学校で一番エッチなヤツのおねショタ歴程 作:ピーマン
それは、ある日の休日のお話。
夕太はやることもなく満月邸の自室のベッドで寝転んでいた。
「はぁ……暇だなぁ」
呟きながら、寝返りを打つ。壁に貼ったアイドルの伊藤つばさのポスターが目に入る。
満月パパは学会に出席するために外出中。美夜子は親友の魔美の家に遊びに行っている。夕太もついて行こうとしたが、今日は女子会だからと留守番させられたのだ。
視線を部屋に飾ってある魔美の裸婦画に移して、溜息を一つ。
先ほどまでは、XYZ線カメラで撮った美夜子の下着写真、クラスメイト達や桃子先生の裸写真を枕の下に敷いて昼寝をしていた。
が、期待していた夢を見ることは叶わず。代わりとばかりに警察に逮捕されて凶悪犯としてテレビ報道されている夢を見て、ショックと絶望のあまり飛び起きてしまった。それ以降、眼が冴えてしまって昼寝もできなくなってしまったのである。
ちなみに、あれから桃子先生とは関係は進んでいない。
彼女の方は再び夕太が隠れて写真を撮ってお仕置きを求めにやってくると思っているのだが、バカな夕太は先生の「絶対、しちゃダメですよ!」というフリの言葉をそのまま受け取ってしまい、反省して新たな写真を撮ることはしなくなっていたのだ。
ようするに、先生は夕太との再びの蜜月を待ち侘びながら現在進行形で放置プレイを受けているのである。今頃、彼の全裸写真をオカズに自分を慰めていることだろう。
「何か面白いことができそうな道具、ないかなぁ」
退屈をしのげないかとポケットを漁る。特に急いではいないが、「なんかないか? なんかないか?」と手に触れたモノをポケットから出しては放り捨ててを繰り返す。
風を発生させて涼む道具や、バナナ、おもち、どら焼き、大和煮の缶詰といった食べ物、羽子板、ラーメンどんぶり、やかん。最初の道具や食べ物はともかく、役に立たないガラクタばかりである。
「おっ?」
テッテレー♪
そんな音(新しい方)を空耳しながら、良さそうな道具を引き当てた。同時に、頭の中に道具の名前が浮かんでくる。
「『コピーとりよせ機』~!」
ポケットから取り出すと、よく分からない形をした箱と、薄型テレビのようなモノが出てきた。どうやら、2つセットのひみつ道具なようだ。薄型テレビの方は『探査ビデオ』というらしい。
「えっと、目当ての人物のコピーを取り寄せることができるのか。へぇ~、なるほどぉ」
これは暇を潰せそうだと、夕太は手を擦り合わせる。
ポケットから出した道具の使い方も、名前と同様に使い方がなんとなく頭の中に浮かんでくる。細かい注意点などは省かれるため、わりとトラブルに見舞われがちではあるが。
「よーし! 早速、美夜ちゃんのコピーを取り寄せてみよっと!」
桃子先生という極上の女性とあんなことを経験しながらも、彼の一番は美夜子のままである。筋金入りの美夜子好きだ。
よく分からない形の箱、もとい端末を操作し、探査ビデオで目的の人物の居場所を探る。すると、数秒もしない内にテレビに美夜子の姿が映った。
「わあ、映った映った!」
アングルを弄ると、隣には魔美の姿。向かい側にある魔美のベッドにはリームが寝転がって漫画を読んでいた。中等部で有名な美人三人組だ。団子鼻の魔美は出涸らし扱いを受け気味だが、夕太からすれば彼女だって十分美少女である。
再び焦点を美夜子に移し、端末を弄って立体コピーを作り出す。レンズが輝き、その光の先に彼女の姿が映し出された。「おお~!」と感激の余り一人拍手する夕太。
『ね~、魔法薬のレポート終わった?』
『ええ』『やったわ』
『いいなぁ。ねえ、写させてぇ』
『ダメに決まってるじゃない。レポートなんだからすぐバレちゃうわよ』
探査ビデオ越しに彼女らの会話を聞きながら、蓮をイメージしたお気に入りのミニワンピースを着た美夜子のパンツを覗き見る。今日は白いシルクのパンツ。朝見たばかりだが、彼女のパンツは何度見ても飽きない。
