学校で一番エッチなヤツのおねショタ歴程 作:ピーマン
突如、夕太を狙って現れた大魔王デマオンの配下、メジューサ。
その正体は、8年前に病に倒れた幼い娘を救うために悪魔と契約して姿を消した、美夜子の母親である
夕太が『ひらりマント』と勘違いして出したひみつ道具『タイムふろしき』は、被せた対象の時の流れを操作することができる代物。
赤色の表面で包むと字か時間が進行し、青色の裏面で包むと時間が逆行する。つまり、メジューサは悪魔となる前、人間である沙夜子であった頃まで戻ったのである。
何がどうして悪魔となってしまったのか、それはひとまず置いておこう。
嵐も一旦の落ち着きを見せたので、美夜子達はまだ意識がはっきりとしていない彼女を満月邸に連れ帰った。
それから泥汚れを魔法で簡易洗浄し、順番にお風呂に入って雨で冷めてしまった身体を温める流れに。
美夜子はリームが手伝う形で母親と共に先にお風呂を済ませ、続けて夕太と魔美が一緒に入ることになる。
魔美は最初遠慮しそうになったが、美夜子にそうするよう勧められたのだ。
「ゆーくん、またちんぽこおっきくしてる……」
「ニヘヘ、魔美ねえとお風呂に入ってるんだもん。当たり前でしょ」
向かい合う形で湯船に浸かっている二人。
魔美は体操座りで股を閉じているが、逆に夕太は股を開いてお湯の中をゆらゆらと揺れる勃起ちんぽを見せつけるように座っている。
美夜子とお風呂に入った時は急だったし、相手が相手だったので珍しいほどに恥ずかしがっていたが、魔美とは半年以上擦りつけっこをしていたのだ。彼女との裸の付き合いは夕太にとって、もはや慣れたものである。
慣れているからと言って興奮しないかと言えばそんなわけもなく、現に夕太の聞かん棒は魔美の指摘通り立派に屹立している。加えて、今の彼女の髪型は大雨を受けて崩れた状態のまま。その普段と違った水の滴る美少女っぷりは、股間をより硬く尖らせるには十分過ぎるとも言えた。
一方の魔美。彼女は自分が目の前の少年とずっと子作りの真似事をしていたことを知ったばかりなので、変に意識してしまって緊張しっぱなしだ。
さっきから彼のちんぽこに目線が行きがち。からかわれてしまうかもしれないと、必死に視線を逸らし続けている。
そんな互いが互いを意識する中、魔美は首にかけたままのペンダントを湯船の下で弄る。
夕太が作ってくれたそのペンダントは水に浸かっても大丈夫と意外に優秀で、魔美はお風呂の時も含めて四六時中身につけているのだ。
ふいに夕太の顔を見ると、彼は魔美から視線を外して何やら悩ましそうな表情を浮かべていた。
無意識なのだろう、魔美がペンダントを弄っているように、彼も手慰みにちんぽをさわさわと弄っている。
「…………」
「ど、どうしたの? ちんぽこ弄っちゃって」
「え? あ、うん……ぼく、美夜ちゃんのママとセックスしちゃったんだなぁって」
「あ……」
夕太はあのメジューサにレイプされてしまった。そのメジューサの正体が美夜子の母である沙夜子だったのだから、そういうことになってしまうのだろう。彼女が美夜子と重なって見えたのもそれが理由かもしれない。
一応抵抗はしたものの、ほとんどされるがままだったのは言わずもがな。途中からはメジューサとの交わいに悦びさえ感じていた。彼女が美夜子の母と分かった今でも、それは変わらない。
「で、でも、あれはメジューサだった時のことでしょう? だったらノーカンよ! ノーカン!」
「そうかなぁ……」
「大体、何であんな夜中に一人でトイレに行っちゃったの? 悪魔がうろついてるのに、危ないじゃない!」
「だって、急におしっこが漏れそうになっちゃったから……」
「もう、ちゃんと寝る前に──あっ」
魔美は思い出した。
彼の膀胱に、自分のおしっこをテレポートさせたことを。
「…………」
「ま、魔美ねえ?」
今度は魔美の方が黙りこくり、夕太が首を傾げる。
彼女はザバァッと水音を鳴らしながらおもむろに立ち上がり、浴槽を跨いだ。
そして、夕太の方を向く形で床に腰を下ろすと、あろうことか額を床に擦りつけて土下座し始めたのである。当然ながら、お風呂に入っていたので全裸土下座だ。
「えっ? えっ? 魔美ねえ、何してるの!?」
「ゴメンナサイ。アタシノセイデス。ゴメンナサイ」
「ど、どういうこと?」
魔美は土下座しながら、壊れた口調で自分の犯した罪深き所業を白状した。
それを聞いた夕太は納得したように頷く。
「……じゃあ、ぼくが出したのは魔美ねえのおしっこだったんだ」
「ハイ、ソウデス。モウシワケアリマセン」
「そっかぁ」
どうりでいつもと違うように感じたわけである。
不思議と興奮する匂いに思えたのは、魔美のおしっこだったからだ。
それにしても、と思う。
目の前で全裸土下座している魔美。彼女のそんな征服欲を搔き立てるような姿を見ていると、なぜだか心を鷲掴みにされたような気分になってしまうのだ。
その感覚は、桃子先生をお仕置きした時に感じた高揚感に似ていた。
