今の今までこの想いに気づかなかっただなんて!」

「い、いきなりどうしたのさ。それにスネちゃんって……」

「聞いてくれ! おれは、おれは……スネちゃんを愛しているんだ!!」

「え゛えええええぇーーーッ!!?」

 

 急な大告白を受けて絶叫するスネま。ジャイタンの瞳はハートマーク型に輝いていた。しかも、その股間は大きく盛り上がっている。

 

 

「おお、心の恋人よー!!」

 

「ぎゃーーッ! だ、誰かああぁーー!!」

 

 

 本能に身を任せて襲いかかってくるジャイタンを前に、スネまは傘を放置したまま脱兎の如く駆け出した。彼もまた、本能で大事なものを奪われてしまうという危機を感じ取ったのだ。

 そこへ、遅れて夕太が到着。遠ざかっていく悲鳴と愛の叫びを耳にして、「遅かったかぁ……」と息を整えながらがっくりと肩を落とす。

 

「ま、いっか。傘は取り戻せたし」

 

 そう言って、地面に転がっている傘を拾い上げる。

 傘の名前は『あいあいパラソル』。これで相合傘をして5分経つと、向かって左側の人が右側の人を猛烈に好きになる。好きで好きでたまらなくなるのだ。

 

「これで美夜ちゃんと相合傘をすれば……ニヒヒ」

「夕くん?」

 

 美夜子に好き好きと抱きつかれている自分を想像してほくそ笑む夕太。

 が、後ろから突然声をかけられ、「ニヒャッ!?」と変な叫び声を上げてしまう。慌てて振り返った先にいたのは美夜子であった。

 

「み、美夜ちゃん!」

「傘持ってるのに差さないで、それに泥だらけじゃない。どこかでコケちゃったの?」

 

 そう言う美夜子は傘も持っていないのに濡れた様子がない。魔法で雨を遮っているのだ。

 先述した通り、雨を遮る魔法はそれなりに大変なのだが、成績優秀で魔法実技も中等部一の美夜子であれば造作もないのである。

 指を振り、「チンカラホイ」と唱える美夜子。それと同時に、夕太の顔や服についた汚れが取れていく。

 

「わあ、ありがとう美夜ちゃん!」

「簡単に落としただけだから、家に着いたらお風呂に入らなきゃね。さ、その傘使って帰りましょう」

 

 美夜子は夕太が持っている傘を浮遊させると、彼を右側に入れて歩き出す。

 まさか美夜ちゃんの方からやって来てくれるなんて。しかも何か言う前に傘の左側に立ってくれた。やっぱりぼくらは運命で結ばれてるんだ! 夕太はスキップしそうなほど軽やかな足取りで彼女と並び歩いた。

 

「夕くん、お弁当一緒に食べた子と帰らなかったの?」

「うん。帰ってるよ」

「え?」

「あっ! いや、色々あってさ! 一人で帰ることにしたんだよ!」

「ふぅん、そう」

 

 ああ、早く5分経たないだろうか。頭の中で1秒1秒を数えながら、短いようで長い時間にもどかしさを感じる夕太。

 こういう時間を短くする道具がないだろうかとポケットに手を突っ込みながら掻き回すが、こういう時に限って都合良く的確な道具が出てこない。

 

「……何だか夕くん、えらく無口じゃない?」

「えっ! そ、そうかなぁ?」

「いつもだったらペチャクチャ話が途切れないでしょ。もしかして、傘も差さずにいたから風邪引いちゃった?」

 

 時間を数えるため無口になってしまっていた夕太を心配する美夜子。彼女は夕太の前髪を優しく掻き上げ、もう片方の手で自身も同じようにする。

 そして、おもむろに顔を近づけ、お互いのおでこをくっつけた。

 

「あ、あわわっ、み、美夜ちゃん……!」

 

 もはやキス寸前の距離に迫られ、夕太の顔は真っ赤に染まる。

 そうこうしている間に、目的の5分まで後10秒。9秒。8秒。7秒。6秒……後数秒で美夜子は夕太のことが大好きになるのだ。

 

(こ、これは、このままキスすることになったりして……!)

 

 うるさいほどに心臓が高鳴り、あまりの興奮に倒れそうになりながらも頭の中で残り秒数のカウントダウンが続く。

 

 5……! 4……! 3……! 2……! 1──

 

 

( ゼローーーッ!! )

 

 

 これで美夜子はあいあいパラソルの効果によって、夕太に首ったけ。あのタイムテレビで見た未来は変わって、再び自分と夫婦になる未来に戻るのだ!