せっかくだからと、続けて魔美とリームのコピーも作り出し、スカートの下を覗く。魔美は脚口レースの真っ白なボックスショーツ。リームはヒップハンガーと呼ばれる、ローライズ気味な際どい白パンツだ。見事に三人共が白一色である。
「ニヒヒ……」
ちょっとしたイタズラに、魔美とリームのおまんこを下着越しにぷにっとつついてみる。
「ひゃあっ!?」「キャッ!?」
二人は可愛らしい悲鳴を上げ、そのままの体勢で飛び上がった。コピーとりよせ機で取り寄せた立体コピーは、こうして直接触ることで一方的に干渉することもできるのだ。
美夜子は一人「どうしたの?」と目を丸くしている。一体何だったのかと首を傾げる魔美と、スカートを抑えて何やら警戒した様子で周りに視線を巡らせているリーム。
調子に乗った夕太は続けて美夜子にもイタズラを仕掛けようとしたが、視線を感じてピタリと手を止める。探査ビデオの画面を見ると、いつの間にかゴーグルを着けたリームがカメラ目線になっていたのだ。ゴーグル越しに綺麗なグリーンアイがジトっとした目でこちらを見ていた。
まさか、こっちに気づいてる? もしかしたら、この探査ビデオは何か遠見玉のようなモノを介して、こちらに映像を寄越しているのかもしれない。
「だとしたら……は、早く消さないと!」
そう考えた夕太は、慌ててコピーとりよせ機の電源を切ってしまうのだった。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
「それでね、最近じゃ毎日夕くんにスカートをめくられちゃって……」
「相変わらずねぇ、ゆーくん」
場面は変わって美夜子。
彼女はここ数年で性に関心を持ち始めた夕太による困り事を話し始めていた。
「他人事みたいに言わないでちょうだい。元はと言えば、魔美が3年前ウチにお泊りした時に夕くんに裸を見せたのが原因じゃない。あれからよ? 夕くんがエッチなことに興味持ちだしたの」
「う、う~ん、そう言われてもなぁ。あんまし覚えてないのよね。ぶどうジュースと間違ってワイン飲んじゃったみたいだから」
「全くもう。リームはどう思う? ……リーム?」
美夜子はリームに意見を求めてみたが、ゴーグルを着けた彼女はやけに怪しげな目つきで部屋の隅をじーっと見つめたまま目を離そうとしない。先ほどからずっとこの調子だ。
「リーム? さっきからどうしたの? というか、何そのゴーグル」
「……え? あ、ごめんなさい、何でもないわ。ゆうの話だったわよね?」
慌ててゴーグルを外し、返事をするリーム。
ちなみに、リームは夕太のことをゆうと呼んでいる。英語のYouと同じ発音で、二文字だから呼びやすいのだという。
「そう。どうしたらスカートをめくるの止めさせられるかしら?」
「ん~、多分、無理じゃないかしら。それより、スカートの下に短パンでも履いた方がいいんじゃない?」
リームはまたチラリと部屋の隅に送った後、そう答えた。あの年がら年中発情しているエロ坊主にエッチなことを禁止なんて言った日には、逆に何をしでかすか分かったものじゃない。
それにこの場では明かせないものの、彼女の個人的事情もあって夕太のそういった行為は止めさせるわけにもいかないのだ。本人の知らぬところで覗くようなことはさすがに勘弁願いたいが。
「え? それは……ちょっと」
「ダメなの? あたしはリームの案、良いと思うけど」
魔美が美夜子の持ってきたクッキーを摘まみながらリームに賛同する。彼女だって会えば覗かれているにも関わらず。
そもそも、魔美は画家である父親のヌードモデルを務めていたから、下着どころか裸を見られても気にしないのである。その父親は今、フランスへ絵画留学中だ。
二人に視線を向けられた美夜子は、迷うように数秒ほど無言で視線を右往左往させた後、ポツリと呟く。
「……だって、スカートめくったのに下着じゃなかったら、夕くん残念がるんじゃないかと思って」
その答えに、魔美とリームは目をパチクリ。
二人して「「はぁ……」」と大きく溜息を吐いて、呆れた目を美代子に向けた。
「な、何?」
「べっつにぃ? ねえ、リーム」
「ええ。ま、結婚式には呼んでちょうだいね」
「??」