おしっこを押しつけられたことは別に怒っていないし、むしろ役得なので許すも何もない。普段の夕太なら、きっと気にしないでと答えているだろう。
「うう……ホントにごめんなさい。何でもするから、許してェ」
「…………」
だが、口調が戻った魔美のその言葉を聞いて、夕太の股間がドクンッと疼いた。
メジューサとのセックスで
無言のまま浴槽から出て、魔美の前に腰を下ろす。
水の落ちる音と気配を感じて、彼女は土下座の体勢のまま思わず顔を上げた。
「あ……」
目を見開く。眼前には、夕太の勃起ちんぽがあった。
弄ったことで皮が剥け、露わになっている赤らんだ亀頭。その透明な粘液を垂らす鈴口が、魔美の鼻先を真っ直ぐに指している。
「魔美ねえ、許して欲しい?」
「……は、はい」
「だったら……ぼくのちんぽ、舐めて」
ガニ股のまま、腰を一回揺らしてその欲求を主張させる夕太。
断る権利がないのは魔美も分かっている。仮にあったとしても、彼女が断ることは決してないだろう。
美夜子とつばさに対し、子供ながらに溢れ出る性欲と愛欲をあれだけぶつけている彼が、自分にもそれを向けてくれている。それだけで、嬉しくてしょうがないのだから。
「────ッ」
喉を鳴らして、ゆっくりと口を開いて舌を伸ばす魔美。
そして──ピトッと、その柔らかい舌先を幼い性の頂きに押し当てた。
「ぅあっ!」
生ぬるい感覚と、ザラザラとした弾力のある感触。
夕太は思わずプルプルと腰を震わし、声を漏らしてしまう。
「んっ……ぺろっ♡ ぺろっ♡ ぺろっ♡」
続けて、魔美はまるでキャンディーでも舐めるかのような舌遣いで鈴口に舌を這わし始める。
「あっ、あっ、あっ……魔美、ねえっ」
リームや美夜子、メジューサに比べたら、本当に拙いものだろう。
それでも、夕太にとって美夜子と並んで特別な存在である魔美に土下座フェラチオさせているという事実が、彼の征服欲と背徳感を溢れるほどに満たしていた。
(ああ……! あたし、ゆーくんのちんぽこ、舐めちゃってるっ!)
それも、土下座しながら。
いくらそういった知識に乏しい魔美であっても、これがとんでもなく下品ではしたなくて屈辱的なことなのは本能で理解できた。
しかし、鬼頭を舐める舌の動きは止まらない。
おしっこを出す場所のはずなのに。汚い場所のはずなのに。
普段からその特異な能力で、助けを求めている人々を救ったり、悪さをしている人を懲らしめたりしている魔美。そんな慈善活動をしていると、物語の主人公になったかのような、ヒーロー気分になってしまうことも時にはある。
そんな自分が、こんな小さな子に平伏して、そのおちんぽを舐めさせられている。この状況に対し、魔美は自尊心ごと犯されているような気分になりながらも、なぜだか強い興奮を覚えてしまっていたのだ。
誰でもこんな反応をするわけじゃない。きっと、相手が夕太だからなのだろう。
「ああぁ……! ふ、ううぅ……!」
浴槽の縁に腕をかけて体重を預けながら、腰を突き出している幼い想い人。
気持ちよさそうに喘いでいる彼を上目遣いで見上げる。震えて喜んでいる彼が可愛くて、舌を収めると同時に唇を突き出し、ちゅっ♡ と鬼頭にキスをする。
興奮状態の中、それが自身のファーストキスだということに気づかぬまま。
(……ゆーくん、好きっ♡)
それと同時に、夕太の脳裏に魔美の声が届いた。
テレパシーだ。唇からちんぽを通じて、彼女の気持ちが伝わってきたのだ。
瞬間、夕太は浴槽の縁に寄りかかっていた身体をガバリと起こした。
魔美の頭を両手で掴み、その僅かに空いた口に向けて、腰を思いっきり腰を叩きつける。
──ばちゅッ!!
「うっ、ぶっ!?」
唐突に、勃起ちんぽを口内に押しつけられた魔美。
長さは約10cmほどのはずなのに、喉奥まで突かれているような感覚を覚えた。
「魔美ねえ!!」
夕太はそのまま、腰を小刻みに動かしてピストンし始める。
まるでおまんこを突くように。
ぱちゅっ! ぱちゅっ! ばちゅッ! ばちゅッ!
(魔美ねえ! ぼくも、好き! 大好き! ぼくのモノに、なってェ!!)
魔美の頭の中にも、ちんぽを通じて夕太の心の声が響き渡った。
こんな言葉通り物のように扱われているにも関わらず、好きという言葉と伝わってくる愛情はまさしく本物で。それが分かっているからだろうか。口内を犯されていても、全く苦しいと感じない。
(ゆーくん……♡)
必死に腰を振っている彼を愛おしそうに見上げながら、彼の気持ちに応えるべく自身の喉を突くそれに舌を這わす。
もっと、もっと乱暴にしてと、頭を優しく撫でるように。
「ッ!!」
それが伝わったのか、夕太は魔美の頭を掴んでいた手を放し、さらに前へと運ぶ。
前のめりになって彼女の背中に密着し、土下座している彼女のプリンッと丸くて魅力的なお尻に両手を伸ばして引っ掴んだ。
「あっ♡ ──むぐッ!」
漏れた喘ぎ声が、夕太のちんぽ突きによって遮られる。
ばっちゅばっちゅばっちゅッ!! ばちゅッばちゅッばちゅッばちゅッ!!