 夕太は両手でガッツポーズをし、期待に満ちた目でおでこをくっつけている目の前の美夜子の変化を今か今かと待ち望む。

 

「……熱はないみたいね」

 

 しかし、美夜子は特に変わった様子もなく、そのままおでこを離した。

 

「あれ?」

「? どうしたの?」

「美夜ちゃん、何ともないの……?」

「何が? それより服は濡れたままなんだから、本当に風邪引く前に早く帰りましょう」

 

 そう言って再び傘を持ち、歩き出す美夜子。夕太も首を傾げながら、彼女に並んで歩く。

 

(なんで何も起こらないんだろう。もしかして、スネまが落とした時に壊れちゃったのかな? ひみつ道具は何かと壊れやすいからなぁ)

 

 よく考えてみれば、あいあいパラソルでやっていることは洗脳と同じようなものだ。そんなことをして美夜子の心を自分の物にしても、本当の恋人同士になったなんて言えないのではないだろうか?

 結果としては、これで良かったのかもしれない。夕太はそう結論づけた。

 

(……うん、大人になるまで時間はたっぷりあるんだ。こういう道具には頼らずに、美夜ちゃんをお嫁さんにしてみせるぞ!)

 

 夕太はそう意気込み、隣を歩く美夜ちゃんを見上げる。

 彼女の大人になった姿を思い浮かべながら、雨音を背景に今この時間を堪能するのだった。

 

 

 

 

 

 美夜子は二へへと締まりのない顔になっている彼をチラリと見た後、その視線を下に向けてその頬をほんのり赤らめた。

 

(……夕くん。またおちんちん大きくしてる)

 

 少年のズボンの股間が盛り上がっているのを目ざとく気づいたのである。

 それ自体はいつものことなので特に騒いだりしない。よく大きくさせがちだから、美夜子は彼にオーバーサイズのシャツばかり着せて、周りに気づかれないよう誤魔化しているぐらいだ。

 無論、長い付き合いの美夜子ならシャツの上からでも僅かな盛り上がりを見抜くぐらいわけはない。

 

 多分、さっきおでこを合わせたのが原因だろう。

 気持ち悪いとか、そういった気持ちは抱かない。むしろ、彼が自分のことをそういう目で見ていることが嬉しかった。ずっと前から、嬉しいと思うようになってしまっていた。

 

(ああ、ダメ。やっぱり私、魔美の言った通りショタコンなのかしら……)

 

 考えながら、(いいえ、違うわ!)と首を振る。

 夕太以外の子には別に特別な感情なんて抱いていない。この気持ちは、彼だけに向けているのだ。 

 

(でも、夕くんはまだ小学生だし、私だってまだ未成年の子供なんだから、この気持ちは抑えないと……それに、私より好きな子ができるかもだし)

 

 年上のお姉さんとして自分にそう言い聞かせ、自制心を働かせる。

 しかし、その視線は夕太から──特に彼の下半身から離れることはなかった。歩きながら、スカートの下で太ももを擦り合わせる。

 

 

(夕くん……夕くん……夕くん……夕くん……♡)

 

 

 彼女が我慢の限界を迎えるのは、そう遠くない日になるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本当に誰に需要があるのか分からないですが、自分が書きたいので書きました。
次話は一週間後に投稿予定です。以下は登場したキャラの説明となります。

〇満月美夜子
『魔界大冒険』のヒロイン。15歳の中学3年生。
主人公を「夕太さん」と呼ばせた方が美夜子らしいかと思ったが、さすがに5年も一緒に暮らして家族同然の相手をさん付けだと他人行儀な印象が否めないので「夕くん」呼びにしている。
魔法女学院などの設定はドラえもんクラブ4巻に掲載された小説『魔界大冒険外伝 美夜子の魔法戦記』から。

〇佐倉魔美
『エスパー魔美』の主人公。原作より1歳成長している。
元は上記の小説に登場した魔美そっくりの天宮さくらを出そうとしていたのだが、魔美のエロ小説なんてあまり見当たらないのでどうせならと本人を出すことにした。
この世界では愛犬のコンポコもボーイフレンドの高畑さんも存在しない上、彼女をヌードモデルにしていることで問題の父親はアニメ最終回と同様にフランスへ絵画留学中である。

〇リーム・ストリーム
『T・Pぼん』の第1部ヒロインでタイムパトロール隊員。
ちょうどこの小説を書こうと思い立った矢先にT・Pぼんが再アニメ化したので、彼女も登場させることにした。
なぜ彼女が日本の学校に通っているかは彼女がメインの回で説明する予定。

〇神成ミズエ
てんコミ38巻の『友だちの輪』に登場する美少女で、神成さんの親戚。
大山ドラでは第801話、わさドラでは第28話と第926話と計3回アニメ化されている。キャラデザインは最新のわさドラ第926話を採用。
わさドラ第28話では野球で大谷選手ばりの二刀流を披露していたりと、運動神経も良い。

〇天堂・パラダピア・桃子
担任の先生。元ネタは『空の理想郷』に登場するパラダピアの先生。名前が存在しないので適当に考えた。
この世界では夕太の学校で教師を務めている設定。映画で厚着をしているので、絶対だらしない身体しているんだろうな~と思って登場させた。



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