その後、魔美がからかい目的で「パンツ履いてるから恥ずかしいのよ。いっそのことノーパンにしちゃえば?」と提案。美夜子が顔を真っ赤にして拒否したりと、三人は盛り上がった。
美夜子だけは終始真剣だったので、疲れた彼女はリームの隣に突っ伏す形で上半身を魔美のベッドに沈ませる。それを見て、なぜか魔美が肩をビクつかせた。
「はぁ……ひどいわ二人共。こっちは真剣なのに」
「ご、ごめんごめんっ。あの、美夜ちゃん。匂いとか、あんまし嗅がないでね」
「何で?」
「だってゆーくんのにお──じゃなくって、と、とにかく嗅がないで!」
何やら様子がおかしい魔美に訝し気な表情を向ける美夜子。
続けて追及に発展しそうな雰囲気を察して、リームがやれやれと助け船を出すべく会話に割って入る。
「ねえ、そもそもの話なんだけど、美夜子はどうしてそんなにゆうのことが好きなの?」
リームに質問され、美夜子は即座に否定しようと開きかけていた口を固まらせた。
ベッドに突っ伏しながら二人に向けていた顔を、シーツに擦り付けながら逆の方向へ。そして、そっぽを向けたまま答える。
「別に……家族として好きなだけよ」
明らかに誤魔化しているその態度に、魔美とリームは顔を見合わせて溜息を吐くのだった。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
「さて、次は誰にしようかなぁ」
一方、場面は戻って夕太。
先ほどは慌ててコピーとりよせ機の電源を切ってしまったが、リームの件はきっと偶然だろうと自分に都合の良いように解釈していた。
「ん?」
今度はミズエか桃子先生をコピーしようとしたが、ふとテレビに目を映すと、国民的アイドル伊藤つばさの特集が目に入る。
ちなみに、魔法世界のテレビなどの科学世界における電化製品は魔力を使って念力を送り込まないと起動しない。魔力を扱えない夕太は、市販の念力を出せる魔法道具を買ってもらって代用していた。
『本日は、あの人気絶頂中の国民的アイドル、伊藤つばさちゃんの誕生日!』
『というわけで、今日は彼女がデビューからこれまでリリースしてきた歌と、出演作品をまとめてご紹介いたします!』
今日は彼女の誕生日。これは彼女の大ファンである夕太も当然把握しており、だからこそこのチャンネルにしていたのである
そういえばと、夕太は昨日の出来事を思い出す。スネまが伊藤つばさの誕生パーティに招待されたと自慢していたのだ。
「いいなぁ、スネまのヤツ……ん? あっ、そうだ!」
スネまのことを妬ましく思っていると、妙案が浮かび上がる。
「つばさちゃんのコピーを取り寄せよう!」
我ながらグッドアイディアだと、早速意気揚々と端末を弄り始める夕太。
ちなみに、当初の候補の一人であるミズエは夕太と掃除用具入れに閉じ込められた時のことを思い出しながらオナニーの真っ最中。もう片方の桃子先生も夕太の全裸写真をオカズに致していたため、二人共間一髪であった。
「よし。これで探査ビデオがつばさちゃんを探して……キターーーーッ!!」
目の前に伊藤つばさの立体コピーが現れ、夕太は興奮で飛び上がる。ボブカットの黒髪にヘアバンド。間違いなく伊藤つばさだ。
どうやら寝ているらしい。通っているお嬢様学校の制服のままベッドの上に横になっており、呼吸に合わせて胸が僅かに上下している。
「わあ……つばさちゃんだぁ。目の前につばさちゃんがいる!」
人気アイドルであるつばさの身体を頭から足のつま先まで舐めるように眺める。緊張で汗ばんだ自身の手を擦りつけるようにして、彼女の手をにぎにぎと触った。
続いて、足先からパンツを覗く。ローウエストのハイレグショーツと少しエッチな印象を受けるパンツだが、これはダンスの時に動きやすくするためだろう。もちろん、色は純白。ミズエ同様、可愛くて清楚なイメージそのままである。
「つばさちゃんのパンツ! 二へへ、最高だなぁ」
調子に乗った夕太はつばさのスカートの中に顔を突っ込み、アイドルの太ももと股間をこれでもかと堪能する。