魔美のお尻を鷲掴みながら、お口オナホによる快楽を享受する夕太。
フィニッシュに向けて、腰の動きがどんどん激しくなっていく。
そして──
「ハッ! ハッ! 魔美ねえ、出るよ! おしっこ! 白いおしっこ! あ゛ああぁっ!!」
どびゅっ!! どびゅるるるっ!! びゅるるるる~~っ!! ドクッ! ドクッ!!
喉奥に向けて放たれる大量の白い液体。
おしっこ……いや違う。精液だ。美夜子から教わった赤ちゃんの素が口内に溢れていくのを感じてながら、魔美は喉を鳴らして飲み込む。
粘度たっぷりの液体が、体内に染み渡っていく。苦いと思っていたはずが意外と甘くて、夕太から出た特別な液体であると思うと、もっともっと飲みたくなってくる。
(……なんか、飲む度に魔力が高まってるみたい)
魔美が自分の身体の変化を感じ取っていると、精液を出し終えた夕太の膝が崩れ、床に尻もちを突いた。
その拍子にちゅぽんっ♡ と耳触りの良い音と共に魔美の口からちんぽが引き抜かれる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
荒い吐息を漏らす夕太。
唾液にまみれた幼い男性器。射精したにも関わらず、未だそれはいきり立ったまま。
その鈴口から精液の残りの一滴が垂れていく。
それを見た魔美は、土下座の状態から身体を前に伸ばし、その精液を舌ですくって口に含む。
絡みつくそれをゴクリと喉を鳴らして飲み込み、ぷはぁっとイカ臭い息を吐いた。
ふいに、互いの視線が重なった。
夕太は魔美を見下ろし、魔美は夕太を見上げている。
「…………」「…………」
無言のまま、見つめ合う。
数秒の間そうしていると、ふいに魔美が動き出した。
四つん這いになって夕太に近づき、尻もちを突いている彼の小さな身体にのしかかる。両肩に手をかけ、その屹立した股間に自身の股間を宛がう。
毎週楽しんでいた擦りつけっこでも、この体勢で大事な所を擦り合ったことがある。
でも、今回は違う。それは魔美の力によって、互いの欲求が脳内に響き渡る声で筒抜けになっているから。
(( セックス! セックス! セックス! セックス! ))
もはや、『白状ガス』いらずの二人。
外側でなく内側で擦り合うため、愛し合うため、魔美は腰に力を入れ始める。
が──
「 ──い゛ったあああぁぁぁいッ!!! 」
叫び声と共に飛び上がる魔美。
テレキネシスの暴走か、そのまま天井まで吹っ飛んでいき、そして──
──ブンッ
「…………へ?」
──ピヨヨンッ
次の瞬間には、魔美の姿は美夜子達がいる客間にあった。
美夜子が座っているソファには彼女の母親──沙夜子が寝かされている。
「きゃっ!?」
「ちょ、魔美! あなたどうしたのよ!?」
「あ、あはは……」
驚く美夜子とリーム。
幸い夕太のちんぽをフェラチオしている間に身体はさほど渇いてしまっていたが、当然服は一切着ておらず真っ裸だ。
「ほら、とりあえずこれ着なさい」
「うぅ、ありがとう」
すぐ近くにいたリームが例の大掛かりなホウキのトランクからバスローブを出してくれたので、ひとまずそれを着ることにする。
その際、リームは魔美の口から香る匂いに、ん? と眉をひそめた。
「ひそひそ(で、夕くんは? ちゃんとできたの?)」
「ひそひそ(えっと、その……思ったより痛くって)」
「ひそひそ(それでテレポートしちゃったの? もう、しっかりしなさいよ。本当に置いてけぼりになっちゃうわよ?)」
「ひそひそ(だ、だって~!)」
ああ、もう! どうしてあたしはこうなんだろう!
せっかく美夜子がお膳立てしてくれたのに、結局セックスできず仕舞いに終わってしまった。魔美は後悔と情けなさに苛まれる。
「ただいま~。魔美ねえいる?」
「お帰りなさい。魔美ならそこにいるわよ」
噂をすれば、遅れてお風呂から上がった夕太が客間に入ってきた。
彼は魔美の姿を認めるとホッとした様子を見せるも、すぐに少しむくれた顔になる。そのまま気まずそうにしている魔美のもとへ近づき、彼女を見上げて口を開いた。
「魔美ねえ」
「は、はい!」
ビシッと背筋を伸ばし、両手を真っ直ぐ腰に揃える魔美。
「つばさちゃん、ここに連れてきてくれる?」
「テレポート使っても、よろしいでしょうか!?」
「うん。ほら、つばさちゃん寂しがってると思うから」
「はい!」
ペンダントを使い、テレポートする魔美。
そして、瞬きの間につばさの石像を抱えた状態で戻ってくる。
「ありがとう、魔美ねえ」
「どういたしまして! ……えと、ご、ごめんね」
「いいよ。あのね、ぼく魔美ねえのこと大好きだから、何があっても嫌いになんかなったりしないよ。絶対」
「ゆーくん……」
嫌われちゃったかな、と言う心配が顔に出ていたのだろう。夕太は気を遣って慰めてくれた。
魔美はホッとしつつも、これじゃどっちが年上か分からないと項垂れる。
「夕くん。つばささん、連れてきてもらったのね」
「美夜ちゃん。うん、寂しがってると思って……あっ! こ、この汚れはね、えっと……」
「いいのよ、気にしなくても」
汚れを拭き忘れたことに今さら気づいたのか、夕太は慌てて言い訳しようとした。
が、予想外の美夜子の返事に「え?」と目を丸くする。
「……いいの?」
「ええ。そうでなきゃ、魔美と一緒にお風呂に入れるわけないでしょ? 浮気癖を受け入れなきゃ、夕くんの恋人は務まりそうにないんだもの」
「う、浮気癖……」
「でも、さすがに綺麗にした方がいいわね。チンカラホイ」
なんだか妙な情けなさを感じてしょげる夕太を尻目に、美夜子はつばさにこびりついた汚れを簡易洗浄の魔法で綺麗にしてあげる。
その際、『余計なことしないでよ!』という叫びが聞こえた魔美は、目を逸らして聞こえなかったフリをした。
「……え?」
一方で、石となったアイドルを見たリームは目を見開いた。
美夜子から事情は聞いているので、彼女が夕太とそういう関係であったり、石になっていることも既に把握済みだ。問題は、簡易洗浄する前の汚れ──渇いた精液にまみれたあられもない姿にある。
そう、渇いた精液。精液だ。
この栗の花のようなイカ臭いようなプールの匂いに似た独特な香り。魔美の口から匂った香りと同じ。直に嗅いだことはないが、間違いない。
「ゆ、ゆう! 精通したの!?」
「え? え? 何、リームさん。せーつー?」
「だから! 精液! 出るようになったんでしょ!?」
「????」
弾かれるように駆け寄って夕太の両肩を掴んで揺さぶったが、彼は何のことだか分からず呆然と首を傾げるばかり。
ええい、カマトトぶってくれちゃって! こうなったら今ここで絞り出して──
「リーム?」
「はっ!」
つばさを洗浄し終えた美夜子の声が耳に入り、寸前で正気に戻る。気づけば、魔美でさえ困惑した顔でリームのことを見ていた。
「あ、いや……じゅ、10歳で精通するなんて早いなぁと思って、驚いちゃって」
「……ふ~ん?」
一応言い訳するが、なおも疑わしげな視線を向けてくる美夜子。
まずい。このままでは、夜な夜な夕太に夜這いをかけていることを白状させられてしまう。リームはどうにか上手い誤魔化し方を考えようと、焦る頭で知恵を絞る。
(というか、美夜子も美夜子で当たり前のように目の前で精液の後始末なんてしないでよ! アタシがいるんだから、普通は隠すものでしょ!)
夕太が絡むとどうも色々とおかしくなる親友に文句をぶつけながら。
「……まあいいわ。それよりリーム、あのメジューサの動きを遅くした魔法道具、一体どこで手に入れたの?」
「え? え~っと、あれは……その……」
幸い彼女の方から話を変えてくれたが、これまた答えられない質問である。
事が事だったので美夜子達に見られているのも構わず『タイムコントローラー』を使ってしまったが、だからと言って正体を話すわけにもいかないのだ。
「言えないの?」
「ご、ごめんなさい……」
「いいのよ、気にしないで。あなたのおかげで私達、助かったんだから」
「……ありがとう、美夜子」
美夜子の気遣いに対し、心の底から感謝する。
前言撤回。こんな出来た娘に惚れ込まれて恋人にしてもらえたのだから、夕太は本当に幸せ者だ。
「う、ん……」
「あっ、ママ! まだ起きちゃダメよ!」
その時、ソファで美夜子に膝枕されていた沙夜子が身を起こした。
娘である美夜子が慌てて止めようとしたが、それをやんわりと手で制す。
「大丈夫よ。だいぶ回復してきたし、それよりも……」
美夜子の頬に、そっと手を添える。
意識がはっきりと戻ってきて初めて見る愛娘の姿。目を細め、懐かしそうに、慈しむように微笑んだ。
「大きくなったわね、美夜子」
「……ママッ!!」
改めて母が帰ってきたことを実感し、美夜子は彼女に抱きついた。沙夜子もまた、愛娘を抱きしめ返す。
母娘の再会を見守る夕太達。夕太は最愛の美夜子が嬉しそうにしているのを自分のことのように喜び、母親を失って意気消沈していた頃を知っている魔美はぽろりと涙を流した。
ひとしきり抱きしめ合った母娘。
ようやく落ち着きを取り戻した一同は、なぜ沙夜子がメジューサとなっていたのかについて話し始める。
「それじゃあ、ママが契約した悪魔は大魔王デマオンだったの?」
「ええ。一番強い力を持った悪魔を指定したら、自然とそうなってしまったみたい。そのまま、彼に魂を囚われて悪魔にされてしまったのよ」
大魔王デマオンは、やはり生きていた。伝説の魔法使いナルニアデスによって、魔界星ごと時空の狭間へと放逐されていたらしい。
狭間の中で長い年月をかけて魔力を蓄えた彼は、ついに狭間に時空痕を開けることに成功。仇敵であるナルニアデスを討つべく、刺客を送り込んだというわけである。
「本来なら戻ることは不可能なはずなのだけど……あなた、夕太ちゃんのひみつ道具のおかげで、元に戻ることができたわ。本当にありがとう」
「えっ!? そんな、偶然そうなっただけで……あの、ニヘ、ニヘヘ」
沙夜子に微笑みかけられ、夕太は頬を染めてデレデレと鼻の下を伸ばす。
美夜子の母親である彼女は、絶世の美女と言っても差し支えない容貌をしている。悪魔となっていた影響で8年間年を取らずにいたので、肉体年齢は元の32歳と若々しいままだ。
腰まで伸びた、娘と同じく少し赤みがかった綺麗な黒髪。タイムテレビで見た大人になった美夜子に似ているが、佳人薄命というのか、彼女と違ってどこか儚げな印象もあって、不思議と心惹かれていく。
必然的に襲われた時のことを思い出して、ちんぽを硬く尖らせてしまう。いつも着ているオーバーサイズのシャツ越しでもはっきりと分かるほどに。
「まあ♡」
「ゆ、夕くん!」
「あっ、ご、ごめんなさい!」
慌てて両手で抑える夕太。さすがの美夜子も恋人が自分の母親をそういう目で見るのは抵抗があるらしい。
しかし、当の沙夜子は満更でもなさそうな顔でぽっと染めた頬に手を添えている。
「いいのよ。男の子だものね。それに……その、ごめんなさい。まだ小さいのに、こんなおばさんに無理やり襲われて、怖かったでしょう?」
「う、ううん! とっても気持ち良かった!!」
「もう、夕くん! ママも! 夕くんは私の恋人なのよ! まだ子供だけど、こればっかりはいくらママでも譲らないんだから!」
「ふふ、分かってるわ。美夜子にとって大事な人だし、私にとっては息子になるわけだしね」
息子……つまり、ママ!?