そんなことをしていると、『う、ん……』と呻くような声が耳に届く。つばさが起きてしまったのだ。それに気づき、慌てて離れる。
『……あ、れ。ここは?』
しかし、何やら様子がおかしい。目を覚まして上半身を起こしたつばさは、自分がどこにいるのか分からない様子で辺りを見回していた。
モニターに映る本物の彼女がいる場所を見てみると、コンクリート打ちっぱなしで確かに女の子の部屋にしては殺風景。スタジオの控室にしても不自然である。
『やあ、目が覚めたかい。つばさちゃん』
そこへ、部屋の扉が開いて眼鏡をかけた気怠げな男がのそりと入ってきた。驚いたつばさはベッドの上で後退り、壁に背中を打ちつける。
『あ、あなた、誰!? ここはどこなの!?』
『大体察しはついてるんだろう? 前に刑事ドラマで誘拐される女の子の役、やってたじゃないか』
その言葉から、この男に誘拐されたことが察せられる。つばさが送迎の途中でトイレへ行くために車を離れたところをさらったのだという。
夕太は一瞬ドラマの撮影かなと思ったが、会話の内容から違うことが窺い知れる。伊藤つばさ本人役というのもおかしい。
『何が、目的なんですか……? お、お金ですか?』
『ん~、お金は別にいらないよ。両親が金持ちだしね。それより、僕はもう疲れちゃったんだ』
『つ、疲れた……?』
『そう。小さい頃から勉強に励んで晴れて一流大学に合格したのはいいけど、このままエリート街道まっしぐらで、社会の歯車の一枚となるんだと思うとね。そんな虚しい人生を送るくらいならいっそのこと死のうかと考えたんだけど……どうせなら、最後に良い思いをしようと思ってさ』
『……ッ!』
そう語る男の股間が盛り上がってることに気づき、何をされるのか察したつばさは顔を蒼褪めさせる。
慌ててベッドから飛び降りて逃げようとしたが、失敗して突き飛ばされ、部屋の隅に追いやられてしまう。
『ハハ、今のうちにたくさん怖がっておきなよ。これから魅了術で僕のことが大好きになるんだから。僕さ、君が小学生の頃からファンだったんだけど、中学生になってますます可愛くなったよねぇ。ああ、トップアイドルを好き放題できるって思うと、存外生きるのも悪くないかもしれないなぁ』
『……い、いやぁっ!』
恐怖に悲鳴を上げるつばさに、男はもったいぶるようにじわじわとにじり寄る。
「あわわっ、た、大変だ!」
きっとあの男はつばさちゃんに何かひどいことをしようとしてるに違いない。
もうなりふり構っていられないと考えた夕太はポケットに手を突っ込んで、なんかないかと漁る。万が一撮影だったとしても、謝れば済むことだ。
「これだ! 『テレビとりもち』ーッ!」
取り出したのは、先端にとりもちが付いた緑色の棒。
危機が迫っているにも関わらず、その解決のために出した道具としては今一つパッとしない。
「えいっ!」
夕太はその棒を、あろうことか探査ビデオのモニターに突き刺した。普通ならそのままぶつかって、タイムテレビの二の舞になる光景が予想されるだろう。
しかし、そうはならなかった。棒の先のとりもちが、つばさの映るモニターの中に入り込み、彼女の頭に張り付いたのだ。「そりゃ!」という掛け声と共に、夕太は棒を引き寄せるようにして引っ張る。
「──きゃあっ!?」
すると、短い悲鳴と共にモニターの向こう側にいたはずのつばさが、とりもちにくっつく形で夕太の部屋に引っ張り出された。
『あれ? つ、つばさちゃん!? どこに消えたんだぁ!!?』
モニターにはつばさが消えて慌てふためている男の姿が映っている。
ちょうど顔を伏せてズボンを降ろしたところだったため、その瞬間を見逃していたらしい。仮性包茎の汚い陰部をブラブラさせながら辺りを見回している姿はなんとも滑稽であった。
「あ、あら? ここは……私、何で──」
「つばさちゃん、良かったね! 助かったんだよ!」
一瞬にして周りの風景が殺風景な部屋から自分のポスターが貼られた子供部屋に変わり、床に手を突いたまま呆然と辺りを見回しているつばさ。
目の前に本物の伊藤つばさがいることに歓喜しながらも夕太がそう声をかけると、彼女はビクリと肩を震わせて振り向いた。