その言葉を聞いた夕太は、自分にママができたことに歓喜と高揚感を覚えた。
「じゃ、じゃあ、あの……ぼくも美夜ちゃんみたいに、ママって呼んでもいい!?」
「もちろんよ。私も、夕ちゃんって呼んでもいいかしら?」
「うん! やったぁ!」
早速ママ呼びを承認してもらい、沙夜子の胸に抱きつく。桃子先生とはまた違った抱擁感溢れる柔らかさと優しい匂いに、夕太のちんぽはさらに硬くなった。
そんな無節操な恋人と妙に寛容な母親を前に、美夜子は不満そうにムッツリと膨れ上がっている。
思えば、悪魔と化していたとはいえ、最初に母と対面したのは彼女が夕太をレイプしている場面だったのだ。
しかも、こちらにお尻を向けて。8年ぶりに再会したというのに、最初に目にしたのが母親のアナルだなんて、こんなことってあるだろうか。
「あの……沙夜子さん、あたしのこと覚えてますか?」
美夜子は死んだ目で渇いた笑いを零す中、彼女以外で唯一沙夜子と交流したことがある魔美が、遠慮がちに声をかけた。
「ええ。魔美ちゃんでしょう? あなたも、ずっと美夜子の傍にいてくれてありがとう」
「そんな、あたしはそれくらいしかできなくて……美夜ちゃんが元気になれたのは、ゆーくんのおかげですから」
「いいえ、そんなことないわ。魔美ちゃんだって、美夜子の心の助けになれてたはずよ」
沙夜子の言葉を聞いて、魔美はこそばゆそうに頬を掻いて照れ笑いを零す。
「えへへ……あ、そうだ。美夜ちゃん、何だっけ? ほら、ゆーくんがナル何とかって──」
「ッ! そ、そうだわ! ママ! 夕くんがナルニアデスって、本当なの!?」
言われて、母親のアナルから戻ってきた美夜子は慌てて彼女に問いかけた。
彼女自身も少しばかり心当たりはあったのだ。
夕太を拾った時、彼が身に纏っていた古めかしい緋色の衣。気になって、父親に調べてもらったことがある。魔法使いの冠位における最高位であることを示す緋色。魔界歴程によると、ナルニアデスもその色の衣を纏っていたらしい。
もちろん、美夜子は今の今までただの偶然だと思っていたわけだが……
「……そうよ。夕ちゃんは、1000年前にデマオンを時空の狭間に閉じ込めた伝説の魔法使い──ナルニアデスなの」
「あの、どうしてそんなことが分かるんですか? ゆうがナルニアデスだなんて……」
ナルニアデス自体、デマオンと並んでその存在自体が疑問視されている。魔界歴程以外で彼や魔王に対して言及されている資料がほとんど存在しないためだ。
そのせいもあって、竹取物語や浦島太郎と並んで御伽話と見なされてしまった。そんなお話の中の登場人物と夕太が同一存在だと言われても、すぐには信じられないだろう。
「それは、この子のおちん──ゴホンッ! じゃなくて、精え──ゴホンゴホンッ! その、魔力香が、ね? 魔界星に残っている彼の残り香と同じだからよ」
リームの質問に、デリケートな部分を頬を染めて誤魔化しつつ答える沙夜子。真剣な話をしているというのに、どこかイヤらしいというか卑猥な雰囲気が漂っているのは気のせいだろうか。
話題の渦中にいるはずの夕太は自分のことだと言うのにママに抱きついたまま、その柔らかさと心地良さを堪能している。沙夜子はそんな彼の頭を優しく撫でた。
「で、でも、1000年前の話でしょう? それに、夕くんを拾った時はまだ5歳くらいだったし、辻褄が合わないわ」
「その辺りは、デマオンも正確なことは分かっていないみたい。でもね、ナルニアデスはデマオンを時空の狭間に放逐する時、自らも巻き添えになったらしいの」
しかし、巻き添えになったはずのナルニアデスの姿は時空の狭間になかった。
デマオンは、狭間に吸い込まれる途中で彼だけは"時空乱流"に飲み込まれたのではないかと推測しているらしい。
「時空乱流……なるほど」
合点がいったように、リームが頷く。
時空乱流、別名を時空乱渦流と呼ぶそれは、飲み込まれれば永久に亜空間を漂うことになるブラックホールのような存在だ。
運が良ければ別の時代に漂流することもあるが、いつの時代のどこに流れ着くかは分からない。稀に起こる神隠しの要因であり、そういったタイムトリッパーを救助するのも以前リームが所属していた人命救助課の仕事となっている。
「それなら、ゆうが幼児化したのも納得行くわね」
「リーム、どういうこと?」
「時空間には"ねじれゾーン"と言う、時間の流れがとても乱れた領域が存在するの。時空乱流の中にもそれが同居したものが存在していて、その中に入ってしまうと、身体が影響を受けて急激に成長したり、若返ったりするのよ」
つまり、ナルニアデスはねじれゾーンの影響を受けて子供の姿に若返り、記憶を失ってこの時代に流れ着いた。そして、美夜子に拾われて、名付け占いで夕太という名前を与えられたのだ。
その場にいる女の子達の視線が、相変わらずママに抱きついて甘えている夕太に集まる。魔美だけは沙夜子とリームの小難しい話についていけなくて、よく分かってない様子だが。
「──あ、そうだ!」
そんな重い空気を知ってか知らずか、夕太は突然沙夜子の胸から顔を上げた。ナルニアデスのことは話半分程度にしか聞いていなかったようだ。
彼は沙夜子の身体から離れ、つばさの石像に駆け寄って抱き示す。
「ママ! つばさちゃんを元に戻してあげられない?」
「あら、その子は……私が石にしてしまった子ね」
美夜子達は話に夢中で、彼女の存在をすっかり忘れていた。
恐怖に歪んだまま固まったつばさの顔が、期待に満ちた色を浮かべる。しかし、沙夜子は申し訳なさそうに首を横に振った。
「……ごめんなさい。多分、元に戻すにはデマオンを倒すしかないわ。元々、私の悪魔としての魔力は、デマオンから授けられたものだから」
「そう、なんだ」
「あ、でも、魔界星の悪魔は月の光が苦手なの。だから、その魔力で姿を変えられた者も、月の光を浴びている間は元に戻るはずよ」
「本当!? あ、でも、もうお月様は出てないし……そうだ、あれなら!」
月の光について聞かされた夕太は、何か代わりになるものに心当たりがあるのか、ズボンのポケットを弄り始める。
「『月光灯』ー!」
テッテレー♪
そんな幻聴と共に取り出したのは、何やら先っぽに丸いレンズがついた筒のようなモノ。
「ゆう、それは?」
「これね、ここを押したら光が出るんだけど、その光が月の光と同じなんだ! これをつばさちゃんに当てれば……」
未来の魔法道具を使うリームにとって、夕太のひみつ道具は実に興味深いものだ。
例のタイムふろしきだって、『タイムコントローラー』でも最大5分しか巻き戻しができないのだから、それと比べたら驚異の代物である。
(……あれ?)
それなら、タイムふろしきを使えばいいのではないだろうか? 沙夜子の時と同じように、身体の時間を石になる前の頃まで戻すことができるはずだ。
人知れずそんな疑問を浮かべたリームをよそに、夕太はつばさに月光灯の光を当てる。
ピカーッ!
「ああ!」
「石化が、解けていくわ……!」
みるみるうちに、灰色の身体に色が戻っていく。
髪は手入れの整った艶のある黒へ、素肌は瑞々しい肌色へ、乳首と少しはみ出た股間のビラビラも薄いピンク色へと塗り替わるように返り咲いた。
そして最後に、狼のような耳と尻尾が生えたのである。
「え?」
そう、狼耳と尻尾だ。
月光灯は元々狼男・女に変身するための道具なのだ。本来なら狼そっくりになるはずなのだが、故障しているのか中途半端な変化に留まっている。
「…………♡」
狼耳が生えたつばさの顔が、夕太を見るや否やとろ~んと顔を蕩けていく。
同時に、獲物を見つけたかのように瞳を輝かせた。
「夕太くん!!」
「わあっ!?」
両手両足を使い、飛びかかるようにして夕太の胸に飛び込む。
「好き! 好きぃ! 交尾ッ♡ 交尾しよぉ♡♡」
裸のまま覆い被さり、辛抱堪らないとばかりに腰を揺らして嬉ションをまき散らしながら、夕太の服を剥ぎにかかった。
「ああ! もう、離れなさいッ!」
見かねた美夜子が首根っこを掴んで引き剥がす。
「きゃんっ! きゃいんっ! くぅ~ん、くぅ~ん……♡」
愛しい夕太と引き離されて、同情心を誘うような鳴き声を上げるつばさ。
歌手だけでなく女優としても活躍しているアイドル。狼になってもその演技力は顕在のようだ。昨日は夕太が犬のようにつばさに従っていたのに、今は全く逆である。
「ゆーくん、だ、大丈夫?」
「う、うん。つばさちゃん、発情期みたい」
「夕くんと同じで年中発情期なのよ、この子は」
「それは美夜子もでしょ?」
「な、何言ってるのよリームッ!」
美夜子に羽交い絞めにされているつばさは、なおも魔美に起こされた夕太に抱きつこうと両手両足で宙を掻いている。
夕太はそんな彼女に近づき、頭を撫でてあげる。
「ごめんね、つばさちゃん。絶対デマオンを倒して、ちゃんと元に戻してあげるから」
「あんっ♡ ハッ、ハッ、ハッ♡」
嬉しそうに声を上げるつばさ。彼女は美夜子の手から離れてごろんと床に転がり、お腹を見せた。
両腕を胸の前で垂らしてお股をおっぴろげたその姿は、まさに狼というか犬そのもの。本当に信頼している、傍にいて安心できる人の前でしかしない体勢である。
「あ」
つばさはその体勢のまま、また石像に変わってしまった。狼耳と尻尾もなくなっている。
月光灯の効き目が切れたのだ。
「つばさちゃ~んっ」
あられもない姿で固まった彼女に縋り、嘆き悲しむ夕太。