「たす、かった……?」
「うん! このテレビとりもちで──あれ?」
救出方法について説明しようとした夕太の視線が、つばさの下半身に集中する。
「ぁ、ああぁ……」
──ショワアアアァァァァ…………
床に広がっていく水溜まり。香るアンモニア臭。
緊張の糸が切れたせいか、彼女は膀胱が緩んでおしっこを漏らしてしまったようだ。
夕太は泣いて謝るつばさを必死になだめて浴室へ案内した。
汚れた服は洗濯機に入れるように慌ただしく伝え、自分は美夜子の部屋に向かってクローゼットを漁り、適当な服を借りる。ちょっとばかし大きいかもだが、この際贅沢は言っていられない。
着替えを抱えたまま脱衣所に戻ると、浴室の扉越しにシャワーの音が耳に届く。目を向けると 曇りガラス越しにつばさのシルエットが見えた。
今の彼女はシャワーを浴びていて裸。ぼやけてはっきりとはしていないが、その全身が肌色のシルエットは夕太の股間を屹立させるには十分だった。
「あ、あの~、着替え、ここに置いとくから」
そう声をかけて、扉の傍にある籠に美夜子の服を入れる。
じっくり眺めていたい欲求を抑え、背を向けてそそくさと自室に戻ろうとする夕太。そんな彼の背中に「……ありがとう」と小さく声がかけられた。
「~~~~ッ?!」
伊藤つばさは国民的アイドル歌手だ。まだ中学生と若いながらも、全国の老若男女を魅了するその歌声と同じ声でお礼を言われ、感極まった夕太は飛び上がって喜ぶ。
「い、急がなくてもいいから、ゆっくりしてってね!」
そして、弾む心のままに踊るような足取りで脱衣所を離れていった。鼻歌を交らせながら。
「…………」
湯気に包まれる中、曇りガラスの扉に流し目を送るつばさ。
シャワーの音に紛れて聞き耳を立て、夕太の騒がしい足音と下手くそな鼻歌が遠ざかっていくのを確認する。
完全に聞こえなくなったことが分かると、蛇口を閉めてバスタブの縁に腰を下ろした。と、同時にその綺麗なおみ足を組んで太ももに頬杖を突き、大きな溜息を吐く。
「……あ~あ、失敗しちゃった」
溜息交じりに出たその声は、テレビ越しに聞くアイドルの声そのものでありながら、ドスの効いた声色をしていた。
失敗とは、そのままの意味だ。誘拐され、監禁され、男に乱暴される。それが叶わなかった。助けられてしまった。それはつまり、彼女にとっては失敗だったのである。
誤解のないように言っておくが、先の誘拐事件は撮影だったわけでもない。あの男も、本気で計画してアイドルの伊藤つばさを誘拐したのだ。
それが全て、彼女の手筈通りだったことも知らずに。
「ん♡ ふぅ……♡ あのままホントに犯されてたら、どうなっちゃってたんだろう……♡」
つばさは組んでいた脚を解いて大股を開き、産毛が僅かに生えた自身の秘所に右手を添える。そのまま、手招きするような動作で五指を下から上へ、滑らかな手つきで擦りつけ始めた。
シャワーを浴びていたので濡れているのは当たり前。だが、明らかにそれだけではない。指が持ち上げられる度、透明な粘液が確かに糸を引いていた。
「あはっ♡ 私、よそ様のお家で、オナニーしちゃってる♡」
バレたら大変だと言うのに、少女は紅潮した頬を緩ませて手を止める気配はない。再びお湯を出し、浮遊術を行使。シャワーヘッドを股間に持っていき、右手に加えて水圧でも濡れそぼったおまんこを刺激する。
そして、空いている左手を使ってほどよい大きさで形の良い乳房も揉み始めた。
見て分かるように、彼女──伊藤つばさは、芸能界では清楚系アイドルとして通しているが、実は非常に倒錯的な性癖を抱えていた。
小さい頃からエッチなことに人一倍興味があり、デビューしてからは日本中の男性ファンが自分をおかずにマスを掻いていることを想像して、毎夜自慰に励むのが彼女の日課だ。
「ふー♡ ふー♡ んっ……あ、はぁっ♡」
アイドル事務所のオーディションを受けた理由は星野スミレに憧れたからというものだが、それは建前。本当は枕営業を強要されることを期待してのことだった。
ところが、彼女の予想に反して国民的アイドルになるほどの人気が出てしまい、後ろめたいことをせずとも仕事が舞い込むようになってしまったのだ。
大勢の男性から性的な目で見られることからアイドル業自体は気に入っており、仕事自体はプロ意識を持って勤めていた。ファンが推しのアイドルを魅了術で支配しようとすることもあれば、逆もしかり。アイドル界でも魅了術で違法にファンを量産するような輩が多々存在するが、つばさは純粋な実力でトップアイドルという座に昇り詰めたのだ。
それでも、学校にも満足に通えないようなその多忙さに少女の鬱憤は溜まっていく。次第にそれは自慰行為では解消できないほどに膨れ上がっていった。
「んっ♡ お、ほっ♡ クリちゃんにシャワー当たるの、き、くぅ♡♡」
そして、今日はそんな彼女の14歳の誕生日。
毎年その日は休暇を取って誕生パーティを開いていたが、今年に入って人気に拍車がかかっていたため、どうしても休むことができず。
結局、パーティは来年まで先送りということになってしまった。
それが切っ掛けだった。ストレスが限界に達したのは。
数日前に誕生日返上を母から言い渡されたつばさは、その日の内に闇魔法ウェブで伊藤つばさの関係者を偽って自身のスケジュールを公開。閲覧者に自身を誘拐させる計画を立てるよう仕向けたのだ。
誘拐、監禁、強姦され、心の奥で燻らせていたその性的倒錯を叶えるべく。男の前で失禁するために、あえて朝からおしっこを我慢して膀胱に溜めた状態にしてまで。
しかし、それを偶然覗いていた夕太に助けられてしまった。いや、邪魔されてしまったというのが正しいか。とにかく、彼女の計画は失敗したのである。
「……あっ♡ あっ♡ あっ♡ イっ、ちゃう♡ イクッ♡ イクう゛ぅぅーー♡♡!!」
甲高い声を上げて腰を突き出し、顎を引いて天井を仰ぎながら盛大に絶頂を迎えたつばさ。
ビクッ! ビクッ! と大きく身体が痙攣し、ガクガクと両脚を左右に揺らす。浮遊術が解け、シャワーヘッドが床に落ちて音を立てた。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
オーガズムによる快楽の波が次第に収まっていき、乱れた息も整っていく。
他人の家で自慰行為に耽るという背徳的行為のおかげか、幾分かつばさは落ち着きを取り戻していた。
助けてもらって。失敗して。それで、良かったのかもしれない。
男に襲われそうになった時のことを思い返してみる。当然ながら念願叶ったと悦んではいたが、一方でそれ以上に恐怖も感じていた。
お漏らししてしまったのも、ほっとして緊張が途切れたからというのが原因である。
人前で裸になったらどうなるだろうか? 急に大声を上げたり、暴力を振るったりしたらどうなるだろうか? 良からぬことを考えるだけ考えて、実際には行動に移さないなんてことは誰しもあるだろう。
つばさは溜まりに溜まったストレスが災いして、衝動のまま行動に出てしまったのだ。もし彼が助けてくれなければ、アイドルも止めざるを得なくなっていただろう。
(……あの子、夕太って言ったっけ)
部屋に自分のポスターが貼られていたことといい、覗いていたことといい、自分のファンなのだろう。興奮して顔を真っ赤にさせた彼の顔が、頭の中に思い浮かぶ。
不思議な魔法道具を使う少年。他人を瞬間移動させる魔法なんて聞いたこともない。他にもすごい魔法道具を持っているのだろうか? 夕太という存在に、つばさは興味を持ち始める。
──そこで、はたと気づいた。
(もしかして、今も……覗いてる?)
20000字近くになったので、後半は明日投稿します。
〇つばさを誘拐した青年
エスパー魔美の原作6巻の『マミを贈りますの巻』に登場する自殺志願の大学生。
原作では自殺を考えていることがテレパシーで魔美に伝わり、会ったばかりだというのに必死に止めようとする彼女に対して、彼は「君が欲しい。君が傍にいてくれたら生きていけるかも」とお願いする。
魔美は悩んだ末に彼のもとへ行くことを決意するのだが、結末は原作かアニメを見てどうぞ。