美夜子はそんな恋人の姿に溜息を吐いた。
「ふふ、夕ちゃん、モテモテなのね。美夜子はライバルが多くて大変だわ」
「そうなの。本当に節操なしなんだから」
それにしても、と美夜子は思う。
こんなエッチでどうしようもない子が、かの伝説の魔法使いナルニアデスだなんて。
動揺が生まれなかったと言えば、嘘になる。
そんなとても重要な存在と関係を結んでしまって、本当にいいのだろうかと。
「……美夜ちゃん」
その動揺をエスパーである魔美は感じ取ったのだろう。
彼女はそっと、親友の手を両手で握った。
「ゆーくんがナル何とかだったとしても、そんなこと関係ないわ。だって、どんなことがあっても、あたし達がゆーくんを好きだってことには変わりないでしょ?」
「魔美……」
そうだわ。魔美の言う通り、夕くんの正体がナルニアデスであろうと関係ない。彼が誰であろうと、この気持ちに変わりはないのだから。
むしろ、伝説の魔法使いが恋人だなんて、素晴らしいじゃない! やっぱり、夕くんはすごい子なんだわ! 美夜子はそう心の中で歓喜の声を上げ、揺らいだ気持ちをなかったことにする。
「ありがとう、魔美」
お礼を言うと、彼女は二コリと微笑んでみせた。
幼い頃から変わらない二人の強い絆を見て、沙夜子も目を細めている。
「──ゴホンッ」
そこへ、リームの咳払いが客間に響く。
「ゆうのことはともかくとして、まだ重要なことが残ってるでしょう?」
「何? 重要なことって?」
「大魔王デマオンよ。ほら、ゆうもつばさから離れて話を聞きなさい」
呑気な魔美に現実を突きつける。美夜子も気を取り直してソファに座り直す。
「沙夜子さん、先ほどおっしゃったように悪魔は月の光を苦手としているんですよね? なら、どうしてメジューサだったあなたはこの地球に来れたのですか?」
「それは私が元人間だからよ。純粋な悪魔じゃないから、月の光に抵抗力があるの」
「じゃあ、もうメジューサはいなくなったし、月がある限り魔王も地球に来れないってことよね?」
つまり、もう何も心配することはないということ。また再び平和な日常が戻ってくるのだ。
そう思って安堵の表情を浮かべる美夜子達だったが、沙夜子の返事は違った。
「いいえ。デマオンは地球にやってくるわ。少なくとも週明け……二日後には、必ずね」
「え!? ど、どうして……」
「美夜子。今、月の光はどうなってるかしら?」
「どうなってるって、今は下弦の月をとっくに過ぎて……ま、まさか!?」
美夜子の声に、沙夜子はコクリと頷いた。
二日後は新月。その日は月が一時的に光をなくし、その力を失ってしまうのだ。
そういえばと、美夜子は思い出した。5年前に夕太と森に出かけた時に出くわした、見たこともないハイエナのような化け物のことを。
沙夜子によると、あれはギョロリンという悪魔らしい。当時、メジューサが通れないほどの小さな時空痕を開くことができたデマオンが実験的に送り込んだ弱い悪魔なのだという。思えば、あの日も新月であった。
「新月の日を狙って魔王が地球に躍り出れば、真っ先に月へ向かうでしょう」
その前準備として、ナルニアデスを無力化すべくメジューサである沙夜子が送り込まれた。
デマオンは自身が開けた時空痕を通して、この時代の地球に流れ着いた彼の魔力香を感じ取っていたのだ。
「そ、そんなぁ……じゃあ、月を破壊されて、地球はおしまいってこと?」
魔美が絶望に顔を蒼褪めさせる。
そんな彼女の震える手を、夕太が強く握った。
「大丈夫だよ! その前にぼくらの方から魔界星に乗り込んで、デマオンをやっつければいいんだ!」
「えっ? えっ!?」
「……そうね。それしか、地球を救う方法はなさそうだわ」
狼狽える魔美をよそに、美夜子も小さな恋人の意見に同意する。
本当なら何よりも大切な夕太は置いていきたい。でも、それで負けてしまえば、地球がデマオンに支配されて、結局彼も殺されてしまうだろう。
だったら、一か八かやってみるしかない。
どんなことがあっても、夕太だけは守り切らなければ。例え、彼を置いて死ぬことになったとしても。
「……もっとも、デマオンは地球のことなんてどうでもいいと思っているでしょうけど」
「え? ママ、何か言った?」
「う、ううん。何でもないわ。気にしないで」
ボソリと呟いた言葉を、沙夜子は慌てて誤魔化した。
「そう? あ、そうだわ。パパに連絡して、魔界歴程に魔王の弱点が書かれてないか調べてもらわないと。ママのことも伝えなきゃだし」
「ま、待って。魔王の弱点なら私が知ってるわ。それにあの人にはまだ私のことを教えないで欲しいの」
水晶を使って満月パパと連絡を取ろうとした美夜子に、どういうわけか待ったをかける沙夜子。
美夜子は母の考えが分からず、首を傾げる。
「え? どうして? ママだって、早くパパの声が聞きたいでしょう?」
「そ、その……どうせ伝えるなら、何もかも終わってからの方がいいと思って……それに、魔王を倒しに行くなんて言ったら、きっと引き留められてしまうわ」
「それは……そうかもしれないけど」
挙動不審な母に違和感を覚える美夜子。まるで父に、自分の夫に会いたくないかのようだ。
言っていることは、確かにその通りだろう。魔王が復活してそれを退治しに行くだなんて、色々と混乱を招いてややこしいことになりかねないのだから。
美夜子が水晶を仕舞ったタイミングで、リームがパンッと手を叩いて話をまとめ始める。
「はい。それじゃあ魔王討伐に向けて、今日一日はしっかり休息を取りましょう。みんな疲れてるでしょうし」
「い、いいの? 休んだりしてて」
「メジューサが特別だっただけなんだから、新月になるまで新手は来ないはずよ。それで、魔界星への突入は明日、日曜の夜。日没までは沙夜子さんと相談して対策を練るの。それでいい?」
慣れた様子でそう取り仕切るリームに面食らいつつも、美夜子は頷いて返した。
「ええ。構わないわ。でも、リームも来てくれるの?」
「当然じゃない。地球の危機なのよ? そうでなくたって、親友が危険に飛び込もうとしているんだから、黙って見ているだけなんてできないわ」
「リーム……ありがとう」
もう一人の親友の頼もしい言葉に、涙ぐみながらお礼を言う美夜子。
リームはそんな彼女を見て、少し気まずくなった。
親友のためと言ったのは嘘ではない。
だが、T・P隊員である彼女にとっては、これは二重の意味で重大な任務でもあるのだ。
まず、このままデマオンを放っておけば、地球は悪魔に支配されて未来を失ってしまう。
そして第二に、夕太が今回の件で死亡してしまえば、リームは彼の子供を孕めず、地球の未来は取り返しのつかないことになる。
なぜ今の今まで、未来のタイムパトロールは魔王の襲来を感知できなかったのか? それはひとえに、デマオンが時間の流れから外れた時空の狭間に追いやられていたからだろう。
今こうして時空痕を開いて干渉し始めたことで、ようやく時間の流れに影響が出始めたのだ。
いや、美夜子の話に出てきたギョロリンという悪魔の件からして、もっと前から前兆は出ていた可能性もある。
リームの所属するT・Pよりもさらに未来のT・Pがそうだ。彼らからの交信が途絶えたのは、その影響を真っ先に受けたのが原因かもしれないのだから。
(きっと、唯一アタシだけがこの時間軸に来られたのは、元々夕太を助ける運命にあったからだわ)
実際、リームが駆けつけなければ夕太はメジューサに石にされていただろう。
大魔王が関わる以前の時間軸でも、T・Pの仕事で命を助ける機会があったのかもしれない。
とにかく、T・P隊員として彼を守り切らなければ。
結局のところ、なぜ自分が夕太の──ナルニアデスの子供を孕まなければいけないのかは分からない。それでも、地球の未来のため、そして、自分のためにも、彼を死なせるわけにはいかないのだ。
(ちゃんとアタシを孕ませてくれなきゃ、許さないんだから……!)
かくして、一同は大魔王討伐に向けて、今日一日思い思いの時間を過ごすことに。
決意と不安を胸に抱く彼女らに対し、どこか陰のある表情を見せる美夜子の母──沙夜子。
彼女の視線はどこか、いや、明らかに夕太だけに集中しているように見えて。
その瞳孔が一瞬、蛇の目のように縦に伸びた気がした。
前回、アンケートのご回答ありがとうございました。
美夜子の母親の名前は『
個人的にもこの名前が一番しっくり来てはいたんですが、美夜子と漢字一文字違いになるのでややこしいかなと思って踏ん切りがつけなかった次第です。
〇満月美夜子
原作と違って悪魔との戦いに向けて訓練などしていないので、戦力的には原作より低め。
その代わりに魔美とリームがいるのでバランスはいいかもしれない。
三人娘の中で唯一まともな攻撃魔法を覚えている。
〇佐倉魔美
正攻法で戦う場合、相手からしたら一番厄介な存在。魔法を飛ばしてもほとんど回避されてしまう。
ただし原作を見る限りでは、自分に迫ってくるとしっかり認識できていないとテレポートが発動しない(銃弾や、背後からの殴打に対して無力だった)。
テレキネシスは発展途上。美夜子のそれよりかは強力だが、攻撃としては期待できない。
〇リーム・ストリーム
時間停止や遅延、巻き戻しなどができる未来の魔法道具を持っているので、普通に考えたら彼女さえいればどうにでもなりそうだが……?
ちなみに夕太の『タンマウォッチ』は現在行方不明。多分修理に出されてる。